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第二章:姫として愛してる訳ではない。
守る為にも追罰は惨刑。
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この家に来てから、まだ少ししか経っては居ないけれど。
私は『初めて』、起きた時に1人だった。
あっ、銀が居ない。
それに気付き、少し不安にもなった時。
無意識にも『銀の御守り』のネックレスに触れた。
その御守りを握って…
そして目を閉じて、『銀を』思い出す。
あの、銀が、『断言』してた。
そして、『御守りを持つ事』も、言っていた。
それらの全ての行動を思い出すようにしてから、私は目を開ける。
銀が居ない…
お仕事かな?
でも…
私が出来る事はないし、忙しいかもしれない。
銀のくれた御守り、ネックレスの『銀色の不思議な水晶』を見る。
それを眺めてから、私は思う。
うん。
私は銀に、『大丈夫』って言ったもん。
銀の事は『信じてる』し、それにあの銀が、『断言した』んだもん。
『絶対に大丈夫だ』と、あの銀が言った。
なら、信じるのが、今の私に『出来る事』だもん。
そう自分自身に、思い出しながら、言い聞かす。
そして私は簡単な部屋着に着替えた。
でも、どうしようかな…
好きに散策をしても良いと言ってたけれど…
でも、今は『不安』よりも、少し『寂しい』気分にもなる。
屋上に、行こう。
私が最初の1人の時に選んだのは…
散策ではなく、『屋上』だった。
**************************
若干、時は遡り。
一方、銀楊。
銀楊の周りも含め、側近は当たり前だが。
他の様々な運営関係者も多い中で、ただ時間を待ってた。
そこは妖狐最大の街。
銀楊の家からは、離れた場所に居た。
だが、銀楊にとって。
その程度の距離などは、さほど気にしていなかった。
それに気持ちも今も顔には出さないが。
『整理している』ぐらいでもある。
銀楊は思考する。
光希を既に『あの家へと移動』も済ませている。
この距離でも、『異変』には気付ける。
また、そんな兆候もない。
銀楊は、既に側近に『指令済み』でもあった。
『予定計画5』と伝達を。
けれど、これからしようとする事に関して。
極一部の側近しか、具体的な事は知らせてはいない。
ゆえに判ってもいない場である。
先に指令にていた通り。
銀楊も、この場所に来ていた事でもある。
『予定計画5』の内容は下記になる。
【予定計画・5】
1.捕縛した者を、この街の中にある最大の広場にて、生きたまま拘束し続ける事。
2.指定日時に関係各部署の議員関係者、全員の召集。
3.他の民衆の方へ、指定日時までに、この街に約1日以内で到着可能な者を全て召集。
それらが側近により実行されており、関係各部署全て。
そして更に、また凄い数の民衆も集まっていた。
側近達は迅速に『それを行動していた』が…
他の関係部署の者も、民衆も。
単純に、当主からの『珍しい伝令』なだけで集まっただけだった。
ただ、当主の指示通りにと、それでも来ただけ。
そこには凄い民衆も集まり、数えられない。
何万単位がおり、議員関係者も含めて集まっていたが。
これから『何がある』のか判らなかった。
それでも皆が思うのもある。
『あの現当主が今まで無意味な事』は、した事がない。
また、こんな『指令の伝達は』された事もなかった。
不思議に感じながら、どうしても騒めきにはなる。
現当主の指示ならば、動かねばならないからこそ。
来ただけでもあるが…
その『内容を聞かされていない』のだ。
だからこそ、指示通りには来ているが…
皆には、『疑問だけ』で、判らないのもある。
そして、予定時刻になった。
銀楊は、それを確認し、動き出す。
側近に軽く合図をする。
銀楊は思う。
さて、時間だ。
これで更に手も出せなくなるだろう。
だが、それよりも…
銀楊は『感情を抑えながらも』立った。
そのまま高い舞台のようになっている場所へ向かう。
それと『同時に』側近達も動く。
拘束されたままになっている2人を。
銀楊の前にと連れて行き…
そして、素速く離れた。
そう、それは…
あの部屋の『結界破壊』をした者達だった。
両手両足に拘束された2人。
銀楊は抑えながら、ただ見るだけでもある。
わざわざ2人で分担作業までして、あの程度の小細工をか。
つくづく思うだけだな、こんな『愚か者達』が…
そんな異質の場に居合わせている皆が。
何事だと思い、騒めきも大きくなっていた。
そして銀楊は、妖気を溢れ出した。
その『妖気』は、どんどん強くなっていく。
誰もが判らない中で、それでも声は届いた。
それは当主の凄まじい妖気の為に、騒めきが止まり。
鎮まった中だからこそだった。
「貴様らのした事に、『自覚はある』だろう。」
「…」
答えないのか、答えられないのか、判らないが…
まぁ、良いだろう。
『する事』は、変わらない。
そんな2人に淡々と言う。
一気に『怒りの妖気』を更にと溢れ出した。
その『妖気の強さ』で、周囲は騒げるだけでなく、動けなくもなる。
そして皆にも聞こえた。
さっきのよりも、声が大きかったのもあるだろうが、ハッキリと。
「私は言った筈だ。
『姫』に手を出すなと!!」
その声が大きく響くと同時。
更に『妖気が大きく』溢れ出した。
周囲の皆も、当主の…
今までとは明らかに違う『怒りの妖気』に気付く。
そう、当主は確かに怒るよりもだ。
どちらかと言えば、端的に、言葉も少ないが。
『行動で示す傾向』がある。
例え、今までも厳しい部分があってもだ。
失敗した者を単純に『処分する』だけ。
