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110話 朝の散歩
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翌朝、久しぶりのベッドの就寝だったのかぐっすり眠ることができた私は予想よりも早く起きてしまい、置手紙だけ残して宿の外に出ていきました。
昨日は夕暮れ時な上に、大急ぎで目的地を目指していましたので、全然街並みを見ることができませんでしたが、ここは白い石造りの外壁の建物ばかりで、屋根は平ら。道は黄色に近い砂で覆いつくされていました。
暑い季節は過ぎましたが、ブラン王国と比べれば気温が高く、道に生えている植物の種類も異なります。馬車で三日の距離しかないのに、南北に移動するだけで随分景色が変わるものなのね。
道を歩く人は頭部を白い布で覆っていて、顔だけは出しているみたいです。私は少しだけ散歩しようと歩き出したところで急に後ろから肩を掴まれました。
「きゃっ!?」
「あ!? えと、すみませんクリスティーン姫!」
振り返るとそこにいたのはジョアサンでした。どうやら彼も早く起きすぎたみたいです。ジョアサンは私と違い、日差しから頭部を護るように布を巻いています。そして私にも布を突き付けてきました。
「とりあえずこれを巻いてください。支給された着替えにあったはずでしょう?」
「ええ? でも私の物は用途がわかりませんでしたので、部屋に置いてきたわ?」
私は突き付けられた白い布がどこから湧いて出てきたのかわからずにジョアサンに尋ねると、ジョアサンがため息を吐いてから答えます。
「貴女が、無防備で外に出るのを見かけましたので、急いで受付で予備を貰いました」
「そう言うことですか。ありがとうございます」
ジョアサンって私に良い印象を持っているイメージもありませんでしたが、さすがは大司教の息子。こういう気遣いは条件反射でやってしまいますのね。
私が布とジョアサンをボケーっと眺めていると、それに気付いたジョアサンが布を取り上げて私の頭部を覆う様に巻き付けてくださりました。
「君は一人で着替えられたんじゃないのか?」
「すみません、できないことはないのですが人にやってもらうのに慣れすぎてしまいまして」
私はなんで今、ジョアサンにやって貰おうと思って待機していたのでしょうか。急に恥ずかしくなり彼から顔を逸らす。
「まあ、普段から人にやって貰って育ったらそうなるのもわからなくもないけどね」
そう言ってジョアサンはさきほど私が歩き出そうとした方向に歩き始めます。私も何事もなかったように彼の隣を歩くと彼が私の方に視線を向ける。
「それでどこに向かっていたのですか? 迷子になられても困りますのでご同行しますよ?」
「え? ああ、そうね。ありがとうございます。ですがちょっと外がどんな風になっているか見てみたかっただけですので特に目的地はありませんよ?」
私がそう返事をすると、ジョアサンはでしたらこの建物をぐるりと回りましょう。と返事をしましたので、私もその提案を受け入れました。…………ぐるりと回るだけでしたら迷いませんのでついてこなくても良いのでは? そう思いましたが、拒絶することでもありませんので、そのままジョアサンを同行させます。
そして人通りの少ない道でジョアサンが足を止めました。私は様子を伺う様に彼の顔を覗き込むと、彼はどうやら私の頭の上に視線を向けていたみたいです。
「今日も憑いているんですね」
「私にはわからないけど、貴方がそういうってことは憑いていると思うわ」
「彼から干渉はないのですか?」
「基本はないわね」
ジョアサンは学園での暴動騒動の件から、ブランクを一方的な悪と決めつけなくなったみたいですが、それでも快く受け入れられないみたいでした。
「呼んだか?」
私の頭上からブランクの声が聞こえたと思いましたら、すぐ隣に黒い靄が集まってきました。それらが人の形を象ると、いつものようにブランクが現れました。
「付いて来ていたのですね」
「お前に死なれたら困るからな。まあ、死にそうな時は手を貸してやるよ」
「それで充分よ。行きましょうジョアサン」
私はジョアサンの袖を引っ張りますが、ジョアサンはその場から動こうとせずに、何かをブランクに言いたそうにしていました。
しかし、言葉を飲み込んで踵を返す。結局、ジョアサンはブランクに何を言いたかったかわかりませんでしたが、私はブランクが靄になって消え去るのを確認するまで後ろを気にしながら歩いて宿に戻りました。
それからこの日は宿に直接アンヌ先生が来て予定表を配られました。今日は単純にこの地域の商会や国交などのレポートを纏めるだけみたいですので、班も四人ずつに分かれて行動することになりました。
「それじゃあお昼にここの食堂に集合ね」
