私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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学園

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 私のお誘いに、令息は弾ける笑顔で応じた。
 一応デムのパートナーですし、彼に断りを入れてから移動。


 誰もいないテラスにやって来た。もちろん、2人っきりで。


「すみません、他の人に聞かれたくありませんので…」
「ええ、ええ!」

 超ニコニコじゃん。
 揉み手している幻覚が見える…まあ、今は勘違いさせておこう。

「私、これでも姫(笑)ですし。獣憑きコレクターなどと、公然にできませんの。
 それで…令息は、どのルートであの3人を見つけましたの?」

 おおう、我ながら名演技。こりゃ主演女優賞はいただきだね!

「ははは、分かります。中々理解されませんからねえ…」

 しみじみすんな、気色悪い。我慢しろ私…!

「実はですね、自分には懇意にしている奴隷商がおります。有能な者でして、希少で上物を多く取り揃えているんですよ!」
「まあ…」
「そして…これは極秘情報なんですが。
 我々のように高貴な者にしか勧めない…獣憑きも1匹取り置いているそうです。
 それがオスでして、自分はオスはセルジュで充分ですので、無駄金を使う気は無いのですが。
 姫君でしたら…きっとご満足いただけると思われます」
「そうなのですか…」


 ビキ…ベキ…ペキン…


「おや、なんの音…」
「とっても素敵な情報ありがとうございます。そちらの商人さんについて、詳しく聞いてもよろしくて?」

 いけない、握り潰した柵を背に隠す。
 すっかりいい気になった令息は、ベラベラ話してくれて助かるわ。

 ひとまず…今日はこの辺で。
 猫耳女性のフィオナ。うさ耳少女のリア。狐耳男性のセルジュ…少しだけ、待ってて。


 令息は先に戻り、私も…の前に。

「『分身の術コピー・アシュリィ』」

 ポフンッ!生み出された分身は、即座に役割を理解した。


「じゃあ行ってくる!」
「よろしく。これ、持って行きんさい」
「サンキューオリジナルわたし!」

 亜種リィに渡した袋には、お金(ベイラーとグラウムの通貨は同じ)と…最大級の魔石が入っている。
 魔石の価値は純粋に、魔物の強さで変動するもの。


 ああ、ちなみに言っておくが。魔物は魔族に絶対服従なので…私達にとっては臣下となんら変わらない。
 だから魔族は、魔物を攻撃しない。喧嘩くらいはするけどね。
 宝物庫に眠る魔石は全て、魔物からの献上品なのである。寿命だったり、争いに敗れて死んだ仲間の魔石を、城まで持って来てくれるのよ。

 さっき渡したのは…タイラントタイガーという、虎系最強魔物の物。1つで5千セキズ(5億円相当)はするだろう。



 頼んだぞ、亜種リィ…!








 さーて、亜種リィ頑張っちゃうぞ!
 闇夜に紛れてドレスをたくし上げ、屋根の上を走る。情報の場所は…ここだっ!!

 一見すると寂れたバーのような雰囲気だ…行きますか!


 カランカラン…扉の音に、カウンターに座っていた男が反応する。
 私をチラッと見て…貴族令嬢だと判断したのだろう、営業スマイルを向けてきた。

「おや…これはご令嬢。どういった商品をお探しですか?」
「ごきげんよう。私、タンブル様に…ここなら望むが手に入ると伺ったのですが」

 ニコっとしてみせながら、そっと3アルフ(3万円くらい)をカウンターに乗せる。
 男はそれを確認すると…口角を上げて、懐に仕舞った。

「左様でしたか、これは失礼。では…どうぞこちらへ」
「ありがとう」


 ふーん…隠し通路とかじゃなくて、普通に奥に通された。
 うお、牢のように左右に人がいる。私を見ても無反応だったり、買って!とアピールしようとしたり。

「こちらです」
「まあ…」

 連れて行かれたのは、長い路を歩いた先…薄暗い小部屋。


 そこにいたのは…背中から羽、いや翼を生やした男性…!

「こちらカラスの獣憑きです。あの容姿ですからねえ、女性に人気なのですが。
 どうにも不吉だと…高額なのもあり、中々買い手がつきませんで」
「…………………」

 彼は長く伸ばされた黒い髪の隙間から、私を睨む。ふむ…


 あかん。その姿はまるで…漆黒の堕天使、とかそういうのが似合うやつや。
 腕とか包帯巻いてるのもポイント…って怪我してるんか!笑ってる場合じゃねえ…!

「ふふ、気に入りました。彼はおいくら?」
「ありがとうございます。3千セキズなのですが…」
「まあ困ったわ、これしか持っていないの」

 目を伏せて魔石を取り出すと…男は目を見開いた。

「こ、これは…!鑑定させていただいても?」
「もちろんですわ」

 私はその間ここで待ってまーす、と言って追い出した。
 さて…これで2人きり。


「ねーねー、貴方名前は?」
「………………」
「む…もしや言葉通じてない?」

 パリスがそうだったしね。んじゃまあ、片っ端から試すか…と口を開いた瞬間。

「…ラリー」

 しゃべった。ラリーか、何歳?

