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学園4年生編
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「ですから早くセレス様をお出しなさい!!あの方は未来の王配となられるのだから!」
………あ…意識が飛んでたな…危ない危ない。
で、なんだって?わたし(女)と王女(女)の子?アハっ、なんつー幻聴が
「聞こえなかったの!?私のお腹の中に、愛の結晶である子がいるのよ!!」
幻聴じゃなかった。
「シャーリィ……俺というものがありながら…」
「はっ!?違うのよパスカル!わたしが愛しているのはアナタだけですもの!」
「言い訳は聞きたくない!信じていたのに…!」
「いや…わたしを捨てないでパスカルウゥ!!」
「おふざけはそこまでね」
「「はい…」」
バティストに怒られちった。だってー…ふざけてないとやってらんないよう。
騎士の困惑が、背中から見て取れる。なんっで公表した日に凸って来ちゃうかなあ…?明日には社交界に知れ渡り、正月の挨拶時で確定するような段取りだったのに…。
彼女は益々ヒートアップ。ジェイルを盾にして近付くと…また取り巻きおんのかーい!!お前らも自宅謹慎だろーーーが!!!
「……えーと。君は妊娠している…で間違いないのかね?」
「あら陛下。はい、間違いありませんわ」
わ。皇帝陛下が出ちゃったよ!呆れ顔でヴィルヘルミーナ殿下に最終確認をする。
「その…父親は絶っ対に、うちの子って断言出来るんだな?」
「どちら様ですか?え、ラウルスペード公爵様?つまりお義父様?
はい、セレスタン様の子ですわ!駄目よと申し上げたのに…あの方が情熱的に私を求めるから…♡」ぽっ
「「…………………」」
こっち見るんじゃない、わたしの子じゃなーい!!!と首をブンブン左右に振った。
取り巻きもなんか騒いでいるけど…はっきり言って、今の彼女らは滑稽だ。
「で…君はうちに何を求める?」
「当然、セレス様に責任を取っていただきますわ。私と婚姻し、セフテンスに来てもらいます」
いやあ…断る。つかアナタ色んな男性と、その…えー。乳繰り合っていたらしいやんけ。その子がわたしの子である確証は無いし、そもそも妊娠すらも怪しいのでは?
「いや、いる。あの女の腹に魂が宿ってるよ」
「ヨミ!て事は、赤ちゃん本当にいるの!?」
「うん」
ヨミが呑気にケーキを頬張りながら近付いてきた。その言葉にわたし達は愕然とする。じゃあ…誰だよ父親は!!
もう埒があかないのでわたしが出る事に。パスカルとジェイルとバティストには下がってもらい…堂々とした足取りで玄関に向かえば、陛下もお父様も道を譲ってくれた。ふう…
ヴィルヘルミーナ・アヌ・セフテンス。これまでの貴女の言動は、王族以前に人として許されるものではない。
世間知らずのお姫様だから、と見逃される時期もとうに過ぎた。さて…覚悟してもらおうか。
「ヴィルヘルミーナ殿下。わたくしをお探しとの事ですが…」
「セレス様♡………え?」
殿下も取り巻きも…目を見開いている。そしてアンタ誰よ?と言うので微笑みながら説明してあげた。
これまでは意識的に声を低くしていたが…これからは。本来の声でお相手致します。淑女っぽい話し方はしんどいが。
「わたくしがセレスタン・ラウルスペードでございます。訳あって男性として振る舞っておりましたが…もう役目は終えました。これからはシャルティエラとお呼びくださいませ。
この事は伯父である陛下もご存知ですので…何を訴えても無駄ですわ。
どうして男性の振りをしていたのか…それはラサーニュ伯爵の陰謀、とだけお教え致します。皇国の貴族ならば、それだけで察しは付くと思いますが…」
これは後ろの3人に向けた言葉。
これが、最終通告。ここで違えたら…お前達の未来は無い。
その意を込めて冷たい視線を送る。彼らはわたしがセレスタンの顔をしている事。陛下と公爵が両側に立ち、同じように睨み付けている事で…状況を理解したようだ。
3人揃って顔を青くして…「申し訳ございませんでした!!!」とその場に土下座する。……はあ。
「自宅謹慎中である貴方方の処遇は、改めて伯父様にお願い致します。彼らをつまみ出しなさい!」
強めに言い放てば、騎士達が取り巻きを拘束して連れ出した。そっちは陛下にお任せ、最後に…
「う、うそよ。あなたが…セレスタン様ですって?」
「そう申しましたが?ですので残念ながら、お腹の子はわたくしの子ではありません。
先程から聞いていれば…わたくしに迫られただの。責任が、なんですって?ある事ない事言いふらし…名誉毀損って、ご存知?」
「………………………」
彼女はぶるぶると拳を握り、わたしを睨み付ける。ああ…伯爵夫人の時も思ったけど。どれだけ顔の造形が整っていようとも…内面の醜さは、隠せないんだなあ…。
もう彼女と話す事は無い。何せ精霊達ももう、限界なのだ。
これまでの殿下の暴言の数々。わたしに対するストーカーばりの執着。今の…誕生日パーティーをぶち壊してくれた行動。特にトッピーがヤバい。影の中から可愛い声で「死ね…殺す…潰す…」って絶え間なく聞こえてくるのだ…!!
