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140話 女神再び
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馬上槍大会の表彰式後。私はいつものメンバーを旧校舎の書庫に呼びました。
護衛の騎士達は旧校舎前で待機して頂き、暗い道はジャンヌさんの波動魔法、照明で照らします。
暗い廊下を十人で歩き進んだ。
「ここに来たのはリビオ以外は初ね」
私がそういうと、アレクシスとミゲルとビルジニの三人がリビオを睨みます。
ついでにカトリーヌさんが私を睨みます。
「あら? クリスティーンじゃない」
「え?」
書庫には当然のように漂っている女神エレーヌの姿。そんな普通に具現化しているものなの?
金髪にツインテール。オリュンポスの神々が着ていそうな簡素なワンピースに金の装飾。
黄金の瞳の女神エレーヌ。
「幽霊!?」
カトリーヌさんだけが異様に驚きます。
他の皆様は【黄】のワンダーオーブを授かる時に立ち会ったみたいで、あまり驚いていない様子。
同じく初見のオリバーは、興味深そうにエレーヌを眺めていました。
「幽霊? まあ、神霊に該当しますし、実際に死んでいますが、マルグリートそっくりの娘に言われると、化け物に言われたくないとつい言い返しそうになりますね」
エレーヌが宙に漂いながらカトリーヌさんを頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見つめた。
マルグリート。七英雄でのちに指導者になった女性。
彼女とカトリーヌさんが似ている。もし、遺伝だというなら、やはりこの世界の歴史と禁書に記された内容は同じはず。
「丁度いいわエレーヌ。【白】のワン「そこまでだ!!」
私がエレーヌに、【白】のワンダーオーブについて尋ねようとしたタイミングで、黒い靄が人の形を象った。
「ブランク? 何よ」
私がブランクに文句を言おうとした瞬間でした。
エレーヌが地に足をつけ降り立った。
「二千年ぶりですね」
「まあ、俺はそこまで生きていないが、そうなるんだろうな」
「今は彼女と会話していたのですが?」
「連れないことを言うなよ伯母さん」
「あー、特例で弟のままでいいですよ。伯母さんは嫌です」
何? どういうこと? エレーヌとブランクは血縁で、二千年ぶりなの?
女神と血縁ってことはブランクも神様とか?
目の前で繰り広げられる異次元の会話を前にして、私達はただただ茫然としていることしかできませんでした。
「ちょっとブランク! 貴方引っ込んでなさいよ!」
「俺とお前はもう協力者ではない。そしてジャンヌ。お前もだ。せっかく力を授けてやったというのに、あっさり姫に負けちまって」
「ジャンヌさんは強くなったわ。貴方のおかげでね。それより、だったらもう一度協力者になれないかしら? 貴方にはワンダーオーブで取り返したいものがあるのでしょう?」
私がそう問いかけると、エレーヌが私とブランクの間に割って入りました。
「大問題よこんなバカに協力するなんて絶対ダメ。どうせ、■■■■に帰りたがってるだけだわ」
今、エレーヌが言った言葉。
教養のあるアレクシスやカトリーヌさんでもわからない単語。博識なリビオのわからない単語。他国に住むオリバーもわからない単語。
そして私のわかる単語。彼女は間違いなくあの言葉を口に出した。
「目的はそっちじゃない。ワンダーオーブを使ってあるものを終わらせることが目的だ」
「良いでしょう。女神になった私が干渉するにも限界があります。貴方の行動が善でも悪でも、私、いえ私達は見て見ぬふりをします。気分を害しました。数か月は眠らせて頂きます」
そう言ったエレーヌは、緑色の靄になって消えてしまった。
振り向くとブランクも完全に黒い靄になって消えてしまいました。
「ひっかきまわすだけ引っ掻き回してくれましたわね」
私がそう呟くと、一同は黙ったまま頷きました。
「それよりもワンダーオーブの譲渡よ」
「そうでしたね」
ここに来た目的は二つ。安全にワンダーオーブを受け渡すこと。それから、皆様には私が使える魔法のこと。
乙女ゲームの説明を省いて、私が知っていることをお話しました。
「つまり、残るワンダーオーブである【橙】【青】【紫】の入手方法は把握されているのですね」
「ええそうよ。それからもう一つ知りたいことがあったわ。ジャンヌさん達にワンダーオーブのことや最悪の魔女のお話をした人は誰かしら?」
私の問いに誰一人として答えない。誰も答えを持ち合わせていないのか。
それとも故意に黙っているのか。おそらく前者でしょう。
「ブランクってことはないわよね?」
「違います。私達、実は全員で同じ夢を見てですね。そこにブランクさんもいらっしゃいました」
全員で同じ夢を見た?
どうやらジャンヌさん、ミゲル、アレクシス、ビルジニ、リビオ、ジョアサン、オリバー、ブランクの八人は、一緒に同じ夢を見て、互いに記憶を共有していたようです。
その上で、オリバー以外の全員が結託した。つまり、その夢を見せた犯人こそが、乙女ゲームの展開を知っている人物と言うことになります。
ブランクはさきほどのエレーヌとの会話を聞いている限り、限りなく味方に近い存在のはず。
おそらく、彼はワンダーオーブさえ集められれば、私である必要がなかったこと。
後に、協力させる予定だったアレクシスとミゲルがジャンヌさん側についたから、あっさりアイツも裏切ったのでしょうね。
でもひとまず、夢を見せられる人物ね。幻惑魔法かしら。
私の頭の中では、いくつかの仮説が思い上がっては消えていきました。
どれも正しいようで、どこか間違っている。ピースはあるのに、ぴったりはまるパズルがないみたいでした。
護衛の騎士達は旧校舎前で待機して頂き、暗い道はジャンヌさんの波動魔法、照明で照らします。
暗い廊下を十人で歩き進んだ。
「ここに来たのはリビオ以外は初ね」
私がそういうと、アレクシスとミゲルとビルジニの三人がリビオを睨みます。
ついでにカトリーヌさんが私を睨みます。
「あら? クリスティーンじゃない」
「え?」
書庫には当然のように漂っている女神エレーヌの姿。そんな普通に具現化しているものなの?
