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183話 戦火の匂い
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ログルアット城内部。私はスザンヌとセシルを連れて図書館に向かっていました。
「必要なものがありましたら私が取りに行きましたのに」
セシルが私に声をかけ、私がそれに返事をします。
スザンヌと違い、セシルは基本的に私の世話をしたがろうとするところがあります。それは彼女が私の幼い頃から面倒をみていたせいでしょう。きっと今でも彼女の中では、私は五歳児なのでしょう。
「いいのよ。どうせオリバー皇子も忙しくて今日一日は食事以外のスケジュールが空いているから」
「こちらにきてから食事ばかりのご予定ですよね」
「こらスザンヌ! 姫様に失礼でしょ!」
「いいんですセシル! 慣れましたので」
「慣れてはいけないのです!」
確かにそうよね。なんで一国の姫が自分のメイドから雑な扱いを受けて慣れているのでしょうか。
どちらにせよ今日もスザンヌの言う通り、食事しか予定がない。本当にごくまれにオリバーが私の前にふらっと現れるくらいで、どうしてここにいるのかもわからないのだ。
そんな生活が一か月ほど続いていた。
この一か月の間にオリバーと会話した回数は二回。最後に会話をしたのは十日前。いくら忙しくてもそれはないのではないでしょうか。
【緑】のワンダーオーブは奪われたままの為、早く取り返したいところですが、ここまで放置されてしまうと何のためにここにいるかもわからない。
「今頃みんなはどうしているのかしら」
一か月の休校。私がラヌダ帝国にいることを知っているのも王家のみ。思えば少しの間だとしても、友人たちにはお別れの挨拶くらいさせて欲しかったわ。
図書館について適当に面白そうな本を探す。時間を潰せるものならなんだってよかった。いっそ予期せぬ来訪者が来ても大歓迎まである。
歩いた先にいる人たちは、いつも私が来ると会話をやめてしまいます。無礼だと言って怒るなんてことはしないといいますのに。
それでも黙られてしまうなら、どんな会話をしていたかもわからない。せめてこの国の情勢とかお決まりの噂話くらいでも聞ければ暇つぶしになるのに。
セシルが数冊の本を抱えると、私達は元来た道を歩き始めます。長い廊下から見えるのは騎士達が鍛錬する為に使う広場。
そこには武装した騎士達が整列してその集団は次々と馬に跨り始めました。騎馬の鍛錬かしら。
そう思っていたところで騎馬隊は整列。そのまま城門の方に行進していってしまいました。
「野外演習とか?」
「それにしては荷物が多かったですね」
「視えたのセシル?」
「少しだけですよあれは遠征だと思います」
あれほどの人数の兵を引き連れて、どこか遠くに行くのかしら。まさか戦争とか?
帝国ならありえなくもないわよね。
「…………姫様。あの先頭はオリバー皇子では?」
「なんですって!?」
セシル同様目の良いスザンヌ。二人に言われてもまだ全員鎧着て馬に跨ってるようにしか見えない。
「時空魔法、望遠鏡」
自分の眼前の空間に、一定距離まで離れた空間の景色を映し出しますと、そこには確かにオリバーがいた。
「二人とも、行ってくるわ! 時空魔法、転移」
私は数十メートル単位で転移を何度か繰り返して、やっとの思いでオリバーの前まで転移しきった。
進軍していた騎馬たちが、私に気付いて行進をやめる。
「おや、こちらに来る必要はないのではありませんか?」
「こっちには話があるのよ。あと帰ってきていたなら、顔くらい出したらどう? これから出陣しますって雰囲気でしばらく帰ってこないつもりでしょ?」
私とオリバーがお話していると、事情を知らなさうな隣にいた騎士が口を開きました。
「オリバー皇子。すぐに進軍して加勢に行かなければまずいのでは? いくら相手がたった数名とは言え、もう半数近くの帝国兵たちとそれからおうこ…………」
「黙れ! これ以上ここで喋るな!!」
「ひぃ…………」
今までのオリバーからは、想像ができないような罵声が飛び、騎士も驚いて口を閉じてしまいます。
「クリスティーン姫。帝国は今忙しい。この戦いが終わり次第、もう一度ゆっくりとお話しましょう。進軍!」
「「「「「おおおおお!!!!!!」」」」」
騎馬たちは私をさけ、城門の方に進軍していってしまいました。そこに残されたのは茫然としたまま取り残された私。
よくわかりませんが、帝国が苦戦していると言うことでしょうか。どちらにせよ私は指をくわえてみてることしかできなさそうね。
でも、なんでオリバーはあんな風に怒鳴ったのかしら。まるであのまま騎士が喋ったらいけなかったような。
あの場で事情が知らない人間は間違いなく私。つまり、私に聞かれては困る発言と言うことかしら。
もしかして…………アリゼ?
ですがアリゼなら一人のはず。騎士の言った数名という言葉が一致しない。
そう私が見たエピローグでは王国を燃やすアリゼの後ろ姿。エピローグでも王国を滅ぼしたのち、最愛の人を殺し、自らも同じ火に身を沈めたって…………これ、いつアリゼがたった一人って書いてあったのかしら。
思えばエピローグの王国を滅ぼしているシーンはすべて省かれている。アリゼが一人で滅ぼしたと思い込んでいるのは…………私の方ではないか?
「大丈夫、まだ仮説。まだ仮説だから」
それにブラン王国が崩壊の危機でしたら、隣国である帝国の城内で噂話を聞かないはずがない。
いえ、噂話なんて城内で一度も聞いたことがない。思えば、みんなお話してる最中に私が来たと気付けば口を閉じているではないか。
あれは無礼だから口を閉じていたのではなく、私に聞かれたらまずいからだったとしら?
