私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
34 / 164
幼少期

34

しおりを挟む


 カーテンの隙間から陽が差し込む。…朝か。あれ?私いつの間に寝たの?

 ん?


「なんでアシュレイ一緒に寝てんの?」

 私の横で、アシュレイがすーすーと寝息を立てている。つか私腕枕されとる?ちょっと照れるな…
 時計を見ると現在5時半過ぎ。寝過ぎたかな、そろそろ起きて支度しないと。


「アシュレイ起きてー。おーきーてー」
「んん…?…おはよう。…!?」
「うん、おはよう。…おわっ」
「わわわっ!」

 そこまで顔真っ赤にせんでも…このマセガキめ。


「なんで一緒に寝てんのさ?寂しかったか?」
「ちっげーよ!!お前が!なんか呻き声あげて急に倒れるから…。普通に寝てるっぽかったけど、ちゃんと目え覚ますか気になって…気付いたらオレ寝てた」

 …???呻き声?


 駄目だ、思い出せん。まあ、覚えてないって事は大した事ないんだろう。


「よく分かんないけど心配かけたみたいね、ごめん。もう大丈夫だから!
 さ、今日から本格的に仕事だ。支度を完璧にして行くぞ!」
「本当に大丈夫か…?…なんかあったらすぐ言えよ」

 
 心配性だなー。…あれ、遮音の魔法かかったままだ。本当にいつ寝たんだ私…?



 仕事用のスーツに着替え(燕尾服はいつも着る訳じゃない。お出かけとか、大事な来客時にのみ着る)、いざ出陣!!

 お嬢様の部屋の前、一応ノックをする。多分寝てるけどね。

「お嬢様、入ります」

 そんでドアを開ければ、はいラッシュ君のお出迎えでございます。


「ラッシュ、夜中に変な人来なかった?」
─問題ない。彼女もよく寝ている─

 よしよし。さて、今日は…と。
 アシュレイに朝食を取りに行かせ、私は寝起きのお世話の準備すっか。顔洗う用のお湯とかお茶。あと今日のドレス。…ロクなドレス無えし。

 
 ふふふふふ…ふはははははあ!!!ここで私の出番という訳ですよ皆様!!
 チートが服着て歩く存在、それがアシュリィわたし!!伯爵家の上級魔導書に、ピッタリな魔法が載ってたんですよ!ドレス専門じゃないけど、物質を造り変える魔法が!!!

 例えばこちらのワンピース。私のイメージ次第で高級ドレスに生まれ変わるのさ!色も変わるし綿を絹に変える事も可能、もはや錬金術っぽいね。
 とはいえ、石を金に変える事は出来ない。布を鋼にも変えられない。その辺まだ完全には理解してないけど…感覚でわかる。これは可能、これは無理ってのが。
 それに、質量は変えられないのよ。つまり、このロングのシンプルワンピースを装飾たっぷりゴージャスドレスにするなら、恐らくミニ丈になっちゃうね。下手すりゃただのシャツだ、そりゃまずい。

 でもでも、これなら捨てるようなシーツとかも再生可能!!
 まあ貴族ってのは大体お抱えデザイナーってのがいる。いつかお嬢様に専属デザイナーがつくまで、それまで私は魔法を使うよ。本職の仕事を奪う気はないし。
 ただカタログがなあ。一応伯爵家でゲットしてあるんだけど…このまま造るのはちと不味い。
 ベンガルド家は服飾系の会社を経営しており、奥様が沢山カタログをくれた。ありがたや。

 しゃーない、私なりのアレンジをいれよっと。とにかく今は、屋敷内用の動きやすいけど華やかなドレスを造ろう。コルセット不要のやつ!
 このワンピースと言う名の布切れを3枚。合成すれば1枚分だ。

 カタログ片手に…こことここの装飾は外して…ちっちゃいリボンつけて…ここ絞って…色は白、いや水色…イメージする!
 


