親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

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ローラー作戦、実行中

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体育を終え、急いで着替える。
モタモタしてたら女子が入ってくる。

「厳戒態勢を続けてるけど、何も起きないねっ」
「先生方も必死だからね。今日の時間割り変更も、元の化学だと南校舎で音楽の柿ノ元さんと呂久村くんが鉢合わせする恐れがあるから急遽体育になった」

え?
はんなのために時間割り変更されてんの?

あいつ、やっぱえげつないな。
付き合い始めた頃からコイツヤバくね? とは思っていた。

まず告白してきた時に、なぜか頭から血を流していた。
気持ちを落ち着けるためにブロック塀に頭を打ち付けてたらこうなった、と説明を受け、やめときゃいいのにおもしれー女、と思ってしまった。

教室のドアが開く。
女子さすがに早すぎだろ、と思いきや、黒岩くんが入ってきた。

「黒岩くん!」

黒岩くん、体育いなかったんだ?
気付かんかった、と目をやる。

黒岩くんの姿勢がおかしい。前かがみに歩いている。

柳が駆け寄ると、颯太も続いた。黒岩くんの制服をバッとめくり上げる。

「腹をやられたのか……大丈夫か」
「吐ききったから、もう大丈夫」

黒岩くんが暴力を受けた?
なんでこんな大人しいもやしっ子が?

「誰にやられたんだ?! 僕がこの手で報復してやる!」
「知らない子……小柄な小動物系のかわいい女の子なんだけど、狂犬みたいな血走った目をしていた」

はんな?
どうして黒岩くんが……。

「ごめん、黒岩くん。たぶん、俺のせいだ」
「呂久村くん……何かあったの?」
「うん……なんで黒岩くんなんだろ。明翔と間違えた?」

明るいアッシュグレーでマッシュ、背も高めで細身の明翔と黒髪メガネ、小柄な黒岩くん。

「顔を知らないとしてもねえな」
「あ、そう言えば」

柳が4つの輪っかが連なった特徴的な小物をポケットから取り出し、机に置いた。

「メリケンサック?」
「3日ほど前かな。柿ノ元さんがこれで殴りかかってきたのだけれど、足音で気付いて取り上げたんだった。忘れてたよ」
「忘れんなよ」

柳もはんなに襲われてたのか。
俺のことは関係なく、柳黒を狙ったんだろーか。

「あ、ボクも忘れてた。おととい、スタンガンを持ったあの子に突撃されたんだが、ボクが腕を伸ばしてつっかえ棒にしたら手が届かなくて。あはは! おもしろかった」
「一条も襲われとんかい」

お前ら、よく忘れられるな。

「あ、そういや俺も昨日、あの子がバット振り回して追いかけてきたんだけど、全部避けたらお前には負けたよ……って去って行ったよっ」
「颯太まで?!」

どういうことだ?
俺の周りのヤツを片っ端から襲ってる?

「恐らく彼女は、呂久村くんがイチャついていた相手が高崎くんだとは知らないんじゃないのかな」
「なるほどっ。それでローラー作戦を行ってるわけか」
「固まって行動していたのが功を奏したね」
「となると、残るは……」

明翔、タカトゥーと目が合う。

「明翔、俺のそばから離れるなよ」
「俺わーい」
「お前、そのデカさであんなちっせー子にやられねーだろ」
「明翔の方がやられねーだろーよ。身体能力的に」

たしかに、はんなは女子でも小柄で特別力も強くなければ喧嘩慣れしてるわけでもない。

だけど、怖いのが容赦なく武器を使用してるところな。

「絶対に明翔は俺が守る!」
「だから、俺は?!」

知るか。
自分の身くらいてめーで守れ。

「それにしても、このクラスの連中はみんな明翔が呂久村を好きだって知ってるのに他のクラスには知られてねえの?」

タカトゥーが大声出すから、何人かこちらを向いた。

ゆりがはい! と手を上げて立ち上がる。

「高崎くんは真剣に深月を好きなんだって分かるもん。言いふらしたりなんかできないよ」

そうそう、と西郷と淀橋がうなずく。

「明翔のことろくに知らないヤツらから明翔が変にからかわれたりしたら俺らもムカつくし」
「高崎の味方してたらワンチャンあるかもしれないし」

珍しくキョトンとしたタカトゥーが破顔一笑。

「へえー、いいクラスだな。明翔、愛されてんね」

明翔は嬉しそうに笑うけど、明翔が自分で手に入れたものだ。
ボーダーレスに男女もスクールカーストも関係なくみーんなとお友達になって、いつも周りをよく見てて行事なんかはクラスのために中心に立って動く。

愛されないわけがない。

「明翔にケガなんかさせられねえな」
「うん。絶対に」

やっとタカトゥーがやる気出してくれたか。
さっきまでのヘラヘラした様子とは顔つきが変わった。

「一応、お前も気を付けろよ」
「俺は一応かい」

一応でも声かけてやっただけありがたく思え。
俺は明翔以外はどうなろうと知ったこっちゃない。
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