143 / 228
139話 リバース
しおりを挟む
三本目が始まり、ミゲルの槍が私の頭部にあっさりヒットしてしまい、五対六。
まだ魔法を使う時ではない。
なぜなら、ミゲルは三本目に至る今の今まで、魔法を行使していないのですから。
使えば負ける。何の手の打ちようもなく負けてしまう。今の試合、互いに魔法を使わない場合の結果がこれだ。
次に五点取れたとしても、三点取れたとしても、魔法がなくなった私では、ミゲルはあっさりと五点を取ってしまいます。
四本目。魔法を使わないで彼を騙しつつ、頭部だけは護らなきゃね。
現在の点差は一。ここでミゲルが私の頭部にあて、五点を取ってしまった場合、点差は六となり、五本目をやるまでもなく、ミゲルの優勝が決定してしまいます。
胴までなら許せる。絶対に頭部に攻撃をあてさせない。
「クリスティーン姫?」
「何よ」
「諦めてください。もう貴女に勝ち筋はありません」
「どういうこと?」
「残り二本。俺は全身を守護魔法で固めます。貴女の槍が俺に届くことはない」
「私の最後の魔法を舐めないで頂戴」
「時空魔法、逆再生。あれでどうすると?」
「時期にわかるわ」
ミゲルが私を護りたいのはわかる。王族を護ってこその騎士。
そういうプライドみたいなものでしょう。
国民を護ってこその王族であり、稀代の魔術師に名を連ねることになったからこそ、私が後ろに下がる理由はもうない。
四本目の開始の合図。
ここで最後の魔法を使うか。ミゲルは見計らうかしら。それとも、自身の絶対防御を信じるのかしら。
「守護魔法、炎壁」
「炎の壁!?」
守護魔法は魔力を結界などにする魔法で、様々な結界を作り上げることができるとしても、炎属性の魔法?
いえ、これは魔力が炎の形をしているだけの疑似炎。熱量のあるエネルギーでもありますし、近くに来ただけで熱いのはわかる。
燃えてこそいないですが、手に持った槍の発火温度を超えれば、槍自体は本当に燃え上がってしまう。
ちょっとこれ危険な魔法に指定されていないのですか?
焦ったわ。いきなり炎属性の魔法。
この世界。魔法で純粋な炎を生み出すには自然現象を利用するか、付与魔法で放たれた魔法に炎属性を付与するしかありません。
私とミゲルの間には燃え盛る炎の壁が存在し、互いに槍を伸ばすことのないまま四本目が終わりました。
これで五対六。点差をつけられなかっただけ良しとしましょう。
決勝戦。四本目にして、初めて魔法を行使したミゲル。会場からの歓声も凄まじい。
多くの者が姫である私が勝ち進むことに、接待なのではと感じていたでしょう。
ここにきてやはりそんなことはないと思って頂け他でしょうか。
決勝戦。五本目。泣いても笑ってもこれが最後。
「行くわよミゲル!!!」
「はい!!!」
感極まったことにより、叫んでしまった私に、ミゲルは同じくらいの声量で叫び返す。
ハッとなってエリザベートの方に視線を向けると、はしたないといいたそうな目で私を見ていました。ごめんなさい。
開始の合図。それと同時にミゲルが二つ目の魔法を行使します。
「守護魔法、泡」
泡は球体状の結界で対象を保護する守護魔法。
これで私の槍は、ミゲルに触れることも許されない。
「終わらせましょう。時空魔法、逆再生」
「何をしようとも!! 守護魔ほっ!?」
ミゲルの馬の足場から突如生えた木々。それは私の周囲にも同様に生え始めます。
会場の一部が突然、舗装もされていない大地になり、木々や茂み。石ころまで転がっています。
そう、会場は突如、野山の一部になったのです。いいえ、正確には戻ったのです。
大地が舗装される前。木々が切り倒される前。ここは森だった。
ミゲルもミゲルを乗せた馬も、私を乗せた馬も混乱してしまいます。
その中で唯一混乱することない私が、ミゲルの魔法を貫くように槍を伸ばします。
精神が安定していない今なら! 魔法を砕ける!!
