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ふたり
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晩ごはんの準備が整ったかなーと思った瞬間、ドアの開く音がした。振り向くと、清水くんが部屋に入って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま」
ずっと、帰って来る時には笑顔だったけど、今週は毎日その笑顔に微妙な変化があった気がする。
どんどん、力が抜けていってるというか、清水くんが楽になっていってるのが伝わってくるような。
何年も気を張っていたから、いきなり全部を抜くのは難しいだろうけど、これだけ分かりやすく変化があるとやっぱり毎日過度なストレスを抱えていたんだなって私にも分かる。
「ごめんね、遅くなっちゃったね」
「ううん、お疲れ様。寒かったでしょ、先にお風呂入る?」
暖房を入れるにはまだ早い気がしてお風呂入って温まった上に重ね着してるほど、今日は私が帰って来た時間でも寒かった。
今は更に気温が下がっているんだろう。清水くんがブルっと一瞬震えてた。
「大丈夫だよ、先に食べよう」
「ごめん、もうちょっとかかりそう」
「じゃあ、先にお風呂入ろうかな」
「うん、そうして」
清水くんは優しすぎるから、これくらいの嘘はいいよね。実際に、温め直すくらいの時間で清水くんは上がって来るし。
テーブルの上に清水くんが置いていったメガネとスマホが鳴ってる。あ、メガネは鳴ってない。
……たぶん同じ番号から毎日かかってきてるのに、留守電に何もメッセージを残さないからって理由で清水くんは一向に出ないけど、いいのかしら。
だって、日中にもかかってくるのか聞いたらこないって言ってたし、清水くんの仕事が終わる時間を把握してるんじゃないかしら。
ご両親との間にわだかまりがあるような話を聞いたものだから、もしかしたらご両親だったり? と思わなくもない。あえて登録してないけど、番号は覚えてるんじゃないかしら……。
出るべきか、清水くんの意志を尊重するべきか。
迷ってるうちに、切れてしまう。
「電話、鳴ってたよ」
「あー……何だろうね。用事があるなら、留守電入れればいいのに」
……やっぱり、用事は分からなくても相手は分かってるんじゃないかしら。
ドラマを観ながらごはんを食べる。清水くんも元はテレビ好きっぽい。なのに、両親と縁を切るためにテレビも絶って節約してたんだもの。清水くんの意思は固い。私が口を出すことじゃない。
「おかえりなさい」
「ただいま」
ずっと、帰って来る時には笑顔だったけど、今週は毎日その笑顔に微妙な変化があった気がする。
どんどん、力が抜けていってるというか、清水くんが楽になっていってるのが伝わってくるような。
何年も気を張っていたから、いきなり全部を抜くのは難しいだろうけど、これだけ分かりやすく変化があるとやっぱり毎日過度なストレスを抱えていたんだなって私にも分かる。
「ごめんね、遅くなっちゃったね」
「ううん、お疲れ様。寒かったでしょ、先にお風呂入る?」
暖房を入れるにはまだ早い気がしてお風呂入って温まった上に重ね着してるほど、今日は私が帰って来た時間でも寒かった。
今は更に気温が下がっているんだろう。清水くんがブルっと一瞬震えてた。
「大丈夫だよ、先に食べよう」
「ごめん、もうちょっとかかりそう」
「じゃあ、先にお風呂入ろうかな」
「うん、そうして」
清水くんは優しすぎるから、これくらいの嘘はいいよね。実際に、温め直すくらいの時間で清水くんは上がって来るし。
テーブルの上に清水くんが置いていったメガネとスマホが鳴ってる。あ、メガネは鳴ってない。
……たぶん同じ番号から毎日かかってきてるのに、留守電に何もメッセージを残さないからって理由で清水くんは一向に出ないけど、いいのかしら。
だって、日中にもかかってくるのか聞いたらこないって言ってたし、清水くんの仕事が終わる時間を把握してるんじゃないかしら。
ご両親との間にわだかまりがあるような話を聞いたものだから、もしかしたらご両親だったり? と思わなくもない。あえて登録してないけど、番号は覚えてるんじゃないかしら……。
出るべきか、清水くんの意志を尊重するべきか。
迷ってるうちに、切れてしまう。
「電話、鳴ってたよ」
「あー……何だろうね。用事があるなら、留守電入れればいいのに」
……やっぱり、用事は分からなくても相手は分かってるんじゃないかしら。
ドラマを観ながらごはんを食べる。清水くんも元はテレビ好きっぽい。なのに、両親と縁を切るためにテレビも絶って節約してたんだもの。清水くんの意思は固い。私が口を出すことじゃない。
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