にも関わらず、その当主が明らかに…
普段よりも『完全に怒り』を示していた。
そして、その怒りの含まれる妖気に、誰もが声も出ず。
更に『直接』向けられた。
拘束された2人は、既に『威圧まで』受けてた。
息すら出来なくなっている状況だ。
それでも、淡々とした言葉でだった。
皆には『全て』聞こえている状態になってしまう。
銀楊は、周りなど見ていない。
ただ『2人を』見て、言う。
「貴様らは『私の忠告を』破り。
更には私の結界を、『僅かに壊した』だけ。
そして、更に『逃げた』な?」
向けられている2人は、息は出来ず。
既に苦しく、俯く程度しか出来ない状態でしかない。
そんな中でも更に妖気を出して銀楊は続けた。
「私が出した『警告を破り』ながらもだ。
『姫』に対して、手を出そうとした。
結局それすらも、私の『結界の僅か』にしかだが…
その僅かにしか破壊出来ぬ程度の、『小賢しい手を使って』までだ。
そこまでして、更に『姫』を誘導し、『狙った』な?」
拘束されていた2人が、そのまま『窒息死』するかと思う瞬間。
銀楊は、『意図』して、妖気を下げた。
その為、既に2人は呼吸が荒く、まだ『生きている状態』だった。
周囲も、それは気付いた。
当主の怒りが、拘束された2人に向けられている『理由は完全に』判った。
でも、なぜ、妖気を下げたのには判らない。
既に見てる以外、動ける者も、その場に居なかった。
「貴様らは今、私がしている『意味』が判らないだろうな。
私は貴様らを『許す気はない』からだ。
だから敢えて、『生かした』のもある。
この後、どうなるか、貴様らには想像出来るか?」
2人は荒く呼吸をしながらも、声も出せず、『恐怖に顔を』歪めた。
銀楊は口元だけが笑う。
心の中で、『あの時の光希』を思い出す。
力もなく、ただ無垢な程に綺麗な心へ、『一方的に』傷を付けた。
その結果、常に来るかもしれない『恐怖を』知り。
対処する術すら知らず、更に光希は恐れた。
その『恐怖に耐え』ながら、『息も出せなくなる』程に…
あんなにも震え、気を失った『光希の姿』を。
全て、一方的に『貴様らが勝手にした』だけの事。
光希は『何もしていない』、そしてするつもりさえない。
光希は『何も悪くもない』にも関わらず、あれだけ苦しめた。
それなのに『一方的に恐怖を与えて』おきながら…
どうなったかも知らずに、そんな中で『更に逃げた』だと!?
銀楊は思い出す事と同時に完全に怒りが湧く。
それは妖気を抑えていてもだった。
「そんな事を許せるものかっ!!」
誰もが聞いた事がない。
当主の『完全な怒り』と、その怒鳴るような大きな声に…
周囲まで巻き込んだ。
凄まじい『怒りの妖気』が、抑えていても溢れ出ていた。
既に2人は、恐怖を通り超えて、失心しそうである。
銀楊は、『それに』、すぐ気付いた。
『気絶』など、させるものか。
銀楊は術式で空気を圧縮し。
2人の男を下から攻撃して、一気に上空へと飛ばした。
その『攻撃』によって、身体を強烈な打撃を受ける。
2人は軽々と、上に飛ばされただけだった。
その『痛み』と、そのまま『落下した衝撃の痛み』を受ける。
意識だけある為に、2人はその痛みだけでも呻いた。
そんな2人を、冷たい目で見下しながらも…
銀楊は、ただ言うだけでもあった。
「あぁ、私は『貴様ら』を許せない。
私の中に『3度目』など、存在しない。
だが、貴様らは『初めて』だな?
私の3度目は…
『だからこそ、生かして』捕らえた。
私から逃げられるとでも、思ったか?」
銀楊は風の術式を使い、2人の『両腕』を簡単に切り落とした。
一気に血が吹き出す。
悲鳴よりも暴れるが…
どんなに悶えるも、既に足は拘束されてあるまま。
逃げられる訳でもない。
そんな2人は、暴れながらも血だけが吹き出し、周り一帯が血で染まる。
けれど銀楊はまた淡々と言った。
「邪魔な血だな?
消してやろう。」
水の術式を応用し、『血の部分だけ』を一瞬で消滅させた。
既に見ている者は震え出していた。
これは『拷問』と同じで…
もう恐怖だけである。
だが、誰も『動く事も』出来ない…
『銀楊の妖気の強さ』で、完全に動けないのだ。
「貴様らの前に、『2度目の愚か者』ならば…
瞬時に『痛みもなく』だ、塵になったな。
だが、貴様らは『3度目』だ。
塵になった方が、楽だったかもしれないぞ?
『ここまで』しなければ、『私が自らする』つもりもなかった…
黙っていれば、それで良いだけだ。
そんな事も判らない『愚か者』は塵になったが。
貴様らは、どうだ?」
銀楊は、言い終わると同時にだった。
火炎の術式応用で、『2人の足だけ』を燃やす。
2人がどんなに暴れても、足だけが燃え続ける。
「暴れる姿は、余計に苛立つな。
止まれ。」
水の術式応用をまた使い、上から水をぶつけた。
既に瀕死だが、まだ2人は生きていた。
「あぁ、『今ので死ねていれば』良かったな?
だが、貴様らはまだ、生きている。
何か話せるなら『最後の言葉』として、聞いてやろうか?」
1人だけが呻きながら、言う。
「ど、ぁ、ゆる…」
銀楊はすぐに察して怒りがまた湧く。
その瞬間にすぐに風の応用術式を使った。
言ってきた『1人』の空気をまた圧縮した。
息も出来なくした。
「おい、貴様。
私は言った筈だ。
貴様らは『許せない』と。
また…
『2度目』だな?
次の言葉など、貴様にはない。」
そのまま死ぬギリギリ、その前にと。
更に一気に空気を圧縮し、頭だけを潰した。
そして身体に関しては一瞬で火炎術式を使って灰にする。
風に乗って、消えた…
また銀楊は冷たい目で見る。
後、1人。
何も言わないな。
だが、まだ『生きて』はいる…
「最後にもう1度、言うぞ?
