2 / 72
ラミレア王国
第2話 歌を、練習します
しおりを挟む
朝ベッドで目覚めた僕は小さくため息を吐く。
「昨日は大変な目にあった……」
あの後、集まった人達にせがまれて今日も叫ぶ約束をさせられてしまった。
「胸が締め付けられるような気持ちになって、それなのにもう一度聞きたくなる……昔を思い出すような気持ちじゃ」
お年寄りが言う。
皆が涙を溜めた目で頼み込んでくるんだ。
とても断れなかった。
どうも年齢が高い人ほど熱心だったようだけど。
「これ、明らかにあれのせいだよな」
女の子にキスされた時に頭に流れ込んできたモノと聞こえた声。
「魔歌、だっけ。後で聴こえた熟練度とかいうのも気になるな」
試しに鼻歌を歌ってみたり、知っている童謡を口ずさんでみたりするが何も起こらない。
「うーん。何も変わらないし、あの声も聞こえない」
(何か条件があるのかな?練習しながら試してみるか)
折角頂いたものだ。磨かないのは勿体ない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝の広場は色々な年齢層が歩いていた。
これなら色々試すことが出来そうだ。
「……♪」
小さい鼻歌を試してみる。反応無し。
「~~♪」
有名な童謡を歌ってみる。
視線を向ける人は居るが、そこまでだ。
人が寄って来るほどでは無い。
(音の大きさや歌詞の有る無しで何かが変わるわけじゃ無いのか?)
別の童謡を歌ってみる。
小さい頃……3人でよく歌った曲。
将来の事なんて何も知らなかった、3人で居ることが何より楽しかった頃の。
「~~♪」
大変な事になった。
子供がどんどん寄って来る。
当然親も引き寄せられ、広場にまた人集りが出来る。
一緒に歌う子供や、聴き入る親で広場が埋まりそうだ。
歌い終わると大きな拍手が送られた。
(これは……思い出? いや、僕の感情が条件なのか?)
拍手に頭を下げて応えると、集まった人々は名残惜しそうにしつつも去って行った。
『神業・魔歌の熟練度が上がりました』
(よし、上がった! これは多分、人に自分の歌を聴かせる事が条件で間違い無い)
目的がひとつ達成できた僕は拳を握る。
それぞれの方向へ散っていく人々を見ていると、入れ替わるように豪奢な馬車が近付いて来るのが見えた。
あの家紋は……公爵家の……
「ロイ君、素晴らしい歌声だったね。たまたま通りがかっただけなのについ馬車を停めて聴き入ってしまったよ」
声をかけてきたのは僕を棄てたエメラダの父だった。
「どうだね、ひとつ提案なのだが。来週城で王子と娘の婚約を祝ったパーティーが有る。そこで歌ってみないかね? 勿論報酬も出そう。……上手く歌えれば『君に相応しい』女性も見つけられるかも知れんぞ。ハハハ」
笑う公爵を見ていると、なんとも言えない怒りが込み上げてくる。
(この人は……他に先に言うことがあるんじゃないのか? それに婚約のパーティー? 僕との婚約破棄をしてたったの1週間で? しかもあの2人のために僕に歌えと!?)
「それはおめでとうございます。光栄なお話ですし、僕でよろしければ是非歌わせて下さい」
僕は笑顔で頭を下げる。
……来週までに熟練度を上げまくってやる。
見てろ……いや、「聴け」よ。
僕は1週間死ぬ気で練習する事を誓った。
「昨日は大変な目にあった……」
あの後、集まった人達にせがまれて今日も叫ぶ約束をさせられてしまった。
「胸が締め付けられるような気持ちになって、それなのにもう一度聞きたくなる……昔を思い出すような気持ちじゃ」
お年寄りが言う。
皆が涙を溜めた目で頼み込んでくるんだ。
とても断れなかった。
どうも年齢が高い人ほど熱心だったようだけど。
「これ、明らかにあれのせいだよな」
女の子にキスされた時に頭に流れ込んできたモノと聞こえた声。
「魔歌、だっけ。後で聴こえた熟練度とかいうのも気になるな」
試しに鼻歌を歌ってみたり、知っている童謡を口ずさんでみたりするが何も起こらない。
「うーん。何も変わらないし、あの声も聞こえない」
(何か条件があるのかな?練習しながら試してみるか)
折角頂いたものだ。磨かないのは勿体ない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝の広場は色々な年齢層が歩いていた。
これなら色々試すことが出来そうだ。
「……♪」
小さい鼻歌を試してみる。反応無し。
「~~♪」
有名な童謡を歌ってみる。
視線を向ける人は居るが、そこまでだ。
人が寄って来るほどでは無い。
(音の大きさや歌詞の有る無しで何かが変わるわけじゃ無いのか?)
別の童謡を歌ってみる。
小さい頃……3人でよく歌った曲。
将来の事なんて何も知らなかった、3人で居ることが何より楽しかった頃の。
「~~♪」
大変な事になった。
子供がどんどん寄って来る。
当然親も引き寄せられ、広場にまた人集りが出来る。
一緒に歌う子供や、聴き入る親で広場が埋まりそうだ。
歌い終わると大きな拍手が送られた。
(これは……思い出? いや、僕の感情が条件なのか?)
拍手に頭を下げて応えると、集まった人々は名残惜しそうにしつつも去って行った。
『神業・魔歌の熟練度が上がりました』
(よし、上がった! これは多分、人に自分の歌を聴かせる事が条件で間違い無い)
目的がひとつ達成できた僕は拳を握る。
それぞれの方向へ散っていく人々を見ていると、入れ替わるように豪奢な馬車が近付いて来るのが見えた。
あの家紋は……公爵家の……
「ロイ君、素晴らしい歌声だったね。たまたま通りがかっただけなのについ馬車を停めて聴き入ってしまったよ」
声をかけてきたのは僕を棄てたエメラダの父だった。
「どうだね、ひとつ提案なのだが。来週城で王子と娘の婚約を祝ったパーティーが有る。そこで歌ってみないかね? 勿論報酬も出そう。……上手く歌えれば『君に相応しい』女性も見つけられるかも知れんぞ。ハハハ」
笑う公爵を見ていると、なんとも言えない怒りが込み上げてくる。
(この人は……他に先に言うことがあるんじゃないのか? それに婚約のパーティー? 僕との婚約破棄をしてたったの1週間で? しかもあの2人のために僕に歌えと!?)
「それはおめでとうございます。光栄なお話ですし、僕でよろしければ是非歌わせて下さい」
僕は笑顔で頭を下げる。
……来週までに熟練度を上げまくってやる。
見てろ……いや、「聴け」よ。
僕は1週間死ぬ気で練習する事を誓った。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
104
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる