BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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191話 再戦、赤銅のロマン

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 ロマンの時空魔法と守護魔法の合わせ技による高速の弾丸になるタックルは、超硬度の弾丸のように突進し、石畳をえぐりながら進んでくる。付与魔法により動体視力の上がったジャンヌが操る光線を巧みに潜り抜ける。

「前回みたいに直線の突進はしねぇぜ姫様よぉ!」

 やはり指名手配犯になるだけあってバカってわけではないのね。

「守護魔法、城壁キャッスルウォール

 私の前に城壁のような壁が出来上がりますが、それに一瞬で何が衝突する。轟音が響いた頃には城壁にひび割れが入り、隙間から砂のように破片が噴き出す。そして城壁は生成からわずか数秒で瓦解。瓦礫ごと私に突進してくるロマン。技がワンパターンとはいえ、そもそも防げない高速の弾丸。摩擦熱を守護魔法で防御してロマン自身も超高熱のエネルギー体担っている。

 ですが、城壁を破壊することにエネルギーが消費されて少しだけ遅くなった。

「時空魔法、転移ワープ

 突進のインパクトの瞬間。そのタイミングを見極めて私は私自身の頭上に転移します。ロマンの赤いモヒカン目掛けて指さした。一か八か。これを仕掛けてみよう。

「回復魔法、育毛ヘアーグロース

「ぬぁにぃ!?」

 ロマンのトレードマークである赤いモヒカンが伸びる。その勢いは雷が空から落ちるかの様。その高さは水色のキャンバスに浮かぶ白い雲の形を変える。そしてその重さは約五トン。

「んぬごぁああああああああああ!?」

 突然の頭部にかかる重量に、首の筋肉で支えようとして踏ん張るロマン。どうなってるのよ。守護魔法を首にかけて保護しているのでしょうか。守護魔法の防御範囲は、使い手に知識があればなんでもありね。

「時空魔法、空間分離エリアセパレーション

 ロマンはモヒカンをいい感じの長さで空間分離させて切断します。そういう時空魔法もあるのね。今度、何かで使ってみようかしら。ここまでの戦いでロマンはいくつかの魔法を無詠唱で発動できることが確認できます。それが彼の得意魔法なのでしょう。

「姫様、どいて!」

「時空魔法、転移ワープ

 後方から聞こえるジャンヌの声に反応して彼女のすぐ後ろに転移する。ジャンヌにしては珍しい言葉選びでしたが、ロマンとの戦いは一秒一秒が大事。時間短縮することを優先したのでしょう。彼女のレーザーがロマンのいた位置に照射されます。しかし、ロマンにふれた光は何かに吸い込まれて消えてしまった。その何かにふれたとき、光は直線から何かの中央に引きずり込まれるように動いたことが目視で確認出来ました。

 スザンヌの動体視力強化。光の動きまで認知できるのね。

「こいつを使わせたんだ! ここにいる奴は全員殺すんだよ。時空魔法、黒色恒星ブラックホール

 ロマンの手元にある黒い球体。それからは大地に足をつけることが難しいほどの重力が発生し始めました。これはまずい。ジャンヌの光は巻き取られるように吸い込まれて行きます。さらに黒い球体は吸い込んだ魔力でより強くなる。私も時空魔法で対抗しなくては。

「時空魔法、無重力ゼログラビティ

 周囲の重力をなくすも、範囲に限界がある。私たちの周囲で戦っていた帝国兵や敵兵達の足が大地から離れてしまい、次々と吸い込まれ始める。人を吸い込むたびにまた大きくなる。なんて厄介な時空魔法なの。どうやら術者であるロマンの服も引っ張られるほどに球体が成長し始めています。このままではいじれ私たちも吸い込まれてしまいます。

「ジャンヌの光はほぼ無効。広範囲の目くらましならどうかしら?」

「それもさきほど試しましたが、あの球体に吸い込まれてしまいました」

 光すら吸い込む。まさに本物のブラックホールの再現ってわけね。無重力空間を作ったおかげでその範囲に入っている人たちは守れましたが、悔しいことに何名かは敵味方関係なくサッカーボールほどまで成長した球体に圧縮されてしまいました。

「スザンヌは何か思いついた?」

「…………あのロマンという術者。あれほどの魔力量をどこから? 総量はそこまで高くないはずですし、勢いよく回復しているわけでもない」

「…………え?」

 集中して彼から感じる魔力量を図りましたが、思えば彼の魔力総量はそこまで多くない。それは前回も今回も変わらない。なのに、明らかに使用している魔法に対し、彼の魔力切れの様子がない。【緑】のワンダーオーブを一瞬考えましたが、膨大な魔力量になっているわけでもないし、そもそもロマンの手に渡る理由もない。じゃああれは何?

「あんたその力をどこで?」

「ああぁん? 決まってんだろ姫様! 俺らの大将が握っている赤い宝珠の力さ!」

 大将? 宝珠? こいつらのボスって最後の一人の指名手配犯のことじゃないの?

 でも赤い宝珠の持ち主なんて彼女しか心当たりがない。

「そう、それが【赤】のワンダーオーブの力なのね。どちらにせよ乗り越えなきゃいけないってことだけはわかったわ」

 ロマンが【赤】のワンダーオーブを持っているとは想像できない。であれば【赤】に備わっている力は、他者に影響する力。詳しい説明はできないけど、それによってロマンの力が増大していることは間違いないわ。

 そして私たちの身体も徐々に球体の方に流され始めます。このままでは私たちのあの中に引きずり込まれてしまうわ。なんとか打開策を考えなくてはいけないわね。
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