私に『3度目』はない。
貴様らのした事は、そういう事だ。
下らない事を『3度』もだ。
愚かよりも、もう哀れだな?
そこまで弱く、頭も悪い。
そんな『妖狐は恥』にしかならん。」
残りの1人を、また空気を圧縮しながら…
それから『下から強烈な攻撃』を出し、一気に高く空へと飛ばした。
「そんな恥になるならば、私はそれを『消すだけ』だ。
『最後』はそのまま、散れ!!」
複数の高位術式応用を『同時』に使って、一気に『電撃』を生み出す。
残りの1人はそれを浴び、また灰になった。
そして同じ、風に乗って、2人目も消えた…
そこまでの間、『全てを見ていた者』は…
完全に恐怖で、声も出せずに震え、動けなかった。
ただ、その『圧倒的なまでの力』を、見せられただけだった。
あんなにも『高位術すら簡単に多様する事』の出来る者など、居ない。
その上でも、当主は『本気』でもないのだ。
ただ苦痛を与え、殺しただけの事だったからだ。
銀楊は、まだ怒りも残るが…
出している妖気を抑えていく。
そして、ただ見ているしか出来ない者達が。
皆が『動けないだけ』で、何も言わない。
その為に、騒めきもない。
銀楊は、それも判っていた。
それを見ていた『全ての民衆』にも淡々と言った。
「今後、『妖狐の恥になる者』は、出てくるな。
私が『面倒になるだけ』だ。
この場でした『意味すら』理解出来ずに…
また『姫』に近付けば、『3度目』だぞ?
私は今よりも、加減が難しくもなるだろう。
もし、この場に居ない者と会うならば。
今から言う『私の言葉を』伝えろ。
『私に3度目はさせるな』と。
愚かな者は、一族の恥でしかない。」
そこで一旦止めてから、動けない者達の方へ向けて…
銀楊は、付け足した。
「私が『消す』のは今後、ないように願いたい。」
言い終えた銀楊は、そのまま、側近に合図した。
側近達と一緒に転移装置に入り、屋敷にと戻る。
残された者達は、そこでようやく動けるようになるのだが。
あまりの事に、まだ皆が何も言えず。
だが思わずにいられないのだった。
現当主の強さ…
これが『歴代でも最強の妖狐』と言われる所以。
そして、あれは『完全な怒り』に等しく…
『姫』に手を出せば、あれと同じか。
それ以上だと…
銀楊が屋敷の中に入ると、また側近が近付き言う。
「何事もなく。」
その短い言葉で『理解』する。
「判った。
後始末だけ、『確認』しておけ。」
一緒に転移し、戻った側近へと言った。
他の屋敷で待機していた側近には『違う指示』を。
「後は連絡しろ。
こちらは戻る。
しばらく、『待機』だ。」
銀楊の言う『待機』だが。
これは継続の『交代制』になっており、『休めを意味』していた。
「後、これが。」
銀楊は、側近から差し出された紙を受け取り、簡単に覚える。
「派閥の上にも、今日の件は『伝達だけ』で良い。」
すぐに了解したように皆が迅速に動く。
銀楊の側近を含め、様々に構成された『専属の組織』がある。
それはどんな血筋かも全く関係ない。
銀楊が認める『条件を合格した有能である者』だけ。
更に『銀楊への忠誠が必須』である。
それらの組織は『特務』とも呼ばれていた。
完全に銀楊から『統制』がされた組織だった。
これは銀楊が自ら選び、許可する過程でもある。
選ばれなかった者は組織内では通常と変わらないが。
この『特務組織内の仕事』は、どこの派閥よりも『統率も』されている。
誰もが恐れる現当主。
けれど銀楊は、優秀な者、有能な働きをした際には必ず。
それに『相応しい対価』も出す。
組織の中において、確かに銀楊は当主であるのは当たり前だが。
その『特務に選ばれる』のは、一族でも限られる為、『栄誉』でもあるのだ。
その組織体制は、銀楊が自ら作ったものだった。
確実に動ける手足として…
『長く座に居る事が出来る妖狐』でなければ不可能な事。
側近達も含め、誰も居なくなると、銀楊は少し息を吐いた。
これで、しばらくは『光希には』誰も近付かないだろう。
怒りもあったが…
あれは『意外と手加減の方』が、難しいものだな。
だが、充分に味わって死んだだろうから、まだ良いが…
つくづく、本当に『今の妖狐は恥』かもしれないと。
思わずにはいられなかった。
もう、光希は起きている可能性が高い。
大丈夫だとは思うが…
銀楊はそのまま。
『光希の家』にと、向かうのであった。
**************************
一方、その頃。
光希の方は何も知らず…
初めて来た時のように、屋上へ向かっていた。
確か、道順はあってる筈だけど…
銀のくれた『御守り』を。
首にある『ネックレスの水晶』を握って、ゆっくり移動していた。
誰も、本当に居ないし、広いなぁ。
あ、ここだったよね。
ドアに触れようとして、少し不安は湧く。
ギュッと、ネックレスの水晶を握りしめる。
大丈夫だもん。
銀が言ったんだから。
何も、心配ない。
そう思い、ドアへ手を出し、開けた。
太陽の光が目に入った。
あぁ、今は夕方かな。
この太陽の光は…
屋上まで、きた!!
やったぁ!!
心の中で喜ぶ。
空がまた初めて来た時と違う。
色の付いた硝子がまた変わっている。
やっぱり、綺麗だなぁと眺める。
小さな池まである。
パチャパチャと池の水に触れる。
ん?
