私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 時間の流れは早いもので、記憶を取り戻してから2年。私は8歳になった。

 あれから平和な日々が続いている。リリーナラリスは…子供達と完全に打ち解けているし、「リリー様」と呼ぶのを許可している。
 あれなら、もう悪役令嬢なんぞにはなるまい!強制力?…知らん!!

 そして何人かの子は教会を卒業した。
 その中のベラちゃんだが、なんと今トロくんとお付き合いしているらしい!
 ベラちゃんは街の食堂で働いているが、結婚も秒読みかも~?んふふふふ。
 いやあ、最初はヒョロヒョロだったトロくんが、いつの間にかムッキムキになっちゃって…リリーの後押しもありベラちゃんに猛アタックしたらしい。
 青春だね~若いっていいね~。



 そういえば私は、教会の中では顔を隠すのをやめた。髪邪魔だし。切っ掛けはリリーの何気ない言葉だった。

「ねえアシュリィ。私、あなたの顔を見てみたいわ」
「わっ私もです!アシュリィ、だめ?」
「ん?ん~…
 母が言うには私…珍しい目の色らしいんですよ。だから隠してただけで、だめってことは…」
「あら!では見せてちょうだい!」
「うーん。はいどーぞ、つまらないものですが」


 私はぺろーんと前髪を上げた。
 そしたらリリーもベラちゃんもカルマもシスターもトロくんも他の子達も、真っ赤な顔して固まった。
 …そんなに衝撃な色してた?赤い目っていうと悪魔っぽいよね。でも以前調べたら、魔族も別に目の色が赤いわけではないらしいし…

 リリーは比較的早く復活した。

「そっそそそそんなお顔をしていたのね。たしっ確かに赤い目は見た事ありませんが…こっこっこの教会内では隠さなくてもいいのではなくなくて?」
「リリー様、面白い事になってますよ?」

 愉快な事になっているリリーの発言に、他の子達も賛同していた。
 …まあ、その方がラクだしいっか。



「あなた、綺麗な顔立ちをしていますわね…」
「ええー?いやいや、綺麗っていうのはリリー様みたいな人!わたしゃいっつも側で美少女を眺められて、眼福ってモンです」
「アシュリィ、おじさんくさい。って無自覚なのね…。あ、カルマの初恋が奪われた…」
「?カルマがどうかした?あ、ベラちゃんは可愛い系だよね!というより褐色の肌に大きな瞳、南国の離島のアイドルって感じ!」
「あい、どる?」
「おっといかん。ささ、休憩終わらせて勉強の続きしましょう!」




 …という事があったのだ。懐かしーい。



 さーて、今日もリリー来るかな。魔導書読みたいって言ったら、持ってきてくれるって言ってたんだよねー!
 本格的に魔法の勉強が出来る!!とか考えていたら、後ろからシスターに声をかけられた。


「アシュリィ、アシュリィこちらにいらっしゃい」
「シスター?私今日はまだ怒られる事してないよ?」
「違うわよ…頼みたい事があるの」
「あ、なーんだ。どんな?」
「全く。実は…今日から新しい子が入るのよ。ただちょっとその子気性が荒いようで…みんなに馴染むまであなたに付いてほしいの」
「ちょっとぅ、か弱い女の子にそんな事言うなんてぇん」
「か弱い女の子は素手で猪を狩らないわよ?」
「……」


 もうこの2年で、私のステータスが桁違いなのはバレバレだ。明確な数字は誰にも教えていないが…みんな悟ったらしい。
 リリーすらも「最初はあなたに勝つ!とか思ってたけど…そんな気すら失せちゃったわ」と言っていた。

 喧嘩は誰にも負けないし、素手で狩りをする。どんだけ走り回っても息も切れないし、寝惚けて壁に頭突きしたら大穴が開いた。

 …うん、認めよう。私はゴリラだと。
 ゴリラより強いけどね???



「…で、どんな子ですか?」
「それがねえ。年齢も分からないし名前が無いって言うの。青い髪の男の子としか聞いてないわ」


 ふうん?私も誕生日はあやふやだったけど大体の日を自分で決めた。
 しかしその子は名前もないときたか…


「…とりあえず、会ってみます」
「お願いね」


 そうして私とシスターは、男の子を迎えに行った。

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