確かめなければ。今動かなければ。私は何か大事な物を失うのかもしれない。
「必要なものがありましたら私が取りに行きましたのに」
セシルが私に声をかけ、私がそれに返事をします。
スザンヌと違い、セシルは基本的に私の世話をしたがろうとするところがあります。それは彼女が私の幼い頃から面倒をみていたせいでしょう。きっと今でも彼女の中では、私は五歳児なのでしょう。
「いいのよ。どうせオリバー皇子も忙しくて今日一日は食事以外のスケジュールが空いているから」
「こちらにきてから食事ばかりのご予定ですよね」
「こらスザンヌ! 姫様に失礼でしょ!」
「いいんですセシル! 慣れましたので」
「慣れてはいけないのです!」
確かにそうよね。なんで一国の姫が自分のメイドから雑な扱いを受けて慣れているのでしょうか。
どちらにせよ今日もスザンヌの言う通り、食事しか予定がない。本当にごくまれにオリバーが私の前にふらっと現れるくらいで、どうしてここにいるのかもわからないのだ。
そんな生活が一か月ほど続いていた。
この一か月の間にオリバーと会話した回数は二回。最後に会話をしたのは十日前。いくら忙しくてもそれはないのではないでしょうか。
【緑】のワンダーオーブは奪われたままの為、早く取り返したいところですが、ここまで放置されてしまうと何のためにここにいるかもわからない。
「今頃みんなはどうしているのかしら」
一か月の休校。私がラヌダ帝国にいることを知っているのも王家のみ。思えば少しの間だとしても、友人たちにはお別れの挨拶くらいさせて欲しかったわ。
図書館について適当に面白そうな本を探す。時間を潰せるものならなんだってよかった。いっそ予期せぬ来訪者が来ても大歓迎まである。
歩いた先にいる人たちは、いつも私が来ると会話をやめてしまいます。無礼だと言って怒るなんてことはしないといいますのに。
それでも黙られてしまうなら、どんな会話をしていたかもわからない。せめてこの国の情勢とかお決まりの噂話くらいでも聞ければ暇つぶしになるのに。
セシルが数冊の本を抱えると、私達は元来た道を歩き始めます。長い廊下から見えるのは騎士達が鍛錬する為に使う広場。
そこには武装した騎士達が整列してその集団は次々と馬に跨り始めました。騎馬の鍛錬かしら。
そう思っていたところで騎馬隊は整列。そのまま城門の方に行進していってしまいました。
「野外演習とか?」
「それにしては荷物が多かったですね」
「視えたのセシル?」
「少しだけですよあれは遠征だと思います」
あれほどの人数の兵を引き連れて、どこか遠くに行くのかしら。まさか戦争とか?
帝国ならありえなくもないわよね。
「…………姫様。あの先頭はオリバー皇子では?」
「なんですって!?」
セシル同様目の良いスザンヌ。二人に言われてもまだ全員鎧着て馬に跨ってるようにしか見えない。
「時空魔法、望遠鏡」
自分の眼前の空間に、一定距離まで離れた空間の景色を映し出しますと、そこには確かにオリバーがいた。
「二人とも、行ってくるわ! 時空魔法、転移」
私は数十メートル単位で転移を何度か繰り返して、やっとの思いでオリバーの前まで転移しきった。
進軍していた騎馬たちが、私に気付いて行進をやめる。
「おや、こちらに来る必要はないのではありませんか?」
「こっちには話があるのよ。あと帰ってきていたなら、顔くらい出したらどう? これから出陣しますって雰囲気でしばらく帰ってこないつもりでしょ?」
私とオリバーがお話していると、事情を知らなさうな隣にいた騎士が口を開きました。
「オリバー皇子。すぐに進軍して加勢に行かなければまずいのでは? いくら相手がたった数名とは言え、もう半数近くの帝国兵たちとそれからおうこ…………」
「黙れ! これ以上ここで喋るな!!」
「ひぃ…………」
今までのオリバーからは、想像ができないような罵声が飛び、騎士も驚いて口を閉じてしまいます。
「クリスティーン姫。帝国は今忙しい。この戦いが終わり次第、もう一度ゆっくりとお話しましょう。進軍!」
「「「「「おおおおお!!!!!!」」」」」
騎馬たちは私をさけ、城門の方に進軍していってしまいました。そこに残されたのは茫然としたまま取り残された私。
よくわかりませんが、帝国が苦戦していると言うことでしょうか。どちらにせよ私は指をくわえてみてることしかできなさそうね。
でも、なんでオリバーはあんな風に怒鳴ったのかしら。まるであのまま騎士が喋ったらいけなかったような。
あの場で事情が知らない人間は間違いなく私。つまり、私に聞かれては困る発言と言うことかしら。
もしかして…………アリゼ?
ですがアリゼなら一人のはず。騎士の言った数名という言葉が一致しない。
そう私が見たエピローグでは王国を燃やすアリゼの後ろ姿。エピローグでも王国を滅ぼしたのち、最愛の人を殺し、自らも同じ火に身を沈めたって…………これ、いつアリゼがたった一人って書いてあったのかしら。
思えばエピローグの王国を滅ぼしているシーンはすべて省かれている。アリゼが一人で滅ぼしたと思い込んでいるのは…………私の方ではないか?
「大丈夫、まだ仮説。まだ仮説だから」
それにブラン王国が崩壊の危機でしたら、隣国である帝国の城内で噂話を聞かないはずがない。
いえ、噂話なんて城内で一度も聞いたことがない。思えば、みんなお話してる最中に私が来たと気付けば口を閉じているではないか。
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