BAD END STORY ~父はメインヒーローで母は悪役令嬢。そしてヒロインは最悪の魔女!?~

大鳳葵生

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199話 不死身

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 その場にはブランクもいない。私は横たわるウィルフリードにもう一度回復魔法をかけてあげる。少しずつ息を吹き返すその身体を見て、今度こそ助けることができた。私にもやっとできることが…………

 そう思っていた時、どこか遠くから聞こえる大きな爆音。ブランクが戦っているのかな。そう思って振り返ると、方角は学園の方。そしてその爆音の正体は…………大きな雷だった。

 雷? ブランクの魔法よね? でも、それはさっきはあえてフレデリックに合わせて同系統の魔法で応戦していたように見えましたし、だったらあの雷は何?

 私は転移ワープ加速アクセルを駆使して自分の出せる最速で学園の方に向かいます。その向かった先は学園の北側。魔力を帯びた大木の生える場所にたどり着くと、そこは何かによって焼け焦げた大地になっていました。

「どういうこと?」

 私が左右を確認するとそこには何もない。誰もいない。なのに雷が落ちた。どういうことだというのでしょうか。そう思っていたタイミングで私の真横に一線の雷撃が落ちてきました。

「え?」

「ん? どういうことだ? 幻惑魔法か?」

 そこで私の目の前に現れたのは指名手配犯、白金のフレデリック本人でした。左腕が千切れていますが、応急処置済みのようです。血が垂れている様子はない。

「アンタ、なんで生きているのよ」

「簡単な話だ。雷に安全性と接触可能を付与してそれに乗って一時撤退しただけだ」

「ごめんちょっと何を言っているかわからないわ」

「俺も理解されるとは思っていない。それよりも、さっきの魔術師はいないな」

 まずいな。ブランクはアリゼのところに向かって交戦中だったとしたら、今度こそここにやってこれないかもしれない。つまり、目の前の化け物は今度こそ一対一。はっきり言って負ける気しかしない。
 ワンダーオーブだってスザンヌやジャンヌに貸したままですし、結局【緑】のワンダーオーブは行方不明。
 勝てるかな、この化け物相手に。無詠唱で雷の波動魔法を扱うフレデリック相手にはとにかく速度が必要。【橙】のワンダーオーブの力で私が無詠唱で扱えるのはまだ波動ウェーブだけ。そのワンダーオーブも貸し出し中だから、【白】のワンダーオーブに頼るしかない。

 あいつの魔法を使うのは気に入りませんが、背に腹は代えられない。

「守護魔法、耐熱ヒートプロテクション。守護魔法、保護装置プロテクター、時空魔法、高速移動ハイスピードムブメント

 守護魔法と時空魔法の重ね掛け。これはフレデリックの部下。赤銅のロマンが加速アクセルを越えた速度を出した時の魔法。

 本来、一定以上の加速をすれば神の怒りを買って焼けながら五体バラバラになるといわれています。しかし、それは摩擦熱と加速のしすぎで四肢が耐えきれなくなることが原因。守護魔法でそれを防げば、赤銅のロマンと同じ速さの世界に到達できる。

 私が魔法を重ねがけしている時、【白】のワンダーオーブが緑色に光り、私をサポートしてくれています。マルグリートの話では、【黒】のワンダーオーブは敵だと言いますが、どうやら【白】は味方をしてくれているみたいですね。

 私は限界を超える速度で移動し、フレデリックの雷を超えた。この速度なら、どこまでも接近ができる。

 借りるわよ、セシル。貴女の得意魔法。

「波動魔法、掌打《パームインパクト》」

 自身の腕の内側から放出する波動魔法は、接触した対象の体内に入り込み、臓器を直接振動させる。

 セシルの得意魔法である自身の体内に波動を流し込み、身体強化、疲労回復、打撃に応用する波動魔法。

 吹き飛んだフレデリックの身体に私は手のひらをかざします。

「波動魔法、破壊ブレイク

 カトリーヌの得意魔法。超鈍足の巨大な波動がゆっくりと周囲を破壊しながら吹き飛ばされたフレデリックの身体に向かって行きます。フレデリックはとっさに逃げようとしましたが、そんなことは私が許さない。

「付与魔法、磁性マグネット

 フレデリックの身体に超強力な磁性を付与し、彼の周囲には鉄くずたちが一気に襲い掛かる。

「こんなところで終わるわけには!!!!!」

 鉄くずに身動きを封じられ、巨大な波動の塊がじっくりと近づいてくるフレデリック。この勝負は、私の勝ちよ。

 波動魔法がフレデリックを押しつぶす。今度こそ、今度こそ本当に終わって欲しい。

 いくら魔力総量が増えたからと言っても、限度があります。ぺたりと地面に座り込む私の前にそれでもフレデリックは立ち上がった。

「まだだ小娘」

「うそでしょ?」
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