『生まれ変われ』
 


 完成品は…いいね!大成功!!可愛いドレスが出来たぞ、早く着てくんないかなー!
 そろそろ起こそっかな。スケジュールも確認したいし。ベッド近くのカーテンを開け、声をかける。


「お嬢様、朝ですよ」
「ん…?アシュリィ…?」
「はい、アシュリィです!お目覚めのお時間ですよ」
「んー…」

 お嬢様を起こしてベッドティーをお出しする。目が覚めて来たところで支度。はい!お着替え!


「…あら、素敵なドレスね。私持ってなかったわよね?」
「ふふふ、私が用意しました!ささ、お着替えしましょう」
「まあ…!ありがとう、アシュリィ!」

 ああ~可愛い~~~!私の見立てに間違いなかったね!まあ無難なデザインにしたからだけど。
 でも、お嬢様が喜んでくれるのが一番嬉しい。いつか…いつかお嬢様が素敵な旦那様のもとに嫁ぐ時。私はそれまでお世話出来るのかな?
 …いや、今は出来る事をしよう。ただお嬢様をお護りする事だけを考えよう。


 時間を戻す事は出来ないんだから、この瞬間を全力で生きよう。




 アシュレイが持って来た朝食を食べながら(もちろん3人で!)、スケジュールの確認をする。


「最近、勉強の方は最低限しか出来ていないわ。教師の方も見えないし…」
「ふ、そうだろうと思いまして、私沢山勉強しました!でも教えるとなると別問題なので…一緒に勉強する形にしませんか?
 あとやっぱご令嬢だし、刺繍とかダンスとか詩も必要かな?ダンスはアシュレイがお相手出来ます。私と沢山練習しましたから!」
「へえ、ダンスの練習を…私、自分がやるよりあなた達のダンスを見てみたいわ?」
「なっ…!」
「あら?何顔を赤くしているのかしら。私はお手本を見せてほしいだけよ~?」

 うんうん、2人が楽しそうで何より。そんな会話をしていたら、お嬢様が「あ」と呟いた。



「そういえば…来週王宮に行かなきゃいけないのよ。王妃殿下主催のお茶会があるの。
 王都周辺に住まう伯爵家以上の令嬢は全員参加らしいわ。我が家にも、お姉様と私に招待状が来たらしいの。
 まあ…それでお姉様が怒り狂って私の髪の毛を切ったのだけれど」
「ふうん…もしかしてよくある、王子殿下の妃候補探しですかね?」
「よくあるの!?ま、まあその可能性はあるけれど。王子殿下は3名とも、婚約者もいらっしゃらないから」


 ふむ。ついに来ましたか、王子様。…?そういや、女主人公来るんじゃない?伯爵令嬢だし!

 
「ではお嬢様、準備をしないといけませんね!」
「え?でも…私はこの髪だし…」


 やっぱり気になるのね。でも大丈夫、上手くすれば王妃様の目にも留まるでぇ!!
 さてさて、私はドレスの用意しなきゃね!どんなデザインにしよっかな。

「アシュリィ、オレらは今日どうする?」
「ああ、まず…挨拶回りかな?お嬢様、申し訳ないんですけど私達少し不在にします。
 もちろんラッシュは残りますのでご安心を。いざとなったら屋敷を破壊してでもお嬢様をお護りします」

 私の発言に任せろ、と言わんばかりのドヤ顔をするラッシュ。ドン引きする2人。なんでよ?

「精霊と術者って似るのかな…」

 それはあるかも。相性があるしね。
 それより、今日の目的はお嬢様の兄弟に会う事。

 お嬢様の6つ上の兄リスク、5つ上の兄キリエ。1つ上の姉アイニー。ちゃんと覚えたぞ!!


 食器を片付けに行くついでに挨拶していこう。敵を知り己を知れば百戦危うからず!情報は時に、何物にも勝る武器になる。



 という訳で、上から行くぞ!




 はい、長男の部屋。ああもちろん、時間は考慮していますとも。アポも取ってありますとも!
 いざ特攻!


「そうか。アレの世話とは奇特な趣味を持っているようだな。目が覚めたら私の所に来るがいい」


 2度と来ねーよ!次!!次男!