金髪にツインテール。オリュンポスの神々が着ていそうな簡素なワンピースに金の装飾。
黄金の瞳の女神エレーヌ。
「幽霊!?」
カトリーヌさんだけが異様に驚きます。
他の皆様は【黄】のワンダーオーブを授かる時に立ち会ったみたいで、あまり驚いていない様子。
同じく初見のオリバーは、興味深そうにエレーヌを眺めていました。
「幽霊? まあ、神霊に該当しますし、実際に死んでいますが、マルグリートそっくりの娘に言われると、化け物に言われたくないとつい言い返しそうになりますね」
エレーヌが宙に漂いながらカトリーヌさんを頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見つめた。
マルグリート。七英雄でのちに指導者になった女性。
彼女とカトリーヌさんが似ている。もし、遺伝だというなら、やはりこの世界の歴史と禁書に記された内容は同じはず。
「丁度いいわエレーヌ。【白】のワン「そこまでだ!!」
私がエレーヌに、【白】のワンダーオーブについて尋ねようとしたタイミングで、黒い靄が人の形を象った。
「ブランク? 何よ」
私がブランクに文句を言おうとした瞬間でした。
エレーヌが地に足をつけ降り立った。
「二千年ぶりですね」
「まあ、俺はそこまで生きていないが、そうなるんだろうな」
「今は彼女と会話していたのですが?」
「連れないことを言うなよ伯母さん」
「あー、特例で弟のままでいいですよ。伯母さんは嫌です」
何? どういうこと? エレーヌとブランクは血縁で、二千年ぶりなの?
女神と血縁ってことはブランクも神様とか?
目の前で繰り広げられる異次元の会話を前にして、私達はただただ茫然としていることしかできませんでした。
「ちょっとブランク! 貴方引っ込んでなさいよ!」
「俺とお前はもう協力者ではない。そしてジャンヌ。お前もだ。せっかく力を授けてやったというのに、あっさり姫に負けちまって」
「ジャンヌさんは強くなったわ。貴方のおかげでね。それより、だったらもう一度協力者になれないかしら? 貴方にはワンダーオーブで取り返したいものがあるのでしょう?」
私がそう問いかけると、エレーヌが私とブランクの間に割って入りました。
「大問題よこんなバカに協力するなんて絶対ダメ。どうせ、■■■■に帰りたがってるだけだわ」
今、エレーヌが言った言葉。
教養のあるアレクシスやカトリーヌさんでもわからない単語。博識なリビオのわからない単語。他国に住むオリバーもわからない単語。
そして私のわかる単語。彼女は間違いなくあの言葉を口に出した。
「目的はそっちじゃない。ワンダーオーブを使ってあるものを終わらせることが目的だ」
「良いでしょう。女神になった私が干渉するにも限界があります。貴方の行動が善でも悪でも、私、いえ私達は見て見ぬふりをします。気分を害しました。数か月は眠らせて頂きます」
そう言ったエレーヌは、緑色の靄になって消えてしまった。
振り向くとブランクも完全に黒い靄になって消えてしまいました。
「ひっかきまわすだけ引っ掻き回してくれましたわね」
私がそう呟くと、一同は黙ったまま頷きました。
「それよりもワンダーオーブの譲渡よ」
「そうでしたね」
ここに来た目的は二つ。安全にワンダーオーブを受け渡すこと。それから、皆様には私が使える魔法のこと。
乙女ゲームの説明を省いて、私が知っていることをお話しました。
「つまり、残るワンダーオーブである【橙】【青】【紫】の入手方法は把握されているのですね」
「ええそうよ。それからもう一つ知りたいことがあったわ。ジャンヌさん達にワンダーオーブのことや最悪の魔女のお話をした人は誰かしら?」
私の問いに誰一人として答えない。誰も答えを持ち合わせていないのか。
それとも故意に黙っているのか。おそらく前者でしょう。
「ブランクってことはないわよね?」
「違います。私達、実は全員で同じ夢を見てですね。そこにブランクさんもいらっしゃいました」
全員で同じ夢を見た?
どうやらジャンヌさん、ミゲル、アレクシス、ビルジニ、リビオ、ジョアサン、オリバー、ブランクの八人は、一緒に同じ夢を見て、互いに記憶を共有していたようです。
その上で、オリバー以外の全員が結託した。つまり、その夢を見せた犯人こそが、乙女ゲームの展開を知っている人物と言うことになります。
ブランクはさきほどのエレーヌとの会話を聞いている限り、限りなく味方に近い存在のはず。
おそらく、彼はワンダーオーブさえ集められれば、私である必要がなかったこと。
後に、協力させる予定だったアレクシスとミゲルがジャンヌさん側についたから、あっさりアイツも裏切ったのでしょうね。
でもひとまず、夢を見せられる人物ね。幻惑魔法かしら。
私の頭の中では、いくつかの仮説が思い上がっては消えていきました。
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