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第6章 どうやらフィツロイは八虐の不孝のようです。
フィツロイ戦決着
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場所は再び俺とフィツロイの場所に移る。
「このままじゃあ、終わらない」
フィツロイがいくら魔法を放ち続けても俺を倒せることができない。。
「どうした? 魔法ってのはこんな物なのか?」
俺はそんな風に余裕そうに言っているが、今にも倒れそうになりながら、身体中から血を流している。
「はぁ~。明山さんはそんなに丈夫なんですね。元から良いのか。鍛えたのか。
あなたは普通じゃない。当たり前ではない。
そこまで傷ついても立ち向かってくるあなたに。私は敬意を評します。
もう焦らしたりしません。確実に殺せる方法で、確実に経験者としてあの世の道案内をしてあげますよ」
魔法を放つのを止めて、フィツロイは肩の力を抜いた。
その時、俺のポケットの中に入っている携帯の通知音が響く。
「ん?」
携帯を開いてみると、黒から電話がかかってきていた。
携帯を耳にあてながらも、俺はフィツロイへの注意を怠りない。
フィツロイはその場で動かずに俺を見ている。
戦闘中に電話をする奴がいるだろうか。いや、いないだろう。
しかし、心優しいフィツロイはその電話が終わるのを待ってくれている。
「もしもし。何だどうした黒。俺は今、戦闘中で忙しいんだけど?」
「明山さん聞いて。そいつの付喪人の能力は……正体は……。離れるのよ。あいつと一対一では絶対に勝てない。確実に殺されちゃうわ」
黒は焦りながらも電話で話してくる。
それほど重要な内容を話そうとしているのだろうか。
「何なんだよ。そこまで焦ってどうした?」
「だからあいつの能力は……。スパッタイオンポンプです。」
「はぁ?」
なんだそれ? 聞いても分からなかった。
スパッタイオンポンプとは……。
イオンポンプともいうが、真空ポンプの種類である。
真空ポンプとは容器等の中より空気を吸出して真空状態を作るのだ。酸素を減らし、音の振動を無くし、電気を通さず熱を冷やさない。
そんなスパッタイオンポンプは極高真空をうみだせるのだ。
簡単にいうと真空状態を作るだ。
これでいい。これで理解できる。
なので空気が無くなったり、音が聞こえなくなったり、酸素が減ったことで火が消えるのだ。
そんな事を携帯を使って調べる中では、既にフィツロイの能力は発動していた。
だが、既に謎は解けている。
後はこの能力を解除する方法である。
先程のフィツロイの台詞にもあったように今度は確実に俺を殺すまで能力の解除をやめないだろう。
時間は数秒しかない。
この空間から抜け出すには……。
「─────!!」
英彦が何かを叫んでいるが、こちらからは聞こえない。一瞬でもよかった。隙を作る時間があればよかった。
能力の謎を理解したのに……あと少しだったのに……。
じわじわと薄れていく視界や意識で生命の危機を感じた。
このままでは本当に死んでしまう。
「『百円連続パンチ』…………」
最後の力を振り絞り俺は地面を殴って土煙を撒き散らす。
その土煙は宙を風に流されながら周囲を舞う。
「煙幕のつもりですか。今さら何をしても無駄ですよ……いや、これはまさか!?」
土煙は遠くへと飛ばされていかず、ある一定の位置で俺を囲むように宙を舞っていた。
「私の能力の範囲を測るために……いや、させません。明山さんの死因は窒息死。既に決定しているんですよ」
土煙を撒き散らすと、一定の位置で空中にくっつき止まっている。
そう、そのくっついた場所がフィツロイが発動していた能力の範囲の壁。
「これは俺の困難だ。そしてこれが新しく成長した自分の実力の証明だァ!!!!!!!」
ニヤリと思わず笑みを浮かべる俺に対して、フィツロイは焦って止めにかかるが。
「『百円連続パンチ』」
目に見えない壁の内部から激しい拳の止まらない連打。
先程とは威力が違い、今回は全力の連打である。
「やめてェェェェェェ!!!