「分かっていただけましたか?ではお帰り願い…」
「嘘よっ!!!」
「ぴえっ!?」
「分かったわ、本当は双子じゃなくて三つ子だったのね!!!セレス様、シャルティエラ、シャルロットの3人がいるのでしょう!?騙されないわ、セレス様を出しなさい!!
責任逃れなんてさせないわ!あの方があの日、誰もいない教室で!!嫌がる私を押さえ付けて無理矢理純潔を奪ったのよ!!?」
さっきと言ってる事違ってない?てか、よく大声で言えるなそんなん。
ていうか、ペレちゃんがお茶の席で教えてくれた。
『その…ヴィルヘルミーナお姉様は。自分を否定される事を嫌い…物事を自分の都合よく解釈するのです。
恐らくですが…ここ数年は…正気でないのかもしれません。もう私の事も、妹ではなく使用人と認識しておりますし。
確実に皇国にご迷惑をお掛けすると分かっておりましたので、留学は最後まで反対したのですが…セフテンスに私の言葉を聞いてくれる人はおらず。
申し訳ございません…目先の仕事に追われて、人脈作りや根本の解決を怠った私の責任です…』
と…。確かに今のヴィルヘルミーナ殿下は普通ではない。そう考えていたら…
「だはっ!?」
「どきなさい!私が彼を探します!!」
彼女の細腕からは想像もつかない程、力強く突き飛ばされてしまった。ここで「きゃあっ」と可愛らしく叫ぶ練習が必要だな。
じゃなくて。ジェイルが受け止めてくれたし、わたしはノーダメージ。殿下はズカズカと屋敷内に足を踏み入れるが……ついに。
精霊達が、キレた。
「きゃあああっ!!?」
「殿下!!」
彼女は屋敷の外に吹っ飛ばされた!!またヘルクリスだな、マズイぞ!!彼女を急いで追い掛ける!
「彼女を取り押さえなさい!!なるべく優しく大人数で、急いで!!!」
わたしの言葉に、ハリエット卿始め女性騎士総出で取り押さえる。
「離しなさい!!この私を地面に擦り付けるなど…!!」
「邪魔、邪魔。あるじ、騎士をどけて。あの女、殺す」
「まままま待って!ほら、取り押さえてるから…!」
あかーーーん!!!ヘルクリスも、トッピーも、セレネも…真体になって威嚇してる!!こうして押さえて無ければ今頃、殿下は肉塊と化していただろう。
ヨミだけは辛うじて理性的だが、「こいつムカつく」と怒りは感じているようだ。どうやって落ち着けようか考えていたら…バズーカを担いだロッティが。ゆっくりと…歩いて来た…?
「……もう…ここまで、ね…」
「ロッティ…?」
彼女の顔は…完全にキレていた。
その時ヘルクリスがバサッ!!と翼を広げた。うわっぷ、ドレス捲れる!!
誰もが突風に煽られ、体勢を崩してしまう。とにかく殿下を守らないと…!と思っていた、次の瞬間。
ヘルクリスが…わたし、ロッティ、セレネを乗せて。大空に飛び立ってしまった…?影の中には、精霊がたくさん。
地上で呆気に取られ、空を見上げている皆の姿が見えた。が、ヘルクリスが猛スピードで何処かに向かっているので…気にする余裕は無かった。
「あの…何処行くの…?」
「決まってるでしょうお姉様?セフテンスを…滅ぼすのよ」
「……………はいいいい!!?」
わたしは耳を疑った。いや、それはどうかと!!
「お姉様。お姉様にとって最上級精霊が身近すぎて、分からないのでしょうけど。セフテンスは引き返せないところまで来てしまった。かつての…ラサーニュ伯爵のように。
いい?あんなにも大勢…国の重鎮が集まる場で、お姉様を侮辱するという事は…精霊様を貶すと同義。
皆お姉様と契約した影響で、基本的に人間に危害は加えないけど。分かっているでしょう?
そして、責任を取るのは国そのもの。今更あの女1人殺したところで、彼らは止まらない」
「う……」
その通り。ヘルクリスは今も無言で飛んでるし…でも、無関係な民を傷付けなくない…!