あ、また光る石を見つけた。
それを持って、白い椅子やテーブルのところまで。
移動すると、キラキラした石を見る。
なんだろう。
1人だけど、1人じゃないような気がする。
御守りのおかげかなぁ。
また水晶を、みる。
やっぱり、何となく『銀に似てる』んだよね。
不思議だけど。
そして天井の色が変わっていくのを眺めてた。
風はないけど、不思議だなぁ。
気温も丁度良いし、何だかホッとする。
さっき見つけた光る石を眺めて、光に翳す。
また角度を変えて光った。
さっきの池かぁ。
流石に金魚なんているんだろうか?
それぐらいなら入りそう。
少し考える。
池をまた見に行き、調べる。
小池サイズだけど、深さは浅い。
うん、駄目かな。
だって…
可哀想だもん。
こんなとこに閉じ込めたら、『可哀想』だ。
やっぱり、普通にいる子達は…
そこが『好きだから居る』のだろうし…
好きなところに居られるなら。
きっと皆、幸せだよね。
そう思いながら、池をずっと眺めてた。
そんな事に考えていた時だった。
「池をずっと眺めて、どうしたんだ?」
声が聞こえて、振り向いた。
銀は帰ってきたみたいだった。
「あ、おかえりなさい。銀!!」
笑いながら、普通に言った。
そして自然な足取りで、私は銀の側へと普通に向かった。
**************************
若干、遡る。
家の中に転移術で戻った銀楊。
メインの部屋に、光希が居ないのを簡単に確認する。
やはり、起きている。
そして光希自身で動いたか。
前とは『明らかに』違うな。
さて、光希がもし。
『初めて1人』なら、どこに行くか。
だが、これは思考したり、水晶を使う必要もないか。
すぐに『屋上』だと判断し、側へと転移した。
案の定だった。
銀楊は姿を『確認』した。
光希は、今度は自分からだ。
『問題なく動けたな』と。
しばらく壁に凭れるようにして、声はかけなかった。
御守りを眺めて、笑う。
空を眺めて、笑う。
どこかから持ってきた石を翳して、笑う。
無事にあの時の『効果』はあったな。
銀楊はそんな事を考えるも、ただ眺めてた。
光希が自然に笑えている事に安堵する。
見ているだけで、気分が良いものだ。
そして池を気にして、探ってるが、思案中か…
魚でも飼う気かと思い、そこでようやく声をかけた。
「池をずっと眺めて、どうしたんだ?」
そこで特に怯える仕草もなく、振り向き。
自然に笑って、光希が言った。
「あ、おかえりなさい。銀!!」
そして『何の不安もなく笑顔』で、近付いてくる。
銀楊は、少し『不思議な感覚』を湧くが…
不快感でもない。
どちらかと言うと『疑問』に近い。
おかえりなさい?
何の違和感もなく、光希は自然に言うが…
それは自分の家族などの身内に対してか、親しい仲での言葉だが…
つまり、ここを『自分の居場所』として?
そして、私を『身内』のように『認識した』と事か?
「銀?」
「光希?
なぜ、『おかえり』と言うんだ?」
光希の方も不思議な顔をする。
「うん?
だって、お仕事で出かけてたんでしょう?
それから帰ってきたのでしょう?」
「まぁ、そうだが。」
この顔は…
全て『無自覚』か?
確かに私が『ここを造った』が…
本来の光希の家は、違うだろう?
元の世界の家があるし、身内はその筈だが…
「銀?
どうしたの?
何か変なことだったの?」
銀楊は少し、迷いながら。
言葉を探し、選びながら言う。
「いや、間違いではないが…
光希から、『おかえり』と言われたのが。
『初めて』だと、思っただけだが…」
「そうだったっけ?
でも、大抵、いつも起きた時に居たし。」
「…光希にとって。
私は『家族』なのか?」
そこで光希は考え出すが、上手くいかない様子に見える。
「うーん。
家族とは違う気もするけど…
でも、私が今、ここに居るのは、『銀のおかげ』でしょう?
私は家に銀が居る時は嬉しいし。
居ない時は『銀の帰りを待ってるだけ』だし?
だから、普通に『帰ってきてくれるのは嬉しい』よ?
お仕事なんだろうなって思うし。
銀に『心配はかけたくない』から。
私はただ、銀が帰ってきてくれるのは『嬉しく思う』よ?
だから、おかえりって言っただけだよ!」
そう言って、光希は普通に笑いながら。
私の腕の中に飛び込んでくる。
銀楊の方が言葉が浮かばない。
「お仕事とか、判らないから、何も手伝えないけど…
私はここに居れて、銀が居なくても心配ないように。
ただ、銀を待ってるだけだよ!」
「そうか…
私が帰ってくると…
光希には、『嬉しい存在』には、なれたんだな?」
光希は少し驚くような顔をして、すぐに言った。
「何度も言ったよ!?
『銀が好き』だって!
『銀だけが良い』って!
『銀以外は嫌だ』って、言ったよ?
好きな人が側にいるのは、普通に嬉しいでしょう?」
銀楊は思わず破顔した。
「そうか。
なるほど。
はは、光希は本当に。
凄いなぁ。」
それは銀楊には『ないものだから』こそ。
正直に出た言葉でもあった。
銀楊は、また思うのだ。
『無自覚』にも程がある。
『純粋過ぎて』…
本当に私は、光希の凄さを感じてしまうな。
私が裏で何をしてるかも、『全く疑わない』。
私が何をしてきたのかも、『全く疑わない』。
私が仕事の事すら、詳しく言わずにいるのに…
それでも『全部』だ。
私の言葉を信じ、そして『好意のみ』を与えてくる。
そんな風に、誰かを『好きだ』と。
誰もが普通ならば、言わないだろう?
**************************
私は驚いた。
銀が…
いつもとは違う、本当に笑ってる。
寧ろ笑うしかないぐらいに?
私、何かしたのかな?
