私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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「……なんで…こんな事に…」
「「「「お気になさらず」」」」

 はは…現在帝国に向かう馬車の中。私とデメトリアス…と。
 アシュレイ、アル、リリー、ディードも乗っています。大きい馬車なので6人乗り、従者達は後ろの馬車。


「ほら、僕はベイラー王国代表として、君の従兄弟としてね?」
「私はアルビーのパートナーですので!」

 まあ、2人はそれでいいでしょう。
 問題は、この男2人。

「私は…社会勉強だ。今後の為に、人間社会というものを学ぶのでな」
「オレはその付き添いだ」

 ……全くもう。


「ハア…。好きにしろ」

 デメトリアスは大きくため息をつき、右手で顔を覆ったが。
 私の位置からは。こっそり…微笑んでいるのが見えた。

 途中宿で1泊しつつ、グラウム帝国に到着!帝国内でも1泊、合計2泊3日の旅でした。




 やって来ました、皇宮に。では早速、皇帝陛下にご挨拶っと。

「申し訳ございません、この先奴隷を連れて行く事は…」
「は?」(威圧こみこみ)
「ひ…っ!?」

 用意された部屋で支度が終わると、呼びに来た従僕がパリスを見てそう言った。
 本当は、パリスは置いて来るつもりだった。こうなるって、分かってたから…

 なのに本人が、「どのような扱いを受けてもいい、ついて行く」と言って聞かなかった。
 …ならば。私はどんな手を使っても、パリスを守る…!!


 私はソファーに足を組んだ状態で座っており、自分の首を指でトントン叩いてみせた。

「奴隷には隷属の首輪が必須。貴方、目大丈夫?」
「あ…!し、失礼致しました!では、従者の方々もご一緒に…」

 従僕は青い顔を下げて、移動を促す。ふむ…このくらいでいいか。
 私が立ち上がると、パリスが手を出しエスコートしてくれる。

「ありがと」
「はいっ!」

 可愛い…尻尾をブンブン振っている。
 私はいつも通り、魔国のドレスを着ているが。廊下を歩くだけで注目を浴びる…こりゃパーティーが楽しみだ。




 顔合わせの場は昼食の席で、私、ディード、アシュレイ、アル、リリーがいただきます。他のみんなは壁際に控える。

「皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「ああ、皆顔を上げてくれ」

 ドレスの裾をつまみ、カーテシーでご挨拶。ディードとアルが両側にいて、右手を胸の前に置き頭を下げる。
 顔を上げると…女性にしては短い髪に、凛々しいお顔の女性がお出迎え。
 私と目が合うとにっこり笑ってくれた。笑顔は王妃殿下と似てる…
 隣の皇婿殿下は、柔和な笑みを浮かべている。

 促されるままに全員席に座る。ふむ…子供はデメトリアス含め、4人。皇子と皇女が2人ずつ。1番下の皇女は、恐らく10にも満たないな。


 それと、分かっていたけど。デメトリアスは…あまり家族に似ていない。家族の雑談にも、参加する事はない…
 アルですらみんな久しぶりだね、といった会話をしているのに。


「その…ウラオノス嬢。お聞きしたいのだが、今回皇子のパートナーとなってくれたのだろう?」

 和やかな雰囲気の中、陛下が世間話のように聞いてきた。それがずっと気になっていたくせに…皇族も皆、一瞬動きを止めた。

「はい、光栄な事に」
「こほん…この子とは、なのかな?」
「…いいえ。友人です」

 私がそう答えると。

 陛下は一瞬だが…落胆した表情を見せた。
 だがそれは、私が注意深く観察していたから気付けた変化。すぐに笑顔になる。

「そうか、残念だ。この子はまだ、浮いた話の1つもなくてね。ついに好い人を連れて来てくれた、と年甲斐もなく胸が弾んでしまったよ」
「まあ…ふふふ…」


 なんだか…久しぶりだな、こういう空気。腹の探り合い、値踏みされてると言うか…
 皇子様方も、なーんだがっかり。的なお顔。

 そんなに早く、デメトリアスを追い出したかった?


「……彼とは友人ですが。私は…いえ魔族は、時として国より個人を優先します」
「うん?それは、一体…」


 要するに。
「私はデメトリアスの友達だけど、この国の味方ではありません。お前らデメトリアスにあんま舐めた態度取ってたら、私ブチ切れちゃうぞ☆」
 って事です。お分かりいただけた?


「彼とは衝突する事も多々ありましたが。今では…気の置けない仲間です。
 ね?…デム」

 いがみ合いをやめてみれば、実は結構気が合うと判明したしね。
 私の斜め向かいに座るデメトリアスに、ウインクしてみせる。すると彼は若干顔を伏せて。


「…ああ。俺もそう思う…シュリ」

 と、耳まで染めながら言ってくれた。
 最近みんなが私をシュリって呼んでくれて、すっごく嬉しいんだけど。彼は特に…仲良くなるのに時間が掛かったせいか、変な達成感みたいのあるなあ。



 食事終了後、部屋に戻る。パーティーは明日…ここは魔族の威厳たっぷりに振る舞うべきかしら?

