10 / 51
佐藤颯太VSカイル
しおりを挟む
佐藤颯太がかわいらしくしゃがみこみ、床に指を這わせている。
よく見ると、カイルカイルカイルと書き続けとる。怖いわ、お前。
へこんでる?
キレまくってる?
どっち?
「……そ……颯太?」
放置して余計にキレられても手に負えない。恐る恐る颯太の肩にポンと触れると、バッと涙目の顔を上げた。
「一条、俺よりカイルがかわいいのかなあ」
「颯太……」
え、マジ?
嘘だろ、颯太が泣きそう……。
颯太は誰よりも強くて、前向きで、どんなピンチだって機転を利かせて乗り越えてきた。今かわいいに全振りしてるのだって、颯太の知恵だ。
「んなことない! 今日来たばっかりの外人なんかに負けるな、颯太! お前が負ける姿なんか見たくねえんだよ!」
「勝てる気がしねえ……大天使だぞ。ああ、それだ! と思っちゃったんだよ、俺も」
「そうだけど、カイルは間違いなく天使超えてかわいいけど、でも、それでも俺はお前に勝ってほしい。いや、勝ってくれ!」
「深月ぃ……」
颯太の震える肩から伸びる手を握る。
颯太、お前ならやれる。負けるな、颯太!
「……行ってくる……カイル、殺ってやる」
「俺はお前を信じて待ってるぞ、颯太」
「ああ。俺に任せて深月はここで待ってろ」
ゆったりと颯太が廊下を曲がって行った。
やべ、俺も泣きそう。お前なら勝って帰ってくるよな、颯太……。
「呂久村くん、殺るってどういう意味だい? まるでケンカでも始めそうな雰囲気だったけど」
「なんで颯太がカイルとケンカすんの?」
「へ?」
あ。
あれ? いつの間にかカイル殺るって話になっちゃったけど、元は全然違う話じゃん。
一条はカイルがかわいいか颯太がかわいいか。
あ……あれ? やばくね?
このままだと颯太、留学生を初日にボコっちゃったヤバいヤツにならない?
「まずい! 颯太を止めないと!」
俺は慌てて廊下を走りだした。
教室には誰もいない。
まずい。もうカイル下校しちゃった?
焦って校門を駆け抜ける。
「どうしよう! 留学生ボコんのって停学で済む? 国際問題に発展する?!」
「とりあえず、今後交換留学制度はなくなるだろうね。向こう方からしたら理不尽極まりない」
「だよな!」
ヤバすぎる~。
この聖天坂高校は公立校ながら留学制度があるってのが学校説明会でも延々映像流されたくらい目玉企画。
それを個人的な逆恨みで破談にしたんじゃ、賠償責任とか言われるかもしれない!
「裁判回避!」
「深月! こっちから颯太の匂いがする!」
警察犬か!
ネコっぽい気まぐれさんな明翔の野生の勘を信じて角を曲がる。
大きめな公園があり、突っ切って行くとまさかの颯太とカイルが今まさに対峙していた。
うわ!
始まってる!
まるで、黒髪の侍と金髪の侍だ。
己の命を懸けた、魂の交換。
二人とも小柄なのに、背後に虎と龍がにらみ合っているのが見える。
「すごい迫力……」
「これは……」
何だよ。
学級委員長サマすら言葉を失う緊迫した空気に包まれている。
「カイル……よくもうちのシマを荒らしてくれたな。どう落とし前つける気だあ」
「ソータ……ひとりでカチコミたあ、イモ引いてんじゃねえのか」
「いつひとりだって言った! 皆の衆、であえであえー!」
「カタにはめやがったか! このスミ目に焼き付けやがれえ!」
「そのスミ……おっ……お前は……」
「ふっ……覚えてたのか」
「まさか……お前が……」
「ああ……俺が、ソータの……」
「兄貴ぃ――!!」
「ソータ――!!」
「ええ?!」
明翔と柳が驚愕しているが、んなわけねーだろ。
俺は最初の颯太のセリフで、あ、これセリフだ、と気付いた。
颯太が小学生の頃、よく赤白ごっこさせられてたなあ、と懐かしく見ていたのである。
「すごい! セリフの間まで完璧じゃねえか、カイル!」
「ソータこそ、立ち回りの動きが完全再現だ! ヤクツキの中に入ったみたいだ!」
「ヤクツキだあ? 赤いヤクザと白いツキは赤白って略すんだよ」
「あんだと、こら? ヤクツキの方が分かりやすいだろーが」
額をくっつけ、にらみ合う両者。
うん、とりあえず任侠の世界から現実に帰ってこようか。
「颯太、颯太。明翔と柳がいる。ここ公園。学校の近所の公園」
ガンを飛ばしていた颯太がハッと明翔たちを見る。
一瞬でかわいく笑うと、てへっと頭をコツンとした。
「カイルが大好きな映画だって言うから、名場面を再現していたんだよっ。今見たことは誰にも言わないでねっ?」
「かわいい……」
カイルも空気を読んだのか、颯太と並んでコツンを披露している。
何この二人、バカかわいい。
颯太のぶりっ子は見慣れている俺だが、ダブルぶりっ子には敵わず、絶対にこのことは口外しない、と固く胸に誓った。
よく見ると、カイルカイルカイルと書き続けとる。怖いわ、お前。
へこんでる?