「21」
「了解。一応聞くけど、他に獣憑き仲間とかいる?」
「……あんた、そういう趣味ですか」
「あー、それでいいよ。違うって言っても信じなそうだし。
 で、いるの?」
「…いない。僕はずっと1人です」

 にゃるほど。嘘か本当か知らんが、今これ以上は無理だ。
 もっと話したいが、魔石を持った男がバタバタと部屋に飛び込んできた。


「お待たせ致しましたっ!これは確かに、かなり高品質な魔石です…。その、もしや貴女様は…!」
「あらあら。レディーの正体を探ろうだなんて…悪い人ね?」

 意訳:深入りしたら殺す。といった風に睨みつける。
 よっぽど恐ろしかったのか…顔を青くさせて一歩下がった。

「これは、失礼を…
 それでは、購入の手続きをさせていただきます。」

 震える腕で契約書を差し出す。サラサラ…はいオッケー。
 ついでに…ここまで来たんだ、一旦表に戻って奴隷の一覧表を見せてもらう。

 ふむ。大半が犯罪者か。あとは借金を返せなかった人…自業自得な者まで救う余裕はないよ、すまんね。

「ん…?この子は?」
「その娘は…死んだ母親も奴隷でして。身寄りもなく、こちらで預かっておりますが。
 片目が見えないもので、あまり労働には使えないかと。容姿は良いので、成長すればまだマシになるでしょう」

 それは、まだ4歳の女の子。
 ちょっと会わせて…と言うと、痩せ細った女の子が連れて来られた。


「……………」
「こんにちは、お名前は?」
「……………」
「おい!お嬢様の質問に…」
「貴方に聞いてないんだけど?」(威圧)

 男にだけ殺気を向ければ、ごゆっくり~!と逃げた。ったく…
 膝を突いて目線を合わせると、確かに片目が…虹彩の部分が白い。

 手を伸ばせば、少女はビクッと全身を跳ねさせる。いかん、慎重に…そっと手を取る。

「怖がらせてごめんね。お姉さんにお名前教えてくれる?」
「……ない…」
「そっかあ。じゃあ…お姉さんが決めてもいい?」

 こくり…と少女は頷いた。んー…


「ミラ。貴女の事、ミラって呼んでいいかな?」

 なんとなく浮かんだ名前だけど。響きが綺麗だし、可愛らしい貴女にピッタリだと思う。
 少女も小さく頷いてくれた、よしよし。
 頭を撫でるが、今度は拒絶されなかった。


 男を呼び、ラリーとミラを連れて行くと主張した。
 あの魔石ではお釣りが出るらしいが…

「差額は差し上げます。代わりに…
 もしも獣憑きを手に入れたら。丁重に扱い…真っ先に私に連絡をくださる?」
「で…ですが。私共はタンブル様と…」
「相場の倍出すと言っても?」
「ご連絡先をお伺いしてもよろしいですか?」

 へーいチョロい。悪いな、この世界は金がものを言うんじゃ。
 連絡手段に、私は1枚の紙を渡した。男が首を傾げるので、説明すると。

 これは魔法が掛かっていて、用件を書いて燃やすと…指定の場所に届くようになっているのだ。
 だからこれで呼んでくれたら来るし、その時に次の紙を渡す。オッケー?

「はい、かしこまりました!」

 男は満面の笑みで、2人の首輪の鍵を渡す。
 私も最後まで淑女の仮面を張り付け、2人と一緒に店を出た。



「……ふい~…疲れたあ。
 ちょっと移動するけど、大丈夫?」

 2人共無言で頷く。じゃあ失礼して…と。

「うおっ!?」
「きゃっ?」

 彼らは靴も履いてないからな、ひょいっと持ち上げた。ラリーを肩に担ぎ、ミラは優しく抱っこする。


「行くぞ、しっかり掴まってろ!」

 タン…ッ 地面を蹴り、私達は大空を走る。
 今はこうやって、地道に解放するしかないか…今後どうすっかなあ、と考えながら。
 ラリーは高所が怖いのか、私の背中をぎゅっと握り締めている。対照的にミラは目を輝かせているが。


「……ラリーって、空飛べる訳じゃないの?」
「飛べません…!」

 だよね、体の大きさに比べたら翼が小さいし。
 このまま皇宮に行くのはちとまずい…どこか宿を探そう。
 平な屋根に2人を残し、私だけ下りる。絶対戻って来るから!と何度も念を押してな。


 さて、宿は取れたが…1部屋しか空いてなかった。まあいいか。

「じゃあ行くよ、その前に…」
「「!?」」

 そのデカくて悪趣味な首輪、取っちゃおう。
 カチャン、と鍵を使って外し、首輪は素手でスクラップにする。

 軽くなったのか、2人はずっと首を触っている。はいはい、まず移動ね。
 その前に買ってきたから、ボロボロの服を着替えさせる。
 うーん…ラリーの着替えが難しい。今度特注しよう、とりあえず今は背中破いとこ。


 よし完璧。まあラリーは目立つが仕方ないね。
 ドレス姿の令嬢と、幼女と獣憑きの3人組はさぞ目立つだろう。お客の視線が痛い。
 女将さんには多めにチップを渡し、食事を部屋に持って来てもらう。

「さて…と」

 私はオリジナルに連絡しなきゃ。座って待っててーと言い残し部屋を出る。


 屋根の上で念話…現在地を報告。
 すると1分でオリジナルが飛んできた。なんだ、ドレスは脱いで動きやすい格好になってる。

「ご苦労様亜種リィ!いやー、こっちも色々あったわ。あっちにも亜種リィ残して来た」
「いいって事よオリジナルわたし。じゃ、後よろしく!」

 握手をすると、意識が溶け合い…






 ……よし。記憶の共有完了。
 保護したのは2人か、じゃあ行きますか!