銀楊は、光希を見れば…
すぐに『何を考えてるか』も判る。
私が笑っているのに驚き、普通に疑問はあれど…
私への『疑う事』の一切ない目。
「いや、凄いんだよ。
光希。
本当に、私は光希が可愛くてならない。」
こんな『危ない場所に連れてきた』のは、私なのに。
そこから確かに『守って』はいたが…
この『妖狐の世界にいきなり連れてきた』のは、私なのに。
それすらも『全部を許してしまう』のか?
初めて本当の恐怖を知り、怯え恐かった事も。
『全部が自分の為』だったのだと。
私を信じ、それでも『私だけが好き』だと。
そこには『悪意』もなければ、『裏を読む必要すら』なく…
ただ『私だけが良い』と、そのままの『好意だけ』を。
素直に『断言する』かのように言い切るのか?
そんな『好意だけ』しかない気持ちを受けたのは…
今まで何百年も生きてきたが、私は『光希以外』に知らない。
銀楊は光希を抱き上げる。
「うわっ。
どうしたの?」
「いや、光希は、それで良い。
私も『光希を愛している』よ。
『誰よりも』な。」
あぁ、だからこそ、眩しいんだろう。
けれど、透明な水のように綺麗で…
そこから受ける『愛情』は…
そんなにも純粋すぎる程の『好意を』向けられた事がだ。
私は本当に『初めて』だ。
「さて、光希?」
「うん?」
「今日はたっぷりと、愛してあげようか?」
そのまま軽くキスをする。
「えっ?
えっ?」
「光希?
私を愛してくれるなら、その可愛い『身体も』頂こうか。
今夜は少し。
激しくなるかもしれないな。」
光希は、顔が赤くなる。
「好きだからこそ、愛したくなるんだ。
知ってるだろう?」
「う、うん。
でも、あの。」
「どうした、光希?」
真っ赤になり光希が言う。
「その、えっと。
お手柔らかに…」
銀楊は、また笑いを抑える。
「それは…
無理かもな。
でも、光希のせいだろう。」
「えっ?」
こんなに『心から笑った』のが、もう思い出せないな。
嬉しくて、そして本当に…
私は光希を愛してる。
既に、もう溺れてしまったのだと。
実感する銀楊だった。
私は『初めて』、起きた時に1人だった。
あっ、銀が居ない。
それに気付き、少し不安にもなった時。
無意識にも『銀の御守り』のネックレスに触れた。
その御守りを握って…
そして目を閉じて、『銀を』思い出す。
あの、銀が、『断言』してた。
そして、『御守りを持つ事』も、言っていた。
それらの全ての行動を思い出すようにしてから、私は目を開ける。
銀が居ない…
お仕事かな?
でも…
私が出来る事はないし、忙しいかもしれない。
銀のくれた御守り、ネックレスの『銀色の不思議な水晶』を見る。
それを眺めてから、私は思う。
うん。
私は銀に、『大丈夫』って言ったもん。
銀の事は『信じてる』し、それにあの銀が、『断言した』んだもん。
『絶対に大丈夫だ』と、あの銀が言った。
なら、信じるのが、今の私に『出来る事』だもん。
そう自分自身に、思い出しながら、言い聞かす。
そして私は簡単な部屋着に着替えた。
でも、どうしようかな…
好きに散策をしても良いと言ってたけれど…
でも、今は『不安』よりも、少し『寂しい』気分にもなる。
屋上に、行こう。
私が最初の1人の時に選んだのは…
散策ではなく、『屋上』だった。
**************************
若干、時は遡り。
一方、銀楊。
銀楊の周りも含め、側近は当たり前だが。
他の様々な運営関係者も多い中で、ただ時間を待ってた。
そこは妖狐最大の街。
銀楊の家からは、離れた場所に居た。
だが、銀楊にとって。
その程度の距離などは、さほど気にしていなかった。
それに気持ちも今も顔には出さないが。
『整理している』ぐらいでもある。
銀楊は思考する。
光希を既に『あの家へと移動』も済ませている。
この距離でも、『異変』には気付ける。
また、そんな兆候もない。
銀楊は、既に側近に『指令済み』でもあった。
『予定計画5』と伝達を。
けれど、これからしようとする事に関して。
極一部の側近しか、具体的な事は知らせてはいない。
ゆえに判ってもいない場である。
先に指令にていた通り。
銀楊も、この場所に来ていた事でもある。
『予定計画5』の内容は下記になる。
【予定計画・5】
1.捕縛した者を、この街の中にある最大の広場にて、生きたまま拘束し続ける事。
2.指定日時に関係各部署の議員関係者、全員の召集。
3.他の民衆の方へ、指定日時までに、この街に約1日以内で到着可能な者を全て召集。
それらが側近により実行されており、関係各部署全て。
そして更に、また凄い数の民衆も集まっていた。
側近達は迅速に『それを行動していた』が…
他の関係部署の者も、民衆も。
単純に、当主からの『珍しい伝令』なだけで集まっただけだった。
ただ、当主の指示通りにと、それでも来ただけ。
そこには凄い民衆も集まり、数えられない。
何万単位がおり、議員関係者も含めて集まっていたが。
これから『何がある』のか判らなかった。
それでも皆が思うのもある。
『あの現当主が今まで無意味な事』は、した事がない。
また、こんな『指令の伝達は』された事もなかった。
不思議に感じながら、どうしても騒めきにはなる。
現当主の指示ならば、動かねばならないからこそ。
来ただけでもあるが…
その『内容を聞かされていない』のだ。
だからこそ、指示通りには来ているが…
皆には、『疑問だけ』で、判らないのもある。
そして、予定時刻になった。
銀楊は、それを確認し、動き出す。
側近に軽く合図をする。
銀楊は思う。
さて、時間だ。
これで更に手も出せなくなるだろう。