「いぃぃけぇええええええ!!!!」
ミゲルが私の攻撃に気付きますが、今更体制を立て直してももう遅い。
泡は全方位を護る結界の為か、少々柔らかい。
それでもミゲルのは別格でこちらの槍が砕けてしまうのではないかと思うほどでした。
魔法による武器破壊はノーカウント。点数加算されません。
泡崩壊と同時に、ミゲルがカウンターで槍を伸ばした。
「ミゲル! 三点!!」
会場にアンヌ先生の声が響き渡ります。ミゲルの槍は見事、私の腹部にあたっていたのです。
ミゲルが三点を取得し、点数が九になりました。
「同時に! クリスティーン五点!」
しかし、私の槍もミゲルのヘルメットにあたっていました。
「長い闘い! 馬上槍大会決勝戦で勝利を掴んだのは!! クリスティーン・ディ・フォレスティエ選手!!!!」
「姫様ー!」「キャー!」「おめでとーございます!」「素晴らしすぎるっ!」「最高!」「すごかったぞー!」
ヘルメットを脱いだ私は、観戦席に向かって手を振っておきました。特にエリザベートのいる方角。
エリザベートは小さく、胸元の高さまで手を上げ、左右に小さくゆっくりと手を振って数秒後には真っ赤になり観戦席から消えてしまいました。
「可愛いなぁ」
「何がですか?」
「ミゲル? 何でもないわこっちの話。それより、ごめんなさいね。私、戦うわ」
「貴女に傷ついて欲しくないことは今も変わりません。しかし、貴女をここまで強くした想いを否定する訳にはいきませんね」
これで、彼女たちの持っているすべてのワンダーオーブは私への譲渡が決定しました。
それから【橙】、【青】も協力して貰えますね。
ワンダーオーブは四つ。今の私でいずれ訪れるアリゼ相手にどこまでやれるのかしら。
まだ魔法を使う時ではない。
なぜなら、ミゲルは三本目に至る今の今まで、魔法を行使していないのですから。
使えば負ける。何の手の打ちようもなく負けてしまう。今の試合、互いに魔法を使わない場合の結果がこれだ。
次に五点取れたとしても、三点取れたとしても、魔法がなくなった私では、ミゲルはあっさりと五点を取ってしまいます。
四本目。魔法を使わないで彼を騙しつつ、頭部だけは護らなきゃね。
現在の点差は一。ここでミゲルが私の頭部にあて、五点を取ってしまった場合、点差は六となり、五本目をやるまでもなく、ミゲルの優勝が決定してしまいます。
胴までなら許せる。絶対に頭部に攻撃をあてさせない。
「クリスティーン姫?」
「何よ」
「諦めてください。もう貴女に勝ち筋はありません」
「どういうこと?」
「残り二本。俺は全身を守護魔法で固めます。貴女の槍が俺に届くことはない」
「私の最後の魔法を舐めないで頂戴」
「時空魔法、逆再生。あれでどうすると?」
「時期にわかるわ」
ミゲルが私を護りたいのはわかる。王族を護ってこその騎士。
そういうプライドみたいなものでしょう。
国民を護ってこその王族であり、稀代の魔術師に名を連ねることになったからこそ、私が後ろに下がる理由はもうない。
四本目の開始の合図。
ここで最後の魔法を使うか。ミゲルは見計らうかしら。それとも、自身の絶対防御を信じるのかしら。
「守護魔法、炎壁」
「炎の壁!?」
守護魔法は魔力を結界などにする魔法で、様々な結界を作り上げることができるとしても、炎属性の魔法?
いえ、これは魔力が炎の形をしているだけの疑似炎。熱量のあるエネルギーでもありますし、近くに来ただけで熱いのはわかる。
燃えてこそいないですが、手に持った槍の発火温度を超えれば、槍自体は本当に燃え上がってしまう。
ちょっとこれ危険な魔法に指定されていないのですか?