「あ…あのっ!」
「ん?」

 ベイラー組+デムティモと廊下を歩いていたら。後ろから声を掛けられ、振り向くも誰もいない。
 そこで視線を落とすと…あら?ツインテールの小さい女の子…第2皇女殿下だ。名前は確か、ステファニー様。
 デムは私に視線を寄越して、背を向けた。

「どうかなさいましたか?」

 対応を任されたようなので、後ろまで移動し、膝を曲げて皇女殿下と視線を合わせる。
 彼女はもちもちほっぺを赤く染めて、一生懸命に言葉を紡ぐ。可愛い…


「お…お姉さんは…デメトリアスお兄さまのお友だち、なのですよね?」
「はい、ここにいるみんなそうですよ」
「……!」

 殿下は顔をパアア…!と輝かせた。
 ただ彼女は、侍女と思われる女性に「お部屋へ戻りましょう!」と連れて行かれてしまった。


「なんだったの…?」
「…さあな。行くぞ」

 彼女は食事中も、何度も声を掛けたそうにしていた。何か言いたい事があったのかな?と気になるものの。

 晩餐会でもお話はできず…パーティーを迎える。







「こんなとこかな…」
「「わああ…!素敵です、アシュリィ様!」」

 そ、そう?ララとパリスに褒めちぎられて、私ってば天に昇っちゃうかも!

 今日のドレスは白を基調にしてみた。
 青いタイはデメトリアスとお揃いで、黒のボディーチェーンがポイントです。

 更に…最高級の魔石で作られたアクセサリーを、惜しげもなく披露。
 私は魔族の姫です、ってのを全身で表しているのだ。


「終わったか?」
「おー、デム。格好いいじゃん」
「ふっ、そうだろう」

 鏡の自分に見惚れていたら、男性陣が部屋にやって来た。
 3人共格好いい!アイルとティモも仕立ての良い燕尾服で素敵だぞ!
 ララとパリスも燕尾服。ただし私がデザインした、スカートタイプ!中は短パン一体型で、ニーソ着用です。
 はい、私の趣味です。コスプレっぽいけど、可愛いし本人達も喜んでくれてるからオッケー!


「ア…アシュリィ…」
「……何?」

 そしてアシュレイ。私を見るや否や硬直し、何やら口籠ってる。

「……可愛い…」ぽそっ
「そ…う?」
「うん…」

 それきり俯いて、手をもじもじさせながら黙ってしまった。
 ……嬉しい!!!もっと言って、もっと!!!


「あらら、相変わらずねアシュレイ。社交辞令ならいくらでも言えるのに」

 あ、リリー!ドレスアップした彼女はまるで女神様…!胸の谷間を見せつけてくれるぜ、参っちゃうね!

 集まったはいいが、パーティー開始時刻が迫る。
 私とデムの入場は最後で、みんなは先に向かった。

「オレが…エスコートしたかったぁ…!!」

 アシュレイは…血の涙を流しながら、ディードに引き摺られて行った…


「そういえば…貴方最近、リリーを口説かないね?」
「ん…そうだな」

 今日の装いを見ても、礼儀として褒めた程度だった。私から見て、結構本気で惚れてたと思うんだけど…。何か心境の変化でも?


「…別に、あの2人は心から愛し合っているしな。
 俺は…アルバートと馬鹿みたいな喧嘩がしてみたかった。だけ…かもしれん。
 だからリリーナラリス嬢を本気で口説いたのは、初対面の時だけだ」
「…つまり。あの時アルに飛び蹴りを喰らって…それが面白かったから?」
「そういう事だ。彼女は美しい、魅力的だと思っているのも本音だがな。
 アルバートは…俺を『皇子』ではなく、1人の人間として扱ってくれた…最初の人なんだ。
 ……誰にも言うなよ」

 お、おう。デムはバツの悪そうな顔をして、指で頬を掻いている。
 …何があったのか知らないけど。何も聞かなかった事にしておこうっと。三人衆もね!





 時間になり、私達も移動を開始した。
 パーティーホールに繋がる扉の前で…ふうっと深呼吸。
 まあ私は緊張する性質でもないので、どんなキャラで行こうか悩んでるだけだが。

 デムの重なる手が…震えている。
 この中に…彼が本当は皇子でない、と知る者もいるのだろう。
 これまでそういった人達に、陰で何か言われた事もあるのかな…

「シュリ…?」
「ねえデム、知ってる?私のお父様って、世界一強い魔王陛下なの」
「…ああ、知ってる」
「貴方が今エスコートしているのは、最強の魔王が溺愛する娘。
 だというのに…何を恐れる必要があるの?」
「……ふはっ!そうか、そうだったな。
 ああ、惜しい事をした。最初から…本気でお前を、口説くべきだったか」
「残念でした、貴方…私の為に、魔王に挑める?」
「…どうかな」

 デムは小さく吹き出し、笑った。
 もう手の震えは、収まっていた。




「第1皇子、デメトリアス・グラウム殿下!
 並びにアシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノス殿下のご入場です!」




 扉が開かれ、会場の空気が流れ込んでくる。
 さあて…帝国に喧嘩売ってやりますか!

「いや売るな」
「おっといかん、つい」

 てへっ。これだから魔族は脳筋って言われちゃうんだぞ!
 でもまあ…


「売られた場合は…買うのが魔族の礼儀。いいよね?」
「…仕方ないな」


 ふふ、本日の主役の言質は取った。
 さあて、楽しいパーティーの幕開けだ。


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