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147話 国王生誕祭の昼
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待ち望んでいない昼食会ではなるべくビルジニとともに会話しようと思っていました。
王宮の広い中庭。そこに丸いテーブルと白いテーブルクロス。さらに白い椅子が用意されていて、日除けのパラソルも白。
一面に生えた若草色の芝生が緑の絨毯のようでした。
昼食会ではなるべく未婚の者が集まれるように、既婚者とは別々の席に座らされます。
私の指定席は、真正面にジェラールとエリザベートが見えるような場所です。完全にセッティングされています。
丸いテーブルには座れて六人。人数指定はありませんが、空気を読むなら男女比を合わせるべきなのでしょうか。
合コンかよ。
「あら? 暇そうねクリスティーン」
「姫君のお相手は僕らがしようか?」
私の目の前にはカトリーヌさんとビルジニ。
ビルジニですら、さすがに今日は女性の服装をしていました。親御さんに言われたのかしら。
ビルジニの父であるシャルルなら、かっこよくあれとか真顔で言いそうですし、母親当たりかな。
そういえば二人とも同い年ですし、伯爵家以上の十四歳女子。
「お二人がいて助かりました。知らない人ばかりだと緊張してしまいそうで」
「あら? 貴女っていつも一緒にいる誰かが好きな訳ではないのね」
カトリーヌさんにそう言われ、何も言い返せない私。考えたことなんてなかったし、何より十四の子供だ。
例え肉体が同い年でも、どうも乙女心が動かない。
だからと言ってもここに集まるみんなも若いんですけどね。十八歳くらいならキャーキャー言えたりするのかな。
数十分後。私達三人の表情は青い青い。なにせ私達の席に来た男性陣の顔が一般的だったからだ。
乙女ゲームの世界のせいか、私が集めたみんなって顔面偏差値高すぎて気付かなかったわ。
さえない感じの顔ってこんなにいたのね。いや、父をはじめ、私の周りがイケメンしかいなかったせいよ。
「いやぁ俺っていつも女性の視線あつめちゃうんですよ」
高そうな服を着ていますからね。すくなくとも容姿は普通。熱い視線はすべて財産目当ての方々です。
「俺は美的センスがあるってよく褒められるんですよ。こないだ買った幸せになれるツボ。良ければ我が家に見に来ませんか?」
きゃーすごーいだまされやすそー。その壺で紫波背になれるのは売人の方よ。
「みんなすごいな。俺なんて特に何もないぞ!」
そのままの君でいて。他二人を凄いだなんて思わないで。
昼食会が終わったあと、私達三人は黙って私の部屋に集まりました。
「「「この国の未来は終わった」」」
仮にも姫の座るテーブルに来るものですから、家格なりなんなりそれなりに優秀だったり自信があるものが挑んできているはず。
その結果があれならもうダメです。滅ぼされなくても滅びます。
「彼らって伯爵家?」
「え? 覚えてないわよ」
「公爵家ではなかったかな」
とりあえずここに集まる最低ラインの層だと信じましょう。
もうじき王都内へパレードの準備があります。
ジェラールとエリザベートは大きめの馬車に乗りますが、私は当然ウィルフリードに乗ることになりました。
「二人はパレードの時間どうしているの?」
「ああ、みんなで姫君の晴れ舞台を見るつもりだよ。アレクシスのおかげで良い席が取れたからね」
「私もそこに参加するわ」
「ふーん」
パレードの観戦は貴族は席に座って優雅にみることができ、そのほかの国民はぎゅうぎゅうに敷き詰められて立ち見しかできない。
どうせならジャンヌさんもそこに呼べれば良いのですが、さすがにこればっかりは仕方ないか。
「見てなさい? 今年は魔狼が走るわよ」
「え!? ウィルフリードに乗るって噂話じゃなかったの?」
「姫君はノリがいいからね。どうせ何それ面白そうで採用したのだろう?」
「何でわかるのよ」
私がビルジニをじーっと見つめると、ビルジニは赤面しながら照れるなと呟きます。
「とにかくそろそろ時間ですし私達は行くわね」
「ではパーティで会おうか」
「ええ、またあとで」
二人が部屋から出ていくことに対し手を振りながら見送る。ちょうどいいタイミングで現れたスザンヌに着替えを手伝って貰います。
何せウィルフリードは大きい。ドレスのままあの子に跨ってパレードに出たらスカートの中が丸見えである。
この世界で女性でズボンなんてあまり見かけませんが、まあ私はあまり抵抗ないかな。
無論、女性のパンツスタイルには何も問題はない。実際、馬に跨る女性用の乗馬服も存在し、私がこれから着るのもそれにあたる。
「姫様はズボンを穿いたことがありましたっけ?」
「え!? あ! いや、なんか体が動いたのよ」
気が付けば思いっきり一人で穿こうとしていました。ダメね。考え事をしていたら自分で着替えそうになったわ。
「ごめんなさい。やっぱり穿き方がわからないわ」
「…………そうでしょうね。手伝いますのでまずは片足を」
仕方なくいつも通りスザンヌに手伝って貰いながら着替えます。
