私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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 ~遡ること約30分前~

「あれ、パリス。何ぼうっとしてるの?」
「アシュリィ様…。アイルちゃん…ララちゃん…」



 かくかくしかじか



「「「えええええ!!?」」」

 マジでえっ!?アシュレイが…トレイシーの事を!?

「正確には、ぼくと同じ人が好きなんだと叫んでいました」

 うそん。…ちょっと…これは凛々の管轄ですわ。


 …そっか。そうなんだ…

「…びっくりしたー。まあ愛の形は人それぞれだもんね!
 どうしよっかな、私はパリスを応援するつもりだったのに…困っちゃうね」
「アシュリィ様…」

 あはは。はは…は?はぉ~ん?
 いや、アシュレイはどんな人と結婚するのかなーとは思ってたけど。予想外というか大気圏外から飛来して来ちゃったな。

 …いや。昔は「活発な子のギャップが好き」って言ってなかった?トレイシーのギャップってなんだよ。ハゲに毛が生えた辺りか?


「…アシュリィ様。もしかしたら(いや絶対に確実に…十中八九)勘違いかもしれません。
 念の為アシュレイ様本人に確認しましょう」

 アイル…。いや別に、私は…


「…うぃ~…魔族の体力半端ねぇ~」
「死ぬかと思った…」

 都合良くトレイシー、とヒュー登場!!今夕方だけど、朝から泳いでたんか?まあいい、トレイシー!

「あん?」
「貴方…アシュレイの事好き!?」
「は…?えーと…手のかかる弟みたいな…」

 つまり好き!?はっきりしてよ!

「うぅ~…ん?どっちかと言や好きだろうな」

 なんと…!

「つまり…相思相愛…!?」
「「何が!!?」」

 あわ、わわわ。困惑する大人2人は無視、ベイラーって同性婚出来たっけ!?
 私は昔からアシュレイを見てきた。優しくてヘタレだけど頼りになる男の子で、苦楽を共にしてきた。
 離れていた時期もあるけど…それでも大切な家族なんだ。彼には幸せになってもらいたいし、近くで見届けたい!!


「いいか、アシュレイを不幸にしたら許さないからな!?
 彼を泣かしていいのは私だけなんだから!正式にお付き合いするなら、必ず私を通すように!!!」
「待て待てお前は何を言っている!?」
「トレイシー卿!?ウチの弟に何してくれてんじゃああ!!」
「はっ!?待っ、ちょ、だ…ドアホーーー!!!」
 

 アシュレイ!!あんたの本音を知りたい、本気で奴を愛しているのか!!
 確かに強くて格好良くて逞しくていい男だけど!あんたには似合わないっていうか…世間の目っていうか…お姉ちゃんは認めん!!!



 海岸沿いに走っていたら、蹲るアシュレイを見つけた。その目には涙が…
 そんなに、彼の事が好きなの?恋する乙女のように…夕日を見つめながらトレイシーを想っているの?


 このまま立ち去るべきだろうか。そう思ったけど…やっぱり本人の口から聞きたい。

 なので意を決して話し掛けた。すると顔を青くさせて、赤くさせて…忙しいやっちゃ。

 しかしこうして向かい合ってみると。夕日に反射して、彼の紫の瞳がキラキラと輝いている。
 吸い込まれそうな眼差しが照れくさくて、つい伏せてしまう。肩を掴まれ、アシュレイの顔が近付いた。…随分と精悍になったな…


 ドキドキするけども、思い切って訊ねてみる。そうしないといけない気がするから。



「本当に…トレイシーの事が好きなの…!?」
「…………は?」


 アシュレイは目を真ん丸にして、ぽかんと口を開けた。いやほんと、ポカーンて文字が見えそう。




 それから15分程経った、彼はまだ呆然として動かない。仕方ない…

「だからさ、あんたはパリスと同じ人が好きなんでしょ?あの子はトレイシーが好きなの。だから…」
「……はああ!?」

 やっと戻ってきた。

「待ってくれ、パリスは男だろ!?」

 は?いや…はっ?


「パリスは女の子だよ?」
「え?」
「は?」
「「あん?」」


 …………どういう事?
 落ち着こう、まず誤解を解こう…


「どうして男の子だと思ったの?」
「…なんで男物の制服着てんだよ」
「女子はワンピースじゃん。それだと尻尾穴の問題とか、スカート捲れたりしちゃうじゃん。だから特例でスラックスなんだよ。てかブレザーは女子のものだぞ?」
「…髪短いじゃん」
「水が苦手だから、髪を洗う時間を短縮したいんだよ」
「…む…胸、無いじゃん…」
「…無じゃない、決して。貧なだけだ、オーケー?」
「…………………」
「…え、そんだけ…?」


 あんな可愛い男がいてたまるか。ふふ…お馬鹿だなあ。

 アシュレイは動かず…徐々に顔を赤くさせた。


 え、じゃあ結局…あんたの好きな人って誰なの?
 パリスの近くにいる女性。まさかララじゃないよね!?駄目だぞ、あの子にはガイラードがいるんだから!


「……わあああああ!ばか、オレのばかああああ!!!」
「えええっ!?」

 なにごと!?突然奇声を上げて涙を流す。落ち着いて!!


「うるさい!ばか、バーーーカ!!」

 誰が馬鹿だ!!反論しようとしたら…



「うるっさい!!お前なんて、お前なんて……大好きだーーー!!!」



 …………は?


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