「ああ、お前達が。優秀だと聞いてるし、僕の世話をするといいよ。お父様には僕から話を通しておこう。
 断る?やっぱ正気を疑うな…。女のクセに短い髪をしているし」


 死ね!!!次、2番目にぶっ飛ばしたい姉!!1番は侯爵。




「落ち着けよアシュリィ…」
「落ち着いてますが何か??」
「うん、じゃあ手に持ってる得物をしまおうぜ」
「おっとうっかり。いや別に、チャンスがあったら刺そうとか考えていませんですよ?」
「………」(胡乱な目)
「………」(超笑顔)
「…行くか、アイニー様の部屋」
「アイアイサー!!」
「だからその、とかいうのをしまえ!」

 もちろん自作☆気分はクノイチ!鎖鎌も捨てがたいが目立つからね!




「あら、可愛い子達ね。お茶でもいかがかしら?」
「お心遣い感謝致します。ですが私達は使用人という立場にいます、お嬢様と同席は致しかねます」
「そ。残念。…貴方達もいい趣味してるわねえ。あんな子のお世話をしたいだなんて。
 それより2人共、私の執事にならない?ずっといい待遇を約束するわよ?」

 速攻で丁寧にお断りしました。
 
 これがアイニー様か。黙ってりゃそこそこ可愛いのに、勿体ない。なんで執拗にお嬢様を虐めるのか、少しでも聞き出せないかな。いざとなったら…


「ああそういえば…アレは王宮のお茶会に行くのかしら?」
「ええ、ボク達がお供致します」
「着て行くドレスも無いでしょうに」
「私にアテがありますので」
「あんな頭でよく出歩けるわねえ」

 犯人お前だろーが!!byアシュシュ

「リリーお嬢様はどのようなお姿でも愛らしく思います」
「足はどうするのかしら?アレの為に長時間も馬車は出さないし、半日も同じ空間にいたくないわ」
「私は召喚魔法を得意としております。移動に相応しい精霊と契約しておりますので」
「「ご心配いただき感謝致します」」
「……。そう、じゃあもう出て行ってくれるかしら?」
「これは失礼致しました。」




 …ふう、殺意を抑えるのに必死で、あまり覚えてないぜ…。私達は大人しく部屋を出て、行く訳無いぜ!!!

 いやもちろん出てくけどね?あんな空間に長居したくないし。ただちょっと、ね?盗聴的な、ね?

「上手くいったか?」
「ばっちし、聞こえてる!」


 別に好きでやってる訳じゃないから!今後お嬢様にちょっかい出さないか心配なだけだから!!
 更に言うと、盗聴とはちと違う。そんな事したら、バレた時が面倒だ。なので、
 説明が難しいんだけど、まあ魔法だから。電子機器で言うと、使えるけどどういう仕組みで動いているのか説明出来ないのと同じだよ。魔法って感覚に頼るとこ多いんだよねえ。

 とにかく、あの魔窟に私がもう1人いる感じ。まあ聴覚しか使えないけど。そういう風に設定した。そしてアシュレイともパスを繋ぎ、彼にも声が届くようにした。
 ただこっちの本体わたしが少し無防備になっちゃうけどね。




『…ふう、あの子達勿体ないわねえ。あんなに可愛くて優秀だというのに、趣味だけは最低なんですもの』
「「やかましい」」
『大体、アレが王宮に足を踏み入れるなんて不愉快だわ。相応しくないのよ、王妃様も何をお考えなのかしら?
 それに、王子様の目に留まろうだなんて…身の程知らずもいいとこね。王子様には私のような女が相応しくてよ』
「「言ってないし鏡を見て来い」」

 アイニー様は可愛いが、所詮どこにでもいる可愛さだ。お嬢様や私のお母さんのような、別次元の美しさの前では霞んじゃうね!


『さ、来週は気合をいれなくちゃ!ああ、どの王子様にしようかしら?私に相応しい、顔も勉学も魔法も顔も剣術も顔も素晴らしいお方だといいわね!』
「「身の程知らずはどっちだ!!!!」」


 いやあ、こんだけ騒いでも相手にゃ聞こえないのいいね~。スッキリするわ。つか…アイニー様の方が悪役令嬢っぽくない??

 



「…2人共、さっきから何を騒いでいるの?」
「「なんでもありません!」」


 お嬢様、来週のお茶会…楽しみですね!!

しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...