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幼少期
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しおりを挟むいえいいえいみんな、アシュリィだよ。
私とアシュレイが伯爵家で勉強を始めて早2週間。既に折り返し地点まできているのだ。
まず私達はマナーと、貴族社会についてを勉強した。
貴族にはこちらから話しかけてはいけない、許可を得てから発言するという超基本から、他家にお呼ばれした時の立ち振る舞い等細かい所まで。
貴族の階級はもちろん、使用人内での上下関係も大事だ。私達の目指す執事より上の使用人は少ない。むしろ他の使用人に仕事の指示をしたりするのだからやる事は多い。
まあ…侯爵家では意味ないと思うけどね!この辺はアシュレイは覚えきれなかったので、ひとまず私がカバーする。
お茶の淹れ方、届いた贈り物の対処法…いや~ノートが1日で2冊出来ちゃった。溜まるわ溜まる。
私は一度聞いたら忘れないので、これはアシュレイ用。こいつはやっと読み書き最低限終わったレベルだけどね…
そういえばそのアシュレイ、少し雰囲気変わった?こう、前はなんか焦ってるっていうか落ち着きがないっていうのか…
大人相手には常にビビってたけど、伯爵家の使用人さん達と打ち解けてるし。いい傾向だけどね。
あと、めっちゃハロルドさんリスペクトしてる。そりゃ尊敬出来る人だが…もはや崇拝レベル。
…まあいっか?
そしてようやっとマナーの及第点をもらえた。2週間かかった…!
お世話についても一通り教わり、これから毎日練習するのだ。手伝ってくれるのはメイドさん達で、お嬢様役をお願いする。
ただヘアスタイルや化粧、アクセサリーやドレス選びなんかは流行もあるから…勉強が終わる事はない。
今教わってるのは家事。家具のお手入れ、食器の手入れ。材質によって手入れや保管方法・場所が変わるので、全て頭に叩き込んだ。
余談だが。私は一度聞いたら忘れないけど…それをすぐに引き出せるのかは別問題なんだよなあ。所謂、ド忘れ状態になる事がある。
すぐ引き出すにはどうすればいいのか…今後の課題だ。
「では2人は今日から、別れて学んでもらう」
「「はい」」
ハロルドさんにそう告げられ、ついに来たかと思った。
私はこれから勉強、魔法を重点的に。アシュレイは剣術を重点的に。
互いに毎日のルーチンワークの合間にこなすのだ。
だが私だって護身術なんかは教わるし、アシュレイにだって魔法を覚えさせる。
え?タックルしろって?アホか!あんなモンしてる間にもう1人悪漢がいて、お嬢様が連れ去られたとかなったらどうすんの!
と言うか…ステータスが高いからいい訳じゃないのだよ。と教わった。
言うなれば数値は食材だ。そして私は料理人。素晴らしい高級食材を取り揃えていても、私の腕が悪ければ食材はゴミになる。
逆に安い食材でも、めっちゃ美味しい料理を作れる人もいる。
要するに。高級食材(チートステータス)+超一流シェフ(私)になれば…!っしゃい!!
そしてアシュレイには、防御と簡単な治療の魔法を覚えてもらう。何かあった時のために。
2人で分担する事だって大事だが、2人とも同じ事を出来る様になるのが一番なのは当たり前よね。
アシュレイは分かって無かったが。
「お前が魔法使えるんだったらオレ魔法やんなくてよくない?」
「あんた、私がいない隙にお嬢様に毒でも盛られたらどうすんのよ」
「あー…。ごめん…」
うんうん、間違ったと思った時にすぐ謝れるのは、アシュレイの良いところだ!
「頑張ってね、アシュレイ」
「そっちもな、アシュリィ」
そうして私は図書室に向かうのだった。
「…アシュリィ、この魔導書を全て読んだのですか?」
あ。ヴァニラさんだ。
ぶっちゃけ魔法の勉強って、魔導書を読む事しかやる事がない。ただ実際使う場合には、教師の立ち合いが必要だが。
私の場合、最後2日間にぶっ放す予定だ。これは私が希望した。普通だったらすぐにMPが尽きるから、毎日実技をするのだが…チートとはこういう時に便利だね!
