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第一章:愛してるからこそ守り抜く。
相応しい場所へ。
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私が目が覚めた時。
銀はずっと、私を抱き寄せたままだったようだ。
どれくらいの時間が経ったのだろう?
でも、私が目が覚めた事に。
銀は気付いた様子で、優しく私の頬を撫でてきた。
あぁ、銀が居る…
良かった…
また銀にと、私は触れてきた手にと擦り寄った。
銀はゆっくりと言った。
「光希、大丈夫だよ。
私が居るのだから。」
そう言うと、優しくキスをする。
私はただ、銀の優しさが嬉しくて、安心しながらも言う。
「うん、銀が居るなら。
私は、それだけで良い…」
嬉しいな。
銀が居るだけで、本当に。
そう思いながら、銀の身体にも擦り寄る。
銀は優しく撫でてくれた。
**************************
そんな事があった数日後。
光希が起きたのを気付いた。
銀楊は『計算』しながらもだった。
行動を『実行開始』でもある。
勿論、光希は、何も知らない。
けれど、銀楊が思う事は1つのみ。
『私ならば、可能だ。』
銀楊が『この場に居れば』だが。
光希は一応、『普通には』笑うのだ。
だが、それでも『残るもの』がある。
だからこそ、『成功』させてみせよう。
「さて、光希。
ご飯でも食べようか。
既に用意もしてある。」
既に食事をドアの側まで運ばせておいた。
それを持って来て、いつものように自然にと動く。
光希は「いただきます。」と手を合わせ…
美味しそうに食べているのを見る。
これから、私がする事には何も気付けないだろうなぁ。
と、内心で思いながらも、銀楊も少しだけ食べ。
光希と普段のように些細な話もしながら、タイミングにと合わせる。
それを食べ終わり、光希の『癖』が出るのを見た。
食後に必ず、一度、『間がある』のだ。
こればかりは、『ここに来てからの癖』のようだが…
予測だが、まだ量が多いのだろう。
もう少し、食べてくれる方が安心するのだがな。
光希が挨拶をした後に出る癖も『確認』した。
それと、今から行く場所の『時間』も。
『計算通り』に進んだ事に、銀楊はまた動く。
光希は今、確実に気が緩んでいる。
少しの刺激なら大丈夫だという判断と、これから行く場所の時間。
『全てを』合わせてから銀楊は言った。
「光希。
聞いて欲しい事があるんだが、良いか?」
「うん?」
銀から何かをして欲しいなんて、珍しい。
そう思いながら見ると、銀は簡単に言った。
「いきなりだが。
光希の『専用の家』が完成したから。
そこへ行こう。」
「えっ?」
「簡単に言えば…
引越しだな?」
「…えっ!?」
まぁ、想像なんてしてもいなかったろう。
そう、内心思いながらも『時間』を確認する。
更に後は『予防』だ。
銀楊も見逃してなどいなかった。
光希は『それを』言われた時に…
驚くと同時にも、やはり『僅かに』複雑な顔もした事。
「心配ならばもう何もない。
既に全部、私が手配してある。」
「そっか。
うん。」
…やはり。
まだ『ある』か。
だが、それも予測しながらの策でもある。
予測通りに、上手く、流れすらも掴めている。
私は光希を誰よりも知っている。
流れを掴めた『今なら』これで、消せる確率は跳ね上がる。
「それと光希は、必ず。
この『御守り』を常に、持っていて欲しい。」
銀楊は先に『予防策』としての造った物を。
光希の手の中に渡した。
光希の場所が、『私だけに判る発信器』代わりすらにもなるが…
これは『他を決して寄せつけない為の予防策にも』してある。
私にしか判らない。
かなり細工した『銀色の水晶の付いたネックレス』にした。
光希は、その不思議な水晶の部分を持って。
上に翳す様子をしてから、また良く見てた。
そして少し笑う。
「何だか、銀と似てるね。」
銀楊は、その光希の『表情も』見逃したりはしない。
やはり残っているか…
「でも、いつ行くの?」
「今からだな。」
「うん?」
銀楊は『事前に』全て、済ませて置いた。
きっと『他の不安も』含めて、これで『完全に消える』だろう。
今の光希には、傷を治す時間が必要だが…
『ここ』では、どんな意味もない。
だからこそ、絶対に誰にも近付けない場所へ。
私ならば、光希に『相応しい場所』を造れるのだから。
銀楊は少し笑って言った。
「移動なんて、『3秒』で充分だと言う事だ。
光希?」
「……3秒!?」
「もう座標は設定してある。
さて、今から行こうか。」
「えっ?
