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第二章 第一部 神と神
8 実験台
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「キリエさんは気がついてた」
ベルの侍女風罵倒をさらりと流し、トーヤが言った。
「へ? 気がついてたって、何に?」
「俺だってことに」
「嘘だろ……」
「いや、本当だ。それで気がついてる気がしてそれを確かめに行ってた、ということでな」
と、トーヤが奥様を見て、
「そこの絹の下に誰がいるかももう知っている」
「いーっ……」
ベルがシャンタルを見ながら段々と小さな声になりながらそう言った。
「そう、やっぱり」
「やっぱり?」
「うん、こっち見てた目がね、なんとなく知ってるように思えた」
「なんで分かるんだよ、2人ともそんなこと……」
ベルが化け物でも見るような目で引きながら2人を見る。
「そりゃまあ、付き合いがあるからな」
「そうだね」
ベルとその兄には無表情、威圧感としか受け止められなかったあの顔の、どこでそんなことに気がつくのか、と心底から思う。
そうしてトーヤはキリエと話したことを3人に伝え、具体的な計画を説明する。
「できんのかよ、そんなこと……」
ベルが渋い木の実を噛み砕いてしまった、みたいな顔で言う。
「できんじゃねえかな」
「シャンタル、大丈夫か?」
「う~ん、まあどっちにしてもやってみるしかないじゃない」
「そらま、そうなんだが……」
その分ベルが色々と思いつくことを口にし、トーヤとあれやこれや、やりとりをするのをアランは黙って聞いていた。
「だってよ、それで結局なんもならなかったら、なんのための謁見かわかんねえじゃねえか。金払って、それでなんも成果なかった、なんつーてなったら」
「また金かよー」
「金、大事だからな!」
「あーそうだ、そんなら練習してみるか」
「練習?」
「ああ、金のためにも一度練習しておいた方が色々安心だろうが」
「練習って、どうやって」
「おまえ、やってもらえ」
「いーーーーーーー!!!!!」
ベルが音を立てて立ち上がり、
「やだよ、そんなの!」
顔面蒼白で言う。
「心配なんじゃねえの?」
「心配だけど心配だけど、それはなんかやだ!」
「なんでだよ?」
「だって怖いじゃん!」
「シャンタルだぞ?」
「シャンタルだろうが奥様だろうが怖いもんは怖いよ! トーヤやってもらえよ!」
「俺は断固たる意思を持ってお断りした過去があるからな」
「だったら今回やってもらえよ!」
「一度お断りしたことを今更ってのは男がすたるだろうが」
「調子いいこと言ってんなよな! 結局トーヤだって怖いんだろ!」
「な、違うぞ!」
「だったらやってもらえよ! だってなんかつながりあるって言ってたじゃねえか!」
「おまえ、それはそれ、これはこれだろ」
「なにがだよ!」
ベルとトーヤがこんな感じで言い合い続けるのを、しばらくは黙って聞いていたアランだが、
「あーもううるせえ! そんなら俺がやる!!」
辛抱たまらなくなった様子でそう言い出し、
「そうか、兄貴、悪いな」
「アラン、頼むぞ」
と、あっさりと実験台はアランと決まった。
その段階になって初めて、
「おまえら、はかったな……」
要するに、2人とも自分がやられるの嫌さにアランに押しつけたのだ。
「兄貴、頼りにしてる!」
「うむ、さすがアランだ!」
「おまえら……」
アランが睨みつけるが、2人とも笑顔で「どうぞどうぞ」とシャンタルにアランを差し出す。
「うん、分かった、じゃあやってみようか」
「ちょ、ま!」
待つ間もなく実験は始まり、無事、終了した。
しゅう~
そんな音を立てて、アランがぐったりとテーブルに倒れかかっている。
身じろぎもしないが、普通に呼吸もしているし、見たところ異常はなさそうだ。
トーヤとベルがその様子を見て、
「まあ、大丈夫、みたいだな」
「だな」
そう言っていると、
「……な、にが、大丈夫、だ……」
ゆっくりと椅子から上体を起こす。
「まあまあ、うまくいったみたいだし、よかったじゃない」
シャンタルがニコニコして言うと、
「よかったじゃねえ! 俺がどんな心地だったか!」
「どんな心地だった?」
怒りに火がついたようなアランに、シャンタルが興味津々という表情で尋ねる。
「どうって……」
「痛いとか、辛いとか、苦しいとか」
「いや、それはなかった」
「じゃあ、どんな感じだった?」
「どんなって……」
言われてみれば、そういう不快な感覚は全く何もなかった。
「いや、特になんもねえな」
「そうか、よかったな、兄貴!」
「よくねえ!」
「なんでだ?」
「なんでって、そりゃ、おまえ……」
「なあ、なんで?」
言いよどむアランにベルが、
「うーなんか面白そう! やっぱ、おれもやってもらえばよかったかな!」
「おまえな!」
人をこんな状態にしておいて、大丈夫と分かるとそれか!
