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3話 アレク城にて
しおりを挟む「ほぉーここが帝国アレクの城か、でかいな。」
想像していたよりも大きかった。
元の世界で言うノイシュヴァンシュタイン城のような見た目だ。
こりゃあ庶民からだいぶ金を奪ってるなぁ。
ま、それはいいとしてどこに向かえばよいのだろうか。
晃は城の入り口の前で馬車を降ろされ、一人で路頭に迷っている。
いや普通なら入り口に入れよって思うかもしれないが、一人で入る勇気がない。
そんな調子で入り口をうろうろしていると、別の馬車がやってきた。
馬車が入り口前で止まると、鎧を身にまとった男が降りてきた。
「やあ、アメリア将軍。さては私の失態を笑いに来たのかな?」
話しぶりから知り合いのようだが、薄笑いでわけのわからないことを言ってくる。
しかもタメ語ということは、それなりの身分なのだろう。
「そんなことはありませんよ。私は戦場へ向かうために来ただけです。」
相手の眉がピクっと動いた。
どうやら感情を逆なでしてしまったようだ。
「ふん!そんな余裕でいられるのも今の内だからな!」
晃は、いきなり怒鳴りつけてくる男に呆気にとられる。
なんだこいつは?
なんかしら因縁があるらしいが、恐らくは一方的なものだろう。
しかし、発言が小物そのものだったな。
煽り耐性もなし、そもそも煽ったつもりないけどな。
よし、心の中のあだ名としては、小物君にしておこう。
俺を案内してくれよ小物君。
晃は、男の後ろをついて入り口へと向かっていった。
…
……
………
城の中は、あらゆる贅を尽くしたほど美しい装飾が施されている。
しっかし無駄に広いな。
俺の屋敷もそうだったけど、人もほとんどいないのになぜこんなに広いのか。
日本人には理解できないわ。
晃がぶつぶつ文句を言っていると、ひときわ大きな扉の部屋へと小物君が入っていった。
全身がプレートアーマーで覆われた兵士が扉の両脇に立っている。
向かうべき場所はここのようだな。
晃はそのまま中へと入っていく。
中はいわゆる玉座のある謁見の間だった。
玉座にはまだ誰も座っていないが、隣に偉そうな男が一人立っている。
「アメリア将軍よ、来たか。これで3将軍すべて揃ったな。」
晃の両脇には鎧を身にまとった男が二人いる。
こいつらが将軍か。
そのなかの一人はさっきの小物君だった。
こいつが将軍なのかよ!
晃は思わず吹き出しそうになるのを必死にこらえる。
「全員揃いました。アルフレート・アレク王、玉座へ。」
いかにも傲慢そうな男が玉座へ座る。
この男が王か。
心の中のあだ名としては、傲慢おやじだな。
周りの男が皆跪き頭を下げているので、晃も一緒に跪き頭を下げておく。
「面を上げよ。」
晃と他の将軍が顔を上げる。
「将軍たちよ!よくぞ参った!緊急で徴集したのは皆を鼓舞するためだ。おぬしらの頑張りは理解しておるが、王国ブリジラとの戦争が膠着状態に陥っている今、おぬしらのさらなる活躍が必要だ。」
傲慢おやじが仰々しく話し始める。
「まずは、ウォルター将軍。おぬしの対王国ブリジラ戦での活躍は耳にしておる、後ほど褒美を授けよう。引き続き頼むぞ。」
「ははぁ!」
晃の右隣の頑固そうで融通が利かなそうな男が頭を下げる。
こいつがウォルター将軍ね。
心の中のあだ名としては、頑固おやじとしておこう。
「次に、レオン将軍。おぬしは先の戦いで敗退するという失態を犯したそうだな。おぬしの軍以外に精鋭であるアメリア将軍の軍を配下にしたにも関わらず敗退するとは…。残念だがここは一旦アメリア将軍に任せるのだな。」
「ははぁ!」
晃の左隣の小物君が、卑屈そうに頭を下げる。
こいつレオンって名前なのかよ!
似合わねえ。
しかもアメリア将軍の軍をこいつに渡してたのかよ、こんな小物君じゃあどんな優秀な部下でも無駄にするだけだろう。
「最後に、アメリア将軍。おぬしは部下からの信頼も厚いようだ。ぜひ前回の失態を挽回したまえ。」
「はっ!」
晃は軽く頭を下げる。
失態……ねえ。
かなりきな臭さは感じるが、晃にはまだ気にしている余裕はない。
優先すべきは次の戦いを乗り切ることだ。
…
……
………
王への謁見の儀はあっさり終わり解散となったが、晃はどこへ向かえばよいのかわからない。
謁見の間から出てあたふたしていると、見たことのない男が近づいてきた。
緩いパーマをかけた金髪に甘いマスクを持った男だ。
「アメリア将軍お久しぶりです。」
話ぶりから恐らくは部下なのだろうが、名前も立場もわからなければまともに話ができない。
ここはなんとか聞き出すしかない。
「あ、ああ…。えー、そういえば階級は上がったか。」
「えっ?いえまだ百人隊長です。平民出ではここが限界でしょう。」
「そうか、まあそこについては私が何とかしよう。では百人隊長、私は次にどこへ向かったら良い。」
なぜか百人隊長が悲しそうな顔をしている。
「アメリア将軍、もしかして部下である私の名前を忘れましたか?まだ半年ぶり程度ですよ。いつもレイノルドと名前で呼んでいたではないですか。」
おぉあっさり教えてくれた。少し疑念を持たれたかもしれないが、とりあえずは聞き出せた。
名前はレイノルドね。心の中のあだ名としては、優男にしておこう。
「そうだった、失礼。それではレイノルド、教えてくれ。」
「分かりました。対ブリジラの最前線へと向かうことになります。」
優男に馬車へと案内される。
晃は、優男の案内によりなんとか戦場へと向かう。
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