ちょ、まっ、何がどう…」
銀楊がその場で指を鳴らした瞬間だった。
**************************
いきなり、全ての景色が変わった。
えっ?
私は驚く。
声なども出なかった。
えっ?
ここは…
天井がかなり高い場所で、煌いていた。
10メートル以上はあるのではないだろうか。
それが全て透明な硝子のよう張り巡っており。
外の天気が、太陽の光。
あぁ、これは朝の…
久しぶりに見た気がする。
一部分がそれぞれ、ステンドグラスのように。
綺麗な淡い色の反射もしている、複雑な造り…
それがドームのように包み込んでいた。
そして様々な花や草木が植えられており。
更には休憩する為の白い椅子や、テーブルまで用意されている。
「うわぁ…
ここは…」
凄く綺麗で…
でも、淡くも重なり合う色が、光が、目の前に表れた。
私の好きな色ばかり。
でも、様々な角度から違う色で、それぞれが角度を、また色を変える。
銀がゆっくりと、私の頭を撫でながら言う。
「ここは、『光希の家』の屋上だ。
気分転換にもなるだろうと思ったんだ。
ここの屋上に関しては、私が全て造ってみた。
光希は好きだろう?
硝子細工、色の変わる小さな石も、花や植物も。
朝日を浴びるのも。
後、いつも姿を変えていく、空も。」
光希は話を聞きながら。
それでも空の光に手を伸ばしながら…
少しずつ、起き上がった。
ただ空を見ながらも、何も言葉はないが。
表情がゆっくりと和らいでいく。
銀楊は、その様子を見ながら続けた。
「ちなみに。
ここの硝子は『絶対』に割れない。
それは、この私が直接的に強化した。
断言出来るぞ。」
光希は、嬉しそうに光に手を翳しながら。
そして笑い出した。
「うわぁ!
すごぃなぁ!!」
嬉しそうに、ただ、笑いながら声を出し。
それでも空へと、光に手を伸ばし笑う。
銀楊は『成功』した。
そして、それを見ながら、やはり思う。
そうだ、その顔だ。
光希、この景色にも相応しい…
その『綺麗な笑顔』が、何よりも似合うのだから。
これで『大丈夫』だ。
後は私が、『この場所を守り切れる力もある』のだから。
私が銀の方を見ると、安心した様子で優しく笑ってた。
「ありがとう、銀っ!!」
「喜んで貰えて、良かったよ。」
銀楊は、それだけしか言わなかった。
そして光希が嬉しそうに。
近くにある花や空を見上げて、楽しそうに笑う。
銀楊の流れが『全て』が上手くいった瞬間でもある。
そして、それを見てると…
また、どうしても思う。
そう、それで良い、光希。
光希の好きな物を。
それを『私は』全て知っている。
私ならば『可能』なんだよ。
こんなことぐらいなら。
誰よりも長くずっと、『光希を見てきた』のだから。
この『家の中』には、まだたくさんある。
その中で、ゆっくりと過ごせば良い。
そんな銀楊の思考は、今の光希は勿論ない。
ただ、嬉しそうに、若干はしゃぎながら。
あちこちの花に触れたり、綺麗な石を見つけて、何度も楽しそうに笑う。
銀楊はそれを眺めながら。
光よりも、光希の『笑顔の方』が、眩しく見える。
そこには、さっきまで『僅かに陰りの残る笑顔』ではない。
本当に、ありのままの、光希の笑顔がある。
子供の頃から、光希の好きな物は、殆どが変わらない。
この屋上には、それしかないのだから。
銀楊は、その純粋過ぎる光希の前でなら。
やはり自然と『心が落ち着く』のを感じる。
自分がどんなに『冷徹』と言われても、何も思わない。
そんな者も前で、自分自身を出す事もしたくない、否、出来ない。
『自分自身の全て』を、心が完全に休まる時間など。
銀楊にとって、既に何百年もない。
出す事も許されなかった。
それでも『光希の前でなら』出せる。
私が『裏の顔を』隠していようと…
それを『全く疑う事も』なく、『全部の信頼』すらも。
向けるのは『光希しか居ない』のだから。
光希がその笑顔で、私の前で、私を向いてくれるから。
いつも背負っているように…
自分自身に纏わりつく、その『重み』すら。
なぜか軽くなって、自然に笑えたりもしてしまうのだから。
**************************
この銀楊の造った『光希の家』。
それは遠隔操作も、結界も含め、誰にも突破出来ない程。
『不可能な複雑な造り』にも、なっていた。
また今の妖狐一族でも、誰もが『ここの周囲』にも簡単には入れない場所。
どちらかと言うならば、『逆に避ける』場所。