「もちろんよ。まあ…首都は火の海待ったなしよね。でも…知ってる?
セフテンスって、クーデター寸前なの。国民が徒党を組んで、城を落として王族を皆殺しにする。ペトロニーユ殿下も例外ではないわ、民にも多くの犠牲が出るでしょう」
「えっ!!?だ、駄目だよ絶対!!!」
「だからこそ、私達が滅ぼす。王族も高官も全員捕らえ、正当な裁きを下す。精霊様達は容赦なく攻撃するでしょうけど…そのほうが遥かにマシなのよ」
「うぅ…!じゃあ皆、暴れるのは避難させてからにしてね!?」
精霊達と打ち合わせをしていたら、もう着いてしまった…!
セフテンスは地図で見る限り…北海道くらいの大きさの島国だ。それが大小の島に別れ、長い橋で繋がっている。それと周囲に小島が3つ。
大きいほうの島、海に面しているあれが王城かな…?
グオオオオオオォッ!!!
とヘルクリスがブレスを吐いた!!それで城の屋根は吹っ飛び…ねえ人死んでない!?
当然ながら人が集まってきた!どうしよう…と慌てていたら、ロッティがヘルクリスの上から堂々と名乗りを上げた!!恐らくヘルクリスが声を風に乗せているのだろう、首都中に響き渡っている。
「私の名はシャルロット・ラウルスペード!!!グランツ皇国を代表し、精霊様と共に滅びを届けにやって来た!!!
こちらに座すのは風の最上級精霊エンシェントドラゴン様!!
地の最上級精霊ベヒモス様!!
闇の最上級精霊死神様!!
光の最上級精霊フェンリル様!!
そして…彼らを統べる精霊姫、シャルティエラ・ラウルスペード!!」
やめてー!!恥ずかしい…!!
「貴様らはこちらの精霊様を敵に回した!!最早謝罪も命乞いも届かぬ!!!
これより30分の猶予を与える。その後首都に、彼らの総攻撃が降り掛かる!!暮らしを捨てるか国と運命を共にするか、選択せよ!!!」
彼女の声がビリビリと響く。だが動きが少ない…本気にされていないな?そこで痺れを切らしたロッティが…下に向かってバズーカを構えた!!
「4(キャトル)!!!」
ドゴオオォン!!!と轟音が響き、城が抉れて庭にクレーターが出来ている…!!今ので何人か死んでない!!?
「これを見てもまだ信じられぬか!!ならば貴様らは、城と共に滅びよ!!!」
あーーー!!!しかもセレネに乗って飛び降りた!!
ロッティは向かってくる騎士を、とっとと避難しろ!と叫びながらバズーカで薙ぎ払い…強いなうちの子!!!って眺めてる場合じゃねえ!!
わたしもヘルクリスから飛び降り、上空に浮かびドレスを靡かせながら言葉を発する。例の炎の翼は、薄暗い中でよく目立つ。
「エア、わたしの声も広げて!!
…あー…セフテンスの皆さん、聞こえていますか!?セフテンスの王族は彼ら精霊達の逆鱗に触れました。もう逃れる術はありません!!
速やかに避難を開始してください!家は壊れますが…今後の生活は皇国が保障致します!!慌てず騒がず、押さない、駆けない、喋らない。お・か・しを守って…おはしだっけ?なんでもいいわ!!
騎士は避難経路を確保!!子供や老人、病人怪我人身重の女性などの手助けをする事!貴重品を持ち出している暇はない、急ぎなさい!!ていうか何処までが首都なの!?」
その言葉に、ようやく人々が動いた。
すると…派手な格好の男性が、壊れた城の合間からわたしを見上げて叫んでいる。
「貴様!!このような事をしてただで済むと思っているのか!!?」
服からして…国王か?そりゃこっちのセリフだ!!!
「あんたの娘がわたしに喧嘩売った結果だよ!!!最上級精霊を怒らせてはいけないって、子供でも知ってんだろうが!!?」
「貴様が精霊姫だと言うのなら、精霊を制御出来るだろうが!!!」
「出来るかバーーーカ!!精霊の契約ってのはな、主従契約じゃねーんだわ!!!彼らは自主的にわたしを主と言ってくれるけど、対等な関係なの!!!
今まではわたしのお願いを聞いてくれて大人しくしてたの!!それにあそこまで侮辱されてお咎め無しは、国も精霊も示しがつかないの!!」
一度国を滅ぼすくらいしないと、彼らは落ち着かない。それが互いの為に一番いいんだ、聞き分けろ!!
