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ばんそうこう
ドS男の暴走
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ひと口どうぞ、と先輩から差し出された日本酒のグラス。
ええー、知らない人とグラス共有とか嫌なんだけど……とも言えず、しょうがないからひと口飲むと、カーッと口の中が焼かれる感じ。
「辛……」
「あはは! 飲めない? かわいいー」
「おい拓也、無理に飲ませんなよ」
「もうひと口飲んで」
「拓也、やめろって」
「ごめんね、俺ドSだから泣かせたいの」
ドSって……泣かせたいなんて、ただのいじめっ子じゃない。
良かった、こんな人と付き合うことにならなくて。
「俺、遠山さんのこと諦めてないよ」
「え?」
「付き合ってって言ったじゃん」
「諦めてください。お願いします」
「そのフリ方ひどすぎない?」
「あはは! 諦めろ、拓也」
ほんっとーに心からの一生のお願い。
「総務って結構残業多いイメージでしたけど、今日は早かったんですか?」
なっちゃんが話を変えてくれる。
ありがとう、なっちゃん。大好き。
「大輝がシステムってかプログラム? よく分かんないけど作ってくれて、めっちゃ作業効率上がったんだよね」
「SEじゃないですか」
「うちSE二人しかいないから、前から要望は出してたけど全然やってくれなくて。自分で作った方が早いかなって」
「早いかなって作れちゃったんですか?!」
「システムから本借りてきて検索しまくって何とかね。同じの作れって言われても作れないよ」
謙虚ー。
謙遜してるだけで、きっと作れるんだろうなあ。カッコ良……。
「大輝ががんばってくれたおかげで遠山さんと飲める。サンキュー!」
難波さんと浜崎さんが親指を立て合って笑う。
意外だけど、ほんと仲良さそう。
「遠山さん、猫派? 犬派?」
「どっちもアレルギーです」
「マジか。俺どっちも飼ってるから遊びにおいでって口説こうとしたんだけどなあ」
「え? 何飼ってるんですか?」
「お! 好きは好き?」
好き。
昔、魁十と捨て猫を見つけて拾って帰り、飼いたいって二人して泣いてごねたことがあった。
ただ、いざ飼いだしたら毎日発疹とかゆみに悩まされるようになり、泣く泣くおじいちゃんの知り合いの金物屋さんにもらわれて行った。
後から調べたらアレルギーだった。
大喜びしてたのに、私のせいでごめんねって泣く私に、
「ムーより紗夜の方が大事だから泣かないで」
って魁十も泣きながら言った。
今思い出しても思い出し泣きしそう。
まだまだワガママ盛りでもおかしくない、小学2年生だった。
「うわあ、かわいい!」
茶色い毛の犬とグレーの毛の猫がじゃれ合っている。
犬と猫ってこんな仲良く飼えるんだ?
「2匹とも自分を人間だと思ってるんじゃないかな」
「すごい仲良しですね」
「小さい時から一緒に育ってるからね。俺どっちも大好きで両方飼いたくて、めっちゃ調べたの」
「へえ……」
ギャップの多い人だな。
真面目で温厚な人かと思ったらチャラい嫌な人で、でもペットには誠実。
うん、動物を好きな人に悪い人はいない。
「犬種とか分かる?」
「ミニチュア・ピンシャーとロシアンブルーですね」
「お! めっちゃ詳しいじゃん」
左肩に浜崎さんの手が乗り、グッと抱き寄せられる。
浜崎さんが持つスマホをのぞき込んでいたから、いつの間にか密着していたことに気付いた。
うわ、嫌だな……。
助けを求めて顔を上げるも、なっちゃんと難波さんは交互に耳元に口を寄せて話している。
胸がズキッとする。
なんで。
なっちゃんを応援しようって決めたのに。
邪魔しちゃいけない。
自力で切り抜けよう。
「ごめんなさい、お手洗い行ってきます」
洗面台の鏡には、楽しい週末の夜を過ごしているとはとても思えない顔……。
私は難波さんを好きなわけじゃない。
こんな顔してるなんて、変。
ドアを開けると、トイレ前の通路の壁に浜崎さんがもたれかかっている。
この店はトイレが男女で分かれていない。
ちんたら鏡見てて申し訳なかったな。
「すみません」
浜崎さんの前を通り抜けようとしたら、腕をつかまれてトイレに出戻らされてしまった。
洗面台と便器を隔てるドアに両手を押し付けられて痛い。
「離してください」
「俺ドSだから嫌がられる方が燃える」
燃える?
