私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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 ちょっとした説明イラストが下の方にあります。イメージを崩される可能性もありますが、ごめんなさい!

 ******



 何考えてんだあの(元)ハゲは…
 部屋に戻りベッドに突っ伏す。さっきの感覚が…温もりが忘れられず、胸の高鳴りが治らない。

「……ばか」

 次顔合わせたら、思いっきり股間を蹴り上げてやろうかしら。とか考えてたら、いつの間にか寝てた。



「おはよう、アシュリィ」
「アシュレイ…おはよ」
「?」

 あー、パリスもだったけど…アシュレイの顔をまともに見れない。なんか裏切った気分…いやそれは自惚れか?でも、彼の好意は確実…


 …………いつか。正式にお付き合いしたら…言おう。それまでは…
 犬に噛まれたもんだと思っとこう!!







「それでは諸君!!!来週に迫る魔法イベント…陣取りゲームテリッカドクの作戦会議を開始します!!!」
「「「おおおーーー!!!」」」
「……って、戦力偏ってないー!?」
「仕方ないわよ…」


 うちのクラスは魔法の精鋭が8人いる。なのに…こっちチームは私とリリーしかいないじゃん!?パリス、デメトリアス、ティモ含む6人が敵なんですけど!!アシュレイ、アイル、ララも向こうで寂しい…
 もっと言えば、こっちは15人中11人が魔法の授業を選択してない!!(3年までは義務で授業があったらしい)
 向こうは16人いるから、1人は補欠。イベントは4・5年生のみで、8チームに分かれたトーナメント戦なのだ。
 まずは同じクラスで戦い、次に隣のクラスの勝者と。そして5年の勝者と…人数は少ない方に合わせるシステム。


「しかも見てよコレ!『アシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノス。ディーデリック=レイン=ウラオノス両名は、上級以上の魔法使用禁止』ですって!?これじゃ飛行も使えない!!」
「いや…私がこっちなのも、ギリギリの采配だと思うわ…
 貴女が本気出したら敵無しじゃない。」

 ぐぬぬ…!ま、まあ、中級で充分だもんね!リリーもいるし、絶対勝つぞ!!
 私の…Aチームとしよう。デメトリアス達はBチームね。多分彼がリーダーやってるだろうし。


 放課後、Aチームを全員集めて会議をする。魔法の練習場は3ヶ所、交代制で毎日使える訳じゃない。時間が惜しい、サクサク行くぞ!!


「では、作戦だが…」

 私の言葉に、メンバーがごくりと息を呑む。


「作戦は…とにかく突っ込む!!特攻!敵を見かけたら攻撃!以上!!!」
「「「えええーーーっ!!?」」」
「という訳でそれぞれ魔法の練習!!総監督は私だから、なんか質問あったら来なさい!!」

 パンパン!と手を叩き解散を促す。


「いや待ってアシュリィ様!?もうちょい細かな作戦無いの!?」

 む?うーん…じゃあせめて役割分担するか。


 このゲーム…テリッカドクは陣取りゲームである。広いグラウンドを15のエリアに分け、2チームで奪い合う。
 真ん中は中立地帯で、両端に最初から割り当てられた不可侵領域がある。その3つは互いに奪えないエリアだ。

 ルールは上記の3つを除く12エリア。この内7つを先取した方の勝ち!
 え、6対6になったらどうするって?実はこの12エリアは、奪い返す事も可能なのである。

 そしてもう1つ。それぞれのチームから大将を1人選出するのだが…大将を捕獲されたら、その時点でゲームセットなのである!



「まず大将を決めよう。そして大将の護衛を…2人。積極的にエリアゲットに向かう攻略チーム6人。防衛戦を請け負うのが5人ね」
「「「(よかった、まともな作戦だ…)」」」

 なんでみんなほっと息を吐くのかな?

「……ん?アシュリィ、あと1人は?」
「ふふ…私は…速攻で大将を獲りに行く!!!」

 ボキボキと指を鳴らす。ふふふ…戦力で負けている以上、短期決戦でケリをつけるべし!!



 Aチームの不可侵領域及びゲットしたエリアにBチームの人が入ると、行動制限が掛かる。5分以上滞在すると、足に男子は20kg、女子は10kgの重りを付けられるのだ!

「まあ私には小石程度の枷だけど。つまり防衛側が圧倒的に有利!とはいえ油断はできない。むーん…」


 とにかく、最初にエリアをゲットするまでは防衛チームも攻略チームに助力ね。ただしMPが0になったら脱落なので、ステータスの確認はこまめに!
 他に、大怪我をさせるのもアウト。判定は先生がするけど、ある程度はいいんだわ。難しいな…。他の細かいルールはやりながら説明すっぞ!


「肝心の大将だけど。私としては、ランスにやってもらいたい」
「…俺?アシュリィ様は…駄目か。分かった、引き受ける」

 何故私が駄目かと言うと…テリッカドクは!!そして大将は、敵チームに鬼ごっこの如くタッチされたらおしまいだ。なので素早くて、気配に敏感なランスが適任。


「私が大将をすぐ捕まえるのが1番ラク。でも…そこまで甘い相手じゃないよね」

 メンバーが全員深く頷く。とにかく、目指すは優勝!!!


 この日は遅くまで練習し、練習場を使えない日はリリーとランスと会議&個人練習。
 そうしてついに…テリッカドク、当日を迎える。






 下級生と試合の無い上級生が見守る中、イベントは始まった。会場を大歓声が包む…でも緊張する程細い神経してねえんだわ私。
 審判にはトレイシーもいる…蹴り損ねたが、今はどうでもいいや!


「よーし!!練習の成果を見せたれええええいっ!!!!」
「「「うおおおおおっ!!!!」」」

 イエーイ!!男子も女子もノリノリだねっ、いけるぞこれは!!!