すると国王は歯軋りをした後…一目散に逃げ出した!!お前避難誘導しろやーーー!!?
「ヨミ、城から逃げ出した人は全て捕まえられる?」
「任せて。全員?」
「うん。女性も子供も、避難誘導している騎士はいい」
この機に王族に逃げられちゃ困るからね。
わたしは避難を見守る。クーデターが起きる前でよかった…のか?少なくとも、人間の被害は抑えられるはずだ。
「……ん?」
「こちらです!金品を持ち出している暇はありません、ご老人の手を引いて差し上げなさい!!」
あれは…ペレちゃん!?
城の中で誰もが逃げ惑う中、見知った少女が声を張り上げていた。な…!国王はとっくに外に出て、ヨミに捕まっているというのに。破けたドレス姿のペレちゃんは必死に皆を逃がそうとしている…!
「もう誰もいませんね!?精霊様が慈悲をくださっているのです、無駄にしてはいけません!!」
「ペレちゃあーーーん!!!」
「ラウルスペード様!?……あれ、セレスタン様では…ないのですか?」
「セレスタンだよう!!詳しい話はこっちで…!」
城の中の避難は完了したようで、わたしはペレちゃんを迎えに行った。絶対に…貴女だけは死なせない!!
30分後…捕らえた人々は、ヨミが影でガードしている。そして…精霊達は攻撃を開始した。が。ノリノリでセレネに跨りバズーカをぶっぱするロッティは…完全にもの◯け姫。更にヘルクリスとトッピーが派手に暴れて…首都は壊滅した。
王城もボロボロになって、わたし達はその上空にいる。ペレちゃんを抱えて、ヨミと共に全てを見守る。
「……もう…セフテンスは終わりなのですね。私は…」
「ペレちゃん…ごめんね…」
彼女には30分の間に全て説明した。
「ラウルスペード様が謝罪される事ではありません…。こうなる事は、目に見えておりました。
恐らく姉も両親も…精霊様がお優しいから、勘違いをなさったのでしょう。どれだけ見下しても怒られないと…それが…このような結果に…」
「…………………」
彼女は泣きながらずっと自分を責めていた。
その姿に…かつての自分が重なった。比べるべくもなく、彼女のほうが背負っている物は大きいけれど。
全部自分が悪い…自分がこうするべきだった。自分は…なんの役にも立てない。華やかな姉達に比べて、地味で突出した才能も無い…と。
わたしはペレちゃんをぎゅっと抱き締める。
「ね、シャーリィって呼んで。大丈夫、精霊達は本当に優しいの。結局避難が終わるまで30分以上も待ってくれたし…。
ペレちゃんは何も悪くないよ。今後の事も大丈夫。一緒にグランツに行こう?」
「………私、なんかが…」
「駄目だよ、そんな事言っちゃ。君は最後までお城に残って皆を逃した。真っ先に逃げた王達なんかより…君は誰よりも誇り高い王族だよ」
「……………シャーリィ…さん…」
彼女はわたしに縋り、泣き続けた。
その時満足したヘルクリス達も戻って来て…はあ。
「ふう、暴れたわ。流石に腕が痛いわね…」
「ノリノリだったからね…滅国のロッティがほんとになっちゃったよ…」
「でもこれで、セフテンスも救われるわよ?これからは従属国…じゃないわね。吸収合併して、グランツ皇国の一部になるのかしら?」
おぅ…また大きくなっちゃうのか。
ちょっと気が遠くなっていたら…お?皇国の方角から、人が飛んで来る?あら、テランス様!!それに騎士の皆さんも。
「おお!!!エリゼから聞いたぞ、本当に女性だったとは!!!」
「は、はいぃ…」
「派手に暴れたねえ…」
「モーリス様!あ、王族とか纏めて吊るしときました!」
「意外と容赦無いね?」
いやー援軍到着ですね!彼らは壊滅した街を見て、顔を引き攣らせている。
早速だけど…この騒ぎで死者が0とは考え難い。最後まで上級精霊に手伝ってもらって見回りしたけど…一緒に滅ぶ事を選んだ人も、いるかもしれない。
彼らに全て託し…わたし達は帰る。陛下に報告しないと…気が重いぃ…。
それでも結果的にクーデターは阻止出来たし、ペレちゃんも助けられた。それだけでも…良かったと、心底思うのだ。
「もー、ロッティのドレスぼろぼろだよ!顔も汚れちゃって」
「お姉様こそ!大分セクシーになってるわよ…」
「お?………おぎゃーーーっ!!?」
いやーん!!横が大胆なスリットのように破けちゃってるわ!!
ヘルクリスに乗りながら、そんな会話をする。あーあ…楽しいパーティーが、どうしてこうなった?と考えながらね。
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