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131話 死なせたくない人は増えるもの
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学園が再開して三日。私は徹底した監視体制にうんざりしていました。
教室で周囲の生徒がガヤガヤと仲睦まじく話している中、私は一人頭を抱えている。
朝はエリザベートが同行し、帰りまでしっかり監視される。エリザベートがいない時は騎士団から常に三名の人間が派遣され、私を囲むように移動する。
ドギツイ!!!!!!
息苦しいといいますか、身動きができないといいますか。ここまで徹底する理由はないと思います。あれから特に動きがないのでしたら、そろそろ警戒態勢を解除して欲しいものですわ。
例えばジルがもし誘拐されたとしても私は…………いや、やるわ。なんなら王宮から絶対に出しませんし、騎士団も王宮から出しません。国中から守護魔法使いを集めて、常時結界を張らせます。
………………………………ちょっときついわね。そろそろ安全を確保して欲しいものだわ。もとはと言えばあの手配者の面々が捕まらなかったのも理由の一つなのよね。
「…………退屈だわ」
「あら、暇なの?」
不意に声をかけられ、振り返るとそこには銀髪に深紅の瞳の女子生徒が、そわそわした様子で私を見つめていました。
「ええ、そうですけど?」
何せ、ワンダーオーブを入手する為に動き出そうとすれば、すぐにエリザベートの元に強制連行されてしまいますからね。
あとはやれと言われたことをはいはい言いながら、こなす以外することもありませんしね。
別にジェラールやエリザベートからワンダーオーブを集めていることについてバレているわけではない。でも、ワンダーオーブを手に入れようとするには、不可解な理由で一人になる必要がある。正確にはスザンヌもいらっしゃいますけど。
「ちょっと? 聞いているの?」
「え? ああ、はいはい。何も聞いていませんよ? もう一度お願いします」
「なんで開き直っているのよ。だーかーらー? アンタも当然、馬上槍大会に出ますよね?」
「出ませんが?」
「え!? 出ないの? もうエントリーしちゃったんだけど?」
ええ。そんなアイドルのオーディションみたいなノリで、友達をエントリーしちゃダメじゃない。
馬上槍大会。全身に鎧を着て馬を走らせ、向こう側から走ってくる相手目掛けて槍を討つ。その時、当たった場所ごとによってポイントがつきます。
一試合ごとに五回それを繰り返し、よりポイントの高い方が勝ち。そしてこの馬上槍大会では、事前に申請した魔法を三つまで使用できます。
ちなみに相手に危険が生じる可能性のある魔法は禁止ですので、事前申請を行っているそうです。
ちなみに槍はぶつかれば砕けるように脆い槍ですので、刺さって死ぬなどと言うことにはなりませんが、馬の上からの転落で怪我なども十分考慮する必要がありますね。
この世界では回復魔法が専門的な分野で発展させている魔術師も多く、致命傷でなければ、あまり心配する必要がないんですけどね。
「それで今回の勝負は何を賭けるのですか?」
「え? そんなものいりませんけど?」
「ではなぜ?」
「えっと…………最近、クリスティーンが…………その、元気がなさそうで…………貴女、暴れ回るの好きでしょう?」
何でしょう。カトリーヌさんがすっごく可愛い雰囲気で、私のことを貶してくる。そうだ、話ついでにカトリーヌさんには聞いてみたいことがありました。
それはとても重要な話。
「カトリーヌさん、二人で話がしたいの」
「この護衛体制で?」
「…………そうね、ちょっと騎士様とは相談してくるわ」
私はできるだけデリケートな話と説明し、騎士たちが会話の聞こえない距離で待機してもらうことを前提に学園内のバラ園が見えるテラス席で、カトリーヌさんと二人きりになりました。
正確にはお茶を淹れてくれるスザンヌもご一緒ですけど。
「それで? お話って何よ?」
「期待しているとこ悪いけど、あまり友達らしい会話じゃないわよ?」
「きっ!? 期待してませんし!? それで何?」
あ、急に冷たくなった。まあ、いいか。
「その瞳、一体何が見えるの?」
「…………それのことね。貴女の母親が語ってくれないのでしたら、それが答えだと思うわ。でもそうね、友達だから仕方なく教えてあげる。馬上槍大会で私より良い成績を収めたらね!!」
賭け始まっちゃったじゃない。勝負師なの?
「それで貴女が勝てば私は何をすればいいの?」
「…………えっと…………私は貴女に勝てればそれでいいわよ」
今度、輪投げにでも誘ってわざと負けようかな。彼女の精神年齢的に輪投げでいいでしょ。…………いえ、絶対怒るからやめておきましょうか。
もしかしたら、彼女なら私の味方に…………いえ、彼女もきっとあのエピローグでは負けた魔術師の一人なのでしょうね。
死なせたくない人が増えるって困りものね。それは他のみんなも同じ。
やっぱりワンダーオーブはすべて私の手元に集める。アリゼと一騎打ちをするのは私でいい。
「カトリーヌさん、約束忘れないでよね?」
「え? ええ。構わないわよ」
馬上槍大会。誇りを懸けてぶつかり合うのなら、他のみんなにも賭けを吹っ掛けてやろうじゃない。その上で私が優勝する。
カトリーヌさん、貴女本当に良い発想をする友達だわ。
教室で周囲の生徒がガヤガヤと仲睦まじく話している中、私は一人頭を抱えている。
朝はエリザベートが同行し、帰りまでしっかり監視される。エリザベートがいない時は騎士団から常に三名の人間が派遣され、私を囲むように移動する。
ドギツイ!!!!!!
