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154話 魔獣の森
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私は周囲をよく確認してから、目印になるものがないか探します。
周囲にあるものは、朽ちた木が生えていることと、成人男性が身を隠せそうな茂み。
「他には岩とか…………人工物らしいものは何一つないわね」
せめて何か目印になるもの。私はあらゆる魔法に適性がありますが、できることは限られている。
ミゲルのように強固な守護魔法は使えない。
ビルジニのように錬金付与魔法は使えない。
リビオのように複数対象に状態魔法は使えない。
アレクシスのように上手に空間を捻じ曲げることもできない。
ジョアサンのように瞬時に回復させることもできない。
オリバーのように幻惑魔法を解除できない。
カトリーヌさんのように強力な波動魔法を使えない。
ジャンヌさんのように光の波動魔法を使えない。
スザンヌのように無詠唱で魔法を使えない。
ブランクのように理から外れた魔法を扱うこともできない。
「私…………これだって言える特技ないんだ」
私って器用貧乏だったのね。なんでもできるし、魔力量も優れている。けど、せっかくできることは特化している人たちに敵わない。
その時、その場にいない人の代用品。それが私だ。
精々私にある力と言えば、これだけ。
私は鞄を覗き込み、ワンダーオーブが収容されている小瓶を眺める。
ワンダーオーブだって【黄】、【緑】、【藍】、【白】それから生誕祭の夜に、ミゲルから返して貰った【橙】。
これも所詮、借り物よね。
「私にできること…………私だからできること…………」
考えてもいても仕方ない。しかし、誰もいない知らない土地。
いくら私が一度は大人になったからと言っても、精神年齢は子供のままなのだろうか。
心細さで足が震える。草木が揺れる音が怖い。踏んだ小枝の音が怖い。
雲がゆっくりと漂うその様さえ、私の心臓を柔らかい毛のブラシで撫でられるような気がした。
「目印がなければ作ればいいのよね。波動魔法、波動」
私は近くにあった枯れ木を指定し、それに波動をぶつけて幹を抉る。
「これで良し! 幻惑魔法だと時間が立つと消えてしまうからこういう時は物理ダメージのある波動魔法は便利よね」
最初に合流すべきは広範囲に自分の位置を知らせることができる人物。
「となると、光よね」
彼女さえ見つけられれば、他の皆様ともすぐに合流できそうだわ。
あるいは、彼女が光は遠くにいる人間に己の居場所を示すのに最適であると気付くか、誰かから入れ知恵さえもらえればなのですけど。
「魔法は体力も使うし、温存するかもしれないわよね。ジャンヌさん自身が発光し続けるのが最適なのですけど、もっとも単純なのは、彼女に【緑】のワンダーオーブを譲渡することよね」
【緑】の力には魔力増幅がある。それを光の波動魔法が使えるジャンヌさんに一時的に貸してしまえば、皆様に私達の位置を知らせるのも容易。
「ですがまあ…………今は誰でも良いから再開したいわ」
せめて飲み水さえなんとかなれば。
「森の中で川や湖を探す方法って何かあるのかしら」
しばらく歩き回ると、周囲から聞きなれない足音。風景は変わりませんが、大きな茂みの向こうには何がいるかわからない。
少なくとも人の足音ではない。そして私の移動方向に平行するようについてきている?
「誰!?」
私が問いかけると、茂みから何が飛び出してきた。
「山鮫!?」
そこにいたのはサメの顔と体に、オタマジャクシからカエルに移り変わるような手足の生え方をした魔獣、山鮫がこちらにむかって噛みついてこようとしました。
「実物キモ!? 時空魔法、加速」
私は加速しつつ、山鮫の突進を回避。山鮫の弱点はサメ同様動けなくなること。
サメは泳ぎ続けないと死ぬ種類も存在するように、山鮫も走り続けないと死ぬ。陸で鰓呼吸するな!
