202 / 228
197話 今度はちゃんと
しおりを挟む
フレデリックの雷撃に襲われるはずだった私の前に立つのは、白い髪の魔王、ブランクでした。彼は私に着ていたローブをかぶせます。
「それを被っていろ。魔力が抑えられる」
「え? あ、うん」
全然わかりませんが、被っている間は確かに魔力が抑えられているような感じがするのと、そのおかげか私の精神の内側にあったロマンから吸収した悪感情が薄まっていくような気がしました。
そうか、魔力は残留思念でしたね。もしかしたら人の感情や精神は魔力に変換できるものなのかも。きっと浄化魔法は悪感情を魔力として吸い取っているんだわ。だからこのローブを着ると、魔力を抑える力で平静を保てるんだ。
「話は終わったか?」
「待たなくても相手くらいしてやったけどな」
フレデリックがわざわざ私たちの会話が終わるのを待っていたようです。ブランクの返事を聞いたフレデリックは手に青白い雷光を纏い一気に放出つ。
「雷撃か。俺もそれでいこう」
「なんだと?」
放たれた雷撃を私にはわからないオレンジ色の障壁で受け止めたブランクは、右手に魔力を集中させます。
「魔砲《マジックキャノン》・雷光龍」
迸る雷光が一瞬でフレデリックの元に向かいます。しかし、フレデリックも即座に対応し、進行方向を大地に逃がしてしまいました。ブランクもそれに気づいてに二発目、三発目を放ち始めますが、フレデリックも同等レベルの雷撃を正面からぶつけて相殺。
互いの魔法が雷撃の速度で繰り広げられているので言葉もでてきません。ただフレデリックよりもブランクの方がほんの少しだけ余裕そうなイメージがありました。一歩も動かない二人の間は激しい雷光や大地に響く轟音が何度も繰り広げられています。
ここにいるだけでその攻防が激しいことだけはわかりますが、雷光の視覚情報がまぶしすぎて直視し続けられません。
「どうした? こんなものか?」
「そちらこそ知らない魔法だが…………何者だ?」
ブランクとフレデリック。ついに会話を始めるほど余裕そうです。もうこのローブに包まって待ってようかな。全然わからない。でも私はなんとなく激しい雷光のぶつかり合いを見つめていました。
「……手伝おうか?」
「暇にでもなったか?」
「ちょっと」
雷撃の攻防はいつまでも続いている。それを見てさすがに手を出そうかと思った所。フレデリックとブランクの攻防には、いつの間にかアンヌ先生やジャンヌも介入をやめていました。よくみれば二人もかなり消耗している様子。
「お前は逃げていればいいんだ。これから強い魔法を使う。できるだけ離れてくれ」
「…………そう」
私はアンヌ先生とジャンヌの元に軽量化したままのスザンヌを抱えたまま向かいます。
「アンヌ先生、ジャンヌ。これから…………えっと」
ローブを脱いだブランクをブランクとして紹介していいのかしら。わからない。
「えっとあの人が強力な魔法を使うそうです。避難してください。それと私、ちょっと腕が限界でスザンヌを頼んでもいいですか?」
「え? ええ、それは構いませんが」
そういわれたアンヌ先生は私からスザンヌを受取って一緒に走ってここから離れることにしました。その時、私は小さな声で呟きました。
「幻惑魔法、蜃気楼」
二人の背中は遠くなる。私にはまだここでやらなければいけないことがあるから、私と一緒に逃げていると思ってもらいましょうか。
自分の位置は誰にも見られていない。だからといってあの激しい攻防に混ざれるとはとても思えない。
私はいまだに倒れたままのウィルフリードの横に立ちます。もし、ブランクが強力な魔法を使うなら、今度こそウィルフリードが助からない。
「大丈夫よ、ウィルフリード。今度はちゃんと護るからね」
その瞬間、ブランクの方から黒い魔力の塊がフレデリックに向かって放たれる。フレデリックは雷撃で防御膜を作り上げますが、黒い塊に包まれてしまい、どうなったかわかりません。そしてその塊は少しずつ私たちのいる方まで浸食していきます。
「守護魔法、結界」
私はウィルフリードを覆いこむように結界を張ります。結界の外側は黒い魔力に満ち、外側からこちらを観測することは不可能になりました。
