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歌い手の旅

第61話 足が、痛いです

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 ラミレアの軍、オフェリアの軍、アルバスタの軍が集まり、やや不思議な空気感になっていた。

 少し前までは敵対するかも知れなかった相手と一緒に野営しているのだから無理も無いだろう。

 しかし、他に理由がある気もする。
 例えば僕だ。

「ロイ様は無茶をしすぎます。何かあってからでは遅いのですよ?」

「本当ね……ロイさんにも考えがあっての事とは思いますが、1人で先行されるのはどうかと思うんんです」

「少年は勢いで走り出す事があるのは私も解る……が、勇気と無謀は違ってだな」

 地面に座らされた僕は並んだ女性3人……女王、女王、騎士に責められていた。
 仕方無い事なのだろう。心配をかけたのは事実だから。
 でも今は……。

「あの、今は大変な時で……こんな事をしてる場合じゃ無いというか……」

「こんな事、ですか?」
「こんな事なのでしょうか」
「ほう、いい度胸だ」

 笑顔が怖い……でも本当に今は……。

「お前……さすがに今のは無いぞ」

 デュランが呆れた顔で言って来る。

「どの口が仰るんでしょうか?」
「そもそもどなたのせいなのやら」
「男ならそれなりの態度があるとは思わんか?」

 僕の隣にデュランが座る。
 お前のせいだと言いたげな視線は無視する。

「現状を整理します」

「「はい」」

 シャルロットさんの声に僕達が応える。

「ラミレアの仕掛けた戦争は欲をかいた王と、それを利用した佞臣が画策したものであると」

「「はい」」

「現在は王を退位させ、そこの貴方が新王になった。これ以上争う気は無い、そうですね?」

「そこのって……いや、はい」

「ここでローアと戦っていたのは逃亡した佞臣と、婚約者をラミレアへ連れ帰る為だったと」

「「はい」」

「いきなり戦争をしかけるのはどうかと思いますが、今のラミレアでは早急にうてる手が他に無かったのは確かなのでしょう」

「「はい」」

「ラミレアがこのような状況なら、我々の打てる手も変わって来る……ですね、フィアナ様」
「ええ」

 マリアさんとフィアナさんが話し合っている。

「3カ国の連名で会談を申し込みましょう。こちらの要求は佞臣とその娘、エリス姫の身柄です。あちらも何か要求をしてくるかも知れませんが、内容次第でまた検討しましょう」

 皆が頷き方針が決まった。

 連名での新書が作られる事になり、それを届ける役は僕が立候補した。

 皆は反対したが、相手に害意があった場合には僕が1番逃げ帰れる可能性が高いはずだ。
 そう主張して押し通した。

 完成した親書を受け取り、痺れる足で立ち上がる。

「……~~♪」

[神技・具現を使用します]

 魔竜が静かに降りてくる。
 地面に降りるなり、顔を逸らす。
 ……君まで怒らなくても……。

 僕は魔竜に乗り、皆を見回す。

「じゃ、行ってきます」

 僕が万が一明日の夜までに戻らなければ……戦争になる。
 害意で僕が倒れたと判断され、全員がローア領内に侵攻するからだ。

 手を振る皆に手を振り返しながら、上昇する魔竜の背で城の方角を見る。

 (なんとしても……うまくやらないと)

 城へと向かい、魔竜が飛び始めた。
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