私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 シャリオン伯との取り引きを終えホッと一息。まあ半分以上関係ない話で終わったんだけど…
 あとは結果を待つだけになり、私達はそれぞれ対決に備え腕を磨いているのである。

 そして今日は、お嬢様の魔法の勉強だ。後回しにしてたけどそろそろだろう。彼女にも、自衛の術を学んでもらわねば。
 ついでにアシュレイも簡単な魔法を覚える。彼には剣術があるが、そこに身体強化を組み合わせれば威力は倍以上になるだろう。
 本来なら魔法の実技には魔法師の立ち会いが必要となる。だけど私達はこの家の専属魔法師を知らないし、どうせ侯爵の味方だろうよ。そんなんだったらいらん!ここはジュリアさんからOKを貰った私が教師だ!


 動きやすい服に着替えて、魔法の練習場に向かう。ここは私も度々使わしてもらってる侯爵家の私有地だ。
 まずお嬢様には魔法書を読んでもらったので、使いたい魔法を絞っていこう。私のようになんでもかんでも詰め込むのはお勧めしないので。


「お嬢様が専門にしたい分野はなんですか?今のMPだと上級魔法は難しいので、一先ず中級までをメインにしていきますが」
「やはり攻撃特化かしら。攻撃は最大の防御なのでしょう!?」

 握り拳を顔の前に持ってきて殺る気…やる気満々ですな。さっすがお嬢様!アシュリィ気合い入れて教えちゃう!!

「やっぱオレが最後の砦か…よし!」

 そんなアシュレイの呟きは聞こえませーん。ついでに2人のMPも増やしていこうと思う。アシュレイは今のMPじゃ初級が精々だ。せめて中級を目指したい。
 ところで私は、2人のステータスを把握している。やっぱ教える上で必要な情報だしね。だがステータスとは、無闇に他人に晒していいものじゃないのだ。
 現代日本でいえば…顔写真、住所、電話番号、アドレス、家族構成、学歴、職歴、趣味嗜好特技、長所短所、ついでにスリーサイズを教えるようなもの。それなのにあっさり教えてくれるほどに私を信頼してくれているのだ。感激してちょっと泣いた。



 なので私も誠意を見せる!と思い2人にステータスを教えた。そしたらドン引きされた…

『レベル10!?あなたそれ、人間じゃないわよ!』
『え。低いと思ってました…』
『オレたちのレベル見たろ!2だがこの歳じゃ大体1なんだよ。そしてよほど歴史に名を残すような英雄でも、7を超えた人はいないって話だ。人間に限った話だけどな』
『他のステータスだってとんでもないわよ…アシュリィが嘘をついてるとは思ないし、やっぱあなた人間じゃないわね』


 とまあ、散々な言われようだった。これで私が魔族ってのはほぼ確定か。でもそれじゃあ…2人とは寿命も違うんだよな…
 魔族とは。大体15~18歳ほどまでは人間と同じスピードで成長する。身体が完成する頃が目安と言われているが、その後の成長はもの凄く遅いらしい。
 多分…2人が天寿を全うする頃でも、私は20代ほどの外見のままだろう。そもそも成人が60歳って話だし。…やだな。私だけ置いてけぼりは…

『アシュリィ?』


 はっ!!私が項垂れていたら、いつの間にか2人が目の前にいた。様子がおかしいことに気付いたのであろう、なんと揃って抱きしめてくれた。

『あなたが何を悩んでるか知らないけれど…もっと私達を信じて頂戴』
『そうだぞ。お前が望んでくれるなら、オレらはどこまでもついて行ってやるからな』


 ……なんでそんな事言うかなあ。いつか…大人になったらお別れしようと思っていたのに…これじゃあ離れられないじゃん!!
 そのまま2人に縋って少し泣いた。私とした事が、人前で泣くなんて…でも今だけは、許してほしい。ちょっと泣いたら、また頑張れるから…

 そんなやり取りもあり、更に3人の絆は強くなった!と思う!だから私は2人の為輝かしい未来の為、もっと強くなる!!





 そして現在。お嬢様は攻撃特化型だな!まずは本を片手に練習しますかね。
 私は火の玉を3つ浮かべ、これを的にする。攻撃魔法って言っても色々あるからねえ。そして初級に攻撃はないので、いきなりだが中級魔法からいこう。

「ではお嬢様、魔法を使ってあの的を狙ってください。魔法を出すだけでなく、コントロールも必要ですからね」
「分かったわ!」


 お嬢様はどれにしようかな~と言いながらページを捲る。やはり攻撃なら四大元素が鉄板だね。さらに複合した魔法もあるのだが(例えば雷とか)、複合魔法は上級なので今は無理。
 更に言うと上級は当主が管理してるだろう。他のツテを探さにゃ。


「よし、いくわよ」

 いいわよ。お嬢様はどの魔法を選んだのかな?


