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200話・前半 【紫】のワンダーオーブ
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様々な魔法を駆使しても、なお立ち上がる男。最強の傭兵白金のフレデリック。ブランクのおかげで消耗していたからこそ、私は渡り合うことができましたが、さすがにもう限界かもしれません。
「驚いた。温室育ちの姫かと思っていたが、そこらの兵士よりずっと骨がある」
「嬉しくない誉め言葉ね」
「その力、どこで培った? 強さの先に何を求める?」
「大切な人たちが笑いあう未来よ」
「この弱肉強食の世界で、儚い理想だ。だが、子供らしいといえば子供らしいか」
私の理想を聞いたフレデリックは、子供の夢だとあざ笑う。れけど、私はそんなこと承知の上だ。
「例えそれが砂上の楼閣だとしても、現実を歩むそのすべての人が、無意識に理想を目指しているのよ! 貴方がどういう理想を抱いてここにいるか知りませんが、現実を歩もうとする人間は、指名手配犯になる道は選ばないはずよ」
「なるほど。確かに現実的に行くなら、俺の歩む先は無謀な行動だ。俺は知らずに知らずのうちに理想を目指していたようだ。覚えておこう」
そして全身を青白い光で包み込み、周囲にはバチバチと音を立て始めます。話は終わりだそうです。ずいぶんな余裕。完全に格下扱いなのね。
高速移動と雷の速さの移動による超高速の戦いは次第に周囲の損害を抑えるために広い土地に誘導する。
私は学園のグランドにフレデリックを誘導することに成功しました。
全身を雷の鎧に包まれたフレデリックにはもう直接触れることは不可能。どんな物体を用意しても、フレデリックの付与魔法で電気抵抗値が下げられてしまえば、雷の鎧は一気に抵抗値の低い物体に襲い掛かる鉾に変わります。
迂闊に近寄れば大やけど。やはり波動魔法で遠距離から攻撃が安定なのよね。問題は私の波動魔法より、雷の波動魔法の方が速くて強力ってことよね。
防戦一方ですが、魔力のぶつけ合いは続きます。こちらにはワンダーオーブのサポートまであるのに、消耗しているのは間違いなく私。
爆音や轟音の鳴り響く戦いは、どれだけ続いたかわからない。でも、それでも負ける気がしない。
「いつまで続けているつもりですか? 王国の姫」
不意に聞こえる男の声。その声は少し憎たらしい友人を彷彿させた。振り返るとこげ茶色の髪にライトグリーンの瞳の少年がほくそ笑むように私を見ていた。
「オリバー!? 無事だったのね? それよりはここは危険だから!」
「今の私は貴女にしか見えていませんよ。それより勝ち筋は見つかりましたか?」
「どうかしら? でも、手伝ってくれるのでしょう? 幻惑魔法使いさん」
私がそう質問すると、オリバーはやれやれと言いたそうに首を振りました。私はそれを了承と捉えて魔法を発動させます。
「幻惑魔法、蜃気楼」
私はあえてオリバーに頼らずにその場に私の分身を召喚します。作った分身は私の意のままに動く。だからこそ私が作る必要がありました。
「サポートはお願いするわ」
「まあ、いいでしょう。俺はまだばれていませんからね」
二人になった私のどちらが本物か悩むまでもなく、双方に同時に雷撃を飛ばすフレデリック。しかし、労力は二倍。さきほどよりもさばきやすい。わかりにくいですがオリバーの幻惑魔法のおかげかフレデリックの狙いもばれない程度にぶれています。
そしていつの間にか私の分身は三人四人に増えている。気が付けば帝国兵たちが協力し合って幻惑魔法をかけていました。
そして私とオリバーはグランドのすぐそばにある慰霊碑の前に移動しました。
「次は何を?」
「一か八かよ? 【紫】のワンダーオーブを手に入れるわ」
「そう来ましたか。となるとここに神が?」
「ええ、最後の神、エドワードはここに眠っているはずだわ」
後方では幻惑と戦っているフレデリック。帝国兵たちも次第に耐えられなくなり、戦闘部隊も待機し始めていました。ですが、もう限界の近いはず。
「出てきなさいよエドワード!!!」
私がそう叫ぶと、心底めんどくさそうに現れたのは青い髪に紺碧の瞳の男の神が、欠伸を書きながら現れました。どうやらすでに条件を満たしていた様子。結局、神秘の要因がわかりませんでしたが、それを考えている余裕はない。
「今回はほぼ特別だ。俺たちの限界も難しい領域に達してきたのと、【黒】が動き出し始めたからな」
【黒】。例のワンダーオーブのことかしら。神々も余裕がない状況って一体これから何が起こるっていうのよ。それでも、今は【紫】のワンダーオーブが先決。
「ワンダーオーブを託すには条件がある。あの雷撃の魔法使いをお前ら二人でぶっ倒せ。力なら貸してやらないこともない」
そういってエドワードはフレデリックを指さします。私とオリバーは二人で目を合わせてうなずいた。