キレまくってる?
どっち?
「……そ……颯太?」
放置して余計にキレられても手に負えない。恐る恐る颯太の肩にポンと触れると、バッと涙目の顔を上げた。
「一条、俺よりカイルがかわいいのかなあ」
「颯太……」
え、マジ?
嘘だろ、颯太が泣きそう……。
颯太は誰よりも強くて、前向きで、どんなピンチだって機転を利かせて乗り越えてきた。今かわいいに全振りしてるのだって、颯太の知恵だ。
「んなことない! 今日来たばっかりの外人なんかに負けるな、颯太! お前が負ける姿なんか見たくねえんだよ!」
「勝てる気がしねえ……大天使だぞ。ああ、それだ! と思っちゃったんだよ、俺も」
「そうだけど、カイルは間違いなく天使超えてかわいいけど、でも、それでも俺はお前に勝ってほしい。いや、勝ってくれ!」
「深月ぃ……」
颯太の震える肩から伸びる手を握る。
颯太、お前ならやれる。負けるな、颯太!
「……行ってくる……カイル、殺ってやる」
「俺はお前を信じて待ってるぞ、颯太」
「ああ。俺に任せて深月はここで待ってろ」
ゆったりと颯太が廊下を曲がって行った。
やべ、俺も泣きそう。お前なら勝って帰ってくるよな、颯太……。
「呂久村くん、殺るってどういう意味だい? まるでケンカでも始めそうな雰囲気だったけど」
「なんで颯太がカイルとケンカすんの?」
「へ?」
あ。
あれ? いつの間にかカイル殺るって話になっちゃったけど、元は全然違う話じゃん。
一条はカイルがかわいいか颯太がかわいいか。
あ……あれ? やばくね?
このままだと颯太、留学生を初日にボコっちゃったヤバいヤツにならない?
「まずい! 颯太を止めないと!」
俺は慌てて廊下を走りだした。
教室には誰もいない。
まずい。もうカイル下校しちゃった?
焦って校門を駆け抜ける。
「どうしよう! 留学生ボコんのって停学で済む? 国際問題に発展する?!」
「とりあえず、今後交換留学制度はなくなるだろうね。向こう方からしたら理不尽極まりない」
「だよな!」
ヤバすぎる~。
この聖天坂高校は公立校ながら留学制度があるってのが学校説明会でも延々映像流されたくらい目玉企画。
それを個人的な逆恨みで破談にしたんじゃ、賠償責任とか言われるかもしれない!
「裁判回避!」
「深月! こっちから颯太の匂いがする!」
警察犬か!
ネコっぽい気まぐれさんな明翔の野生の勘を信じて角を曲がる。
大きめな公園があり、突っ切って行くとまさかの颯太とカイルが今まさに対峙していた。
うわ!
始まってる!
まるで、黒髪の侍と金髪の侍だ。
己の命を懸けた、魂の交換。
二人とも小柄なのに、背後に虎と龍がにらみ合っているのが見える。
「すごい迫力……」
「これは……」
何だよ。
学級委員長サマすら言葉を失う緊迫した空気に包まれている。
「カイル……よくもうちのシマを荒らしてくれたな。どう落とし前つける気だあ」
「ソータ……ひとりでカチコミたあ、イモ引いてんじゃねえのか」
「いつひとりだって言った! 皆の衆、であえであえー!」
「カタにはめやがったか! このスミ目に焼き付けやがれえ!」
「そのスミ……おっ……お前は……」
「ふっ……覚えてたのか」
「まさか……お前が……」
「ああ……俺が、ソータの……」
「兄貴ぃ――!!」
「ソータ――!!」
「ええ?!」
明翔と柳が驚愕しているが、んなわけねーだろ。
俺は最初の颯太のセリフで、あ、これセリフだ、と気付いた。
颯太が小学生の頃、よく赤白ごっこさせられてたなあ、と懐かしく見ていたのである。
「すごい! セリフの間まで完璧じゃねえか、カイル!」
「ソータこそ、立ち回りの動きが完全再現だ! ヤクツキの中に入ったみたいだ!」
「ヤクツキだあ? 赤いヤクザと白いツキは赤白って略すんだよ」
「あんだと、こら? ヤクツキの方が分かりやすいだろーが」
額をくっつけ、にらみ合う両者。
うん、とりあえず任侠の世界から現実に帰ってこようか。
「颯太、颯太。明翔と柳がいる。ここ公園。学校の近所の公園」
ガンを飛ばしていた颯太がハッと明翔たちを見る。
一瞬でかわいく笑うと、てへっと頭をコツンとした。
「カイルが大好きな映画だって言うから、名場面を再現していたんだよっ。今見たことは誰にも言わないでねっ?」
「かわいい……」
カイルも空気を読んだのか、颯太と並んでコツンを披露している。
何この二人、バカかわいい。
颯太のぶりっ子は見慣れている俺だが、ダブルぶりっ子には敵わず、絶対にこのことは口外しない、と固く胸に誓った。
0
あなたにおすすめの小説
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる