BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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197話 今度はちゃんと

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 フレデリックの雷撃に襲われるはずだった私の前に立つのは、白い髪の魔王、ブランクでした。彼は私に着ていたローブをかぶせます。

「それを被っていろ。魔力が抑えられる」

「え? あ、うん」

 全然わかりませんが、被っている間は確かに魔力が抑えられているような感じがするのと、そのおかげか私の精神の内側にあったロマンから吸収した悪感情が薄まっていくような気がしました。

 そうか、魔力は残留思念でしたね。もしかしたら人の感情や精神は魔力に変換できるものなのかも。きっと浄化魔法は悪感情を魔力として吸い取っているんだわ。だからこのローブを着ると、魔力を抑える力で平静を保てるんだ。

「話は終わったか?」

「待たなくても相手くらいしてやったけどな」

 フレデリックがわざわざ私たちの会話が終わるのを待っていたようです。ブランクの返事を聞いたフレデリックは手に青白い雷光を纏い一気に放出つ。

「雷撃か。俺もそれでいこう」

「なんだと?」

 放たれた雷撃を私にはわからないオレンジ色の障壁で受け止めたブランクは、右手に魔力を集中させます。

「魔砲《マジックキャノン》・雷光龍ライトニングドラゴン

 迸る雷光が一瞬でフレデリックの元に向かいます。しかし、フレデリックも即座に対応し、進行方向を大地に逃がしてしまいました。ブランクもそれに気づいてに二発目、三発目を放ち始めますが、フレデリックも同等レベルの雷撃を正面からぶつけて相殺。

 互いの魔法が雷撃の速度で繰り広げられているので言葉もでてきません。ただフレデリックよりもブランクの方がほんの少しだけ余裕そうなイメージがありました。一歩も動かない二人の間は激しい雷光や大地に響く轟音が何度も繰り広げられています。

 ここにいるだけでその攻防が激しいことだけはわかりますが、雷光の視覚情報がまぶしすぎて直視し続けられません。

「どうした? こんなものか?」

「そちらこそ知らない魔法だが…………何者だ?」

 ブランクとフレデリック。ついに会話を始めるほど余裕そうです。もうこのローブに包まって待ってようかな。全然わからない。でも私はなんとなく激しい雷光のぶつかり合いを見つめていました。

「……手伝おうか?」

「暇にでもなったか?」

「ちょっと」

 雷撃の攻防はいつまでも続いている。それを見てさすがに手を出そうかと思った所。フレデリックとブランクの攻防には、いつの間にかアンヌ先生やジャンヌも介入をやめていました。よくみれば二人もかなり消耗している様子。

「お前は逃げていればいいんだ。これから強い魔法を使う。できるだけ離れてくれ」

「…………そう」

 私はアンヌ先生とジャンヌの元に軽量化したままのスザンヌを抱えたまま向かいます。

「アンヌ先生、ジャンヌ。これから…………えっと」

 ローブを脱いだブランクをブランクとして紹介していいのかしら。わからない。

「えっとあの人が強力な魔法を使うそうです。避難してください。それと私、ちょっと腕が限界でスザンヌを頼んでもいいですか?」

「え? ええ、それは構いませんが」

 そういわれたアンヌ先生は私からスザンヌを受取って一緒に走ってここから離れることにしました。その時、私は小さな声で呟きました。

「幻惑魔法、蜃気楼ミラージュ

 二人の背中は遠くなる。私にはまだここでやらなければいけないことがあるから、私と一緒に逃げていると思ってもらいましょうか。

 自分の位置は誰にも見られていない。だからといってあの激しい攻防に混ざれるとはとても思えない。

 私はいまだに倒れたままのウィルフリードの横に立ちます。もし、ブランクが強力な魔法を使うなら、今度こそウィルフリードが助からない。

「大丈夫よ、ウィルフリード。今度はちゃんと護るからね」

 その瞬間、ブランクの方から黒い魔力の塊がフレデリックに向かって放たれる。フレデリックは雷撃で防御膜を作り上げますが、黒い塊に包まれてしまい、どうなったかわかりません。そしてその塊は少しずつ私たちのいる方まで浸食していきます。

「守護魔法、結界バリア

 私はウィルフリードを覆いこむように結界を張ります。結界の外側は黒い魔力に満ち、外側からこちらを観測することは不可能になりました。
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