BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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139話 リバース

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 三本目が始まり、ミゲルの槍が私の頭部にあっさりヒットしてしまい、五対六。

 まだ魔法を使う時ではない。

 なぜなら、ミゲルは三本目に至る今の今まで、魔法を行使していないのですから。

 使えば負ける。何の手の打ちようもなく負けてしまう。今の試合、互いに魔法を使わない場合の結果がこれだ。

 次に五点取れたとしても、三点取れたとしても、魔法がなくなった私では、ミゲルはあっさりと五点を取ってしまいます。

 四本目。魔法を使わないで彼を騙しつつ、頭部だけは護らなきゃね。

 現在の点差は一。ここでミゲルが私の頭部にあて、五点を取ってしまった場合、点差は六となり、五本目をやるまでもなく、ミゲルの優勝が決定してしまいます。

 胴までなら許せる。絶対に頭部に攻撃をあてさせない。

「クリスティーン姫?」

「何よ」

「諦めてください。もう貴女に勝ち筋はありません」

「どういうこと?」

「残り二本。俺は全身を守護魔法で固めます。貴女の槍が俺に届くことはない」

「私の最後の魔法を舐めないで頂戴」

「時空魔法、逆再生リバース。あれでどうすると?」

「時期にわかるわ」

 ミゲルが私を護りたいのはわかる。王族を護ってこその騎士。

 そういうプライドみたいなものでしょう。

 国民を護ってこその王族であり、稀代の魔術師に名を連ねることになったからこそ、私が後ろに下がる理由はもうない。

 四本目の開始の合図。

 ここで最後の魔法を使うか。ミゲルは見計らうかしら。それとも、自身の絶対防御を信じるのかしら。

「守護魔法、炎壁ファイヤーウォール

「炎の壁!?」

 守護魔法は魔力を結界などにする魔法で、様々な結界を作り上げることができるとしても、炎属性の魔法?

 いえ、これは魔力が炎の形をしているだけの疑似炎。熱量のあるエネルギーでもありますし、近くに来ただけで熱いのはわかる。

 燃えてこそいないですが、手に持った槍の発火温度を超えれば、槍自体は本当に燃え上がってしまう。

 ちょっとこれ危険な魔法に指定されていないのですか?

 焦ったわ。いきなり炎属性の魔法。

 この世界。魔法で純粋な炎を生み出すには自然現象を利用するか、付与魔法で放たれた魔法に炎属性を付与するしかありません。

 私とミゲルの間には燃え盛る炎の壁が存在し、互いに槍を伸ばすことのないまま四本目が終わりました。

 これで五対六。点差をつけられなかっただけ良しとしましょう。

 決勝戦。四本目にして、初めて魔法を行使したミゲル。会場からの歓声も凄まじい。

 多くの者が姫である私が勝ち進むことに、接待なのではと感じていたでしょう。

 ここにきてやはりそんなことはないと思って頂け他でしょうか。

 決勝戦。五本目。泣いても笑ってもこれが最後。

「行くわよミゲル!!!」

「はい!!!」

 感極まったことにより、叫んでしまった私に、ミゲルは同じくらいの声量で叫び返す。

 ハッとなってエリザベートの方に視線を向けると、はしたないといいたそうな目で私を見ていました。ごめんなさい。

 開始の合図。それと同時にミゲルが二つ目の魔法を行使します。

「守護魔法、バブル

 バブルは球体状の結界で対象を保護する守護魔法。

 これで私の槍は、ミゲルに触れることも許されない。

「終わらせましょう。時空魔法、逆再生リバース

「何をしようとも!! 守護魔ほっ!?」

 ミゲルの馬の足場から突如生えた木々。それは私の周囲にも同様に生え始めます。

 会場の一部が突然、舗装もされていない大地になり、木々や茂み。石ころまで転がっています。

 そう、会場は突如、野山の一部になったのです。いいえ、正確には戻ったのです。

 大地が舗装される前。木々が切り倒される前。ここは森だった。

 ミゲルもミゲルを乗せた馬も、私を乗せた馬も混乱してしまいます。

 その中で唯一混乱することない私が、ミゲルの魔法を貫くように槍を伸ばします。

 精神が安定していない今なら! 魔法を砕ける!!

「いぃぃけぇええええええ!!!!」

 ミゲルが私の攻撃に気付きますが、今更体制を立て直してももう遅い。

 バブルは全方位を護る結界の為か、少々柔らかい。

 それでもミゲルのは別格でこちらの槍が砕けてしまうのではないかと思うほどでした。

 魔法による武器破壊はノーカウント。点数加算されません。

 バブル崩壊と同時に、ミゲルがカウンターで槍を伸ばした。

「ミゲル! 三点!!」

 会場にアンヌ先生の声が響き渡ります。ミゲルの槍は見事、私の腹部にあたっていたのです。

 ミゲルが三点を取得し、点数が九になりました。

「同時に! クリスティーン五点!」 

 しかし、私の槍もミゲルのヘルメットにあたっていました。

「長い闘い! 馬上槍大会決勝戦で勝利を掴んだのは!! クリスティーン・ディ・フォレスティエ選手!!!!」

「姫様ー!」「キャー!」「おめでとーございます!」「素晴らしすぎるっ!」「最高!」「すごかったぞー!」

 ヘルメットを脱いだ私は、観戦席に向かって手を振っておきました。特にエリザベートのいる方角。

 エリザベートは小さく、胸元の高さまで手を上げ、左右に小さくゆっくりと手を振って数秒後には真っ赤になり観戦席から消えてしまいました。

「可愛いなぁ」

「何がですか?」

「ミゲル? 何でもないわこっちの話。それより、ごめんなさいね。私、戦うわ」

「貴女に傷ついて欲しくないことは今も変わりません。しかし、貴女をここまで強くした想いを否定する訳にはいきませんね」

 これで、彼女たちの持っているすべてのワンダーオーブは私への譲渡が決定しました。

 それから【橙】、【青】も協力して貰えますね。

 ワンダーオーブは四つ。今の私でいずれ訪れるアリゼ相手にどこまでやれるのかしら。
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