「さあ、行きましょうか」
私はウィルフリードの待つ庭までスザンヌを引き連れて歩いていきました。
王宮の広い中庭。そこに丸いテーブルと白いテーブルクロス。さらに白い椅子が用意されていて、日除けのパラソルも白。
一面に生えた若草色の芝生が緑の絨毯のようでした。
昼食会ではなるべく未婚の者が集まれるように、既婚者とは別々の席に座らされます。
私の指定席は、真正面にジェラールとエリザベートが見えるような場所です。完全にセッティングされています。
丸いテーブルには座れて六人。人数指定はありませんが、空気を読むなら男女比を合わせるべきなのでしょうか。
合コンかよ。
「あら? 暇そうねクリスティーン」
「姫君のお相手は僕らがしようか?」
私の目の前にはカトリーヌさんとビルジニ。
ビルジニですら、さすがに今日は女性の服装をしていました。親御さんに言われたのかしら。
ビルジニの父であるシャルルなら、かっこよくあれとか真顔で言いそうですし、母親当たりかな。
そういえば二人とも同い年ですし、伯爵家以上の十四歳女子。
「お二人がいて助かりました。知らない人ばかりだと緊張してしまいそうで」
「あら? 貴女っていつも一緒にいる誰かが好きな訳ではないのね」
カトリーヌさんにそう言われ、何も言い返せない私。考えたことなんてなかったし、何より十四の子供だ。
例え肉体が同い年でも、どうも乙女心が動かない。
だからと言ってもここに集まるみんなも若いんですけどね。十八歳くらいならキャーキャー言えたりするのかな。
数十分後。私達三人の表情は青い青い。なにせ私達の席に来た男性陣の顔が一般的だったからだ。
乙女ゲームの世界のせいか、私が集めたみんなって顔面偏差値高すぎて気付かなかったわ。
さえない感じの顔ってこんなにいたのね。いや、父をはじめ、私の周りがイケメンしかいなかったせいよ。
「いやぁ俺っていつも女性の視線あつめちゃうんですよ」
高そうな服を着ていますからね。すくなくとも容姿は普通。熱い視線はすべて財産目当ての方々です。
「俺は美的センスがあるってよく褒められるんですよ。こないだ買った幸せになれるツボ。良ければ我が家に見に来ませんか?」
きゃーすごーいだまされやすそー。その壺で紫波背になれるのは売人の方よ。
「みんなすごいな。俺なんて特に何もないぞ!」
そのままの君でいて。他二人を凄いだなんて思わないで。
昼食会が終わったあと、私達三人は黙って私の部屋に集まりました。
「「「この国の未来は終わった」」」
仮にも姫の座るテーブルに来るものですから、家格なりなんなりそれなりに優秀だったり自信があるものが挑んできているはず。
その結果があれならもうダメです。滅ぼされなくても滅びます。
「彼らって伯爵家?」
「え? 覚えてないわよ」
「公爵家ではなかったかな」
とりあえずここに集まる最低ラインの層だと信じましょう。
もうじき王都内へパレードの準備があります。
ジェラールとエリザベートは大きめの馬車に乗りますが、私は当然ウィルフリードに乗ることになりました。
「二人はパレードの時間どうしているの?」
「ああ、みんなで姫君の晴れ舞台を見るつもりだよ。アレクシスのおかげで良い席が取れたからね」
「私もそこに参加するわ」
「ふーん」
パレードの観戦は貴族は席に座って優雅にみることができ、そのほかの国民はぎゅうぎゅうに敷き詰められて立ち見しかできない。
どうせならジャンヌさんもそこに呼べれば良いのですが、さすがにこればっかりは仕方ないか。
「見てなさい? 今年は魔狼が走るわよ」
「え!? ウィルフリードに乗るって噂話じゃなかったの?」
「姫君はノリがいいからね。どうせ何それ面白そうで採用したのだろう?」
「何でわかるのよ」
私がビルジニをじーっと見つめると、ビルジニは赤面しながら照れるなと呟きます。
「とにかくそろそろ時間ですし私達は行くわね」
「ではパーティで会おうか」
「ええ、またあとで」
二人が部屋から出ていくことに対し手を振りながら見送る。ちょうどいいタイミングで現れたスザンヌに着替えを手伝って貰います。
何せウィルフリードは大きい。ドレスのままあの子に跨ってパレードに出たらスカートの中が丸見えである。
この世界で女性でズボンなんてあまり見かけませんが、まあ私はあまり抵抗ないかな。
無論、女性のパンツスタイルには何も問題はない。実際、馬に跨る女性用の乗馬服も存在し、私がこれから着るのもそれにあたる。
「姫様はズボンを穿いたことがありましたっけ?」
「え!? あ! いや、なんか体が動いたのよ」
気が付けば思いっきり一人で穿こうとしていました。ダメね。考え事をしていたら自分で着替えそうになったわ。
「ごめんなさい。やっぱり穿き方がわからないわ」
「…………そうでしょうね。手伝いますのでまずは片足を」
仕方なくいつも通りスザンヌに手伝って貰いながら着替えます。
「さあ、行きましょうか」
私はウィルフリードの待つ庭までスザンヌを引き連れて歩いていきました。
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