そして、銀楊が『外部からすらも絶対に守れる場所』でもある。
それは『銀楊の屋敷の中心地点』だった。
銀楊の屋敷は正方形。
その周りには、同じ派閥、同族の中でも許された者の一族。
その多数の家があるのだ。
それぞれが『銀楊の屋敷』を中心に存在し。
『個々の結界と外の結界』をも、同時にしている。
更に『内部は』銀楊の結界内でもある。
大きな屋敷の正方形。
その中心部分の中庭を改造し、『光希の家』を造ったのだ。
その中庭に『専用の個別結界』もあり、また『2つの術』もだった。
この『光希の家』には、かけてある。
あの部屋と同じように、ここは『人間の身体でも』時が遅くなる。
この『光希の家』は、銀楊の屋敷も含めた。
全ての『中心、真ん中』に存在する。
その中に、『光希の家』の内部結界も存在する。
外の方からは他の家が、そしてここは『完全に銀楊の結界内』。
屋敷の真ん中でもあるからこそ。
その『結界数は約100個以上』にも、複雑に重なり合う。
ここをもし、突破しようとしたら、それは『銀楊しか』出来ないのだ。
理由は簡単でもある。
『他の家の全部の結界』は、異なるからだ。
また他の家の『結界方式』などは、それぞれには知らせていない。
他の家の結界の方法を、『全て知っている』のは、銀楊だけになる。
ゆえに誰も突破は不可能。
元々、長の家だからこそ、可能だった場所。
どんな場所からでも、どこかの結界があり、また全て術方も異なる。
そんな複雑な結界の中、しかも中心地点。
あの空間結界などより、確実に『不可侵』な結界網だった。
他の部族すら論外。
そして姫の所在地は『秘密事項』済み。
もし、その所在地を知る者すら、簡単には手を出せない場所だった。
そんな結界の中であり、また家にも多数の結界。
『光希の家』は勿論のことであり、その内部に至り、全てを防げる構造にしているのだ。
屋敷にも側近や仕事面には使う部分があれど、そもそもが長の家。
既に結界は複雑になっている為、『光希の家』があろうと。
誰も銀楊が居る『家の内部に』手を出す程の者は居ない。
予防にと渡した『光希への銀色の水晶石』もそう。
あれは人工石に等しい。
銀楊の血を含めてあるからこそ。
あれを着けて居る場合、光希が普通に歩いていても。
それは『銀楊の石』で、遠視すらも届かない。
また当主である『銀楊の波動しか』出さなくなる。
だが、石を造った『銀楊自身』には、居場所の感知は可能な発信器にもなる。
これだけの結界は誰もが突破は出来ない。
そして『光希の存在』は、銀楊の波動を持たせた事で。
遠視も遠隔も『全てが不可能にさえ』なる。
ここまでしてしまえば、光希に例え、誰かを会わなければ行けなくなってもだ。
『確実に銀楊への許可』がなければ、通れないし、会えない。
この『光希の家』も充分な広さも、階数もある。
光希にも、不便はない『完璧な場所』だった。
多少、造る時間はかかったが…
これ以上の守れる『最適な場所もない』上で銀楊は造っていた。
それにこの状態でなら、銀楊が不在でも、誰も突破出来ない。
**************************
銀楊は、光希に声をかけた。
「光希。
中に、入ってみる前に1つ、言っておいて良いか?」
それに気付いて、笑いながらこちらを向いた。
「うん?」
「この『家』に居る間。
もし、私が居なくても、『確実にと断言』しよう。
何も起きないし、誰もこないと。
もう、『私の許可』がなければ、誰も光希に『近付く事も不可能』だと。」
「銀は…?」
少し返事をしながらも、光希の目で。
思考を読んだ銀楊は続けた。
「確かに、私もたまに『留守にはする』が、毎日、ここには居る。
でも、私が『留守の時』も含めて、この『家』ならば。
光希には、『時間潰しになるもの』にも飽きないし、家の中で退屈にもならないぐらい。
いくらでも遊べるようにはなっている。
光希にとってだけね。」
「うん。」
少しの寂しい目。
それを見て銀楊の瞳も僅かに揺れる。
銀楊は、言葉を選びながら、少し優しく続けた。
「私もずっと一緒に居たいが、一応、『仕事もある』からな。
それで『たまに居なくなる』が、毎日ちゃんと会えるし、時間も作れるさ。
でも、少なくとも、この『家』では退屈はないとも思ってる。
それにさっきも言ったが、私が居なくても、他の男も含め。
ここなら勝手に『誰も来ないのは私が断言』する。」
「お仕事?
