私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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「それで少年は?もう大丈夫なの?」
「はい。2週間かかりましたけど…精神的にも体力的にも落ち着きました」

 
 よーやく少年専属から解放された私。さって!今度こそ魔法の…


「なあ、いつになったらオレに名前つくの!?ですか?」
「「あ」」


 今私は、リリーと少年とお茶をしている。お茶っつってもあれよ、貴族のお茶会みたいなアハハウフフな感じじゃないよ。
 どっちかってっと縁側で緑茶すすってお団子食べてるようなのんびりしたもの。会話は少ないけど、穏やかな時間を過ごせる。
 
 そして少年もリリーに慣れたようだ。元いた地域の領主がクソ貴族だったようで、最初はリリーに対しても警戒してたもんだ。私の後ろから。


「なんだかずっと少年で通じてたから、すっかり忘れてたわね」
「みんなそう呼んでますもんね~。シスター達なんかも少年くんって言ってたし。
 で、少年。希望ある?昔呼ばれてた通称とかないの?」
「んー…」


 少年は考え始めた。あと誕生日と年齢も考えなきゃねー。


「駄目だ、思いつかない…リリー様とアシュリィ、つけてくれ」
「「ん~~…んんん~~~…」」
「…そういえばお前、オレのこと1度「チワワ」…って呼んでなかった?あれなんだ?」
「あら。いい響きじゃない?どんな意味なの?」

 あれか…。小さい体でキャンキャン吠える犬って勝手なイメージで言っちゃったんだよね…日本語で。
 なんか日本で発売されてたゲームだからか知らんけど、結構似通ってるところあるんだよね。まあ習慣とか生活様式は違うけど。


「あー、「チワワ」はね…異国の言葉でチワワのことだよ」
「チワワ…あのちっこい犬!?」
「ふっ!…それは不採用ね…っ」

 あーらら、やっぱり怒っちゃった。しょうがないじゃん!リリーもめっちゃ笑ってるしー。

「あーもう!そんじゃあんたは今日から私の弟、アシュレイだ!ついでに誕生日はこの教会に来た日、7歳ね!!」
「アシュ、レイ?…うん、それでいいや。でも7歳は駄目だ!オレも8歳な!!」
「…決まりね。さ、みんなに報告に行きましょうか」



 こうして正式に少年は、アシュレイと名付けられた。勢いだったけど…我ながらなかなかいい名前だね!








 そうして今度こそ3度目の正直!魔法の練習であーる!!
 簡単な生活魔法はもう出来るし、後はゲームみたいな魔法だけ!

 そしてそういった魔法は、魔導書を読むことで習得できるらしい。簡単すぎないかって?んなこたない。
 知力のステータスによって、書いてある事が読めなかったりするらしい!!正確には文字は読めても、理解が出来ないとか。
 例えるなら、そうだな。ここに「LOVE」という単語があります。
 知力の高い人は「ラブ」と読めるけど、低い人は「える、おー、ぶい、いー」としか分からないんだって。

 つーまーりー、チートなステータスの私なら恐らく、ほぼ全ての魔法を扱えよう!!!
 そしていつか、自分のオリジナル魔法を創りだすのだ!

 そもそもその魔導書が、平民に手が届く値段だと低レベルなのしか無いんだけどね。だからリリー様に侯爵家のを貸してもらうのさ。


 って最初はテンション上がってたけど…



「はい、今日はこのくらいでって…どうしましたの?浮かない顔ですわね」
「いや、えっと…その」
「お話しなさいな。気が楽になるかもしれなくてよ?」


 そう言いながらリリーは、私の隣に腰掛けた。もちろん地面だ。
 悪役令嬢リリーナラリスだったら、地面に座るなんて死んでもごめんだったんだろうなー。なんてどうでも良いことを考えてしまう。


「ん…私の考えがおかしいってのは理解してるんですけど…
 こう、ステータスで人生決まっちゃうってのが、なんだか…生まれながらに勝敗が決してる気分になる、といいますか…
 ステータスが努力で多少は伸ばせるのは知っています。でも10を20に出来ても、10を1000には出来ないでしょう?だから…その。つまりですね」
「いいわ。あなたの考えは伝わりました。
 ……じゃ、私なりの考えを言うわね?
 まず…生まれで決まるという事。そもそも平民と貴族だって生まれながらに決まってますわよ?」

 たし!かに!!家柄とかほぼない日本の常識が邪魔しとった!


「そしてステータス…確かに10を1000には出来ません。でも、500には出来るかもしれなくてよ?」
「そうなんですか!?」
「ええ、昔の人ですけれどその記録がありますの。ただ数十年かかったようですけど、不可能ではないと証明されています。
 それに前例がないだけで、1000にする事も出来るかもしれませんわね?」

 リリーはそう言って笑った。
 リリー、本当によく笑うようになったなあ。でもお屋敷では一切無表情を崩さないらしい(トロくん談)。
 だから彼女の笑顔を見ていると、侯爵家の人達は天使の微笑みを見られなくて可哀想だなあ、と思ってしまう。

 …って思考が逸れた。



「しかしアシュリィは面白い考え方をしますのね。私も言われるまで思いつきもしませんでしたわ。
 そもそもステータスで仕事を決めるのは当たり前というか…例えば魔力量が3しかない人がいたとして。「魔法師になりたかったなあ」と考える人は稀だと思いますわよ?
 平民だろうと貴族だろうと「3かー。じゃあ魔法関係以外の仕事しよう」と考えると思いますの」
「えーとつまり…例えば、人間は水の中では呼吸が出来ないから、海の底で生活するのは不可能。
 でもそもそも海底で生活する必要がないから、そういう考えすら起きないって事ですか?」
「簡単に言えば、そうですわね。そして魔法なりなんなりを駆使して、なんとか海の中で暮らそうとしているのがアシュリィの考えかしら」


 ほう…なんとなく分かった。
 …私、まだまだ日本の常識に囚われてるな。ここは剣と魔法の世界。科学の世界じゃないんだから!


 私は勢いよく立ち上がり、リリーに頭を下げた。

「ありがとうリリー様!スッキリしました!!
 では早速、魔導書読ませてくださあい!!」
「ふふ、喜んで」


 おっし!いっちょやったるか!!!

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