内部から壊さないでください!!!!!!」
「おりゃァ!!」
内部から見えない壁が砕け散る。
遂にフィツロイのスパッタイオンポンプの付喪神の能力が突破された瞬間である。
「まさかそんな…………。私の能力を……。大丈夫、もう一度……。今度こそ止めを……はっ!! 」
もう魔法も付喪神の能力も通用しないフィツロイに勝ち目はなかった。
フィツロイの視界には誰も写っていない。
俺は瞬時にしゃがむと、
「『五十円波動光線』」
近距離で放たれる光線。
光線にフィツロイの身体は包まれていく。
「こんな所で……私は……私は……私の戦いは終わってしまったんですね」
避ける暇もなく次第にフィツロイの体は光に飲み込まれていった……。
町に朝日が昇る。
町はいつも通りの朝を迎えるのだ。
ただ、ひとつの魂が消えそうになっている事以外はいつもの朝だ。
彼女は地面に横になって静かに空を見上げていた。
「明山さん。まさか本当に魔王軍幹部を倒すなんて凄いですよ……。よかったですね。一気に出世ですよ」
彼女の体は次第に薄れていく。
そんな惨めな彼女の側に俺は座った。
彼女は俺を見て、にこやかな笑顔を見せてくる。
「出世なんて興味はない。そんな事より、お前まさか昇天しているのか?」
もう彼女の足の部分は既に消えていた。
「はい。私は幽霊ですよ。
この世に存在できるほどの力も使い果たしてしまったんです。
あとは、審判を受けるだけ。
まぁ……あの人に会って、審判を聞いても決定しているんですけどね」
まるで自分の未来を理解しているかのように話してくるフィツロイ。
あの人という奴とは俺にも少し関係がある。
「あいつはドジな奴だから。きっとまたドジをして別の世界へ送ってくれるよ。消滅なんてしねぇよ」
「まるで会ったことがあるみたいな言い方ですね。駄目ですよ?
ドジだなんて言ったら天罰が下っちゃいます」
もう既にフィツロイの下半身が消えていた。
英彦も走って近づいてくる。
彼も戦った縁があるから最後くらいは彼女を見届けるつもりなのだろう。
英彦が俺の側に来るとフィツロイは英彦に一言。
「英彦さん。あなたのおかげで久々に魔法の血統に会うことができました。よかった……魔法もまだ消えてはいないんですね」
嬉しそうに話しかけたフィツロイに英彦は少し困った表情をした。
「すみません。フィツロイさん。実は僕にもどうやって魔法を使ったか分からないんです。必死だったもので……」
その返答に少しガッカリとした表情を浮かべたが、彼女は空を見上げる。
いよいよ消えそうな様子になった時、俺は我慢できずに彼女に質問をしてみた。
「最後に言い残すことはないか? あのお爺さんとか、身内とか、後悔とか」
まあ、お互い短い時間だったが殺し合っていた仲だ。それくらいは聞いても良いのではと思う。
「あなた達は優しいですね。そうですね……。
家族には前に遺書を送りましたし……。後悔なら、魔王様からの命令を達成出来なかった事ですかね」
死ぬ間際まででも、彼女は魔王に忠誠を誓っているのだ。
だが、少し間を空けてフィツロイは発言の訂正をした。
「あっ、いや違います。後悔は……私の後悔は……」
今までの人生を振り替える。
「明山さんに、貴方に負けた事です。
この魔王軍幹部である八虐の一人。不義のフィツロイがあなたのような素晴らしい人間に負けた事ですよ」
だが、その発言は怨みも悔しさもなく、清々しい喜びの笑顔だった。
「そうか……。なら、いつでもこい。
何度でも返り討ちにしてやる。ただし、今度は人のためではなく自分のために挑んでこいよ」
俺はその笑顔に答えるような返事をする。
フィツロイは静かに再び空を見上げる。
いつぶりだろうか。こんな不思議な男に会ったのは……。
あの時以来だろうか。政剣に会った時以来だろうか。
もう少し早く会いたかった。
もう後悔はない。昇天してもいつか会える。
そんな気がする。
そう思う。
もう二度と裏切られない。
また彼と戦える。
うん、会えるんじゃないかな。
──魔王様すみませんでした。
今までお世話になりました。
もう後悔は無くなりました。
もう未練はなくなりました。
フィツロイには最後に伝えたい事があった。
「あの、明山さん」
もうフィツロイは肩ほどしか残っていない。
おそらくこれが彼女の遺言となるだろう。
「おう。どうしたフィツロイ」
「明山さん。私……」
もうその声にすら力のない弱弱しさが残っている、
「ん? どうした?」
「私……あなたの事が……」
「『強制昇天札付きライフル』~」
突如、放たれた銃弾がフィツロイを貫く。
「「え?」」
「え? キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
皆が驚く中、フィツロイは無事に強制的に昇天した。
その場に静かに残された二人。
「明山さーん」
遠くからこちらへ近づいてくる黒とお爺さん。
二人は手を振りながら走ってくる。
「大丈夫ですか? お二人とも」
「明山さーん。英彦ー。生きてる?