それは、そうだよね。
ごめんね?
いつも本当は、忙しかったんじゃ…」
銀楊は少しだけ優しく笑うと続ける。
「光希が心配する程でもないさ。
さっきも見ただろう?
私からしたら、移動ぐらいなら、3秒だぞ?
仕事だって、光希が思うような労働作業者でもない。
『長としての役割を』熟せば良い。」
「そうだよね。
どんな内容かは、想像は出来ないけど。
無理だけは、してないよね?」
「あぁ、そこも心配はしなくても問題もない。
それに、私も光希の側には居たいのだから。」
銀楊は『仕事には触れず』に、続けた。
「特に今後、光希が、この『家』に居てくれるならば。
逆に、安心しながら出来るから。
今よりも私からしたら『楽になる』ぐらいだ。」
銀楊は、この時には嘘はついてはいないが。
『仕事内容は避けて』話を続ける。
「だから、私の為を考えてくれるなら。
1つだけ、『お願い』しても良いか?」
私も、銀の邪魔はしたくないから、素直に頷く。
「私があげた。
その『御守りは常に持っていて』欲しい。」
「うん…
でも…
それだけで、私は良いの?
何か他には、ないの?」
私からしたら、そんな『御守りだけ』で…
銀の仕事に、無理はないのか、心配になる。
私が何か手伝う事も、何も出来る訳ではないだろうけど…
銀の場合は長、会社なら『社長』をイメージする。
それなのに、『御守りだけ』なんて…
その光希の目から思考を読んだ銀楊はまた心の中で思う。
私を気遣って、心配はする光希の事だろう。
そして『今は自覚』もしている。
ならば…
「光希は働いた事がないから、判らないかもしれないが。
本来、上にいる者は『的確な指示』をする。
それをして、部下に『実行させ』て、『動かせる』者なんだ。
私がわざわざする『労働』なんて、そんな必要すらもない。」
私は確かに…
働いた事もないから、判らないからこそ。
銀の言葉を『素直に』受け取る。
「私は確かに、仕事とか、会社は判らないけど。
無理だけは、しない?」
「あぁ、無理なんてしないさ。
私は光希の側に居たいし、その為なら。
余計に無理をしたら、側に居られなくもなるだろう?」
「そう、無理をしないでくれるのなら…
私は銀を信じるよ。
銀を、困らせたくないよ?」
私はまだ心配になる。
知らない事ばかりだけど…
銀が、いろんな無理をして…
結果としては、銀がいなくなる方が嫌だった。
それでも銀楊は簡単そうに、『敢えて』言う。
「心配など要らない。
この『場所は安全』だ。
私が居ない時でも、『光希に何もないよう』にと。
ただ『御守りを持っていて欲しいだけ』なんだ。」
「そう…」
私はさっき渡された『御守り』を…
ネックレスをジッと見て、すぐに、それをサッと着けて言う。
「判った!!
必ず、ずっと着けるから。
今は、それしかできないなら、私は『銀を信じる』よ。
だって、私は銀を、いつも私を心配ばかり、させたくない。」
私は銀に向かって言った。
そして続けた。
「ここは、『銀が造ってくれた』のでしょう?
銀が考えて、造ってくれたのでしょう?
だったら、私は安心して、『銀が居なくても』恐くない。
私は銀が居なくても、ちゃんと待てるし、待ってるよ。」
私は言葉にしてない部分はあった。
この屋上だけでも私は判った…
銀が私を『誰よりも知っているんだ』と。
確信出来るから、嬉しくて笑う。
きっとまた『私を守れる』ようにと。
この場所を『銀が造ってくれた』のだろう。
銀楊は優しく、笑う。
光希にだけは、『自然に』笑える時すらある。
その何も曇りのない笑顔と、心の前だと…
「そうか。
なら、せっかくの新居だ。
少し必要な場所の案内はするが、他は光希が好きに動いて、遊べば良い。
部屋なら、いくらでもある。
全部の案内はしない。
この『家』には全部あるし、『自由に歩いても大丈夫』だから。
光希の暇な時にでも、散策してごらん。」
「うん!」
その後は、ずっと楽しそうに光希は笑った。
銀楊は少しずつ。
迷わないように、家の部屋の最低限。
普段使う必要な部屋だけを案内した。
銀はずっと、私を抱き寄せたままだったようだ。
どれくらいの時間が経ったのだろう?