だが、それよりも…
銀楊は『感情を抑えながらも』立った。
そのまま高い舞台のようになっている場所へ向かう。
それと『同時に』側近達も動く。
拘束されたままになっている2人を。
銀楊の前にと連れて行き…
そして、素速く離れた。
そう、それは…
あの部屋の『結界破壊』をした者達だった。
両手両足に拘束された2人。
銀楊は抑えながら、ただ見るだけでもある。
わざわざ2人で分担作業までして、あの程度の小細工をか。
つくづく思うだけだな、こんな『愚か者達』が…
そんな異質の場に居合わせている皆が。
何事だと思い、騒めきも大きくなっていた。
そして銀楊は、妖気を溢れ出した。
その『妖気』は、どんどん強くなっていく。
誰もが判らない中で、それでも声は届いた。
それは当主の凄まじい妖気の為に、騒めきが止まり。
鎮まった中だからこそだった。
「貴様らのした事に、『自覚はある』だろう。」
「…」
答えないのか、答えられないのか、判らないが…
まぁ、良いだろう。
『する事』は、変わらない。
そんな2人に淡々と言う。
一気に『怒りの妖気』を更にと溢れ出した。
その『妖気の強さ』で、周囲は騒げるだけでなく、動けなくもなる。
そして皆にも聞こえた。
さっきのよりも、声が大きかったのもあるだろうが、ハッキリと。
「私は言った筈だ。
『姫』に手を出すなと!!」
その声が大きく響くと同時。
更に『妖気が大きく』溢れ出した。
周囲の皆も、当主の…
今までとは明らかに違う『怒りの妖気』に気付く。
そう、当主は確かに怒るよりもだ。
どちらかと言えば、端的に、言葉も少ないが。
『行動で示す傾向』がある。
例え、今までも厳しい部分があってもだ。
失敗した者を単純に『処分する』だけ。
にも関わらず、その当主が明らかに…
普段よりも『完全に怒り』を示していた。
そして、その怒りの含まれる妖気に、誰もが声も出ず。
更に『直接』向けられた。
拘束された2人は、既に『威圧まで』受けてた。
息すら出来なくなっている状況だ。
それでも、淡々とした言葉でだった。
皆には『全て』聞こえている状態になってしまう。
銀楊は、周りなど見ていない。
ただ『2人を』見て、言う。
「貴様らは『私の忠告を』破り。
更には私の結界を、『僅かに壊した』だけ。
そして、更に『逃げた』な?」
向けられている2人は、息は出来ず。
既に苦しく、俯く程度しか出来ない状態でしかない。
そんな中でも更に妖気を出して銀楊は続けた。
「私が出した『警告を破り』ながらもだ。
『姫』に対して、手を出そうとした。
結局それすらも、私の『結界の僅か』にしかだが…
その僅かにしか破壊出来ぬ程度の、『小賢しい手を使って』までだ。
そこまでして、更に『姫』を誘導し、『狙った』な?」
拘束されていた2人が、そのまま『窒息死』するかと思う瞬間。
銀楊は、『意図』して、妖気を下げた。
その為、既に2人は呼吸が荒く、まだ『生きている状態』だった。
周囲も、それは気付いた。
当主の怒りが、拘束された2人に向けられている『理由は完全に』判った。
でも、なぜ、妖気を下げたのには判らない。
既に見てる以外、動ける者も、その場に居なかった。
「貴様らは今、私がしている『意味』が判らないだろうな。
私は貴様らを『許す気はない』からだ。
だから敢えて、『生かした』のもある。
この後、どうなるか、貴様らには想像出来るか?」
2人は荒く呼吸をしながらも、声も出せず、『恐怖に顔を』歪めた。
銀楊は口元だけが笑う。
心の中で、『あの時の光希』を思い出す。
力もなく、ただ無垢な程に綺麗な心へ、『一方的に』傷を付けた。
その結果、常に来るかもしれない『恐怖を』知り。
対処する術すら知らず、更に光希は恐れた。
その『恐怖に耐え』ながら、『息も出せなくなる』程に…
あんなにも震え、気を失った『光希の姿』を。
全て、一方的に『貴様らが勝手にした』だけの事。
光希は『何もしていない』、そしてするつもりさえない。
光希は『何も悪くもない』にも関わらず、あれだけ苦しめた。
それなのに『一方的に恐怖を与えて』おきながら…
どうなったかも知らずに、そんな中で『更に逃げた』だと!?
銀楊は思い出す事と同時に完全に怒りが湧く。
それは妖気を抑えていてもだった。
「そんな事を許せるものかっ!!」
誰もが聞いた事がない。
当主の『完全な怒り』と、その怒鳴るような大きな声に…
周囲まで巻き込んだ。
凄まじい『怒りの妖気』が、抑えていても溢れ出ていた。
既に2人は、恐怖を通り超えて、失心しそうである。
銀楊は、『それに』、すぐ気付いた。
『気絶』など、させるものか。
銀楊は術式で空気を圧縮し。
2人の男を下から攻撃して、一気に上空へと飛ばした。
その『攻撃』によって、身体を強烈な打撃を受ける。
2人は軽々と、上に飛ばされただけだった。
その『痛み』と、そのまま『落下した衝撃の痛み』を受ける。
意識だけある為に、2人はその痛みだけでも呻いた。
そんな2人を、冷たい目で見下しながらも…
銀楊は、ただ言うだけでもあった。
「あぁ、私は『貴様ら』を許せない。
私の中に『3度目』など、存在しない。
だが、貴様らは『初めて』だな?
私の3度目は…
『だからこそ、生かして』捕らえた。
私から逃げられるとでも、思ったか?」
銀楊は風の術式を使い、2人の『両腕』を簡単に切り落とした。
一気に血が吹き出す。
悲鳴よりも暴れるが…
どんなに悶えるも、既に足は拘束されてあるまま。
逃げられる訳でもない。
そんな2人は、暴れながらも血だけが吹き出し、周り一帯が血で染まる。
けれど銀楊はまた淡々と言った。
「邪魔な血だな?
