私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

11 リリーナラリス視点

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「アミエル様…もしも許されるなら、私はアミエル様に教えていただきたいです。」


 私に文字を教えてほしいと訴えるこの少女。先日殺人タックルをかました子。
 褒美と聞いて勉強したいと願うとは。食べ物とかお金とかかと思っていましたわ。
  
 しかも教師ではなく、私に教えてほしいですって…?


 私は思わず目の前の少女を観察してしまった。
 サラサラの灰色の髪を長く伸ばし、顔の半分は見えません。ですが不思議と不気味といった印象は受けず…あのタックルを見てしまったせいかしら。

 そして私は今、猛烈に感動しています。
 誰かに求められるなんて…初めてで…!

「ふふ…。」

 思わず、笑ってしまいました。
 …私、生まれて初めて笑った気がします。演技でもなく、本心から…。


 そうしたら彼女は、今度は可愛いなどと言ってきて…!そ、そんな言葉、初めて…!思わず赤くなってしまいましたわ。
 彼女の目は見えませんが、今ものすごくニコニコしているのが分かります。
 そして私も釣られて、一緒になって笑ったのでした。


 彼女の名前はアシュリィ。素敵な名前ですわ。
 もう教会に行くつもりはなかったけれど、なんだか…初めて楽しみができました!




 

 それからの日々は、とても楽しかったですわ。

 
 アシュリィに文字を教える。ですがアシュリィは一度教えてしまえば二度と忘れないようなのです。まあ本人曰く「覚える気が無ければいつまで経っても覚えられない」だそうですが。都合がよくて羨ましいですわ…。
 むしろ算術等に至っては、私の方が教わりたいくらいですわ。
 なぜそんなに頭がいいのか聞いてみましたが、「私、知力のステータスが高いんですよ!」と言っていました。

 なるほど。私達の年頃の知力の平均は50。私は180ですが…きっともっと上なのですね(8600)。
 生まれつきのステータスを上げる事はとても大変と聞きますので…でもいつかきっと、彼女に追いついてみせましょう!(無理です)

 そして平民にしては言葉使いが丁寧ですね。たまに「こんちくしょー!」等と言っているのも聞きましたが…。
 お父様かお母様が、素晴らしい方だったのでしょうね。




 アシュリィと勉強をしていたら、恐る恐る他の子も寄ってきました。

「あの、もしもよろしければ…わたしにも教えていただけませんか…?」

 平民が貴族に声をかけるなど。本来であればご法度です。ですが私は慈善活動と称してここに通っている身。むしろもっと交流すべきなのです。
 分かってはいたのですが、以前は家族に認められたい一心で他の誰かと親しくする気が無くて…子供達も私を恐れていましたし…。

 アシュリィの方をチラッと見ると、ニコニコ笑いながら私を見ていました。最近彼女の表情が読み易くなってきましたの。
 しかし、決めるのは私…という事ですか。


「…ええ。ではこちらにいらして?あなた、お名前は?」

「!はいっベラと言います!ありがとうございますっ!!」


 この子も、こんなにも笑顔で私に向かい合ってくれる…。



 その後も何人もの子供達が教わりにきました。いえ、シスターも混じっていますわね。
 最終的に、教会の全員が参加していますわ。アシュリィはとても楽しそうに、嬉しそうにニコニコしています。

 最初はおっかなびっくりに私に話しかけていた子供達も、だんだん気軽に声をかけてくるようになりました。

 私は…とても嬉しかった…。
 不快感などまるでなく、むしろ心地良い…。

 ですがもしも街等で、うっかり他の貴族に声をかけてしまっては大変です。しっかり言い聞かせておかなくては!


「よろしいですか、皆さん。貴族には様々な考えの方がいます。
 ですので私にするように、親しげに声をかけてはいけませんよ!相手が許可をしたら、です!」

「「「はあーーーい!!!」」」

 とても元気なお返事、よろしい。



 最初は週に一度だった訪問も、数ヶ月経った今では1日置きに来ています。
 毎日が楽しいなんて、初めてです。


 子供達と並んでお昼寝するのも(雑魚寝と言うらしいですわ!)、森で木の実を採ってその場で食べるのも。息を切らして走り回って遊んだり、木登りをしたり木から落ちたり!(トロが下敷きになり、私は無傷でした)

 全て初めての経験で、とても楽しいのです!

 アシュリィは私に、沢山の初めてをくれました。
 もしも彼女に出会わなければ、私はどうなっていたのでしょうか。

 今の私は、家族の愛など完全に忘れていました。よくよく考えてみると、なんであんなに拘っていたのかしら?
 外の世界に目を向ければ…私を慕ってくれる人達がこんなにいてくれた…。



 そうそう、トロとも仲良くなれましたの。

 あの日、いざとなったら私を見捨てなさい、と言った事がありましたね。
 
 それから訳一ヶ月後。トロが真剣な顔で言いました。


「お嬢様、僕はあれからずっと考えていました。

 僕は弱いです。旦那様に命じられ護衛をしていますが…恐らくお嬢様の方が強いです。植物の世話が好きなだけの、ただの役立たずです。
 それでも、今僕はお嬢様の護衛です!いつかお嬢様をお任せできる人が現れるまでは…僕は必ずあなたを見捨てません!
 役立たずだって、盾になる事くらいは出来ますから!」

「トロ…。」

 それからトロは、ちゃっかり私の授業を皆と一緒に受けていた。
 私が走り回っていれば「お嬢様~!」と言いながら追いかけてきます。
 小さい子と取っ組み合いをしていれば、「おおおお嬢様ーーー!!!」とあわあわしています。


 そしてあなた最近…ベラを意識していますわね?ふふ、ベラの好みが逞しい男性と知り、毎日筋トレしてますでしょ?
 

 ふふふ。応援、してますわよ!










名前:リリーナラリス・アミエル
性別:女
職業:侯爵令嬢
Lv.2(1)

HP   250/250(300)
MP   380/380(18)
ATK 15(23)
DEF 19(20)
INT  180(50)
AGI  31(25)
LUK 3(45)


スキル:ーー
称号:ーー


 リリーナラリスのステータス。()は同世代の平均値。


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