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小学6年生

思い出

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小学生の頃は、何も考えなくても友達ができた。
高学年になっても割とクラスの男女仲良くて、卒業近くまで楽しく過ごしていた。

周りの女子は誰がカッコいい、あの子が好きってキャーキャー言ってたけど、弟がカッコよすぎる私は特に誰を好きになることもなく、恋バナはとりあえずニコニコしながらボーッとしてやり過ごしていた。

卒業制作の班を決める時に、みやびちゃんって子がしきりに

高鷺たかさぎと絶対同じ班になりたい!」

と私に言ってきた。

「なれるといいねえ」

私が班決めするわけじゃないから、そう言うしかなかった。

高鷺と同じ班になった女子は私を含めた3人。
みやびちゃんは願い虚しく、別の班だった。

「残念だったね」
「嫌味?」

最初にみやびちゃんとの間に違和感を感じたのは、あの時だと思う。

卒業制作は写真アートだった。
6年生3クラス合同で、6年間の様々な行事で撮られた写真を使って、ひとつの絵というか、作品にする。

私たちの班は写真を調達する係だったから、印刷室に写真を取りに行って、教室に入ったら男子たちが盛り上がっていた。

「高鷺、好きな女子いんの?! マジか、誰?」
「言わないよ」
「ヒントだけでも!」
「んー、目立ってる子」
「なるほどー。告白してみろよ。仲いいじゃん」
「えー、でも、中学も一緒だし、フラれたらキツイ~……」
「高鷺なら大丈夫だって!」

へえ、高鷺、好きな子いるんだ。

「写真持ってきたよ」
「遠山! 話聞いてた?!」
「え? 好きな女子に告白してフラれたらキツイって話?」
「めちゃくちゃ聞かれてる……」

おもしろいくらい高鷺が真っ赤になって、それからタコ鷺って呼ばれるようになった。

「あ、赤が足りないから写真撮らせて。ありがと。印刷してくるねー」

写真をプリントして教室に戻ったら、男子はいなくなっていて、女子ばっかりで、みやびちゃんが泣いてて、みんなが私を睨んでいた。

「どうして高鷺と仲良くし続けてたの。私の気持ち知ってて」
「高鷺が紗夜ちゃんのこと好きなのなんて普通分かるでしょ」

え?
普通に分かってませんでしたけど……。

私は本当に高鷺が私を好きだなんて知らなかったし、何ならみやびちゃんが高鷺を好きだとも知らなかった。

みやびちゃんと話していて時折感じた違和感は、前提となる「普通」が私とみやびちゃんでは違ったからなんだと今なら分かる。

それからは、誰も私に話しかけなくなった。
女子の空気を感じてか、男子も。

高鷺だけは、何か物言いたそうにしていた。

みんな私に聞こえないように、コソコソヒソヒソしゃべる。

あんなに楽しかった学校が地獄になってしまった。
みんな仲良かったのに、私が壊してしまった。

自己嫌悪に苛まれ続けていたある日、私がダイニングテーブルでプリンを食べていたら、学校から帰ってきた魁十が私の顔を見るなりランドセルをソファに投げつけた。

「どうしたの」
「なんで俺に言わなかったの。姉ちゃん、クラスでハブられてるってほんと?」
「あ……」

弟の耳には入れたくなかったんだもん。
お姉ちゃんなのに、ハブられてるとか……。

「だから最近帰ってきたらすぐに部屋行ってたんだろ。ひとりで泣いてたんだろ。なんでひとりでなんだよ! なんで俺に言わないんだよ!」

わああああん、と魁十が大声で泣くから、つられて私も思いっきり泣いた。

「泣き虫……なんで魁十が泣くの」
「姉ちゃんが俺に秘密つくったから」
「ごめん……」
「俺には何でも話してよ。姉ちゃんが体ばっか大きいガキだってこと、知ってんだかんな」

私以上のガキが言うなよ、と思ったけど、当時すでに165センチあった私を当時135センチくらいで豆粒みたいだった魁十が懸命に励まそうとしてくれたのが嬉しかった。

「分かった。カイには全部言う」
「絶対だよ。約束」
「うん。約束」




それから、私はその約束を破ることなく、何でも魁十には話してきた。
相手が弟だったのがかえって良かったのかもしれない。

特にアドバイスを期待せず、ただ話すだけで気が楽になった。

ほんと、頼りになる弟。

「姉ちゃん、プリン買ってある」
「うわ、嬉しい。ちょうど食べたいと思ってたの」
「はい。これ食ってくだらないことで悩むな」
「カイ~……」
「くっつくな」
「ちょっとだけ」

くだらない……そうだよね。
応援してた恋が実る。それだけだ。

だって、私の思いは恋じゃないから。
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