消してやろう。」
水の術式を応用し、『血の部分だけ』を一瞬で消滅させた。
既に見ている者は震え出していた。
これは『拷問』と同じで…
もう恐怖だけである。
だが、誰も『動く事も』出来ない…
『銀楊の妖気の強さ』で、完全に動けないのだ。
「貴様らの前に、『2度目の愚か者』ならば…
瞬時に『痛みもなく』だ、塵になったな。
だが、貴様らは『3度目』だ。
塵になった方が、楽だったかもしれないぞ?
『ここまで』しなければ、『私が自らする』つもりもなかった…
黙っていれば、それで良いだけだ。
そんな事も判らない『愚か者』は塵になったが。
貴様らは、どうだ?」
銀楊は、言い終わると同時にだった。
火炎の術式応用で、『2人の足だけ』を燃やす。
2人がどんなに暴れても、足だけが燃え続ける。
「暴れる姿は、余計に苛立つな。
止まれ。」
水の術式応用をまた使い、上から水をぶつけた。
既に瀕死だが、まだ2人は生きていた。
「あぁ、『今ので死ねていれば』良かったな?
だが、貴様らはまだ、生きている。
何か話せるなら『最後の言葉』として、聞いてやろうか?」
1人だけが呻きながら、言う。
「ど、ぁ、ゆる…」
銀楊はすぐに察して怒りがまた湧く。
その瞬間にすぐに風の応用術式を使った。
言ってきた『1人』の空気をまた圧縮した。
息も出来なくした。
「おい、貴様。
私は言った筈だ。
貴様らは『許せない』と。
また…
『2度目』だな?
次の言葉など、貴様にはない。」
そのまま死ぬギリギリ、その前にと。
更に一気に空気を圧縮し、頭だけを潰した。
そして身体に関しては一瞬で火炎術式を使って灰にする。
風に乗って、消えた…
また銀楊は冷たい目で見る。
後、1人。
何も言わないな。
だが、まだ『生きて』はいる…
「最後にもう1度、言うぞ?
私に『3度目』はない。
貴様らのした事は、そういう事だ。
下らない事を『3度』もだ。
愚かよりも、もう哀れだな?
そこまで弱く、頭も悪い。
そんな『妖狐は恥』にしかならん。」
残りの1人を、また空気を圧縮しながら…
それから『下から強烈な攻撃』を出し、一気に高く空へと飛ばした。
「そんな恥になるならば、私はそれを『消すだけ』だ。
『最後』はそのまま、散れ!!」
複数の高位術式応用を『同時』に使って、一気に『電撃』を生み出す。
残りの1人はそれを浴び、また灰になった。
そして同じ、風に乗って、2人目も消えた…
そこまでの間、『全てを見ていた者』は…
完全に恐怖で、声も出せずに震え、動けなかった。
ただ、その『圧倒的なまでの力』を、見せられただけだった。
あんなにも『高位術すら簡単に多様する事』の出来る者など、居ない。
その上でも、当主は『本気』でもないのだ。
ただ苦痛を与え、殺しただけの事だったからだ。
銀楊は、まだ怒りも残るが…
出している妖気を抑えていく。
そして、ただ見ているしか出来ない者達が。
皆が『動けないだけ』で、何も言わない。
その為に、騒めきもない。
銀楊は、それも判っていた。
それを見ていた『全ての民衆』にも淡々と言った。
「今後、『妖狐の恥になる者』は、出てくるな。
私が『面倒になるだけ』だ。
この場でした『意味すら』理解出来ずに…
また『姫』に近付けば、『3度目』だぞ?
私は今よりも、加減が難しくもなるだろう。
もし、この場に居ない者と会うならば。
今から言う『私の言葉を』伝えろ。
『私に3度目はさせるな』と。
愚かな者は、一族の恥でしかない。」
そこで一旦止めてから、動けない者達の方へ向けて…
銀楊は、付け足した。
「私が『消す』のは今後、ないように願いたい。」
言い終えた銀楊は、そのまま、側近に合図した。
側近達と一緒に転移装置に入り、屋敷にと戻る。
残された者達は、そこでようやく動けるようになるのだが。
あまりの事に、まだ皆が何も言えず。
だが思わずにいられないのだった。
現当主の強さ…
これが『歴代でも最強の妖狐』と言われる所以。
そして、あれは『完全な怒り』に等しく…
『姫』に手を出せば、あれと同じか。
それ以上だと…
銀楊が屋敷の中に入ると、また側近が近付き言う。
「何事もなく。」
その短い言葉で『理解』する。
「判った。
後始末だけ、『確認』しておけ。」
一緒に転移し、戻った側近へと言った。
他の屋敷で待機していた側近には『違う指示』を。
「後は連絡しろ。
こちらは戻る。
しばらく、『待機』だ。」
銀楊の言う『待機』だが。
これは継続の『交代制』になっており、『休めを意味』していた。
「後、これが。」
銀楊は、側近から差し出された紙を受け取り、簡単に覚える。
「派閥の上にも、今日の件は『伝達だけ』で良い。」
すぐに了解したように皆が迅速に動く。
銀楊の側近を含め、様々に構成された『専属の組織』がある。
それはどんな血筋かも全く関係ない。
銀楊が認める『条件を合格した有能である者』だけ。
更に『銀楊への忠誠が必須』である。
それらの組織は『特務』とも呼ばれていた。
完全に銀楊から『統制』がされた組織だった。
これは銀楊が自ら選び、許可する過程でもある。
選ばれなかった者は組織内では通常と変わらないが。
この『特務組織内の仕事』は、どこの派閥よりも『統率も』されている。
誰もが恐れる現当主。
けれど銀楊は、優秀な者、有能な働きをした際には必ず。
それに『相応しい対価』も出す。
組織の中において、確かに銀楊は当主であるのは当たり前だが。
その『特務に選ばれる』のは、一族でも限られる為、『栄誉』でもあるのだ。
その組織体制は、銀楊が自ら作ったものだった。
確実に動ける手足として…
『長く座に居る事が出来る妖狐』でなければ不可能な事。
側近達も含め、誰も居なくなると、銀楊は少し息を吐いた。
これで、しばらくは『光希には』誰も近付かないだろう。
怒りもあったが…
あれは『意外と手加減の方』が、難しいものだな。
だが、充分に味わって死んだだろうから、まだ良いが…
つくづく、本当に『今の妖狐は恥』かもしれないと。
思わずにはいられなかった。
もう、光希は起きている可能性が高い。
大丈夫だとは思うが…
銀楊はそのまま。
『光希の家』にと、向かうのであった。
**************************
一方、その頃。
光希の方は何も知らず…
初めて来た時のように、屋上へ向かっていた。
確か、道順はあってる筈だけど…
銀のくれた『御守り』を。
首にある『ネックレスの水晶』を握って、ゆっくり移動していた。
誰も、本当に居ないし、広いなぁ。
あ、ここだったよね。
ドアに触れようとして、少し不安は湧く。
ギュッと、ネックレスの水晶を握りしめる。
大丈夫だもん。
銀が言ったんだから。
何も、心配ない。
そう思い、ドアへ手を出し、開けた。
太陽の光が目に入った。
あぁ、今は夕方かな。
この太陽の光は…
屋上まで、きた!!
