私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
16 / 164
幼少期

16

しおりを挟む


 リリー様と語り合ってから数日後。私は順調に魔法を吸収していった。思った通り、用意された魔導書は全て読むことが出来た。
 ただ練習する場所がなくて…使ったことはないんだよね。

 そんな、ある日。



「ねえ、今日のリリー様…元気なくない?」
「やっぱそう思うよな…」
「どうしちゃったのかな…?」
「おなかいたいのかな?」

 リリーの様子がおかしい。私とアシュレイ、カルマと最近教会に来た4歳の女の子、パイル。この面子でどうしようかと相談中。

 今リリーはちびっ子と積み木で遊んでいるが…明らかに元気がない。家で何かあったのかな…?
 ここはやっぱり、ねえ?




「「「「ト~ロ~くんっ!」」」」
「ひいぃっ!!?」

 おやおや、トロくんよ。身体は大きくなっても気弱なのは治らないね~?部屋の外に呼び出して4人で囲んでやったら、分かりやすく狼狽えている。


「え~っと…な、何か僕にご用で?」
「トロくん、まだるっこしいのは私嫌いなの。
 リリー様、どしたん?」
「そ、れは…」


 この反応…口止めでもされてんのか?そんなに言いづらい事なのか…



「…カルマ、パイル。ごめんねだけど部屋に戻っててくれる?」
「えー?パイルも…もご」
「わかったよ、リィちゃん。でも、後で教えてね?」

 カルマはパイルを連れて部屋に戻った。
 理解が早くて助かるわ。さて。

「アシュレイはどうする?」
「聞くに決まってんだろ」
「おっけい。さて、トロくん」

 改めて、問いかける。今度はさっきと違って、覚悟を決めてから。
 十中八九家庭の問題だろう。彼女はもはや悪役令嬢とは程遠い性格とはいえ…元凶の家が変わった訳ではない。
 だが変わったものだってある。以前の私だったら、元気ないなーと思いつつも放っておいただろう。仲良くなれたのだって、ほぼ偶然が重なった結果とも言えるし。

 でもそれでも。今の私は、リリーナラリスを助けたい!



「トロくん。私はね…不敬かもしれないけれど、リリー様を友人だと思ってる。
 立場も何も違うけど、リリー様が大好きなの。優しくて笑顔が可愛くて、ちょっとお転婆で頑固な所も全部…大好き。
 だから、リリー様が苦しんでいるなら助けてあげたいの。話を聞く位は出来るし…最終的には物理で殴れば大体なんとかなるし!」
「「いやいやいや!!」」

 男2人がすかさず否定した。ま、まあ確かに。流石に侯爵をぶん殴るのはまずいか…?あぶな。


「とにかくっトロ!オレも同じだ。まあ過ごした時間は短えけど…。リリー様をトモダチだと思ってるし、オレだってあの人の事、すっ好きだからな!」
「アシュレイ…可哀想だけど身分の差が…」
「そっちの好きじゃねえーーー!!!分かるだろっ!!?」


 アシュレイは顔を真っ赤にして怒ってる。あはは、分かってるって!





「…だ、そうですよ?お嬢様」
「「え??」」


 アシュレイとぎゃーぎゃー言ってたら、トロくんがふいにそんな事を言った。
 いや、リリーは今…

「「んぎゃああああーーーっっ!!!??」」
「…驚きすぎ、ですわよ」

 いいいつの間に私達の背後に!!?思わずアシュレイと抱き合って後ずさっちゃったよ!
 って、涙…?


「リリー様ごめん!?いや幽霊見たようにビビっちゃったけど、決してリリー様本体に恐怖してる訳ではなくて!!」
「お前何言ってんだ!だからな、リリー様?え~~っとだから、アレですよ!アレ!!」
「あんたは痴呆か!!」
「…ふふふ。もう、おっかしいんだから」
「「…リリー様」」


 私達のやり取りを見て、リリーは弱々しく笑っている。涙を流しながら。

「でも、よかった…友人だと思っていたのは…私だけかと思っていましたから」


 そっから聞いてたんかーーーい!!って事は…

「つまり私達は両思い…!?」
「なんでだよ…」
「ええ、そうみたいね」
「そうなの!?」

 アシュレイ、うっさい!!まあおふざけはこの辺にしておいて。
 私はリリーの手を取り、目を合わせて言葉を発した。アシュレイとトロくんもそっと重ねてきた。

「リリー様。本当に私達を友達だと思ってくださるなら。話してください全部」
「そうです。オレ達がリリー様の不安も心配事も全部、払ってやりますから。
 また、チビどもに笑顔を見せてやってください」
「お嬢様、僕だって最初っから最後までお嬢様の味方ですよ」



 そしてリリーは泣き崩れてしまった。人前で泣くなど貴族令嬢としては失格かもしれないが…私達は、そんなリリー様が愛おしくてたまらないのだから。

しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...