BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
117 / 228

113話 進む道を選べ

しおりを挟む
 貿易都市でのレポート作成を終えた私たちは、全ての班が一つの広場に集められました。

 本日はなぜかあからさまにブラン王国の市民が来ているような質素な服を配られました。

 着方がわからなくて困っているカトリーヌさんを見て、私もわざとらしく困り始める。

 周囲を見渡すと残った班の数は私達を含め三班。貿易都市に入ることができた班の数はこの三倍以上はいたはずだ。

   てゆうか、たった三班の為に残り数日を使うのですね。先生方も残った生徒の数は想定外だったのでしょうか。

「結構減らされたのね」

 私が周囲を見渡しながら言うと、ジャンヌさんは怯えながらキョロキョロし始める。無駄に不安をあおる発言はしない方が良いわね。

 他のみんなは割と普段通りを装っていますが、それは不安じゃないと言い切る理由にならない。

「みなさぁ~ん」

 気の抜けた声が聞こえる。アンヌ先生だ。またどこにいるかわからないが、彼女が音を届けるのに場所は関係ないのだろう。

 一応先生の場所を探すと、彼女はいつの間にか広場の真ん中に立っていた。

 そばかすがあることくらいしか特徴のない地味な赤毛の女性。アンヌ先生は人ごみに紛れてしまえば、探すのが困難なくらい目立たない。

「お次はラクダで移動して半日の街ですがぁ~。道中は最近盗賊団が出ることもありますのでぇ~お気を付け下さいねぇ~」

 そんなルートを通らせないで欲しい。ですが、私達は危険を同意するサインまでしている。今更こんなことで泣き言をいう訳にもいかない。

 ラクダを歩かせるルートは、複数ある中から、私達が任意で決めるらしい。

「今回はぁ~日没までにたどり着いてくださいねぇ~」

 先生が用意したルートは他の班と被ってはいけないらしく、各班の班長が集められます。

 一つ目の班の班長はジャン・ド・ジェゴフ。ジェゴフ侯爵家の令息でぽっちゃりしていてブロンドの髪をしている。B組在籍で状態魔法の使い手と聞いたことがあります。

 もう一つの班の班長はメラニー・マリー・ジラールというココアのような色の茶髪の少女だ。ジラール商会というブラン王国一大きな商会の会長の娘でもあり、そこら辺の貴族より裕福な暮らしをしているといわれている。Cクラス在籍で幻惑魔法の使い手だったと記憶しています。

「皆様はどのようにあの地図を?」

 私が質問をすると、ジャンはにたりと笑い、メラニーは何を言われているのだろうという表情を作った。

「私はロポポロ公国には頻繁に行き来していましたので、地図は読めました。問題は星印に書かれていた言葉ですね。あれはすべて宿を表していないことがわかりましたので、幻惑魔法がかけられていることを疑い解除しました」

「う、うちもそうよ。まあ、幻惑魔法の解除はオリバー皇子にやってもらいましたが」

 嘘は言っていない。ただし、誰もロポポロ公国の文字が読めなかったことは、なぜか見栄をはって答えませんでした。

「僕らの班は簡単さ! 状態魔法で通行している人に麻痺をかけて解除を条件に地図を解かせたのさ! できる人が見つかるまで七人捕まえたかな!!」

 私とメラニーさんは、ごみを見るような眼でジャンを見ているが、当の本人はおいおいそんなに見つめないでおくれよと言い出す。

 こいつ、うっかり盗賊に攫われてくれないかな。怖い思いをした辺りで先生が助けに来てくれればいいから。

 貴族生徒の中にこんな男がいたら、そりゃあ平民生徒も暴動くらい起こすわよ。

 私とメラニーさんは、あのバカに下手に絡まれないように、先に決める権利を譲ると、すごく気分がよさそうに一番短いルートを選んで班員たちのところに戻っていきました。

「さてと、メラニーさんはどのルートにしますか?」

「私ですか? そうですね、無難なのはこの少し遠回りの道ですね。回り道になっているせいで時間もかかりますが、周辺に隠れる場所がなく地平線まで見える道ですので、襲われる危険性はほぼないです」

 なるほど、彼女は地図だけじゃない。実際にこの道を利用したことがある経験者だ。

「でしたらその道はお譲りしますので、私達の班の道を決める相談に乗ってくれませんか?」

「え? 私がですか? 良いのですか? 信用できるのですか?」

 彼女は自分が平民である以上に、裕福な暮らしをしているせいで貴族からも嫌われていることを承知している。

「信用していなければ、貴女の家に我が国最大の商会は任せられないわ。貴女はその会長の娘です」

 そしてメラニーさんは複数ある道の中から、岩場を回り道するルートを指さした。

「どの道も危険と隣り合わせですが、こちらの道なら、少なくとも左側を警戒する必要がありませんので、他よりは警戒が楽かと」

「…………つまり右側からいつ襲われてもおかしくないってことね。ご忠告ありがとう」

「申し訳ありません」

「気にしないで。私達は強いから」

 私達はお互いの班に戻って、決めたルートを報告し合う。

 ラクダに乗って八人で移動するのかと思えば、各班それぞれ先生方引率してくれるらしい。私達の班はアンヌ先生がやってきた。

 先生はあくまで監視というころで私達より少し離れた場所からついてくるらしい。

 基本的に移動する順番はミゲルを先頭にして両サイドにジョアサンとリビオ。内側に女子四人で後方をオリバーがついてきて、アンヌ先生はオリバーより更に後ろという陣形で移動しました。

 しばらく歩いていると、メラニーさんが言っていた通りの左側は見晴らしがよいのに、右側は岩場などの死角の多い道にでました。

 確かに右側からの奇襲が用意な道ですね。

「オリバー? 貴方だけ左側を警戒してくれるかしら?」

「いいでしょう。俺も同意見です」

 幻惑魔法を見抜けるのは、更に上位の幻惑魔法使いだけ。それでも時間がかかりますが、違和感は感じられます。

 私がもし盗賊だとしたら、魔法を使って奇襲する。つまり、見晴らしが良い場所からいきなり襲われる可能性もある。

 それを承知で私はメラニーさんを両サイド見晴らしのいい道を選ばせました。何故なら彼女もそれなりの幻惑魔法を使えるからです。

 私達は危険を承知でラクダを歩かせました。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...