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第二章 第一部 神と神
9 託宣のために
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色々とあったが、翌日の午後、いよいよ謁見の時を迎えることとなった。
ディレンが昼になるまでに客室にやってきて、アランがなんとなく虚ろなので話を聞いて笑うと同時に、
「大丈夫なのか?」
と、かなり真剣に心配をした。
「大丈夫、その影響じゃなくて、なんかちょっと乙女な気分になってるからだし」
ベルがまたアランの傷口に槍でも突っ込んだような言葉を投げつけ、一層アランが虚無になる。
そして午後、今日は少し紫がかった色の少し年配の侍女が謁見の間へ来るようにと伝えにきた。紫系の衣装なのでシャンタル付きの1人なのであろう。
2階の客間を出て渡り廊下を通り、渡り切ったところの大広間、そこにある豪華な階段を上がると、謁見間の前の広間につながっていた。
初めてミーヤに連れられて来た時と同じく、大きな扉の両側に衛士が1人ずつ控えている。トーヤが見たことのある顔ではなく、ちょっとだけホッとする。
扉の前にはすでに別の2組が控えていた。
1組はどうも地方から出てきたどこかの村の村長とその連れのように見える。
体格はやや大柄だが、少し曲がった背中が気弱そうな印象を与えている老人は、ほとんど白くなった髪も薄めで、心配事があるような、もしくは自信のなさそうな顔で俯いているため、一層影が薄く見える。
同行者は孫かなにかだろうか、そこそこ大きな二十代らしい青年が心配そうに連れの様子を伺っている。
もう1組は見るからに貴族、トーヤが言うところの「大臣のおっさんのような服」を身にまとった恰幅のいい、なでつけたひげの男であった。従者を2人連れている。
2組は、奥様御一行が近づくのを珍しそうに見ていた。
「中の国」を含む外の国からも託宣を求めた客はあるのだが、実際に自分がその場に立ち会うことになるとすると、やはり興味を引くものである。
ましてや、今少し街で評判になっている方だ、耳に入っていても不思議ではない。
3組が揃うと、紫系の侍女が中に声をかけた。
「謁見の方をお連れしました」
声と同時に、左右の衛士が大きな扉を中に向かって同じ速度で観音開きに押し開く。
室内からふわあっと、柔らかい、花のような香りが流れてくる。
その撫でるような風を受けながら、3組は侍女に続いて室内に足を踏み入れる。
何枚もの薄い布を通して、やや高いところに誰かがいるらしいシルエットが見える。
あの最上段に赤いソファがあり、そこに当代シャンタルが座っているはずだ。
「よくいらっしゃいました」
トーヤの聞き覚えのある声が、優しくそう声をかける。
後ろでふわあっと大扉が閉まっていく、それを風で感じる。
「どうぞお進みなさい」
扉が閉まりきるとやさしい声がそう言い、今度は目の前の布が2人の侍女によって左右に開かれていく。こちらは若いからか、まだ紫の含まれぬ、柔らかいオレンジ系と赤系の衣装の侍女であった。
案内してきた侍女に促され、3組は少し前に進む。
その動きに合わせて今度は残りの布が全部開かれ、目の前の御方の姿が見えてきた。
最上段の赤い豪華なソファに腰掛けるのは、黒髪、黒い瞳を持つ美少女であった。
そしてその向かって左には、薄い紫の衣装の侍女、ラーラ様が立っている。
「こちらがシャンタルです」
ソファの美少女を紹介すると、全員が跪いて深く頭を下げる。
奥様一行も前もってそうするようにと教えられており、残り2組と並んで頭を下げていた。
「頭をお上げなさい」
ラーラ様の声に合わせて全員が頭を上げる。
そうしてやっと、ゆっくりとシャンタルの姿を認めた。
「シャンタル、こたび、託宣を求めてやってきた者たちです」
ラーラ様がそう声をかけると、シャンタルは少し右上を見上げて、こくんと頭を下げた。
「では託宣をいただきます」
侍女に促され、最初の地方からやってきたらしい2人が進み出ると、段の下でもう一度跪いて頭を下げる。
沈黙のまま時間が過ぎ、
「頭をお上げなさい、託宣はないようです」
そう言われ、頭を上げた年輩の男は本当にがっかりした顔で下がってくる。
2組目、貴族の男もまた同じであった。託宣はなく、がっかりした顔で下がってくる。
そうして3組目、奥様の一行が前に進み出る。
膝をついて頭を下げる前に、絹に包まれた奥様が、少し顔を上げたように思えた。
その視線の先には当代シャンタルがいる。
一行が頭を下げたその時、
「あ……」
そう声を出してシャンタルが驚いた顔になった。
「シャンタル?」
右隣にいる侍女が、ラーラ様が驚いたような顔でシャンタルを見た。
「あ、あぁ……次代様が、いらっしゃいます……」
そう口にしてから、シャンタル本人が驚いたような顔でラーラ様を見上げた。
「え?」
「見えます、次代様が、もうすぐお生まれになられます」
「え!」
驚いたラーラ様がシャンタルの両肩をやさしく押さえ、侍女に目で合図をした。
侍女が急いで奥様御一行を立ち上がらせ、他の2組と一緒に大扉の方へと下がらせた。
壇上でシャンタルがラーラ様に何かを伝える姿は見えるが、その先の声は聞こえない。
おそらく、次代様の居場所を聞かせないためにみなを下がらせたのであろう。