ギリギリのようだったけど……。
私のおかげで助かったんだから、帰りにどこかでご飯を奢っ…………」
完璧に空気の読めないバカだ。大馬鹿野郎だ。
何も知らない二人が俺たちのためにやってくれた事なのだろうが、今回ばかりは俺の感情も怒りに染まってしまった。
「このバカ野郎がァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
「ふぇ!????」
怒られて訳が分かっていない黒は、?マークを浮かべて俺の話を黙って聞いている。
「タイミングくらい考えろ。この空気も読めない食費キラーの大食い女がァ!!!!!!!!」
「ちょっ……え?」
「お前が来なくても既に勝敗は決まってたんだ。お前がトドメを指すから……。
あいつは絶対後悔が残って成仏出来ないじゃないかァ!!!
お前が一人の魂をこの世に未練を残した状態にしたんだぞ!!」
そして、そのまま俺は追い討ちとばかりに彼女に言いはなった。
「お前にもう一ヶ月間は奢らないからな。自腹だァ!!!
ちゃんと自腹で払えよ。今回の罰だ。
今回の事から学んで、周りの空気くらい読めるようになれ。このチート能力持ちの怪力女め!!!」
ここまで相手に怒ったのはいつぶりだろうか。
すると、黒は俺の発言にイラッときたのだろう。
「誰が、空気の読めない食費キラーで、チート能力持ちの怪力、頭の悪いチビで嘘つき嫉妬深い女よ!!!」
泣きながら本気の黒の拳が俺の腹に強烈な一撃を喰らわせる。
俺の全身に痛みという衝撃が走る。
「そこまでは……言ってねぇ…………よ。」
そして、殴り飛ばされると俺の体は地面に転がった。
「このままじゃあ、終わらない」
フィツロイがいくら魔法を放ち続けても俺を倒せることができない。。
「どうした? 魔法ってのはこんな物なのか?」
俺はそんな風に余裕そうに言っているが、今にも倒れそうになりながら、身体中から血を流している。
「はぁ~。明山さんはそんなに丈夫なんですね。元から良いのか。鍛えたのか。
あなたは普通じゃない。当たり前ではない。
そこまで傷ついても立ち向かってくるあなたに。私は敬意を評します。
もう焦らしたりしません。確実に殺せる方法で、確実に経験者としてあの世の道案内をしてあげますよ」
魔法を放つのを止めて、フィツロイは肩の力を抜いた。
その時、俺のポケットの中に入っている携帯の通知音が響く。
「ん?」
携帯を開いてみると、黒から電話がかかってきていた。
携帯を耳にあてながらも、俺はフィツロイへの注意を怠りない。
フィツロイはその場で動かずに俺を見ている。
戦闘中に電話をする奴がいるだろうか。いや、いないだろう。
しかし、心優しいフィツロイはその電話が終わるのを待ってくれている。
「もしもし。何だどうした黒。俺は今、戦闘中で忙しいんだけど?」
「明山さん聞いて。そいつの付喪人の能力は……正体は……。離れるのよ。あいつと一対一では絶対に勝てない。確実に殺されちゃうわ」
黒は焦りながらも電話で話してくる。
それほど重要な内容を話そうとしているのだろうか。
「何なんだよ。そこまで焦ってどうした?」
「だからあいつの能力は……。スパッタイオンポンプです。」
「はぁ?」
なんだそれ? 聞いても分からなかった。
スパッタイオンポンプとは……。
イオンポンプともいうが、真空ポンプの種類である。
真空ポンプとは容器等の中より空気を吸出して真空状態を作るのだ。酸素を減らし、音の振動を無くし、電気を通さず熱を冷やさない。
そんなスパッタイオンポンプは極高真空をうみだせるのだ。
簡単にいうと真空状態を作るだ。