「状態魔法、麻痺」
山鮫は走ることができなくなり、やがて酸欠で本当に動かなくなりました。
「……………………はぁはぁはぁはぁ! これが、魔獣と戦うってことなのね……………………イヤイヤイヤ、怖すぎよ! 何よあれ! 冷静に見たらでかすぎなのよ! 大型二輪も丸呑みできるじゃない!」
これは周囲の風景が怖いなんて言ってられないわ。本当に命の危険じゃない。
偶然、ゲームに登場した弱点を把握している魔獣。万が一、知らない魔獣が出てきたら対処できるのかしら。
「確かゲームに出てきた魔獣は、魔狼と犬猿雉。それから宝石巨人もいたわね」
それから植物系もいたわ。唯一の救いは、ゲームには虫系がいないこと。
やっぱり乙女ゲームだったから、ビジュアル的に無理って人がいると配慮されたのでしょうね。山鮫も消すべきよ。
そう考えたタイミングで、ドサッと黒い何かが大きな木から落ちてきた。
話を一つ前に戻しましょう。つまり…………つまり今、目の前に出てきた巨大な蜘蛛はゲーム未登場魔獣ってことで良いのかしら。
私はドサッと大きな木から落ちてきた毛深い蜘蛛型魔獣を見て、次の行動を考える。
「時空魔法、加速」
当然、逃げる。私は来た道を考えずに一目散に走り出してしまいました。
周囲にあるものは、朽ちた木が生えていることと、成人男性が身を隠せそうな茂み。
「他には岩とか…………人工物らしいものは何一つないわね」
せめて何か目印になるもの。私はあらゆる魔法に適性がありますが、できることは限られている。
ミゲルのように強固な守護魔法は使えない。
ビルジニのように錬金付与魔法は使えない。
リビオのように複数対象に状態魔法は使えない。
アレクシスのように上手に空間を捻じ曲げることもできない。
ジョアサンのように瞬時に回復させることもできない。
オリバーのように幻惑魔法を解除できない。
カトリーヌさんのように強力な波動魔法を使えない。
ジャンヌさんのように光の波動魔法を使えない。
スザンヌのように無詠唱で魔法を使えない。
ブランクのように理から外れた魔法を扱うこともできない。
「私…………これだって言える特技ないんだ」
私って器用貧乏だったのね。なんでもできるし、魔力量も優れている。けど、せっかくできることは特化している人たちに敵わない。
その時、その場にいない人の代用品。それが私だ。
精々私にある力と言えば、これだけ。
私は鞄を覗き込み、ワンダーオーブが収容されている小瓶を眺める。
ワンダーオーブだって【黄】、【緑】、【藍】、【白】それから生誕祭の夜に、ミゲルから返して貰った【橙】。
これも所詮、借り物よね。
「私にできること…………私だからできること…………」
考えてもいても仕方ない。しかし、誰もいない知らない土地。
いくら私が一度は大人になったからと言っても、精神年齢は子供のままなのだろうか。
心細さで足が震える。草木が揺れる音が怖い。踏んだ小枝の音が怖い。
雲がゆっくりと漂うその様さえ、私の心臓を柔らかい毛のブラシで撫でられるような気がした。
「目印がなければ作ればいいのよね。波動魔法、波動」
私は近くにあった枯れ木を指定し、それに波動をぶつけて幹を抉る。
「これで良し! 幻惑魔法だと時間が立つと消えてしまうからこういう時は物理ダメージのある波動魔法は便利よね」
最初に合流すべきは広範囲に自分の位置を知らせることができる人物。
「となると、光よね」
彼女さえ見つけられれば、他の皆様ともすぐに合流できそうだわ。
あるいは、彼女が光は遠くにいる人間に己の居場所を示すのに最適であると気付くか、誰かから入れ知恵さえもらえればなのですけど。
「魔法は体力も使うし、温存するかもしれないわよね。ジャンヌさん自身が発光し続けるのが最適なのですけど、もっとも単純なのは、彼女に【緑】のワンダーオーブを譲渡することよね」
【緑】の力には魔力増幅がある。それを光の波動魔法が使えるジャンヌさんに一時的に貸してしまえば、皆様に私達の位置を知らせるのも容易。
「ですがまあ…………今は誰でも良いから再開したいわ」
せめて飲み水さえなんとかなれば。
「森の中で川や湖を探す方法って何かあるのかしら」
しばらく歩き回ると、周囲から聞きなれない足音。風景は変わりませんが、大きな茂みの向こうには何がいるかわからない。
少なくとも人の足音ではない。そして私の移動方向に平行するようについてきている?
「誰!?」
私が問いかけると、茂みから何が飛び出してきた。
「山鮫!?」
そこにいたのはサメの顔と体に、オタマジャクシからカエルに移り変わるような手足の生え方をした魔獣、山鮫がこちらにむかって噛みついてこようとしました。
「実物キモ!? 時空魔法、加速」
私は加速しつつ、山鮫の突進を回避。山鮫の弱点はサメ同様動けなくなること。
サメは泳ぎ続けないと死ぬ種類も存在するように、山鮫も走り続けないと死ぬ。陸で鰓呼吸するな!
「状態魔法、麻痺」
山鮫は走ることができなくなり、やがて酸欠で本当に動かなくなりました。
「……………………はぁはぁはぁはぁ! これが、魔獣と戦うってことなのね……………………イヤイヤイヤ、怖すぎよ! 何よあれ! 冷静に見たらでかすぎなのよ! 大型二輪も丸呑みできるじゃない!」
これは周囲の風景が怖いなんて言ってられないわ。本当に命の危険じゃない。
偶然、ゲームに登場した弱点を把握している魔獣。万が一、知らない魔獣が出てきたら対処できるのかしら。
「確かゲームに出てきた魔獣は、魔狼と犬猿雉。それから宝石巨人もいたわね」
それから植物系もいたわ。唯一の救いは、ゲームには虫系がいないこと。
やっぱり乙女ゲームだったから、ビジュアル的に無理って人がいると配慮されたのでしょうね。山鮫も消すべきよ。
そう考えたタイミングで、ドサッと黒い何かが大きな木から落ちてきた。
話を一つ前に戻しましょう。つまり…………つまり今、目の前に出てきた巨大な蜘蛛はゲーム未登場魔獣ってことで良いのかしら。
私はドサッと大きな木から落ちてきた毛深い蜘蛛型魔獣を見て、次の行動を考える。
「時空魔法、加速」
当然、逃げる。私は来た道を考えずに一目散に走り出してしまいました。
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