「オリバー? けがは大丈夫?」
「この通り、完治しましたよ」
「…………そう、じゃあ行きましょうか。白金を倒しに」
「驚いた。温室育ちの姫かと思っていたが、そこらの兵士よりずっと骨がある」
「嬉しくない誉め言葉ね」
「その力、どこで培った? 強さの先に何を求める?」
「大切な人たちが笑いあう未来よ」
「この弱肉強食の世界で、儚い理想だ。だが、子供らしいといえば子供らしいか」
私の理想を聞いたフレデリックは、子供の夢だとあざ笑う。れけど、私はそんなこと承知の上だ。
「例えそれが砂上の楼閣だとしても、現実を歩むそのすべての人が、無意識に理想を目指しているのよ! 貴方がどういう理想を抱いてここにいるか知りませんが、現実を歩もうとする人間は、指名手配犯になる道は選ばないはずよ」
「なるほど。確かに現実的に行くなら、俺の歩む先は無謀な行動だ。俺は知らずに知らずのうちに理想を目指していたようだ。覚えておこう」
そして全身を青白い光で包み込み、周囲にはバチバチと音を立て始めます。話は終わりだそうです。ずいぶんな余裕。完全に格下扱いなのね。
高速移動と雷の速さの移動による超高速の戦いは次第に周囲の損害を抑えるために広い土地に誘導する。
私は学園のグランドにフレデリックを誘導することに成功しました。
全身を雷の鎧に包まれたフレデリックにはもう直接触れることは不可能。どんな物体を用意しても、フレデリックの付与魔法で電気抵抗値が下げられてしまえば、雷の鎧は一気に抵抗値の低い物体に襲い掛かる鉾に変わります。
迂闊に近寄れば大やけど。やはり波動魔法で遠距離から攻撃が安定なのよね。問題は私の波動魔法より、雷の波動魔法の方が速くて強力ってことよね。
防戦一方ですが、魔力のぶつけ合いは続きます。こちらにはワンダーオーブのサポートまであるのに、消耗しているのは間違いなく私。
爆音や轟音の鳴り響く戦いは、どれだけ続いたかわからない。でも、それでも負ける気がしない。
「いつまで続けているつもりですか? 王国の姫」
不意に聞こえる男の声。その声は少し憎たらしい友人を彷彿させた。振り返るとこげ茶色の髪にライトグリーンの瞳の少年がほくそ笑むように私を見ていた。
「オリバー!? 無事だったのね? それよりはここは危険だから!」
「今の私は貴女にしか見えていませんよ。それより勝ち筋は見つかりましたか?」
「どうかしら? でも、手伝ってくれるのでしょう? 幻惑魔法使いさん」
私がそう質問すると、オリバーはやれやれと言いたそうに首を振りました。私はそれを了承と捉えて魔法を発動させます。
「幻惑魔法、蜃気楼」
私はあえてオリバーに頼らずにその場に私の分身を召喚します。作った分身は私の意のままに動く。だからこそ私が作る必要がありました。
「サポートはお願いするわ」
「まあ、いいでしょう。俺はまだばれていませんからね」
二人になった私のどちらが本物か悩むまでもなく、双方に同時に雷撃を飛ばすフレデリック。しかし、労力は二倍。さきほどよりもさばきやすい。わかりにくいですがオリバーの幻惑魔法のおかげかフレデリックの狙いもばれない程度にぶれています。
そしていつの間にか私の分身は三人四人に増えている。気が付けば帝国兵たちが協力し合って幻惑魔法をかけていました。
そして私とオリバーはグランドのすぐそばにある慰霊碑の前に移動しました。
「次は何を?」
「一か八かよ? 【紫】のワンダーオーブを手に入れるわ」
「そう来ましたか。となるとここに神が?」
「ええ、最後の神、エドワードはここに眠っているはずだわ」
後方では幻惑と戦っているフレデリック。帝国兵たちも次第に耐えられなくなり、戦闘部隊も待機し始めていました。ですが、もう限界の近いはず。
「出てきなさいよエドワード!!!」
私がそう叫ぶと、心底めんどくさそうに現れたのは青い髪に紺碧の瞳の男の神が、欠伸を書きながら現れました。どうやらすでに条件を満たしていた様子。結局、神秘の要因がわかりませんでしたが、それを考えている余裕はない。
「今回はほぼ特別だ。俺たちの限界も難しい領域に達してきたのと、【黒】が動き出し始めたからな」
【黒】。例のワンダーオーブのことかしら。神々も余裕がない状況って一体これから何が起こるっていうのよ。それでも、今は【紫】のワンダーオーブが先決。
「ワンダーオーブを託すには条件がある。あの雷撃の魔法使いをお前ら二人でぶっ倒せ。力なら貸してやらないこともない」
そういってエドワードはフレデリックを指さします。私とオリバーは二人で目を合わせてうなずいた。
「オリバー? けがは大丈夫?」
「この通り、完治しましたよ」
「…………そう、じゃあ行きましょうか。白金を倒しに」
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