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4話 作戦会議
しおりを挟む戦場へと向かうあいだ、優男から戦争の状況について話を聞いた。
帝国アレクは王国ブリジアと戦争中で、戦況は優勢ではあるが膠着している。これから向かう戦場は帝国アレク側が2度敗北しており、膠着状態の原因になっているそうだ。
さらに戦場の詳しい状況を聞いてみると、
帝国アレク王都の東側に位置し、帝国アレク側はオルカ平原を進軍、王国ブリジラ側にはクレル森林に籠って迎え撃つ形になっており、これまで小物君の指揮により行っていた攻撃では、森林を利用した敵のゲリラ戦に嵌り何度も手痛い敗北を期している状態らしい。
そして、このクレル大森林を抜ければ、王国ブリジラ王都まで侵攻を妨げる地形はないことから非常に重要な戦いであるということだった。
また、単調な突撃を続ける小物君の無茶な指揮に愛想を尽かし、処罰覚悟で小物君の失態をすべて伝えるために王都へ伝令を送り、この状況を打開するためにはアメリア将軍が必要と訴えたそうだ。
一通り聞いた晃は、ため息をつきたい気持ちをぐっとこらえた。
必要なのはアメリア将軍であって、俺ではないんだよなぁ。
…
……
………
帝国アレク王都から馬車を利用し、おおよそ三日掛かって目的地へ着いた。
途中帝国アレク領の町などで休憩を挟んでいるとはいえ、かなり疲れた。
馬車を降りると、目の前にはたくさんのテントが存在している。
前哨基地のようなものだろう。
「アメリア将軍、こちらです。」
優男に大きめのテントへ案内される。
中には鎧を来た男が3名。
彼らが晃を見るや否や大きく表情を変える。
「アメリア将軍が戻られた!これで我々の勝利は間違いない!」
「おおっ!我々のしたことは無駄ではなかった。あの無能将軍からようやく離れることができた!」
皆興奮して喜びを声にしている。
少し…、いやかなり怖い。
落ち着いて!皆落ち着いて!
優男が静かにするよう皆に促す。
「アメリア将軍、着いてすぐで申し訳ありませんが作戦会議を行いましょう。兵站その他諸々を考えるとあまり猶予がないので。」
ええ…、もう始めるの?かなりクタクタなんだけれども。
とはいえ、猶予がないらしいし。
俺も死にたくないからなぁ…。
「まぁ仕方ない、始めようか。」
テント内中央の大きな机の上に、戦場の全体地図が広げた状態で置かれている。
優男と晃を含む5名が机を取り囲むように立つ。
晃の左隣から優男、正義感溢れる角ばった男(心の中のあだ名:ゴツ男)、小物君のことを無能将軍と呼んでいた男(心の中のあだ名:違いの分かる男)、一番年を取ってそうな男(心の中のあだ名:老人)の順番で机を囲んでいる。
まずゴツ男が話始める。
「ブリジラ軍はおよそ5万、我々の軍は8万で未だ数の上では優位な状況ですが、地理的には相手が優位となっています。」
続けて優男が補足する。
「ブリジラ軍は全面に広がる森に潜み、我々が得意とする攻撃…、特にアメリア将軍の騎馬隊での攻撃は出来ません。また我が軍が森へ入ると徹底的にゲリラ戦を行ってくるため迂闊に踏み入ることもできません。」
ふんふん…え?、それなら邪魔なもの排除しちゃえばいいんじゃないか?
森なんだし…、焼き払えば潜んでるブリジラ軍も出てくるしかなくなるだろう。
とは言えそんな簡単なことこの人たちが思いつかないわけないよな…。
「アメリア将軍、どう攻めましょう?」
優男が晃を急かしてくる。
そして皆が期待の目を向けてくる。
ええぃ仕方ない、言ってみるか!
「あー、とりあえず森が邪魔なら…それを排除すれば良い。」
部下達が顔を見合わせる。
「ど、どのように?」
優男が疑心暗鬼な表情で問いかけてくる。
「焼き払えば良い。そうすれば、敵も森から出て前進するか後退するかしか選べないだろう。そこを騎馬隊でさらに撹乱し、歩兵で仕留める。」
晃は焼き払えと口にしたところで、あることを思いつく。
そういや魔法は?異世界と言えば魔法だろうよ。
俺言ってみる?言ってみちゃおうか!
「魔法……とかで一気に焼き払うとかさ、あるでしょ…魔法とかさ。」
「なるほど!さすがはアメリア将軍!それで行きましょう!」
違いの分かる男が勢いよく称賛し始める。
いきなり大声だすなよ。
ほんとビックリしたぁ、心臓止まるかと思ったがな。
それで、魔法あるの?あるよね?
晃は、なんとなく優男の方を見る。
「魔法師ならこの戦場にいます。確かに森を焼き払えば…。さすがはアメリア将軍。」
優男が、肩をすくめて両手を上げ降参したようなポーズをとる。
おお、魔法あるんだね!?
やったぁぁ!!
晃が皆に褒められた上に魔法まであると聞いてウキウキしていると。
「ちょっと待ってくれ、いくらなんでも森を焼き払って敵を殺すなど野蛮ではないか。」
今まで一度も発言していなかった老人が、急に作戦を否定し始める。
晃は他の男3名が発言しようとするのを制止する。
確かにエコではないよなぁ。
でも戦争だしなぁ、そんなこと構ってられるか?普通。
まぁ何か考えがあるかもしれないし、聞いてみるか。
「森を焼き払い敵が火炙りになることが野蛮だと言いたいのか?」
「…そうだ。」
「うーん、ならどうすれば野蛮ではない?」
「敵にも名誉ある死を与えるべきだ。」
名誉ある死?この老人はなに言い始めた?
「今回の作戦が彼らを辱めるというのか、どうすれば名誉ある死になるんだ?」
「兵士らしく闘って死ぬことだ。」
「それならすでに彼らは兵士らしく戦っているぞ。我々は2度も敗退しているのだからな。」
「森を焼いて敵を殺すなんて野蛮だ。」
え?最初に戻った?
あぁこの老人、結論ありきで議論する気ないタイプだな。
晃は深くため息をつき、どうするか考える。
こうなりゃ、もっとも民主的な方法で決定させてもらうか。
「では多数決で決めようか。作戦に賛成の人、手を上げてー。」
当然老人以外全員手を上げる。
「はい決定。作戦決行。」
「ふざけるな!そんな決め方があるか!」
「一番公平だと思うけどなー、ってかお前のために自分の部下を危険にさらしたくないんでね。はい、じゃあ準備始めちゃって。」
「承知しました。夜が明けてすぐに作戦を決行できるよう魔法師や歩兵に準備させます。また騎士団にもこちらから作戦を伝えますので、アメリア将軍も準備をお願いします。」
優男の発言に晃は少し戸惑う。
え…、あれ、作戦考えたらもう終わりじゃないの?俺は何の準備をするんだ?
晃は、将軍が戦場に立つことはないと考えていたが、話に出ている今回の騎馬隊というのはアメリア将軍の出身母体であるアメリア騎士団のことを指し、今も団長がアメリアとなっているのだった。
真っ先に敵に突っ込み撹乱を誘う役割を担うことになると晃が認識するのに、それほど時間は掛からなかった。
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