でも、私が目が覚めた事に。
銀は気付いた様子で、優しく私の頬を撫でてきた。
あぁ、銀が居る…
良かった…
また銀にと、私は触れてきた手にと擦り寄った。
銀はゆっくりと言った。
「光希、大丈夫だよ。
私が居るのだから。」
そう言うと、優しくキスをする。
私はただ、銀の優しさが嬉しくて、安心しながらも言う。
「うん、銀が居るなら。
私は、それだけで良い…」
嬉しいな。
銀が居るだけで、本当に。
そう思いながら、銀の身体にも擦り寄る。
銀は優しく撫でてくれた。
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そんな事があった数日後。
光希が起きたのを気付いた。
銀楊は『計算』しながらもだった。
行動を『実行開始』でもある。
勿論、光希は、何も知らない。
けれど、銀楊が思う事は1つのみ。
『私ならば、可能だ。』
銀楊が『この場に居れば』だが。
光希は一応、『普通には』笑うのだ。
だが、それでも『残るもの』がある。
だからこそ、『成功』させてみせよう。
「さて、光希。
ご飯でも食べようか。
既に用意もしてある。」
既に食事をドアの側まで運ばせておいた。
それを持って来て、いつものように自然にと動く。
光希は「いただきます。」と手を合わせ…
美味しそうに食べているのを見る。
これから、私がする事には何も気付けないだろうなぁ。
と、内心で思いながらも、銀楊も少しだけ食べ。
光希と普段のように些細な話もしながら、タイミングにと合わせる。
それを食べ終わり、光希の『癖』が出るのを見た。
食後に必ず、一度、『間がある』のだ。
こればかりは、『ここに来てからの癖』のようだが…
予測だが、まだ量が多いのだろう。
もう少し、食べてくれる方が安心するのだがな。
光希が挨拶をした後に出る癖も『確認』した。
それと、今から行く場所の『時間』も。
『計算通り』に進んだ事に、銀楊はまた動く。
光希は今、確実に気が緩んでいる。
少しの刺激なら大丈夫だという判断と、これから行く場所の時間。
『全てを』合わせてから銀楊は言った。
「光希。
聞いて欲しい事があるんだが、良いか?」
「うん?」
銀から何かをして欲しいなんて、珍しい。
そう思いながら見ると、銀は簡単に言った。
「いきなりだが。
光希の『専用の家』が完成したから。
そこへ行こう。」
「えっ?」
「簡単に言えば…
引越しだな?」
「…えっ!?」
まぁ、想像なんてしてもいなかったろう。
そう、内心思いながらも『時間』を確認する。
更に後は『予防』だ。
銀楊も見逃してなどいなかった。
光希は『それを』言われた時に…
驚くと同時にも、やはり『僅かに』複雑な顔もした事。
「心配ならばもう何もない。
既に全部、私が手配してある。」
「そっか。
うん。」
…やはり。
まだ『ある』か。
だが、それも予測しながらの策でもある。
予測通りに、上手く、流れすらも掴めている。
私は光希を誰よりも知っている。
流れを掴めた『今なら』これで、消せる確率は跳ね上がる。
「それと光希は、必ず。
この『御守り』を常に、持っていて欲しい。」
銀楊は先に『予防策』としての造った物を。
光希の手の中に渡した。
光希の場所が、『私だけに判る発信器』代わりすらにもなるが…
これは『他を決して寄せつけない為の予防策にも』してある。
私にしか判らない。
かなり細工した『銀色の水晶の付いたネックレス』にした。
光希は、その不思議な水晶の部分を持って。
上に翳す様子をしてから、また良く見てた。
そして少し笑う。
「何だか、銀と似てるね。」
銀楊は、その光希の『表情も』見逃したりはしない。
やはり残っているか…
「でも、いつ行くの?」
「今からだな。」
「うん?」
銀楊は『事前に』全て、済ませて置いた。
きっと『他の不安も』含めて、これで『完全に消える』だろう。
今の光希には、傷を治す時間が必要だが…
『ここ』では、どんな意味もない。
だからこそ、絶対に誰にも近付けない場所へ。
私ならば、光希に『相応しい場所』を造れるのだから。
銀楊は少し笑って言った。
「移動なんて、『3秒』で充分だと言う事だ。
光希?」
「……3秒!?」
「もう座標は設定してある。
さて、今から行こうか。」
「えっ?