焦ったわ。いきなり炎属性の魔法。
この世界。魔法で純粋な炎を生み出すには自然現象を利用するか、付与魔法で放たれた魔法に炎属性を付与するしかありません。
私とミゲルの間には燃え盛る炎の壁が存在し、互いに槍を伸ばすことのないまま四本目が終わりました。
これで五対六。点差をつけられなかっただけ良しとしましょう。
決勝戦。四本目にして、初めて魔法を行使したミゲル。会場からの歓声も凄まじい。
多くの者が姫である私が勝ち進むことに、接待なのではと感じていたでしょう。
ここにきてやはりそんなことはないと思って頂け他でしょうか。
決勝戦。五本目。泣いても笑ってもこれが最後。
「行くわよミゲル!!!」
「はい!!!」
感極まったことにより、叫んでしまった私に、ミゲルは同じくらいの声量で叫び返す。
ハッとなってエリザベートの方に視線を向けると、はしたないといいたそうな目で私を見ていました。ごめんなさい。
開始の合図。それと同時にミゲルが二つ目の魔法を行使します。
「守護魔法、泡」
泡は球体状の結界で対象を保護する守護魔法。
これで私の槍は、ミゲルに触れることも許されない。
「終わらせましょう。時空魔法、逆再生」
「何をしようとも!! 守護魔ほっ!?」
ミゲルの馬の足場から突如生えた木々。それは私の周囲にも同様に生え始めます。
会場の一部が突然、舗装もされていない大地になり、木々や茂み。石ころまで転がっています。
そう、会場は突如、野山の一部になったのです。いいえ、正確には戻ったのです。
大地が舗装される前。木々が切り倒される前。ここは森だった。
ミゲルもミゲルを乗せた馬も、私を乗せた馬も混乱してしまいます。
その中で唯一混乱することない私が、ミゲルの魔法を貫くように槍を伸ばします。
精神が安定していない今なら! 魔法を砕ける!!
「いぃぃけぇええええええ!!!!」
ミゲルが私の攻撃に気付きますが、今更体制を立て直してももう遅い。
泡は全方位を護る結界の為か、少々柔らかい。
それでもミゲルのは別格でこちらの槍が砕けてしまうのではないかと思うほどでした。
魔法による武器破壊はノーカウント。点数加算されません。
泡崩壊と同時に、ミゲルがカウンターで槍を伸ばした。
「ミゲル! 三点!!」
会場にアンヌ先生の声が響き渡ります。ミゲルの槍は見事、私の腹部にあたっていたのです。
ミゲルが三点を取得し、点数が九になりました。
「同時に! クリスティーン五点!」
しかし、私の槍もミゲルのヘルメットにあたっていました。
「長い闘い! 馬上槍大会決勝戦で勝利を掴んだのは!! クリスティーン・ディ・フォレスティエ選手!!!!」
「姫様ー!」「キャー!」「おめでとーございます!」「素晴らしすぎるっ!」「最高!」「すごかったぞー!」
ヘルメットを脱いだ私は、観戦席に向かって手を振っておきました。特にエリザベートのいる方角。
エリザベートは小さく、胸元の高さまで手を上げ、左右に小さくゆっくりと手を振って数秒後には真っ赤になり観戦席から消えてしまいました。
「可愛いなぁ」
「何がですか?」
「ミゲル? 何でもないわこっちの話。それより、ごめんなさいね。私、戦うわ」
「貴女に傷ついて欲しくないことは今も変わりません。しかし、貴女をここまで強くした想いを否定する訳にはいきませんね」
これで、彼女たちの持っているすべてのワンダーオーブは私への譲渡が決定しました。
それから【橙】、【青】も協力して貰えますね。
ワンダーオーブは四つ。今の私でいずれ訪れるアリゼ相手にどこまでやれるのかしら。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる