BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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145話 瞳の色

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 ジェラールの為に購入したコーラルを見つめて、私は次の行動を考える。

 ベッドでけだるげに横になりながら、寝返りを何度も内、うつ伏せになった。

 もうミゲルもアレクシスも協力的ですし、早めにワンダーオーブを手に入れましょう。

「ブランク?」

「呼べばいるみたいな扱いだな」

 うつ伏せのまま、顔を上げずにいても、なんとなく彼がいつものように黒い靄から現れたことがわかる。

「いるじゃない。貴方って忍者みたいね」

「…………それで?」

 引っかからなかったか。彼は時々、地球の…………前世の言葉に反応する。

 むしろ今、忍者とは何かというリアクションをしなかったことを気にするべきか。

「もし、全てのワンダーオーブを手に入れても、そのすべてが貴方の求めるワンダーオーブでなかったら、貴方はどうするの?」

 私の問いに対し、ブランクは少々考えこみます。

「そうだな、別の方法を探す。それが俺に与えられた罪なら、俺が十字架を背負うべきだからだ」

「罪? そんな話していたかしら?」

「今初めて言ったんだ。知らなくて当然だ」

「教えてくれるの?」

 私は寝返りをうって上体を起こし、ブランクの声の方に体を向ける。

「迷惑をかけたからな。一つだけなら教えてやる」

「顔見せて!」

「なんか違くないか?」

「あ、ごめん。一番の好奇心が」

 未だにブランクの顔がわからない。もう顔のわからない怪しい男なら全員ブランクに見えるほどだ。

 そういえばアレクシスは、街中でブランクを簡単に見つけましたね。

 彼の眼は深紅よりの色だから、もしかしたら多少は見えたりするのでしょうか。

「でも顔は見たいわ! だって私は私生活をいつみられているのかわからないのよ? 不平等よ! はい!」

「はいって言われてもな」

 そうよ、こいつは私では視認できないから、いつみられているかわからない。だったら私がこいつの顔を見る権利くらい…………あるわよね?

「…………まあ、いいか」

「いいの?」

「見たかったんだろ?」

「うん。でもずっと隠していたし」

「これに理由はない。しいて言うなら、この肉体を象った時から、俺はこの格好をしていた」

「ふーん。そもそも貴方ってどういう存在なのよ」

 私の何気ない問いに対し、ブランクは少しだけ迷ったそぶりをしてから答えた。

「ある世界で俺は死んだ。そこから転生の神に出会ったことで、俺は世界の真実を知ったんだ」

「…………続けて」

 ブランクも転生者?

「俺はしばらく神の代行をしていた。といっても、悪さしかしなかった。その報いを受け、二千年前に神自身の手で殺されたんだ。だが、神は俺を殺した訳じゃなかった。生き返らせたんだ。この世界にな」

「それが女神エレーヌを姉と呼んだことや、伯母と呼んだことにどうつながるのかしら」

「最初の神代行としての転生では、エレーヌと同じ神から転生して貰ってな。今回の転生は別の神。しいて言うなら、俺の妹にあたる転生者からの転生なんだ。だから過去の兄弟は皆伯父伯母ってわけ」

 神の世界では、転生させた者を親とし、妹から転生を受けた結果、七英雄が伯父伯母になるってわけね。

 それってつまり、私の転生の親も存在するってことよね。

 転生の神の存在は禁書にも綴られていました。

 だから今更驚きはしませんが、もし私の転生に意味があるなら、それを知っているのは間違いなく転生の神だ。

「何とかして逢えたりしないかしら?」

「こちらからの接触は不可能だ。ごくまれに神として向こうから接触してくるかもしれんが…………それと顔だったな」

「あ、見せてくれるんだ」

 ブランクがローブのフードを脱ぐと、左目は深紅。右目は漆黒の瞳をした白髪の男の顔があらわになりました。

 顔の造りは綺麗で目は少しだけ鋭い。鼻は少しだけ高いけど、どちらかと言えば日本人を思わせる造形だ。

「隠すような顔でもないと思うけど?」

「深紅の瞳はすべてを見る目だ。それに対して漆黒の瞳は一切の魔力を視認できない」

「ふーん」

 黒目。確か、レイモン先生やリビオがそうだったわね。黒眼の方が使える魔法の幅が広いのは、深紅の眼と違って嫌なものが見えないおかげで抵抗がないのかしら。

 それでもエリザベートは凄腕の魔術師と言っても過言ではない。

 カトリーヌさんだって見えているものを割り切って判断しています。

 もしかしたら中途半端に見えている人々より、両極端の方が魔法適正が高いのかも。

「それって紺碧の瞳にも意味はあるのかしら?」

 私がそう尋ねると、ブランクが考えこみます。

「その瞳の持主は運がいい。それ以外はわからん」

「適当なこと言ってませんか?」

 いえ、運が良いことはそれでよいのですけどね。
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