普段は温厚そうな細い目がギラついて見える。
やだ、怖い。
動物好きにも悪い人がいた。
「やめてください」
「もっとやってってことだよね」
何なの、そのドS変換……。
怖い。やってなんて言ったら、本当に何かされそう……。
嫌。本気で嫌。
ええー、知らない人とグラス共有とか嫌なんだけど……とも言えず、しょうがないからひと口飲むと、カーッと口の中が焼かれる感じ。
「辛……」
「あはは! 飲めない? かわいいー」
「おい拓也、無理に飲ませんなよ」
「もうひと口飲んで」
「拓也、やめろって」
「ごめんね、俺ドSだから泣かせたいの」
ドSって……泣かせたいなんて、ただのいじめっ子じゃない。
良かった、こんな人と付き合うことにならなくて。
「俺、遠山さんのこと諦めてないよ」
「え?」
「付き合ってって言ったじゃん」
「諦めてください。お願いします」
「そのフリ方ひどすぎない?」
「あはは! 諦めろ、拓也」
ほんっとーに心からの一生のお願い。
「総務って結構残業多いイメージでしたけど、今日は早かったんですか?」
なっちゃんが話を変えてくれる。
ありがとう、なっちゃん。大好き。
「大輝がシステムってかプログラム? よく分かんないけど作ってくれて、めっちゃ作業効率上がったんだよね」
「SEじゃないですか」
「うちSE二人しかいないから、前から要望は出してたけど全然やってくれなくて。自分で作った方が早いかなって」
「早いかなって作れちゃったんですか?!」
「システムから本借りてきて検索しまくって何とかね。同じの作れって言われても作れないよ」
謙虚ー。
謙遜してるだけで、きっと作れるんだろうなあ。カッコ良……。
「大輝ががんばってくれたおかげで遠山さんと飲める。サンキュー!」
難波さんと浜崎さんが親指を立て合って笑う。
意外だけど、ほんと仲良さそう。
「遠山さん、猫派? 犬派?」
「どっちもアレルギーです」
「マジか。俺どっちも飼ってるから遊びにおいでって口説こうとしたんだけどなあ」
「え? 何飼ってるんですか?」
「お! 好きは好き?」
好き。
昔、魁十と捨て猫を見つけて拾って帰り、飼いたいって二人して泣いてごねたことがあった。
ただ、いざ飼いだしたら毎日発疹とかゆみに悩まされるようになり、泣く泣くおじいちゃんの知り合いの金物屋さんにもらわれて行った。
後から調べたらアレルギーだった。
大喜びしてたのに、私のせいでごめんねって泣く私に、
「ムーより紗夜の方が大事だから泣かないで」
って魁十も泣きながら言った。
今思い出しても思い出し泣きしそう。
まだまだワガママ盛りでもおかしくない、小学2年生だった。
「うわあ、かわいい!」
茶色い毛の犬とグレーの毛の猫がじゃれ合っている。
犬と猫ってこんな仲良く飼えるんだ?
「2匹とも自分を人間だと思ってるんじゃないかな」
「すごい仲良しですね」
「小さい時から一緒に育ってるからね。俺どっちも大好きで両方飼いたくて、めっちゃ調べたの」
「へえ……」
ギャップの多い人だな。
真面目で温厚な人かと思ったらチャラい嫌な人で、でもペットには誠実。
うん、動物を好きな人に悪い人はいない。
「犬種とか分かる?」
「ミニチュア・ピンシャーとロシアンブルーですね」
「お! めっちゃ詳しいじゃん」
左肩に浜崎さんの手が乗り、グッと抱き寄せられる。
浜崎さんが持つスマホをのぞき込んでいたから、いつの間にか密着していたことに気付いた。
うわ、嫌だな……。
助けを求めて顔を上げるも、なっちゃんと難波さんは交互に耳元に口を寄せて話している。
胸がズキッとする。
なんで。
なっちゃんを応援しようって決めたのに。
邪魔しちゃいけない。
自力で切り抜けよう。
「ごめんなさい、お手洗い行ってきます」
洗面台の鏡には、楽しい週末の夜を過ごしているとはとても思えない顔……。
私は難波さんを好きなわけじゃない。
こんな顔してるなんて、変。
ドアを開けると、トイレ前の通路の壁に浜崎さんがもたれかかっている。
この店はトイレが男女で分かれていない。
ちんたら鏡見てて申し訳なかったな。
「すみません」
浜崎さんの前を通り抜けようとしたら、腕をつかまれてトイレに出戻らされてしまった。
洗面台と便器を隔てるドアに両手を押し付けられて痛い。
「離してください」
「俺ドSだから嫌がられる方が燃える」
燃える?
普段は温厚そうな細い目がギラついて見える。
やだ、怖い。
動物好きにも悪い人がいた。
「やめてください」
「もっとやってってことだよね」
何なの、そのドS変換……。
怖い。やってなんて言ったら、本当に何かされそう……。
嫌。本気で嫌。
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