BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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112話 役割のない人

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 私、ミゲル、ジャンヌさん、オリバーの四人で資源と輸出に関わる商人の元を回り、ある程度はまとまり始めた。

「資源は主に鉱石ね」

「ダイヤモンドの原産地らしいですね。鉱山らしい鉱山はあまりないみたいですけど」

「あとは砂漠特有の生物などでしょうか。サソリさんはあまり美味しそうではありませんね」

「他にも沿岸沿いでは海産物などが豊富ですね。一度食糧難になったというのが疑わしいほどです」

 この国の過去のことはわかりませんが、そう言った経緯があったのも事実。

 それぞれまとまったレポートを見てそう呟いた。とにかくこれで提出できるレベルにはなっただろう。私達は一足早く宿に戻ろうと歩き始めた。

 すると遠方から中年の男が大声を上げる。

「食い逃げだぁ!」

 私達が振り返ると、食い逃げ犯はちょうど行先を阻むように横に並んでいた私達に突っ込んできた。

 そしてあろうことか、手の届く位置にいたジャンヌさんを突き飛ばそうとした。

「守護魔法、茨の壁ローズウォール

 ミゲルがジャンヌさんと食い逃げ犯の間に、茨を模した魔力の壁を作り上げる。

「いっでぇええ!?」

 勢いよく茨の壁に手を突っ込んだ食い逃げ犯は、その場で転がり回った。

 ここは砂漠地帯だったわね。

「波動魔法、液状化リクィファクション

 食い逃げ犯の足元の一気に陥没し、男は下半身が地面にスッポリと埋まってしまった。

 そしてしばらくして店主と衛兵がやってきて男は確保されました。空いた穴は、私の時空魔法で元に戻しましたので問題ありません。

 それにしてもミゲルはとっさに守護魔法を使うのが上手なのよね。いかなる時も、彼がいる時は護って貰えそうなどだ。

 そして四人で宿に戻り、私とジャンヌさんは女子部屋で二人きりになった。

「はぁ」

「どうしたのジャンヌさん」

 ジャンヌさんが暗い表情で俯いている。

「私って本当に足手まといですよね」

 ああ、そういうことか。みんなが魔法を行使している中、自分が何もできなかったことをずっと気にしていたことと、さっきもただただ守って貰っただけのことを気に病んでいるのだろう。

 私は、彼女になんていえば良いのか必死に考えた。

 私は生まれも育ちも才能も恵まれていた。彼女に無い物ばかりを与えられた。そんな私の言葉が彼女に響くとは思えない。

 でも恵まれていたのは、クリスティーン・ディ・フォレスティエの話だ。私にはもう一つの人生がある。

 ただただ何もなく、平凡な人生を送ってきた中垣深雪なかがきみゆきの言葉なら、彼女に届くものがあるのかもしれない。

「ジャンヌさん、私達は常に役割を全うして生きることなんてできないわ。今は貴女が動く番じゃないの。でもいつか貴女が動くべき時に、私達を思い出して。きっと誰も動けなかった人のことを足手まといだなんて思っていないし、貴女もその時、相手をそんな風に思うことなんてないわ」

 私がそういうと、ジャンヌさんは黙って私の胸に顔をうずめる。肩が震えている。感動してくれているのか、怒っているのか。

 他人の心はわからないけど、彼女が姫である私に対してここまで無遠慮になったことはちょっとだけ嬉しい。

 それに、貴女は本当に足手まといなんかじゃないわ。

 だって学ぶ場において、様々な人と触れ合うことは、十分に意味のあることで、貴女は他の誰よりも、優しくて誠実で純粋な少女なのだから。

 魔法が使えることだけが個性の集団は、無意識に相手を歯車だと思ってしまう。そんな中、貴女のように温かい心の持主がいることは、私達を人間らしくさせる癒しなのよ。

 震える彼女を抱きしめていると、勢いよく扉が開いたかと思えば、カトリーヌさんとビルジニが戻ってきていた。

「たっだいまぁ!」「今、戻りました姫君」

 二人は抱き合っている私とジャンヌさんを見て数秒静止する。全然関係ないけどカトリーヌさん旅行でテンション上がりすぎ。

「おいおいおいおい。姫君。私ともいいかい?」

「なんでそうなるのよ」

「ちょっと!? 私には触れない距離で近いって! 近いって!!」

「いや…………なんかごめん」

 ジャンヌさんに差し支えのない程度に事情を話してもらい、どうにか二人には納得してもらいました。

「そうだね、確かに魔法が使えないという点では、持てる役割が少ないのも事実だ。でも、少ないことは役に立たないと言うことではないよ」

「気にすることないわよ平民。私だって相手をぶっ飛ばす以外の波動魔法は使えないわ」

 カトリーヌさんってテンションが上がると急に俗っぽいわね。他人がどんな適性を持ち合わせているか知りませんが、カトリーヌさんは波動魔法しか適性がないのですね。

 ジャンヌさんは泣きながら二人にも抱き着く。彼女と私達の間に身分なんて関係ない。一人呼び方が平民だったとかそういうのは今は置いといて。

 こうして貿易都市での課外授業であるレポート作成は夜、全員で互いの班の提出物を読み合わせ、意見を言い合ったり褒めたりして完成させるのでした。
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