これでいい。これで理解できる。
なので空気が無くなったり、音が聞こえなくなったり、酸素が減ったことで火が消えるのだ。
そんな事を携帯を使って調べる中では、既にフィツロイの能力は発動していた。
だが、既に謎は解けている。
後はこの能力を解除する方法である。
先程のフィツロイの台詞にもあったように今度は確実に俺を殺すまで能力の解除をやめないだろう。
時間は数秒しかない。
この空間から抜け出すには……。
「─────!!」
英彦が何かを叫んでいるが、こちらからは聞こえない。一瞬でもよかった。隙を作る時間があればよかった。
能力の謎を理解したのに……あと少しだったのに……。
じわじわと薄れていく視界や意識で生命の危機を感じた。
このままでは本当に死んでしまう。
「『百円連続パンチ』…………」
最後の力を振り絞り俺は地面を殴って土煙を撒き散らす。
その土煙は宙を風に流されながら周囲を舞う。
「煙幕のつもりですか。今さら何をしても無駄ですよ……いや、これはまさか!?」
土煙は遠くへと飛ばされていかず、ある一定の位置で俺を囲むように宙を舞っていた。
「私の能力の範囲を測るために……いや、させません。明山さんの死因は窒息死。既に決定しているんですよ」
土煙を撒き散らすと、一定の位置で空中にくっつき止まっている。
そう、そのくっついた場所がフィツロイが発動していた能力の範囲の壁。
「これは俺の困難だ。そしてこれが新しく成長した自分の実力の証明だァ!!!!!!!」
ニヤリと思わず笑みを浮かべる俺に対して、フィツロイは焦って止めにかかるが。
「『百円連続パンチ』」
目に見えない壁の内部から激しい拳の止まらない連打。
先程とは威力が違い、今回は全力の連打である。
「やめてェェェェェェ!!!
内部から壊さないでください!!!!!!」
「おりゃァ!!」
内部から見えない壁が砕け散る。
遂にフィツロイのスパッタイオンポンプの付喪神の能力が突破された瞬間である。
「まさかそんな…………。私の能力を……。大丈夫、もう一度……。今度こそ止めを……はっ!! 」
もう魔法も付喪神の能力も通用しないフィツロイに勝ち目はなかった。
フィツロイの視界には誰も写っていない。
俺は瞬時にしゃがむと、
「『五十円波動光線』」
近距離で放たれる光線。
光線にフィツロイの身体は包まれていく。
「こんな所で……私は……私は……私の戦いは終わってしまったんですね」
避ける暇もなく次第にフィツロイの体は光に飲み込まれていった……。
町に朝日が昇る。
町はいつも通りの朝を迎えるのだ。
ただ、ひとつの魂が消えそうになっている事以外はいつもの朝だ。
彼女は地面に横になって静かに空を見上げていた。
「明山さん。まさか本当に魔王軍幹部を倒すなんて凄いですよ……。よかったですね。一気に出世ですよ」
彼女の体は次第に薄れていく。
そんな惨めな彼女の側に俺は座った。
彼女は俺を見て、にこやかな笑顔を見せてくる。
「出世なんて興味はない。そんな事より、お前まさか昇天しているのか?」
もう彼女の足の部分は既に消えていた。
「はい。私は幽霊ですよ。
この世に存在できるほどの力も使い果たしてしまったんです。
あとは、審判を受けるだけ。
まぁ……あの人に会って、審判を聞いても決定しているんですけどね」
まるで自分の未来を理解しているかのように話してくるフィツロイ。
あの人という奴とは俺にも少し関係がある。
「あいつはドジな奴だから。きっとまたドジをして別の世界へ送ってくれるよ。消滅なんてしねぇよ」
「まるで会ったことがあるみたいな言い方ですね。駄目ですよ?