幻惑魔法が解除された地図は、ブラン王国の公用語で書かれた私達でも読める地図でした。それをオリバーの幻惑魔法、複製《コピー》で別の紙にもう一枚同じ地図を写してから私達は別行動を開始しました。
昨日は夕暮れ時な上に、大急ぎで目的地を目指していましたので、全然街並みを見ることができませんでしたが、ここは白い石造りの外壁の建物ばかりで、屋根は平ら。道は黄色に近い砂で覆いつくされていました。
暑い季節は過ぎましたが、ブラン王国と比べれば気温が高く、道に生えている植物の種類も異なります。馬車で三日の距離しかないのに、南北に移動するだけで随分景色が変わるものなのね。
道を歩く人は頭部を白い布で覆っていて、顔だけは出しているみたいです。私は少しだけ散歩しようと歩き出したところで急に後ろから肩を掴まれました。
「きゃっ!?」
「あ!? えと、すみませんクリスティーン姫!」
振り返るとそこにいたのはジョアサンでした。どうやら彼も早く起きすぎたみたいです。ジョアサンは私と違い、日差しから頭部を護るように布を巻いています。そして私にも布を突き付けてきました。
「とりあえずこれを巻いてください。支給された着替えにあったはずでしょう?」
「ええ? でも私の物は用途がわかりませんでしたので、部屋に置いてきたわ?」
私は突き付けられた白い布がどこから湧いて出てきたのかわからずにジョアサンに尋ねると、ジョアサンがため息を吐いてから答えます。
「貴女が、無防備で外に出るのを見かけましたので、急いで受付で予備を貰いました」
「そう言うことですか。ありがとうございます」
ジョアサンって私に良い印象を持っているイメージもありませんでしたが、さすがは大司教の息子。こういう気遣いは条件反射でやってしまいますのね。
私が布とジョアサンをボケーっと眺めていると、それに気付いたジョアサンが布を取り上げて私の頭部を覆う様に巻き付けてくださりました。
「君は一人で着替えられたんじゃないのか?」
「すみません、できないことはないのですが人にやってもらうのに慣れすぎてしまいまして」
私はなんで今、ジョアサンにやって貰おうと思って待機していたのでしょうか。急に恥ずかしくなり彼から顔を逸らす。
「まあ、普段から人にやって貰って育ったらそうなるのもわからなくもないけどね」
そう言ってジョアサンはさきほど私が歩き出そうとした方向に歩き始めます。私も何事もなかったように彼の隣を歩くと彼が私の方に視線を向ける。
「それでどこに向かっていたのですか? 迷子になられても困りますのでご同行しますよ?」
「え? ああ、そうね。ありがとうございます。ですがちょっと外がどんな風になっているか見てみたかっただけですので特に目的地はありませんよ?」
私がそう返事をすると、ジョアサンはでしたらこの建物をぐるりと回りましょう。と返事をしましたので、私もその提案を受け入れました。…………ぐるりと回るだけでしたら迷いませんのでついてこなくても良いのでは? そう思いましたが、拒絶することでもありませんので、そのままジョアサンを同行させます。
そして人通りの少ない道でジョアサンが足を止めました。私は様子を伺う様に彼の顔を覗き込むと、彼はどうやら私の頭の上に視線を向けていたみたいです。
「今日も憑いているんですね」
「私にはわからないけど、貴方がそういうってことは憑いていると思うわ」
「彼から干渉はないのですか?」
「基本はないわね」
ジョアサンは学園での暴動騒動の件から、ブランクを一方的な悪と決めつけなくなったみたいですが、それでも快く受け入れられないみたいでした。
「呼んだか?」
私の頭上からブランクの声が聞こえたと思いましたら、すぐ隣に黒い靄が集まってきました。それらが人の形を象ると、いつものようにブランクが現れました。
「付いて来ていたのですね」
「お前に死なれたら困るからな。まあ、死にそうな時は手を貸してやるよ」
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しかし、言葉を飲み込んで踵を返す。結局、ジョアサンはブランクに何を言いたかったかわかりませんでしたが、私はブランクが靄になって消え去るのを確認するまで後ろを気にしながら歩いて宿に戻りました。
それからこの日は宿に直接アンヌ先生が来て予定表を配られました。今日は単純にこの地域の商会や国交などのレポートを纏めるだけみたいですので、班も四人ずつに分かれて行動することになりました。
「それじゃあお昼にここの食堂に集合ね」
幻惑魔法が解除された地図は、ブラン王国の公用語で書かれた私達でも読める地図でした。それをオリバーの幻惑魔法、複製《コピー》で別の紙にもう一枚同じ地図を写してから私達は別行動を開始しました。
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