BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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92話 ジェラールは変わらない

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 私は天使のように可愛いジルを撫でながら、リビオに視線を向けると、リビオはなぜかジルを凝視していました。

「あげないわよ」

「いや違くて。…………羨ましいな」

「!? だからあげないわよ!!」

「もういい」

 結局リビオが何を言いたかったのか。私にはそれが理解できませんでした。ですが、そんなことはどうでもいい。

「ねえ、リビオって今週の放課後で時間がとれたりする?」

「…………え!? 俺が? ですか?」

「そうよ。ちょっと一緒に来て欲しい場所があるの。あ、二人でね!」

 私がそう声をかけると、リビオの表情は完全に停止してしまい、驚きを隠せない状態でした。これは嫌、というリアクションかしら。

 私はいつまでも返事のないリビオを見つめつつ、腕の中にいる天使ジルをぎゅーっと抱きしめる。抱きしめられたジルは天使の歌声わーきゃー言いながら楽しそうにはしゃいでいます。

「嫌?」

「嫌ではない! わかった! 行こう! 明日でも良いぞ! どうせいつも暇だ!!」

「ほんと? ありがとうリビオ!」

 私がリビオに微笑むと、リビオはすぐに顔を逸らして、別の部屋に移動してしまいました。そんな私達を見ていたレイモン先生はぽつりとつぶやいた。

「デートにでも?」

「え???? 違うわよ?」

 レイモン先生のすぐそばにいたスザンヌは、完全に白い眼で見ていた。何故?

「お嬢様はジョアサン様に気があるかと思っていました」

「え? なんで? ジョアサンもリビオも友達でしょ?」

 私の発言に、レイモン先生とスザンヌは深いため息を吐いた。別に構いませんが、私変なことを言ったつもりはありませんよ。

 そう思っていたところで、突然離れの外から狼の遠吠えが耳に届きます。窓を開けるとそこには二メートルほどの白い狼が、お座りの姿勢で離れの窓を眺めていました。

「ウィルフリード! 貴方また大きくなりましたね! 一日みないだけで大きくなるのはもはや変態の域よ! まあ、姿は何も変わっていませんけどね!」

 ウィルフリードはどんどん魔狼であることを意識させるサイズになり、ついには私の背を超える大きさまで成長しました。あまりにも大きくなりすぎたウィルフリードは、今は王宮でお留守番しています。

「…………これは狼車も検討ね」

「おやめください」

 私たちはウィルフリードの背中に乗り、夕食を頂くため、ジェラールたちのいる宮殿に向かうことにしました。ウィルフリードも本能で覚えていたのか、特に指示しなくても宮殿まで歩き始めます。

 しばらくして宮殿につくと、そこには我が母エリザベートが私達が戻ってくるのを待っていました。

「お母様? 何かあったの?」

 私はジル、スザンヌと一緒にウィルフリードから降ります。

「別に何もありません。貴女の狼が元気に駆け出したから何事かと思っただけです」

 ああ、ウィルフリードってば、私の匂いに気付いて走ってきたのね。母は大きくなったウィルフリードを前ほどかわいがろうとしませんでしたが、よく見るとこっそり撫でています。人前だと恥ずかしくて構うこともできない我が母、可愛い。

 私も十四になり、昔ほど甘えさせてもらえません。ですが、たまにすっと肩が触れるくらいの距離にやってきたりします。初めてそれをされた時は痴漢かと思ってドキッとしたら母でした。

 母、エリザベートは幼少のころと比べ甘やかしてくれる機会は減りましたが、可愛がられているとは信じています。問題は父です。

「みんな揃っているな」

 不意に後ろから声をかけられる。それと同時に私の両足はふわりとういて、視線は九十度近く傾きます。髪とスカート。それから両足は地面に向かって垂直にだらりと垂れる。

「あのお父様。もう十四ですのでいきなり横抱きはちょっと」

「? 何かおかしいか?」

「……いえ、もういいです。好きに運んでください」

 父は五歳のころから、私の扱いが一切変わりませんでした。そう、発見次第抱きかかえるのです。さすがに体が大きくなった今は、昔のように普通に抱っこではなく、横抱きになってしまいました。
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