ちょ、まっ、何がどう…」
銀楊がその場で指を鳴らした瞬間だった。
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いきなり、全ての景色が変わった。
えっ?
私は驚く。
声なども出なかった。
えっ?
ここは…
天井がかなり高い場所で、煌いていた。
10メートル以上はあるのではないだろうか。
それが全て透明な硝子のよう張り巡っており。
外の天気が、太陽の光。
あぁ、これは朝の…
久しぶりに見た気がする。
一部分がそれぞれ、ステンドグラスのように。
綺麗な淡い色の反射もしている、複雑な造り…
それがドームのように包み込んでいた。
そして様々な花や草木が植えられており。
更には休憩する為の白い椅子や、テーブルまで用意されている。
「うわぁ…
ここは…」
凄く綺麗で…
でも、淡くも重なり合う色が、光が、目の前に表れた。
私の好きな色ばかり。
でも、様々な角度から違う色で、それぞれが角度を、また色を変える。
銀がゆっくりと、私の頭を撫でながら言う。
「ここは、『光希の家』の屋上だ。
気分転換にもなるだろうと思ったんだ。
ここの屋上に関しては、私が全て造ってみた。
光希は好きだろう?
硝子細工、色の変わる小さな石も、花や植物も。
朝日を浴びるのも。
後、いつも姿を変えていく、空も。」
光希は話を聞きながら。
それでも空の光に手を伸ばしながら…
少しずつ、起き上がった。
ただ空を見ながらも、何も言葉はないが。
表情がゆっくりと和らいでいく。
銀楊は、その様子を見ながら続けた。
「ちなみに。
ここの硝子は『絶対』に割れない。
それは、この私が直接的に強化した。
断言出来るぞ。」
光希は、嬉しそうに光に手を翳しながら。
そして笑い出した。
「うわぁ!
すごぃなぁ!!」
嬉しそうに、ただ、笑いながら声を出し。
それでも空へと、光に手を伸ばし笑う。
銀楊は『成功』した。
そして、それを見ながら、やはり思う。
そうだ、その顔だ。
光希、この景色にも相応しい…
その『綺麗な笑顔』が、何よりも似合うのだから。
これで『大丈夫』だ。
後は私が、『この場所を守り切れる力もある』のだから。
私が銀の方を見ると、安心した様子で優しく笑ってた。
「ありがとう、銀っ!!」
「喜んで貰えて、良かったよ。」
銀楊は、それだけしか言わなかった。
そして光希が嬉しそうに。
近くにある花や空を見上げて、楽しそうに笑う。
銀楊の流れが『全て』が上手くいった瞬間でもある。
そして、それを見てると…
また、どうしても思う。
そう、それで良い、光希。
光希の好きな物を。
それを『私は』全て知っている。
私ならば『可能』なんだよ。
こんなことぐらいなら。
誰よりも長くずっと、『光希を見てきた』のだから。
この『家の中』には、まだたくさんある。
その中で、ゆっくりと過ごせば良い。
そんな銀楊の思考は、今の光希は勿論ない。
ただ、嬉しそうに、若干はしゃぎながら。
あちこちの花に触れたり、綺麗な石を見つけて、何度も楽しそうに笑う。
銀楊はそれを眺めながら。
光よりも、光希の『笑顔の方』が、眩しく見える。
そこには、さっきまで『僅かに陰りの残る笑顔』ではない。
本当に、ありのままの、光希の笑顔がある。
子供の頃から、光希の好きな物は、殆どが変わらない。
この屋上には、それしかないのだから。
銀楊は、その純粋過ぎる光希の前でなら。
やはり自然と『心が落ち着く』のを感じる。
自分がどんなに『冷徹』と言われても、何も思わない。
そんな者も前で、自分自身を出す事もしたくない、否、出来ない。
『自分自身の全て』を、心が完全に休まる時間など。
銀楊にとって、既に何百年もない。
出す事も許されなかった。
それでも『光希の前でなら』出せる。
私が『裏の顔を』隠していようと…
それを『全く疑う事も』なく、『全部の信頼』すらも。
向けるのは『光希しか居ない』のだから。
光希がその笑顔で、私の前で、私を向いてくれるから。
いつも背負っているように…
自分自身に纏わりつく、その『重み』すら。
なぜか軽くなって、自然に笑えたりもしてしまうのだから。
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この銀楊の造った『光希の家』。
それは遠隔操作も、結界も含め、誰にも突破出来ない程。
『不可能な複雑な造り』にも、なっていた。
また今の妖狐一族でも、誰もが『ここの周囲』にも簡単には入れない場所。