「ベルはやめておくよ」
シャンタルがするっと言う。
「なんでだ?」
「だって、ベルのことは分からない方が楽しいじゃない」
「そうか?」
「うん」
「ちょ、待て!」
アランが顔色を変えて言う。
「何が分かったんだ……」
「いや、大丈夫、そんなによくは見てないからね」
「よくは見て、ない?」
さっきまで怒りで赤かった顔が青くなる。
「うん、大丈夫、そんなに心配するようなことないって、言わないし」
「おま……」
アランがもう一度がっくりとテーブルの上に頭を落とし、本日終了となった。
ベルの侍女風罵倒をさらりと流し、トーヤが言った。
「へ? 気がついてたって、何に?」
「俺だってことに」
「嘘だろ……」
「いや、本当だ。それで気がついてる気がしてそれを確かめに行ってた、ということでな」
と、トーヤが奥様を見て、
「そこの絹の下に誰がいるかももう知っている」
「いーっ……」
ベルがシャンタルを見ながら段々と小さな声になりながらそう言った。
「そう、やっぱり」
「やっぱり?」
「うん、こっち見てた目がね、なんとなく知ってるように思えた」
「なんで分かるんだよ、2人ともそんなこと……」
ベルが化け物でも見るような目で引きながら2人を見る。
「そりゃまあ、付き合いがあるからな」
「そうだね」
ベルとその兄には無表情、威圧感としか受け止められなかったあの顔の、どこでそんなことに気がつくのか、と心底から思う。
そうしてトーヤはキリエと話したことを3人に伝え、具体的な計画を説明する。
「できんのかよ、そんなこと……」
ベルが渋い木の実を噛み砕いてしまった、みたいな顔で言う。
「できんじゃねえかな」
「シャンタル、大丈夫か?」
「う~ん、まあどっちにしてもやってみるしかないじゃない」
「そらま、そうなんだが……」
その分ベルが色々と思いつくことを口にし、トーヤとあれやこれや、やりとりをするのをアランは黙って聞いていた。
「だってよ、それで結局なんもならなかったら、なんのための謁見かわかんねえじゃねえか。金払って、それでなんも成果なかった、なんつーてなったら」
「また金かよー」
「金、大事だからな!」
「あーそうだ、そんなら練習してみるか」
「練習?」
「ああ、金のためにも一度練習しておいた方が色々安心だろうが」
「練習って、どうやって」
「おまえ、やってもらえ」
「いーーーーーーー!!!!!」
ベルが音を立てて立ち上がり、
「やだよ、そんなの!」
顔面蒼白で言う。
「心配なんじゃねえの?」
「心配だけど心配だけど、それはなんかやだ!」
「なんでだよ?」
「だって怖いじゃん!」
「シャンタルだぞ?」
「シャンタルだろうが奥様だろうが怖いもんは怖いよ! トーヤやってもらえよ!」
「俺は断固たる意思を持ってお断りした過去があるからな」
「だったら今回やってもらえよ!」
「一度お断りしたことを今更ってのは男がすたるだろうが」
「調子いいこと言ってんなよな! 結局トーヤだって怖いんだろ!」
「な、違うぞ!」
「だったらやってもらえよ! だってなんかつながりあるって言ってたじゃねえか!」
「おまえ、それはそれ、これはこれだろ」
「なにがだよ!」
ベルとトーヤがこんな感じで言い合い続けるのを、しばらくは黙って聞いていたアランだが、
「あーもううるせえ! そんなら俺がやる!!」
辛抱たまらなくなった様子でそう言い出し、
「そうか、兄貴、悪いな」
「アラン、頼むぞ」
と、あっさりと実験台はアランと決まった。
その段階になって初めて、
「おまえら、はかったな……」
要するに、2人とも自分がやられるの嫌さにアランに押しつけたのだ。
「兄貴、頼りにしてる!」
「うむ、さすがアランだ!」
「おまえら……」
アランが睨みつけるが、2人とも笑顔で「どうぞどうぞ」とシャンタルにアランを差し出す。
「うん、分かった、じゃあやってみようか」
「ちょ、ま!」
待つ間もなく実験は始まり、無事、終了した。
しゅう~
そんな音を立てて、アランがぐったりとテーブルに倒れかかっている。
身じろぎもしないが、普通に呼吸もしているし、見たところ異常はなさそうだ。
トーヤとベルがその様子を見て、
「まあ、大丈夫、みたいだな」
「だな」
そう言っていると、
「……な、にが、大丈夫、だ……」
ゆっくりと椅子から上体を起こす。
「まあまあ、うまくいったみたいだし、よかったじゃない」
シャンタルがニコニコして言うと、
「よかったじゃねえ! 俺がどんな心地だったか!」
「どんな心地だった?」
怒りに火がついたようなアランに、シャンタルが興味津々という表情で尋ねる。
「どうって……」
「痛いとか、辛いとか、苦しいとか」
「いや、それはなかった」
「じゃあ、どんな感じだった?」
「どんなって……」
言われてみれば、そういう不快な感覚は全く何もなかった。
「いや、特になんもねえな」
「そうか、よかったな、兄貴!」
「よくねえ!」
「なんでだ?」
「なんでって、そりゃ、おまえ……」
「なあ、なんで?」
言いよどむアランにベルが、
「うーなんか面白そう! やっぱ、おれもやってもらえばよかったかな!」
「おまえな!」
人をこんな状態にしておいて、大丈夫と分かるとそれか!
「ベルはやめておくよ」
シャンタルがするっと言う。
「なんでだ?」
「だって、ベルのことは分からない方が楽しいじゃない」
「そうか?」
「うん」
「ちょ、待て!」
アランが顔色を変えて言う。
「何が分かったんだ……」
「いや、大丈夫、そんなによくは見てないからね」
「よくは見て、ない?」
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「おま……」
アランがもう一度がっくりとテーブルの上に頭を落とし、本日終了となった。
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