ドジだなんて言ったら天罰が下っちゃいます」
もう既にフィツロイの下半身が消えていた。
英彦も走って近づいてくる。
彼も戦った縁があるから最後くらいは彼女を見届けるつもりなのだろう。
英彦が俺の側に来るとフィツロイは英彦に一言。
「英彦さん。あなたのおかげで久々に魔法の血統に会うことができました。よかった……魔法もまだ消えてはいないんですね」
嬉しそうに話しかけたフィツロイに英彦は少し困った表情をした。
「すみません。フィツロイさん。実は僕にもどうやって魔法を使ったか分からないんです。必死だったもので……」
その返答に少しガッカリとした表情を浮かべたが、彼女は空を見上げる。
いよいよ消えそうな様子になった時、俺は我慢できずに彼女に質問をしてみた。
「最後に言い残すことはないか? あのお爺さんとか、身内とか、後悔とか」
まあ、お互い短い時間だったが殺し合っていた仲だ。それくらいは聞いても良いのではと思う。
「あなた達は優しいですね。そうですね……。
家族には前に遺書を送りましたし……。後悔なら、魔王様からの命令を達成出来なかった事ですかね」
死ぬ間際まででも、彼女は魔王に忠誠を誓っているのだ。
だが、少し間を空けてフィツロイは発言の訂正をした。
「あっ、いや違います。後悔は……私の後悔は……」
今までの人生を振り替える。
「明山さんに、貴方に負けた事です。
この魔王軍幹部である八虐の一人。不義のフィツロイがあなたのような素晴らしい人間に負けた事ですよ」
だが、その発言は怨みも悔しさもなく、清々しい喜びの笑顔だった。
「そうか……。なら、いつでもこい。
何度でも返り討ちにしてやる。ただし、今度は人のためではなく自分のために挑んでこいよ」
俺はその笑顔に答えるような返事をする。
フィツロイは静かに再び空を見上げる。
いつぶりだろうか。こんな不思議な男に会ったのは……。
あの時以来だろうか。政剣に会った時以来だろうか。
もう少し早く会いたかった。
もう後悔はない。昇天してもいつか会える。
そんな気がする。
そう思う。
もう二度と裏切られない。
また彼と戦える。
うん、会えるんじゃないかな。
──魔王様すみませんでした。
今までお世話になりました。
もう後悔は無くなりました。
もう未練はなくなりました。
フィツロイには最後に伝えたい事があった。
「あの、明山さん」
もうフィツロイは肩ほどしか残っていない。
おそらくこれが彼女の遺言となるだろう。
「おう。どうしたフィツロイ」
「明山さん。私……」
もうその声にすら力のない弱弱しさが残っている、
「ん? どうした?」
「私……あなたの事が……」
「『強制昇天札付きライフル』~」
突如、放たれた銃弾がフィツロイを貫く。
「「え?」」
「え? キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
皆が驚く中、フィツロイは無事に強制的に昇天した。
その場に静かに残された二人。
「明山さーん」
遠くからこちらへ近づいてくる黒とお爺さん。
二人は手を振りながら走ってくる。
「大丈夫ですか? お二人とも」
「明山さーん。英彦ー。生きてる?
ギリギリのようだったけど……。
私のおかげで助かったんだから、帰りにどこかでご飯を奢っ…………」
完璧に空気の読めないバカだ。大馬鹿野郎だ。
何も知らない二人が俺たちのためにやってくれた事なのだろうが、今回ばかりは俺の感情も怒りに染まってしまった。
「このバカ野郎がァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
「ふぇ!????」
怒られて訳が分かっていない黒は、?マークを浮かべて俺の話を黙って聞いている。
「タイミングくらい考えろ。この空気も読めない食費キラーの大食い女がァ!!!!!!!!」
「ちょっ……え?」
「お前が来なくても既に勝敗は決まってたんだ。お前がトドメを指すから……。
あいつは絶対後悔が残って成仏出来ないじゃないかァ!!!
お前が一人の魂をこの世に未練を残した状態にしたんだぞ!!」
そして、そのまま俺は追い討ちとばかりに彼女に言いはなった。
「お前にもう一ヶ月間は奢らないからな。自腹だァ!!!
ちゃんと自腹で払えよ。今回の罰だ。
今回の事から学んで、周りの空気くらい読めるようになれ。このチート能力持ちの怪力女め!!!」
ここまで相手に怒ったのはいつぶりだろうか。
すると、黒は俺の発言にイラッときたのだろう。
「誰が、空気の読めない食費キラーで、チート能力持ちの怪力、頭の悪いチビで嘘つき嫉妬深い女よ!!!」
泣きながら本気の黒の拳が俺の腹に強烈な一撃を喰らわせる。
俺の全身に痛みという衝撃が走る。
「そこまでは……言ってねぇ…………よ。」
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