「それを被っていろ。魔力が抑えられる」
「え? あ、うん」
全然わかりませんが、被っている間は確かに魔力が抑えられているような感じがするのと、そのおかげか私の精神の内側にあったロマンから吸収した悪感情が薄まっていくような気がしました。
そうか、魔力は残留思念でしたね。もしかしたら人の感情や精神は魔力に変換できるものなのかも。きっと浄化魔法は悪感情を魔力として吸い取っているんだわ。だからこのローブを着ると、魔力を抑える力で平静を保てるんだ。
「話は終わったか?」
「待たなくても相手くらいしてやったけどな」
フレデリックがわざわざ私たちの会話が終わるのを待っていたようです。ブランクの返事を聞いたフレデリックは手に青白い雷光を纏い一気に放出つ。
「雷撃か。俺もそれでいこう」
「なんだと?」
放たれた雷撃を私にはわからないオレンジ色の障壁で受け止めたブランクは、右手に魔力を集中させます。
「魔砲《マジックキャノン》・雷光龍」
迸る雷光が一瞬でフレデリックの元に向かいます。しかし、フレデリックも即座に対応し、進行方向を大地に逃がしてしまいました。ブランクもそれに気づいてに二発目、三発目を放ち始めますが、フレデリックも同等レベルの雷撃を正面からぶつけて相殺。
互いの魔法が雷撃の速度で繰り広げられているので言葉もでてきません。ただフレデリックよりもブランクの方がほんの少しだけ余裕そうなイメージがありました。一歩も動かない二人の間は激しい雷光や大地に響く轟音が何度も繰り広げられています。
ここにいるだけでその攻防が激しいことだけはわかりますが、雷光の視覚情報がまぶしすぎて直視し続けられません。
「どうした? こんなものか?」
「そちらこそ知らない魔法だが…………何者だ?」
ブランクとフレデリック。ついに会話を始めるほど余裕そうです。もうこのローブに包まって待ってようかな。全然わからない。でも私はなんとなく激しい雷光のぶつかり合いを見つめていました。
「……手伝おうか?」
「暇にでもなったか?」
「ちょっと」
雷撃の攻防はいつまでも続いている。それを見てさすがに手を出そうかと思った所。フレデリックとブランクの攻防には、いつの間にかアンヌ先生やジャンヌも介入をやめていました。よくみれば二人もかなり消耗している様子。
「お前は逃げていればいいんだ。これから強い魔法を使う。できるだけ離れてくれ」
「…………そう」
私はアンヌ先生とジャンヌの元に軽量化したままのスザンヌを抱えたまま向かいます。
「アンヌ先生、ジャンヌ。これから…………えっと」
ローブを脱いだブランクをブランクとして紹介していいのかしら。わからない。
「えっとあの人が強力な魔法を使うそうです。避難してください。それと私、ちょっと腕が限界でスザンヌを頼んでもいいですか?」
「え? ええ、それは構いませんが」
そういわれたアンヌ先生は私からスザンヌを受取って一緒に走ってここから離れることにしました。その時、私は小さな声で呟きました。
「幻惑魔法、蜃気楼」
二人の背中は遠くなる。私にはまだここでやらなければいけないことがあるから、私と一緒に逃げていると思ってもらいましょうか。
自分の位置は誰にも見られていない。だからといってあの激しい攻防に混ざれるとはとても思えない。
私はいまだに倒れたままのウィルフリードの横に立ちます。もし、ブランクが強力な魔法を使うなら、今度こそウィルフリードが助からない。
「大丈夫よ、ウィルフリード。今度はちゃんと護るからね」
その瞬間、ブランクの方から黒い魔力の塊がフレデリックに向かって放たれる。フレデリックは雷撃で防御膜を作り上げますが、黒い塊に包まれてしまい、どうなったかわかりません。そしてその塊は少しずつ私たちのいる方まで浸食していきます。
「守護魔法、結界」
私はウィルフリードを覆いこむように結界を張ります。結界の外側は黒い魔力に満ち、外側からこちらを観測することは不可能になりました。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる