BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

文字の大きさ
144 / 228

140話 女神再び

しおりを挟む
 馬上槍大会の表彰式後。私はいつものメンバーを旧校舎の書庫に呼びました。

 護衛の騎士達は旧校舎前で待機して頂き、暗い道はジャンヌさんの波動魔法、照明ライトで照らします。

 暗い廊下を十人で歩き進んだ。

「ここに来たのはリビオ以外は初ね」

 私がそういうと、アレクシスとミゲルとビルジニの三人がリビオを睨みます。

 ついでにカトリーヌさんが私を睨みます。

「あら? クリスティーンじゃない」

「え?」

 書庫には当然のように漂っている女神エレーヌの姿。そんな普通に具現化しているものなの?

 金髪にツインテール。オリュンポスの神々が着ていそうな簡素なワンピースに金の装飾。
黄金の瞳の女神エレーヌ。

「幽霊!?」

 カトリーヌさんだけが異様に驚きます。

 他の皆様は【黄】のワンダーオーブを授かる時に立ち会ったみたいで、あまり驚いていない様子。

 同じく初見のオリバーは、興味深そうにエレーヌを眺めていました。

「幽霊? まあ、神霊に該当しますし、実際に死んでいますが、マルグリートそっくりの娘に言われると、化け物に言われたくないとつい言い返しそうになりますね」

 エレーヌが宙に漂いながらカトリーヌさんを頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見つめた。

 マルグリート。七英雄でのちに指導者になった女性。

 彼女とカトリーヌさんが似ている。もし、遺伝だというなら、やはりこの世界の歴史と禁書に記された内容は同じはず。

「丁度いいわエレーヌ。【白】のワン「そこまでだ!!」

 私がエレーヌに、【白】のワンダーオーブについて尋ねようとしたタイミングで、黒い靄が人の形を象った。

「ブランク? 何よ」

 私がブランクに文句を言おうとした瞬間でした。

 エレーヌが地に足をつけ降り立った。

「二千年ぶりですね」

「まあ、俺はそこまで生きていないが、そうなるんだろうな」

「今は彼女と会話していたのですが?」

「連れないことを言うなよ伯母さん」

「あー、特例で弟のままでいいですよ。伯母さんは嫌です」

 何? どういうこと? エレーヌとブランクは血縁で、二千年ぶりなの?

 女神と血縁ってことはブランクも神様とか?

 目の前で繰り広げられる異次元の会話を前にして、私達はただただ茫然としていることしかできませんでした。

「ちょっとブランク! 貴方引っ込んでなさいよ!」

「俺とお前はもう協力者ではない。そしてジャンヌ。お前もだ。せっかく力を授けてやったというのに、あっさり姫に負けちまって」

「ジャンヌさんは強くなったわ。貴方のおかげでね。それより、だったらもう一度協力者になれないかしら? 貴方にはワンダーオーブで取り返したいものがあるのでしょう?」

 私がそう問いかけると、エレーヌが私とブランクの間に割って入りました。

「大問題よこんなバカに協力するなんて絶対ダメ。どうせ、■■■■に帰りたがってるだけだわ」

 今、エレーヌが言った言葉。

 教養のあるアレクシスやカトリーヌさんでもわからない単語。博識なリビオのわからない単語。他国に住むオリバーもわからない単語。

 そして私のわかる単語。彼女は間違いなくあの言葉を口に出した。

「目的はそっちじゃない。ワンダーオーブを使ってあるものを終わらせることが目的だ」

「良いでしょう。女神になった私が干渉するにも限界があります。貴方の行動が善でも悪でも、私、いえ私達は見て見ぬふりをします。気分を害しました。数か月は眠らせて頂きます」

 そう言ったエレーヌは、緑色の靄になって消えてしまった。

 振り向くとブランクも完全に黒い靄になって消えてしまいました。

「ひっかきまわすだけ引っ掻き回してくれましたわね」

 私がそう呟くと、一同は黙ったまま頷きました。

「それよりもワンダーオーブの譲渡よ」

「そうでしたね」

 ここに来た目的は二つ。安全にワンダーオーブを受け渡すこと。それから、皆様には私が使える魔法のこと。

 乙女ゲームの説明を省いて、私が知っていることをお話しました。

「つまり、残るワンダーオーブである【橙】【青】【紫】の入手方法は把握されているのですね」

「ええそうよ。それからもう一つ知りたいことがあったわ。ジャンヌさん達にワンダーオーブのことや最悪の魔女のお話をした人は誰かしら?」

 私の問いに誰一人として答えない。誰も答えを持ち合わせていないのか。

 それとも故意に黙っているのか。おそらく前者でしょう。

「ブランクってことはないわよね?」

「違います。私達、実は全員で同じ夢を見てですね。そこにブランクさんもいらっしゃいました」

 全員で同じ夢を見た?

 どうやらジャンヌさん、ミゲル、アレクシス、ビルジニ、リビオ、ジョアサン、オリバー、ブランクの八人は、一緒に同じ夢を見て、互いに記憶を共有していたようです。

 その上で、オリバー以外の全員が結託した。つまり、その夢を見せた犯人こそが、乙女ゲームの展開を知っている人物と言うことになります。

 ブランクはさきほどのエレーヌとの会話を聞いている限り、限りなく味方に近い存在のはず。

 おそらく、彼はワンダーオーブさえ集められれば、私である必要がなかったこと。

 後に、協力させる予定だったアレクシスとミゲルがジャンヌさん側についたから、あっさりアイツも裏切ったのでしょうね。

 でもひとまず、夢を見せられる人物ね。幻惑魔法かしら。

 私の頭の中では、いくつかの仮説が思い上がっては消えていきました。

 どれも正しいようで、どこか間違っている。ピースはあるのに、ぴったりはまるパズルがないみたいでした。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

処理中です...