BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
88 / 228

86話 記憶共有

しおりを挟む
 家族との食事を終えた私は、部屋に戻りブランクと一対一で会話をする。

「調査報告なんだが、とりあえず記憶共有でいいか?」

「とりあえず待って。記憶共有って何?」

「俺の記憶を移植する」

「…………?」

 普通は人の記憶なんて移植できないでしょ? 大体私にクリスティーン以外の記憶があったらおかしいでしょ。つまりそう言うことよ。

 そんなことをいとも簡単に言うブランク。まあ、彼ならそれができても違和感はないのでしょうね。

 私は深く深呼吸をしてそれを受け入れる準備をする。

「さあ、やって頂戴」

「ああ」

 ブランクは一歩。また一歩と私に近づきます。私とブランクは私の方が背が低いので、あまり近づきすぎると、貴方の顔が見えてしまいますが、宜しいのでしょうか。ですが、あえてそれは口に出さず、彼の接近を許します。

「あんた姫だったな。不敬とか騒ぎだずなよ?」

「それ、今更じゃなくて?」

 ブランクの顔があと少しで見えるその瞬間。彼は私を抱き寄せ、私の視界は彼の胸部。黒装束の為真っ暗闇に覆われます。そして額には生暖かくも柔らかい感触。

「何するのよ!!」

 私は突き飛ばす様にブランクを押し返すと、彼はすんなりと離れてくださりました。

「不敬よ!!!!」

「今更なんだろ?」

「あああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああ」

 ん? 何かわかりませんが、身に覚えのない記憶が私の中に入り込んできます。今日の放課後。私とジョアサン、ブランクの三人が別れた時です。やはり、この時にはウィルフリードの姿がありませんね。

 そしてその記憶は私の方ではなく、ブランクの視点としてジョアサンと肩を並べて歩いていました。視界が少し高いじゃない。

『おい悪魔』

『なんだなりそこない』

 なりそこない? どういう意味かしら。

『いつになったらクリスティーン姫から出ていくつもりだ?』

『条件が揃えばだな。無理やりは除霊できないぞ。見ての通り実体化もできるほどだ』

 ブランクとジョアサンのお話が全然分かりませんが、早く暴動の調査を初めて下さらないかしら。二人が歩き続けると、平民食堂の中に入っていきます。誰一人としてブランクをよそ者と認知せずに、目立たない平凡な生徒と認識しているのでしょう。

 クラスが違えば接点も少ない。国中から集められているから知らない人がいても違和感がない。やはりブランクで正解でしたね。他のみんなに頼めば、クラスメイトたちが気付くでしょう。

『あっちだ』

 ジョアサンがそう言って歩き始める姿に、ブランクの体はついて行く。首が動かせないのって辛いわね。我慢我慢。

 数名の生徒たちが一か所に集まって何かを話し合っています。ここは平民生徒の集まる食堂。貴族生徒にバレずに活動をするにはもってこいなのでしょう。それに今は放課後。つまりここに集まっている生徒たちは皆そのつもりでここにいるのでしょう。

 てゆうか、ジョアサンはここにいて大丈夫なのかしら。確かに正式な貴族ではなく大司教の息子だから侯爵家相当の扱いですけど。その心配も杞憂に終わる。ジョアサンは彼らの仲間内にすんなりと入り込んで話し合いに参加し始めた。

 そして誰もブランクを怪しまない。本当に潜り込むのね。しばらく彼らの話し合いを聞いていると主犯格の男子生徒はローラン・ディ・ブアディという男子生徒で、水色の髪にさらさらの髪質でちょっと男子のくせに羨ましいタイプでした。

 てゆうか、良い生活してそうですけど、商家の息子とかでしょうか。暴動を起こすほど生活が苦しそうに見えませんね。となると考えられるのは学園での貴族生徒と平民生徒の差罰。それの撤廃でしょう。

 彼らはジョアサンとブランクの前で大まかな作戦内容と結構日。誰が何をするのかを堂々としゃべってくれました。その中で主犯のローランが隠し玉も手に入れたと言っていましたが、その隠し玉は不明だそうです。

 そして記憶の共有はここで終わりました。

「十分か?」

「共有の件は十分ですけど、共有の仕方はもう少し何とかしてください」

「いいだろ別に」

 そう言ったブランクは黒い靄になって消え去ってしまいました。

 私はその場に腰が砕けたように座り込みます。

 まさか、こんな男に額ですが、口づけを許すことになるとは思いませんでした。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

処理中です...