どちらかと言うならば、『逆に避ける』場所。
そして、銀楊が『外部からすらも絶対に守れる場所』でもある。
それは『銀楊の屋敷の中心地点』だった。
銀楊の屋敷は正方形。
その周りには、同じ派閥、同族の中でも許された者の一族。
その多数の家があるのだ。
それぞれが『銀楊の屋敷』を中心に存在し。
『個々の結界と外の結界』をも、同時にしている。
更に『内部は』銀楊の結界内でもある。
大きな屋敷の正方形。
その中心部分の中庭を改造し、『光希の家』を造ったのだ。
その中庭に『専用の個別結界』もあり、また『2つの術』もだった。
この『光希の家』には、かけてある。
あの部屋と同じように、ここは『人間の身体でも』時が遅くなる。
この『光希の家』は、銀楊の屋敷も含めた。
全ての『中心、真ん中』に存在する。
その中に、『光希の家』の内部結界も存在する。
外の方からは他の家が、そしてここは『完全に銀楊の結界内』。
屋敷の真ん中でもあるからこそ。
その『結界数は約100個以上』にも、複雑に重なり合う。
ここをもし、突破しようとしたら、それは『銀楊しか』出来ないのだ。
理由は簡単でもある。
『他の家の全部の結界』は、異なるからだ。
また他の家の『結界方式』などは、それぞれには知らせていない。
他の家の結界の方法を、『全て知っている』のは、銀楊だけになる。
ゆえに誰も突破は不可能。
元々、長の家だからこそ、可能だった場所。
どんな場所からでも、どこかの結界があり、また全て術方も異なる。
そんな複雑な結界の中、しかも中心地点。
あの空間結界などより、確実に『不可侵』な結界網だった。
他の部族すら論外。
そして姫の所在地は『秘密事項』済み。
もし、その所在地を知る者すら、簡単には手を出せない場所だった。
そんな結界の中であり、また家にも多数の結界。
『光希の家』は勿論のことであり、その内部に至り、全てを防げる構造にしているのだ。
屋敷にも側近や仕事面には使う部分があれど、そもそもが長の家。
既に結界は複雑になっている為、『光希の家』があろうと。
誰も銀楊が居る『家の内部に』手を出す程の者は居ない。
予防にと渡した『光希への銀色の水晶石』もそう。
あれは人工石に等しい。
銀楊の血を含めてあるからこそ。
あれを着けて居る場合、光希が普通に歩いていても。
それは『銀楊の石』で、遠視すらも届かない。
また当主である『銀楊の波動しか』出さなくなる。
だが、石を造った『銀楊自身』には、居場所の感知は可能な発信器にもなる。
これだけの結界は誰もが突破は出来ない。
そして『光希の存在』は、銀楊の波動を持たせた事で。
遠視も遠隔も『全てが不可能にさえ』なる。
ここまでしてしまえば、光希に例え、誰かを会わなければ行けなくなってもだ。
『確実に銀楊への許可』がなければ、通れないし、会えない。
この『光希の家』も充分な広さも、階数もある。
光希にも、不便はない『完璧な場所』だった。
多少、造る時間はかかったが…
これ以上の守れる『最適な場所もない』上で銀楊は造っていた。
それにこの状態でなら、銀楊が不在でも、誰も突破出来ない。
**************************
銀楊は、光希に声をかけた。
「光希。
中に、入ってみる前に1つ、言っておいて良いか?」
それに気付いて、笑いながらこちらを向いた。
「うん?」
「この『家』に居る間。
もし、私が居なくても、『確実にと断言』しよう。
何も起きないし、誰もこないと。
もう、『私の許可』がなければ、誰も光希に『近付く事も不可能』だと。」
「銀は…?」
少し返事をしながらも、光希の目で。
思考を読んだ銀楊は続けた。
「確かに、私もたまに『留守にはする』が、毎日、ここには居る。
でも、私が『留守の時』も含めて、この『家』ならば。
光希には、『時間潰しになるもの』にも飽きないし、家の中で退屈にもならないぐらい。
いくらでも遊べるようにはなっている。
光希にとってだけね。」
「うん。」
少しの寂しい目。
それを見て銀楊の瞳も僅かに揺れる。
銀楊は、言葉を選びながら、少し優しく続けた。
「私もずっと一緒に居たいが、一応、『仕事もある』からな。
それで『たまに居なくなる』が、毎日ちゃんと会えるし、時間も作れるさ。
でも、少なくとも、この『家』では退屈はないとも思ってる。
それにさっきも言ったが、私が居なくても、他の男も含め。
ここなら勝手に『誰も来ないのは私が断言』する。」
「お仕事?