「貴女がそれでいいのなら」…って認めて貰えたし。
そして私は今、読み終わった魔導書の山に囲まれている。
…確かに早いな?このままじゃ、明日には終わっちゃいそう。
「いつもこんなに早くないのですが…?」
「…アシュリィ、ステータスを確認してみなさい」
「はい。ステータス」
…特に変化は…ってアレ?
スキル:速読
称号:──
「速読のスキルがついています。最近までありませんでしたが」
「やはり…そのお陰で貴女は、通常の数倍で書物を読めるようになったのですね」
マジか!!!やったあ、すっごく便利じゃん!!
ここ読みたい本とかいっぱいあったのに時間が足りないって諦めてたんだから!!ひゃっほおおうい!!!
感情をあまり表に出さないようにしてるので、脳内でフィーバーするのです。
「では明日で魔導書は読み終わりそうです。その後、勉強に関する本を読んでいても構いませんか?」
「良いでしょう。知識は必ず貴女の力になります。頑張りなさい」
「はい」
許可をもらった私は、また読書に集中した。
そんな私の姿を見て、ヴァニラさんが微笑んでいたなんて知る由もないのであった。
~アシュレイside~
「ふっ!…はあっっ!!」
「よっし、いいぞ坊主!次はこっちだ!」
「はいっ!!」
ガスッ!バキィッ! と鈍い音が練習場に響く。
「どうかな、彼は?」
「お、ハロルドさん。いやあ、ご覧の通りですよ。今団長が相手してるんですけどね…筋が良いですね、少年」
「ほう。団長自らお相手か」
「そろそろいい時間ですね。団長ー!休憩ですよー!」
「おうよ!これでっ終わりだ!」
「うわっ!!」
最後に横から払われて、オレの木刀が宙を舞った。はあ~…きっつ。
先日から始まった剣術の指導…初日は付いていく事も出来なかった。いくらオレのステータスがそこそこ高くても、やはり本職の人は違うなあ!
そしてオレは防御の数値が高い。だから最終的に相手の攻撃を受けつつ、隙を見出して反撃するスタイルに落ち着いた。
アシュリィと組めば、オレが相手の注意を引いて彼女が倒す、という連携も出来そうだな。
「ハロルドさん、いらしてたんですね」
「ああ、見せて貰ったよ。君は筋が良いらしいね」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
よっしゃ、褒められた!!
本来執事には護身術程度の能力さえあればいいらしいが…オレ達は違う。お嬢様を護る為には、最低でも騎士団の隊長クラスの実力が必要だと言われた。
そういえば、このベンガルド伯爵家には騎士団があるけど、アミエル侯爵家には無いって話だったな。最初は貴族みんな持ってるモンかと思ってたが。ますますお嬢様が心配だ。
あっ。そうだ!
「ハロルドさん、団長。ボクのステータス、『スキル:剣術』というのが増えてるんですが。何かご存知ですか?」
「ほう!坊主にも剣術スキルが付いたか。そいつは騎士だったら大体持ってるやつだな!」
やっぱ執事やめて騎士になれい!!と団長さんは言う。この人は…体も声もでけえ…!
「確かそのスキルは、剣の腕前が上がりやすくなる、というものだね。君はまだまだ強くなれそうだ」
「はい!」
そうか、成長促進のスキルって事だな!アシュリィも魔法の勉強は順調だって言ってた。
オレ達は毎晩寝る前に互いの進捗状況を確認しあっている。アシュリィは、もう魔導書は全て読み終えていて、問題なく発動できれば魔法師を名乗れるレベルらしい。
魔法師ってのは数が少ない。貴族ってのは大体お抱え魔法師がいるのだが、特に優秀な者は王宮魔法師になれる。そして魔力ってのは遺伝しないから、平民でも可能性はあるのだ!って習った。
この伯爵家で学べるのもあと1週間を切った。本当に、あっという間だった。
いやあ、お茶の淹れ方梃子摺ったなあ…温度とか時間とか、訳わからんかった。なんとか合格出来たが、まだまだ要練習だ。
お休み貰った日もアシュリィと特訓してたから、結局休んでないんだよな。不思議と辛くはなかったけど。
さて。泣いても笑ってもこの生活は終わりを迎え、オレ達はお嬢様のとこに行く。ハロルドさんにヴァニラさん。他のみんなに認めてもらえるよう、もっと頑張らないと!
「おーい、坊主!次は練習用の剣を使うぞ!」
「はい!!」
胸を張って、またみんなと再会できるようになる為にも。
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