私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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「ってシスター、どこ行くの!?教会出ちゃってるけど?」
「今から迎えに行くのよ~」

 迎えに行くってまさか、外とは思わなかったよ。
 そして着いた先は…警備隊の詰所?…おいおい。




「こんにちは、来ましたよ」
「こんにちはー」
「お、サラさん待ってましたよ!あとは…殺人タックラーの嬢ちゃんも!」
「おう嬢ちゃん!よく来たなー」

 サラとはシスターの名前だ…って聞き捨てならん異名がついている!?

「待って待って。殺人タックラーってなんですか!?」

 警備隊のおっちゃん達に詰め寄るも、きょとんとした顔をされた。

「ん?以前侯爵令嬢を襲った男にタックル喰らわしたの嬢ちゃんだろ?
 それ以来ここじゃあな、殺人タックラーって呼ばれてんだよ!」

 がははははっ!じゃないわーーー!!
 だが、タックルは事実…っ!

「はあ…もーいーです。で、男の子は?」
「おう。今連れてくらあ」


 そして待つ事数分。お兄さんに連れて来られた少年は、見るからにガリガリで傷だらけの身体をしていた。
 シスターも隣で息を呑んだのが分かった。これは…


「隊長さん、彼は…」
「ああ、どうやら隣の領地にあるスラムに住んでたようでなあ。先週肉屋のコロッケ盗んだもんで捕まえたんだが…このナリでなあ。
 あんま酷え扱いする訳にもいかんし…そんで殺人タックラーの嬢ちゃんもいる教会に連絡したんだ」

 シスターに隊長と呼ばれた髭面のおっちゃんが答えた。タックラーは忘れろや。
 この領地にスラムはない。あのいけすかない侯爵家だが…税は重くないし領主としては素晴らしい人物なのだ。腹立つが。
 そしておっちゃんは私に耳打ちしてきた。

「あの坊主よお…コロッケ盗んだ際に肉屋のオッサンに怪我させちまってな。
 んでもそのまま逃げねえで隣の魚屋に助けを求めてな。そんであっさり捕まったんだが…性根はいい奴だと思うぜ?
 頼んだぜ、嬢ちゃん!」


 そう言いながらおっちゃんは、私の背中をばしばし叩いた。痛くはないが、やめい。
 そうか…あの魔力が6しかないおじさんを…

 私は少年に向き直った。


「はじめまして、私アシュリィ。今日からあなたの家族よ。よろしくね」

 私はひとまず笑顔で(目は隠れてるが)優しく言いながら手を差し出した。


「うるせえ、タックルゴリラ」


 うふ。気付いた時には私は、少年にアイアンクローを喰らわしていた。

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