「えーと…揺蕩う葉の如き我が身を映すは深淵の鏡、故に…」

 厨二じゃないよ、これが魔導書の内容だよ。こんな感じで意味があるような無いような詩が書かれているのだ。上級になるほど文章は長くなり、それを一言一句違えず詠唱する必要がある。
 そしてこの詠唱は水だな。


「…是、礎となりて。…穿て!!」

 バシュッ!!と水の矢のような物が発射される。お嬢様カッコいい!!だが!


 ひゅーい…と的を大きく外れて、私の張った結界にぶち当たって消えた。見事なノーコンである。


「お嬢様…」
「…もう1回よ!!」

 まあ何度でもお付き合いしますが。お嬢様はその後も何度も発動させるが、的を1つも消す事が出来なかった…。威力は申し分ないのに…
 仕方ないのでお嬢様は置いといて、アシュレイの様子を見る。うん、問題なく強化出来てるね。


「そうなんだけど、オレの魔力量じゃ10分が限界なんだよ…もう0だ」

 どうやら早急にMPを増やす必要があるか。
 ここでMPの増やし方を説明しよう!0になるまで使い切れ!以上!…説明するまでも無かったか?

 当然ただ空にするだけじゃないとも。そんなんだったらみんなガンガン増えるしね。空になった後も魔法を使い続けるのだ。…だがその行為は危険極まりないのである。
 魔法の発動はMPが足りなきゃ出来ないが…継続はHPを削る事で補える。でも、HPが空になったら死ぬ。引き際を間違えると大変なのだ…。だからMPを増やしたいのなら、HPが残り半分程になったら止めないといけない。死んだら元も子もないよ。
 という事で今アシュレイはMPは0だが強化を継続中だ。私はすぐ側で待機し、アシュレイが無茶しそうだったら殴ってでも止める。

 ステータスって初期値が高ければ高いほど伸び代も多いらしい。私がこれ以上伸ばすとしたら、どんだけ魔法使やいいんだ…?
 …と、アシュレイの魔法が終わったな。相当消耗してるのだろう、汗だくで顔色も悪い。すぐに休ませて、早速確認だ。

「どう、増えた?」
「んー…0/16だ。1しか増えてねえ…」

 おおう…こんなクタクタになってんのにな…。お嬢様の方はどうかな?

「ちょうど0になったわ」
「じゃあそのまま、魔法を継続してください」


 そして数分後、お嬢様は2増えた。先が長すぎる…!他に方法無いのかなあ。と考えても思いつかんし、とにかく実践あるのみ!
 今日は結局限界までやったが、アシュレイ3、お嬢様7しか上がらんかった。お嬢様はHPが低いから、継続時間が短いんだよな…
 疲労困憊の2人を抱えて屋敷に帰り、今日は私が全部お仕事しておきましょう。ええもちろん、私は元気いっぱいですが何か??



 そんな特訓を3日続けたが、目に見えて成果は無いな…。と思っていたら、なんかお嬢様に新しいスキルがついたらしい。


捕捉追跡ホーミングって何かしら?」

 ホーミング?ホーミング…まさか…

「お嬢様、ちょっとアシュレイに向かって水の玉を投げつけてください。スキル発動した状態で。アシュレイは避けて、逃げて、全力で。なんなら強化して逃げて」
「え?ええ」
「逃げるんだな?それならなんとか…」


 そして2人は十分に距離を取り、お嬢様の魔法が放たれる。この数日で大分慣れたようで、もう詠唱は必要ない。

「アクア!」
「強化」

 殺傷力のない水の塊がアシュレイを狙うはずが、またも大きく逸れた…が。

「「え!?」」

 なんと明後日の方に飛んで行った水は、アシュレイ目掛けて直角に曲がった!!

「うわっ!だあっ!?うおっと!」

 逃げるアシュレイ、追う水塊。なるほどホーミング、ノーコンなお嬢様にぴったりの自動追跡スキルだ!
 最終的にアシュレイが追いつかれ、水浸しになった。なんだこれ、すげえ!と興奮気味だ。気持ちは分かる!
 今度は全力でやりたいので、的を私のゴーレムにしてお嬢様は水塊を5つ出す。ゴーレムはその巨体に似合わず俊敏で、するする躱すが結局水浸し。ただ追跡した水塊は3つのみで、残りはどっかいった。慣れが必要か…
 それにゴーレムが泥を飛ばしたり私が水をぶつけたりして相殺する事も出来た。追跡っつっても、万能じゃないな。


 こうやって魔法の特訓をする事で、お嬢様はメキメキ上達した。アシュレイもそこそこだ。だが明日はトゥリン家のお茶会がある日なので、ここまでとする。



 という訳で…散々お嬢様を虐めてくれたアイニー様の失墜計画、本格始動だ!!!

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