BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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155話 内外

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 巨大な蜘蛛から逃げ出すも、私の想像以上に追いかけてくる蜘蛛が速い。

「えええ!? 私は食べても美味しくないわよ!?」

「キシャアアアアアアアアアアアア」

「威嚇しないでよ! 波動魔法、隆起アースファング

 私は蜘蛛の足元の大地を隆起させ、大地の槍で蜘蛛を貫こうとしましたが、蜘蛛は毛深い毛で巧みに周囲の変化を知覚し、回避してしまう。

「ええ、こわ」

 物理攻撃は毛のセンサーが反応してしまうのね。守護魔法もダメかも。でも、これならいけるのかな。

「波動魔法、波動ウェーブ。付与魔法、炎属性フレイム

 私は右手で波動ウェーブを出し、左手でその波動ウェーブに炎属性をエンチャントしました。

 この世界で数少ない属性魔法。付与魔法による属性の追加だ。

 これは付与魔法使いと波動魔法使いがその場にいるか、その両方の適性の持主がいて初めて扱える。

「燃え尽きなさい!」

 蜘蛛は察知してよけようとするも、移動する瞬間に糸を出していたせいかその糸に引火。

 やがて蜘蛛の体は燃え始めてしまった。

「臭いわ。…………早くここから離れてしまいましょう」

 私は足早に離れていこうとしたところで、未だに燃えている蜘蛛の死骸を見て気付く。

 煙だ。煙なら遠くにいても気付くことができる。獣は火に近づかない理論が、魔獣にも効くかわかりませんが、人が見れば違う。

 そこに人がいると思って集まってくるかもしれないわ。

「そうと決まれば早速焼きましょう! 山火事にならないようにした方が良いわよね」

 私は焚火に使えそうな落ち葉や枝を集めては、付与魔法で乾燥させ、そこに熱を加えました。

「どの程度で発火するかわかりませんが、加え続ければいけるわよね。多分」

 こうしてみると付与魔法って便利ね。タグマウイ家が錬金術に着目したのもよくわかるわ。

 順調に火が付いたことを確認。薄暗い魔界の為、多少の灯りになることと、仄かな温かさが私を落ち着かせる。

 そういえば食糧と水。せめて山鮫ならまだ食べれそうだったのに。魔獣って食べれるのかしら。

「はぁ…………ゲームの世界ならおなかが空かなくてもいいじゃない。無限に走らせなさいよ」

 さてさて、最初にここに現れるのは誰かしら。私はボウボウ燃える火を眺めながら座り込んでその場で眠りについてしまいました。



 目が覚めると、何かが焼ける臭い。

「お目覚めですか?」

「ん? …………ジョアサン?」

 私の目の前にいたのは糸目の少年で一緒に魔界に飛ばされたであろうジョアサンが、私の焚火で魚を焼いていた。

「火をお借りしました。宜しければどうぞ」

 ジョアサンにそう言われ、焼いた魚と色が青い柑橘系の果物に似た何かを手渡される。

 うわぁ。気持ち悪いなこれ。中身は何色なんだろ。

 口の中に水分を欲した私は、手渡された果実の皮をむくと、中には茶色い房が出てきました。

「腐っているのかしら」

「魔界の果物のようです。大丈夫ですよ姫様。どんな毒でも解毒しますので」

「え?」

「どんな毒でも解毒します」

 もしかしてこれ未知の食べ物?

 私が呆然としたままジョアサンを見つめていると、ジョアサンはクスリと笑う。

「それは安全です。ただまあ腐っていたらその時は解毒しますのでご安心ください」

「し、信じるわよ」

 私は意を決して、目の前の果物を口に頬り込む。

「…………上品なキウイみたいな味ね」

「キウイとは何でしょうか?」

「えっと…………どっかの国から献上されたどっかの国の特産品よ」

 そういえば転生してからキウイって見たことないわ。この変では採れないのでしょう。

 兎にも角にも、完璧な言い訳でその場を乗り切ります。

「そういうのは、ちゃんと覚えて外交してくださいね」

「いいのよ。どうせ私はそのうちどっかに嫁ぐのですから」

「姫様が嫁ぐね…………もう決めているのですか?」

「決めてないわ! でもいいの。地位があるから売れ残ることはないでしょう?」

「それはそうでしょうけど…………やはり公爵家とかですか?」

 今日はやけに質問が飛んでくる。暇潰しに使われているような気がしてなりませんが、偶然にも私も暇。これくらいならお答えしてあげましょうか。

「その日を笑って過ごせる相手なら、地位も名誉もいらないわ」

「それが貴女の夢なんですね」

「そんなに本気の言葉に聞こえた?」

「昔から王族らしくないとは思ってはいましたね」

「失礼ね。私なんて遺伝しまくりよ? 外見も…………内面も」

 内面も?

 どうかしら。転生者である私だからこそ、人格形成は前世のはず。だから今の私の内面は、前世で培ったものに違いない。

 内面は似ていないかもしれないわ。でも、今はそういうことにしておきましょう。

 焼いた魚に背中からかぶりつく。口の中に広がる苦みは、お腹側の内蔵が少し口に入ってしまったようでした。
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