 部屋に戻ると…彼らは床に正座をして待っていた。

「……ベッドに座りなね」
「……僕らは奴隷です。そんな…」
「いいから座りんさい」

 ミラを抱っこして座らせると、ふかふかの布団を撫で始めた。
 まるで猫がモミモミしてるようで…可愛っ!


「まず自己紹介。私はアシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノス。魔族だよ、よろしくね」

 とりあえず、私に仕えてもらう…と説明。実際は違うが、まあ追々ね。
 魔族と聞いて驚いているようだが、彼らは深々と頭を下げた。


 ちょいっと臭うので、ご飯の前に風呂入れよう。
 仕切りの向こうにお風呂があるタイプの部屋なので、まずミラから。

「…………」

 服を脱がすと…骨が浮かんでいる。外は暗くて気付かなかった…怪我とかはしていないが…
 この子もただ、産まれただけという理由で…理不尽な扱いをされてきた。

 私は世界中の人間を救う事は出来ないが、せめて。
 目の前で助けを求める人は、見捨てたくない。


 優しく全身を洗い、タオルでよーく拭く。
 次ラリー…だけど。私が洗うわけにゃいかん。

「あ、そうだ。その髪切る?貴方も水苦手?」
「……お嬢様の好きにどうぞ」
「いや、私は貴方に聞いてるの。水が苦手なら、頭洗う時間短縮したいでしょ?
 それとも長い髪にこだわりある?」

 するとラリーは瞠目した後…喉を鳴らして、拳を握り。


「…長い髪は邪魔です」
「じゃ切るか」

 宿の人にハサミを借りてきて、シーツを敷いてと。


「変になったらごめんね~」
「………(なんで、奴隷に謝るんだよ…)」
「お好みの長さはございますか~?」
「……ありません」
「あいよ」

 これ以上意見を聞き出すのは難しそう。
 チョキチョキ…よっし!長髪厨二病から、短髪コスプレイケメンに変貌を遂げたぞ。


「じゃ、お風呂入って」
「……はい」

 翼が邪魔かもしれんが、頑張れ。
 先に怪我だけ癒やしておこう。亜種リィは魔法を使えないから、オリジナルわたしを呼んだ訳だし。
 ラリーの包帯を解けば、痛々しい傷が…何も言わず、そっと治す。彼は戸惑っていたが、小さい声でお礼を言ってくれた。


 数分後、翼がびしゃびしゃのまま上がってきた。


「あーあー、水吸ってんのかな?
 でもカラスの羽って水弾くんじゃ…?まあ人間だし、本物のカラスとは違うわな」

 こりゃ大変だ~とタオルを何枚も使って水気を拭き取る。魔法で乾かしてもいいんだが、信頼築いてからにしよう。

 ラリーは自分でやろうとしたが、手が届かない場所あるでしょ。
 終わる頃にちょうど食事が運ばれてきた。

「ミラはちょっと痩せすぎだね。ゆっくり、よく噛んで食べな」
「……たべていいの?」
「いいよ。ゆっくりね」
「うん!」

 分かっちゃいないな、一気に食べようとしている。
 今まで…お腹を空かせていたのだろう。でも駄目、お腹壊すよ!
 ラリーも恐る恐る食べる。彼も痩せているが、これなら大丈夫だろう。



 さて、寝る訳だが。ベッドは2つ…ならば当然。

「ミラは私と一緒ね。ラリーはそっちのベッド使って」
「…………………」

 ミラは大分私に慣れてくれたが…ラリーは警戒している。なんもせんから、早く寝なさい。

 蝋燭の火を消して、それぞれベッドに入る。
 すぐにミラは寝息を立て始めた…おやすみ。






 深夜…隣でモゾモゾと動く気配がする。
 ラリー…やっぱり逃げるのかな?それでもいいんだが…1人で生きられるかな。
 悪いけど、暫くは自由にできな……ん?


 ス… パサッ

 なんか…背中越しに衣擦れの音がする。
 着替えてる…?次は蝋燭に火をつけ、ヒタヒタと裸足で歩く音が…



 ま…まさか…!?



「……お嬢様」
「っ!!?」

 呼ばれて、ゆっくりと顔を向ければ。

「僕に、ご奉仕をさせてください」
「な、ななな…!!」


 そこには…一糸纏わぬ姿のラリーが、床に膝を突いていた…!!

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