一行はそのまま部屋の外へと出された。
もちろん、だれも扉にぶつかりそうになることなく。
ディレンが昼になるまでに客室にやってきて、アランがなんとなく虚ろなので話を聞いて笑うと同時に、
「大丈夫なのか?」
と、かなり真剣に心配をした。
「大丈夫、その影響じゃなくて、なんかちょっと乙女な気分になってるからだし」
ベルがまたアランの傷口に槍でも突っ込んだような言葉を投げつけ、一層アランが虚無になる。
そして午後、今日は少し紫がかった色の少し年配の侍女が謁見の間へ来るようにと伝えにきた。紫系の衣装なのでシャンタル付きの1人なのであろう。
2階の客間を出て渡り廊下を通り、渡り切ったところの大広間、そこにある豪華な階段を上がると、謁見間の前の広間につながっていた。
初めてミーヤに連れられて来た時と同じく、大きな扉の両側に衛士が1人ずつ控えている。トーヤが見たことのある顔ではなく、ちょっとだけホッとする。
扉の前にはすでに別の2組が控えていた。
1組はどうも地方から出てきたどこかの村の村長とその連れのように見える。
体格はやや大柄だが、少し曲がった背中が気弱そうな印象を与えている老人は、ほとんど白くなった髪も薄めで、心配事があるような、もしくは自信のなさそうな顔で俯いているため、一層影が薄く見える。
同行者は孫かなにかだろうか、そこそこ大きな二十代らしい青年が心配そうに連れの様子を伺っている。
もう1組は見るからに貴族、トーヤが言うところの「大臣のおっさんのような服」を身にまとった恰幅のいい、なでつけたひげの男であった。従者を2人連れている。
2組は、奥様御一行が近づくのを珍しそうに見ていた。
「中の国」を含む外の国からも託宣を求めた客はあるのだが、実際に自分がその場に立ち会うことになるとすると、やはり興味を引くものである。
ましてや、今少し街で評判になっている方だ、耳に入っていても不思議ではない。
3組が揃うと、紫系の侍女が中に声をかけた。
「謁見の方をお連れしました」
声と同時に、左右の衛士が大きな扉を中に向かって同じ速度で観音開きに押し開く。
室内からふわあっと、柔らかい、花のような香りが流れてくる。
その撫でるような風を受けながら、3組は侍女に続いて室内に足を踏み入れる。
何枚もの薄い布を通して、やや高いところに誰かがいるらしいシルエットが見える。
あの最上段に赤いソファがあり、そこに当代シャンタルが座っているはずだ。
「よくいらっしゃいました」
トーヤの聞き覚えのある声が、優しくそう声をかける。
後ろでふわあっと大扉が閉まっていく、それを風で感じる。
「どうぞお進みなさい」
扉が閉まりきるとやさしい声がそう言い、今度は目の前の布が2人の侍女によって左右に開かれていく。こちらは若いからか、まだ紫の含まれぬ、柔らかいオレンジ系と赤系の衣装の侍女であった。
案内してきた侍女に促され、3組は少し前に進む。
その動きに合わせて今度は残りの布が全部開かれ、目の前の御方の姿が見えてきた。
最上段の赤い豪華なソファに腰掛けるのは、黒髪、黒い瞳を持つ美少女であった。
そしてその向かって左には、薄い紫の衣装の侍女、ラーラ様が立っている。
「こちらがシャンタルです」
ソファの美少女を紹介すると、全員が跪いて深く頭を下げる。
奥様一行も前もってそうするようにと教えられており、残り2組と並んで頭を下げていた。
「頭をお上げなさい」
ラーラ様の声に合わせて全員が頭を上げる。
そうしてやっと、ゆっくりとシャンタルの姿を認めた。
「シャンタル、こたび、託宣を求めてやってきた者たちです」
ラーラ様がそう声をかけると、シャンタルは少し右上を見上げて、こくんと頭を下げた。
「では託宣をいただきます」
侍女に促され、最初の地方からやってきたらしい2人が進み出ると、段の下でもう一度跪いて頭を下げる。
沈黙のまま時間が過ぎ、
「頭をお上げなさい、託宣はないようです」
そう言われ、頭を上げた年輩の男は本当にがっかりした顔で下がってくる。
2組目、貴族の男もまた同じであった。託宣はなく、がっかりした顔で下がってくる。
そうして3組目、奥様の一行が前に進み出る。
膝をついて頭を下げる前に、絹に包まれた奥様が、少し顔を上げたように思えた。
その視線の先には当代シャンタルがいる。
一行が頭を下げたその時、
「あ……」
そう声を出してシャンタルが驚いた顔になった。
「シャンタル?」
右隣にいる侍女が、ラーラ様が驚いたような顔でシャンタルを見た。
「あ、あぁ……次代様が、いらっしゃいます……」
そう口にしてから、シャンタル本人が驚いたような顔でラーラ様を見上げた。
「え?」
「見えます、次代様が、もうすぐお生まれになられます」
「え!」
驚いたラーラ様がシャンタルの両肩をやさしく押さえ、侍女に目で合図をした。
侍女が急いで奥様御一行を立ち上がらせ、他の2組と一緒に大扉の方へと下がらせた。
壇上でシャンタルがラーラ様に何かを伝える姿は見えるが、その先の声は聞こえない。
おそらく、次代様の居場所を聞かせないためにみなを下がらせたのであろう。
一行はそのまま部屋の外へと出された。
もちろん、だれも扉にぶつかりそうになることなく。
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