「ふ…勢いだけで勝てると思っているのか?」
「む。士気が高いのはいい事でしょ」
「まあ否定はしない。だが勝つのは俺達だ!!」

 ぬぬぬ…!試合前に、デメトリアスと睨み合う。こいつにゃ負けねえ!!


 トレイシーがルールを簡単に説明する。

「大将は…ランス・ベンガルドとアシュレイ・アレンシア」

 アシュレイか、中々いい判断だ。大将同士のバトルを避ける為、最初に発表しておくのだ。


「アシュレイ!あんたは私がとっ捕まえるからな!!」
「へ…(アシュリィが…オレを求めてる…!?)」
「大変です殿下、アシュレイ様は積極的に捕まりに行きそうです」
「アイル、お前がそいつ見張ってろ!!」
「はいっ!」

 むう。私の従者なのに…楽しそうで何よりです!



 さあて、それぞれグラウンドの両端に移動する。そして…舞台が変化する!

「おおっ!!」

 ただの平坦なグラウンドじゃつまらないからね、魔法を駆使したバトルフィールドが組み立てられるのだ。
 グラウンド全体がボコボコと形を変え…これは、廃墟のステージ!!何百年も前に滅びた街の残骸、と思ってくれればいいよ。空間も拡張されて、サッカーコート2面分はある。


「ふむ…見通しは悪いけど、身を隠す場所も多い。下手に崩して相手を大怪我させる可能性もある…」

 こりゃ一筋縄じゃいかないな…。でも負けないんだから!!



 スタート地点はエリアが決まっており…私は最もデメトリアス陣営に近い場所を取った。セオリー通りなら大将は恐らく、不可侵領域にいるはず。待ってろよアシュレイ…!

 私達の姿は、あちこちにある魔導具カメラによってモニターに映し出されてるはず。よ~し、格好いいとこ全校生徒に見せちゃる!!



〈それでは…ゲームスタート!!!〉


 トレイシーの開始宣言と共に駆け出す!!!すると、すぐに敵が…!

「やはりいたなアシュリィ!!」
「デメトリアス!ティモも…想定内だよ!!」

 彼なら私の行動を読んで、近くに待機してると思った!だけど…ふふ、ふふふ!


「あーっはっはっはっ!!この私が大人しくルールに従うと思ったか!!
『上級以上は使えない』、それはつまり…魔導書に載っていないオリジナル魔法なら、使い放題って寸法さ!!!」
「何っ!!?」
「出でよ!!『分身の術コピー・アシュリィ』!!!」

 忍者のように印を結び、私の分身を4人生み出す!!ふっ、1人生むのにMP500減ったがな!!これで19対15イエーーーイ!!!


「このアシュリィ…いや亜種リィ達は、HPを共有する上に魔法は使えない!ただしそれ以外はオリジナルと同等の能力を持つ、さあ行くぞ私達!!」
「「「「おーーーっ!!!」」」」
「く…っ!」

 5人で拳を突き上げ気合を入れる!さあて…!



「「「「「じゃあ私がアシュレイを捕まえるね!!」」」」」



 ………………あ?



「「「「「…いや、他の私はエリア攻略に行きなさいよ」」」」」
「「……………」」


 ……ちょっと。おい、私達?


「…待て、待って。ごめんデメトリアス、ちょっと会議を」
「行くぞティモ!まずはこのエリアを奪う!!」


 うわああああっ!?早速取られるううう!!!

「ああもう、あんたらオリジナルの言う事聞きなさいよっ!!」
「何言ってんの!私は全体の指揮取ってなさいよ、私が捕獲に行くから!」
「アホ、私が行くの!!そっちの私はランスを守りに行け!」
「ふはははっ、この隙に抜け駆けする私であった!!」
「バーカ、私の思考など手に取るように解るわ!!!させるかあっ!!」
「こらーっ、私達!!仲間割れしてる場合じゃないでしょー!?」


 もう、何これ!?前にマルガレーテが言ってた…「自分が2人いるとか恐怖でしかない」という意味を痛感してるよ…
 危うく取っ組み合いになりかけた、その時。


「今すぐ分身解除しなさいっ!!!」
「「「「「ごめんなさい…」」」」」


 遠くから聞こえて来るリリーの怒声。ああ…MP無駄に消費した…
 ギャラリーからも笑い声が上がる…格好いいとこがぁ…



「……何をやっているんだアシュリィは…」
「あっはははは!!!アシュリィらしいー、最初っから飛ばすね~!!」
「笑い事なんですか…?アシュリィ大丈夫かしら…」
「これはもう、リリーナラリス様が頑張るしかないのでは?」
「ランスもな…」
「ふふ…っ、勢いだけはいいね。」


 観客席から、5年生組+ジェイドの呆れた声が聞こえたような…




 その頃のアシュレイ。


「沢山のアシュリィが、オレを狙ってる…!?」ふらふら…
「だーーーっ!!!どこ行くんですかアシュレイ様っ!!」


 こっちもこっちで、笑いを誘っていた。
 もうアシュレイ…微笑の貴公子様の仮面剥がれてるね!








 ちなみに理想図

「じゃあオリジナルわたしはアシュレイを捕まえるね!」
「オッケー!亜種1わたしはここでデメトリアスと勝負だっ!」
「なら亜種2わたしはランスの護衛に向かうよ」
亜種3わたしはリリーの援護かな」
「よおーし!亜種4わたしは大暴れして引っ掻き回してやるぜ!!」

「「「「「行くぞ、アシュリィ軍団!!!」」」」」



「的な…ね?」
「砂上の楼閣って知ってる?」
「やかましっ!!!」

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