BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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125話 【黄】のワンダーオーブ

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 ブランクの指さす方で、ゆっくりと手のひらを開いて握っていたものを見せてくれたのはジャンヌさんでした。

 彼女の白い手のひらには、一つの黄色い宝珠。

「【黄】のワンダーオーブ?」

「そうだ」

「でも待って! ワンダーオーブは魔力量が多い方が!」

 私はここまで口にして、ジャンヌさんから感じる魔力が今までとは段違いであることに気付きました。魔法は使えば使うほど魔力が高まります。

 この三か月、彼女は何をしてここまで魔力を高めていたというの。

 ワンダーオーブについて既知のビルジニを見るからに、このワンダーオーブはジャンヌとビルジニの友情により生み出されたもの。

「あなた達が…………どうしてそれを手に入れる方法を?」

「ごめんね姫君。僕はどうしても君と友情を示すなんてことができなかったんだ。僕はその先に行く」

「…………そう」

 彼女が私に気があることくらい、なんかほんのちょっとくらいあるかなって思っていましたが、まさか友情を拒否されるほどだったとはね。

 ワンダーオーブは奪われた。それも、ビルジニの口ぶり的に偶然の産物とは思えない。誰かがいるんだ。

 この世界のどこかに、私ではない乙女ゲームのシナリオを知っている誰かがいる。

「ブランク…………前から気になっていたことの、答え合わせの時間を頂戴」

「…………? 答えられる限りならいいだろう」

 ブランクはめんどくさそうに答える。私はブランクを真っすぐ見つめると、彼は何かを察して私達を黒い魔力のカーテンで包み込んだ。

「これでいいな?」

「こんなこともできるのね。それじゃあまずはこれ。私と貴方の出会いよ」

「そんなところまでさかのぼるのか」

「私が”月”と呟いて、貴方はそれをこの世界の名前で”レティシア”と呼んだわ」

「ああ、なるほど。迂闊だったよ」

「どこで覚えたの? ”月”って言葉」

 ブランクは沈黙を続ける。彼が”月”という言葉を知っているなら、それはつまりこの世界の住民ではないか、この世界の住民ではない人間と繋がりがあった証拠だ。

 そうでなければ、”月”と呟いた私に、答えることができない。

 しかし、ブランクは中々答えようとしてくれません。ですが、彼は迂闊だったと呟きました。

「迂闊だったということは、”月”をご存じってことでいいわね。そこまで分かればいいわ。どうせ答えてくれないのでしょう」

「お前のそういう察しの良いところは好きだぜ」

 …………! くだらない冗談を。人を乗せてそんなに楽しいのかしら。この大馬鹿野郎。

「貴方に好きと言われても、気色が悪いだけよ。どうせ本心じゃないくせに。ばぁか」

「ははっ、信用ねーな」

 仮に信用していたとしても、今回の件は明確な裏切りだわ。

 信用を台無しにしたとしたら、それは貴方自身の行動に問題があるとなぜ理解しないのかしら。

 彼がワンダーオーブを手に入れて何を取り戻したいか言っていない様に、私もワンダーオーブを集めて何をするか伝えていない。

「どうしてもその力が必要なの。それとも【黄】のワンダーオーブは貴方が欲しい力でしたの? それでしたらそうと言ってくれれば」

「いいや、これも外れだ」

「だったらそれを私に」

「できないね。最悪の魔女アリゼと戦うのはお前じゃない。ジャンヌだ」

 …………!? 私の最終目的を知っている? どうして? 誰から?

 誰がブランクにそれを吹き込んだというの?

 ブランクがどういうつもりで私じゃない人間を戦わせようとしているかわかりませんが、私こそそんな真似はさせられない。

 危険だとわかっていて、友達を戦わせるわけにはいかない。

「お前こそ【緑】と【藍】を渡すんだな」

「奪えばいいじゃない」

「できないね。所有者が譲渡しようという気持ちがなければ、ワンダーオーブは人に渡せない」

 まるでゲームのアイテムみたいね。いえ、ゲームのアイテムなんですけど。

 ブランクの顔は、相変わらず見えませんが、気持ち的に互いがにらみ合い、絶対に譲ろうとしない。

「わかった。だが、残りのワンダーオーブはジャンヌに授ける。そのつもりでいるんだな」

「……認めないわよ」

「そういうと思ったよ」

 黒いカーテンが解除される。周囲にいたビルジニとジャンヌさんは不思議そうに私達を見つめています。

 スザンヌ、アンヌ先生や護衛の騎士達はまだ眠っている様子。

「俺はもう消える。あとはお前がお友達と話すんだな」

 そう言ったブランクは、いつものように黒い靄になるのではなく、青白い魔法陣の上に立ち、転移してどこかに行ってしまいました。

「ジャンヌさんはどこまで知っているのかしら」

「私が知っているのは、姫様が危険な戦いをしようとしていることまでです。私はあの遠征で力に目覚めました。そしたらあの魔術師様が私の元に現れてこれを私に渡してきたのです」

 そう言われ、彼女は胸元から服の中をゴソゴソと探り始めると、ネックレスを取り出しました。その先にあるのは白い宝珠。

「【白】?」

「はい、ブランクはこれを名づけるなら【白】のワンダーオーブだと言っていました」

 知らない。そんなワンダーオーブ、私走らない。私の知っているワンダーオーブは虹の七色だ。

 今、所在不明のワンダーオーブの【橙】でも【青】でも【紫】でもないなら、それをワンダーオーブと呼べるのかすら怪しい。

 禁書にあった色の読めないワンダーオーブを指しているのかしら。

 でもまだそうだと断定できないわ。でも、一度あの禁書を読み直す必要がありそうね。または、他の文献を探るしか。

「姫様、私達は貴女を護ります。だから姫様は下がってください」

「そうだよ。僕らに任せて欲しい。そう思うだろうみんな」

 そう言って奥からゾロゾロと人が歩いてくる。短い緑髪の男子。黒髪に黒目の男子。灰色の髪にまるで漫画のような糸目の男子。金髪に赤紫色の瞳の男子。

「ミゲル! リビオ! ジョアサン! アレクシス!?」

「クリスティーン姫、僕は貴女の為なら勇気を示せます。でも、それは貴方を戦わせるためじゃない」

「俺だってまさか禁書の解読がクリスティーン姫を戦いに向かわせるための準備だとは思わなかった」

「慈悲を試されたことは不快でしたが、ワンダーオーブを使った貴女のおかげで救われた者もいます。だから今度は僕らが貴女を護りましょう」

「クリスティーン姫、何も語ってくれなかった貴女を僕は信頼できない」

「勘違いしないでくれよ姫君、僕らは君が大切だから戦わせたくないんだ」

 私はその瞬間、今まで築いてきたものが、ガシャンとハンマーでガラスを壊す様に砕かれた気分になりました。

 まずいわ。ワンダーオーブを手に入れるのに、ミゲルとアレクシスだけでも…………ああ、違う。そうじゃないか。

 私、みんなを利用することしか考えてなかったんだ。

 何をこんなに傷ついたのか理解しました。こんな人間、信頼できないわよね。

 …………いいわ。だったら取り戻す。そして【黄】のワンダーオーブの所有権も譲渡して貰うわよジャンヌ。
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