息苦しいといいますか、身動きができないといいますか。ここまで徹底する理由はないと思います。あれから特に動きがないのでしたら、そろそろ警戒態勢を解除して欲しいものですわ。
例えばジルがもし誘拐されたとしても私は…………いや、やるわ。なんなら王宮から絶対に出しませんし、騎士団も王宮から出しません。国中から守護魔法使いを集めて、常時結界を張らせます。
………………………………ちょっときついわね。そろそろ安全を確保して欲しいものだわ。もとはと言えばあの手配者の面々が捕まらなかったのも理由の一つなのよね。
「…………退屈だわ」
「あら、暇なの?」
不意に声をかけられ、振り返るとそこには銀髪に深紅の瞳の女子生徒が、そわそわした様子で私を見つめていました。
「ええ、そうですけど?」
何せ、ワンダーオーブを入手する為に動き出そうとすれば、すぐにエリザベートの元に強制連行されてしまいますからね。
あとはやれと言われたことをはいはい言いながら、こなす以外することもありませんしね。
別にジェラールやエリザベートからワンダーオーブを集めていることについてバレているわけではない。でも、ワンダーオーブを手に入れようとするには、不可解な理由で一人になる必要がある。正確にはスザンヌもいらっしゃいますけど。
「ちょっと? 聞いているの?」
「え? ああ、はいはい。何も聞いていませんよ? もう一度お願いします」
「なんで開き直っているのよ。だーかーらー? アンタも当然、馬上槍大会に出ますよね?」
「出ませんが?」
「え!? 出ないの? もうエントリーしちゃったんだけど?」
ええ。そんなアイドルのオーディションみたいなノリで、友達をエントリーしちゃダメじゃない。
馬上槍大会。全身に鎧を着て馬を走らせ、向こう側から走ってくる相手目掛けて槍を討つ。その時、当たった場所ごとによってポイントがつきます。
一試合ごとに五回それを繰り返し、よりポイントの高い方が勝ち。そしてこの馬上槍大会では、事前に申請した魔法を三つまで使用できます。
ちなみに相手に危険が生じる可能性のある魔法は禁止ですので、事前申請を行っているそうです。
ちなみに槍はぶつかれば砕けるように脆い槍ですので、刺さって死ぬなどと言うことにはなりませんが、馬の上からの転落で怪我なども十分考慮する必要がありますね。
この世界では回復魔法が専門的な分野で発展させている魔術師も多く、致命傷でなければ、あまり心配する必要がないんですけどね。
「それで今回の勝負は何を賭けるのですか?」
「え? そんなものいりませんけど?」
「ではなぜ?」
「えっと…………最近、クリスティーンが…………その、元気がなさそうで…………貴女、暴れ回るの好きでしょう?」
何でしょう。カトリーヌさんがすっごく可愛い雰囲気で、私のことを貶してくる。そうだ、話ついでにカトリーヌさんには聞いてみたいことがありました。
それはとても重要な話。
「カトリーヌさん、二人で話がしたいの」
「この護衛体制で?」
「…………そうね、ちょっと騎士様とは相談してくるわ」
私はできるだけデリケートな話と説明し、騎士たちが会話の聞こえない距離で待機してもらうことを前提に学園内のバラ園が見えるテラス席で、カトリーヌさんと二人きりになりました。
正確にはお茶を淹れてくれるスザンヌもご一緒ですけど。
「それで? お話って何よ?」
「期待しているとこ悪いけど、あまり友達らしい会話じゃないわよ?」
「きっ!? 期待してませんし!? それで何?」
あ、急に冷たくなった。まあ、いいか。
「その瞳、一体何が見えるの?」
「…………それのことね。貴女の母親が語ってくれないのでしたら、それが答えだと思うわ。でもそうね、友達だから仕方なく教えてあげる。馬上槍大会で私より良い成績を収めたらね!!」
賭け始まっちゃったじゃない。勝負師なの?
「それで貴女が勝てば私は何をすればいいの?」
「…………えっと…………私は貴女に勝てればそれでいいわよ」
今度、輪投げにでも誘ってわざと負けようかな。彼女の精神年齢的に輪投げでいいでしょ。…………いえ、絶対怒るからやめておきましょうか。
もしかしたら、彼女なら私の味方に…………いえ、彼女もきっとあのエピローグでは負けた魔術師の一人なのでしょうね。
死なせたくない人が増えるって困りものね。それは他のみんなも同じ。
やっぱりワンダーオーブはすべて私の手元に集める。アリゼと一騎打ちをするのは私でいい。
「カトリーヌさん、約束忘れないでよね?」
「え? ええ。構わないわよ」
馬上槍大会。誇りを懸けてぶつかり合うのなら、他のみんなにも賭けを吹っ掛けてやろうじゃない。その上で私が優勝する。
カトリーヌさん、貴女本当に良い発想をする友達だわ。
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