それは、そうだよね。
ごめんね?
いつも本当は、忙しかったんじゃ…」
銀楊は少しだけ優しく笑うと続ける。
「光希が心配する程でもないさ。
さっきも見ただろう?
私からしたら、移動ぐらいなら、3秒だぞ?
仕事だって、光希が思うような労働作業者でもない。
『長としての役割を』熟せば良い。」
「そうだよね。
どんな内容かは、想像は出来ないけど。
無理だけは、してないよね?」
「あぁ、そこも心配はしなくても問題もない。
それに、私も光希の側には居たいのだから。」
銀楊は『仕事には触れず』に、続けた。
「特に今後、光希が、この『家』に居てくれるならば。
逆に、安心しながら出来るから。
今よりも私からしたら『楽になる』ぐらいだ。」
銀楊は、この時には嘘はついてはいないが。
『仕事内容は避けて』話を続ける。
「だから、私の為を考えてくれるなら。
1つだけ、『お願い』しても良いか?」
私も、銀の邪魔はしたくないから、素直に頷く。
「私があげた。
その『御守りは常に持っていて』欲しい。」
「うん…
でも…
それだけで、私は良いの?
何か他には、ないの?」
私からしたら、そんな『御守りだけ』で…
銀の仕事に、無理はないのか、心配になる。
私が何か手伝う事も、何も出来る訳ではないだろうけど…
銀の場合は長、会社なら『社長』をイメージする。
それなのに、『御守りだけ』なんて…
その光希の目から思考を読んだ銀楊はまた心の中で思う。
私を気遣って、心配はする光希の事だろう。
そして『今は自覚』もしている。
ならば…
「光希は働いた事がないから、判らないかもしれないが。
本来、上にいる者は『的確な指示』をする。
それをして、部下に『実行させ』て、『動かせる』者なんだ。
私がわざわざする『労働』なんて、そんな必要すらもない。」
私は確かに…
働いた事もないから、判らないからこそ。
銀の言葉を『素直に』受け取る。
「私は確かに、仕事とか、会社は判らないけど。
無理だけは、しない?」
「あぁ、無理なんてしないさ。
私は光希の側に居たいし、その為なら。
余計に無理をしたら、側に居られなくもなるだろう?」
「そう、無理をしないでくれるのなら…
私は銀を信じるよ。
銀を、困らせたくないよ?」
私はまだ心配になる。
知らない事ばかりだけど…
銀が、いろんな無理をして…
結果としては、銀がいなくなる方が嫌だった。
それでも銀楊は簡単そうに、『敢えて』言う。
「心配など要らない。
この『場所は安全』だ。
私が居ない時でも、『光希に何もないよう』にと。
ただ『御守りを持っていて欲しいだけ』なんだ。」
「そう…」
私はさっき渡された『御守り』を…
ネックレスをジッと見て、すぐに、それをサッと着けて言う。
「判った!!
必ず、ずっと着けるから。
今は、それしかできないなら、私は『銀を信じる』よ。
だって、私は銀を、いつも私を心配ばかり、させたくない。」
私は銀に向かって言った。
そして続けた。
「ここは、『銀が造ってくれた』のでしょう?
銀が考えて、造ってくれたのでしょう?
だったら、私は安心して、『銀が居なくても』恐くない。
私は銀が居なくても、ちゃんと待てるし、待ってるよ。」
私は言葉にしてない部分はあった。
この屋上だけでも私は判った…
銀が私を『誰よりも知っているんだ』と。
確信出来るから、嬉しくて笑う。
きっとまた『私を守れる』ようにと。
この場所を『銀が造ってくれた』のだろう。
銀楊は優しく、笑う。
光希にだけは、『自然に』笑える時すらある。
その何も曇りのない笑顔と、心の前だと…
「そうか。
なら、せっかくの新居だ。
少し必要な場所の案内はするが、他は光希が好きに動いて、遊べば良い。
部屋なら、いくらでもある。
全部の案内はしない。
この『家』には全部あるし、『自由に歩いても大丈夫』だから。
光希の暇な時にでも、散策してごらん。」
「うん!」
その後は、ずっと楽しそうに光希は笑った。
銀楊は少しずつ。
迷わないように、家の部屋の最低限。
普段使う必要な部屋だけを案内した。
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