やったぁ!!
心の中で喜ぶ。
空がまた初めて来た時と違う。
色の付いた硝子がまた変わっている。
やっぱり、綺麗だなぁと眺める。
小さな池まである。
パチャパチャと池の水に触れる。
ん?
あ、また光る石を見つけた。
それを持って、白い椅子やテーブルのところまで。
移動すると、キラキラした石を見る。
なんだろう。
1人だけど、1人じゃないような気がする。
御守りのおかげかなぁ。
また水晶を、みる。
やっぱり、何となく『銀に似てる』んだよね。
不思議だけど。
そして天井の色が変わっていくのを眺めてた。
風はないけど、不思議だなぁ。
気温も丁度良いし、何だかホッとする。
さっき見つけた光る石を眺めて、光に翳す。
また角度を変えて光った。
さっきの池かぁ。
流石に金魚なんているんだろうか?
それぐらいなら入りそう。
少し考える。
池をまた見に行き、調べる。
小池サイズだけど、深さは浅い。
うん、駄目かな。
だって…
可哀想だもん。
こんなとこに閉じ込めたら、『可哀想』だ。
やっぱり、普通にいる子達は…
そこが『好きだから居る』のだろうし…
好きなところに居られるなら。
きっと皆、幸せだよね。
そう思いながら、池をずっと眺めてた。
そんな事に考えていた時だった。
「池をずっと眺めて、どうしたんだ?」
声が聞こえて、振り向いた。
銀は帰ってきたみたいだった。
「あ、おかえりなさい。銀!!」
笑いながら、普通に言った。
そして自然な足取りで、私は銀の側へと普通に向かった。
**************************
若干、遡る。
家の中に転移術で戻った銀楊。
メインの部屋に、光希が居ないのを簡単に確認する。
やはり、起きている。
そして光希自身で動いたか。
前とは『明らかに』違うな。
さて、光希がもし。
『初めて1人』なら、どこに行くか。
だが、これは思考したり、水晶を使う必要もないか。
すぐに『屋上』だと判断し、側へと転移した。
案の定だった。
銀楊は姿を『確認』した。
光希は、今度は自分からだ。
『問題なく動けたな』と。
しばらく壁に凭れるようにして、声はかけなかった。
御守りを眺めて、笑う。
空を眺めて、笑う。
どこかから持ってきた石を翳して、笑う。
無事にあの時の『効果』はあったな。
銀楊はそんな事を考えるも、ただ眺めてた。
光希が自然に笑えている事に安堵する。
見ているだけで、気分が良いものだ。
そして池を気にして、探ってるが、思案中か…
魚でも飼う気かと思い、そこでようやく声をかけた。
「池をずっと眺めて、どうしたんだ?」
そこで特に怯える仕草もなく、振り向き。
自然に笑って、光希が言った。
「あ、おかえりなさい。銀!!」
そして『何の不安もなく笑顔』で、近付いてくる。
銀楊は、少し『不思議な感覚』を湧くが…
不快感でもない。
どちらかと言うと『疑問』に近い。
おかえりなさい?
何の違和感もなく、光希は自然に言うが…
それは自分の家族などの身内に対してか、親しい仲での言葉だが…
つまり、ここを『自分の居場所』として?
そして、私を『身内』のように『認識した』と事か?
「銀?」
「光希?
なぜ、『おかえり』と言うんだ?」
光希の方も不思議な顔をする。
「うん?
だって、お仕事で出かけてたんでしょう?
それから帰ってきたのでしょう?」
「まぁ、そうだが。」
この顔は…
全て『無自覚』か?
確かに私が『ここを造った』が…
本来の光希の家は、違うだろう?
元の世界の家があるし、身内はその筈だが…
「銀?
どうしたの?
何か変なことだったの?」
銀楊は少し、迷いながら。
言葉を探し、選びながら言う。
「いや、間違いではないが…
光希から、『おかえり』と言われたのが。
『初めて』だと、思っただけだが…」
「そうだったっけ?
でも、大抵、いつも起きた時に居たし。」
「…光希にとって。
私は『家族』なのか?」
そこで光希は考え出すが、上手くいかない様子に見える。
「うーん。
家族とは違う気もするけど…
でも、私が今、ここに居るのは、『銀のおかげ』でしょう?
私は家に銀が居る時は嬉しいし。
居ない時は『銀の帰りを待ってるだけ』だし?
だから、普通に『帰ってきてくれるのは嬉しい』よ?
お仕事なんだろうなって思うし。
銀に『心配はかけたくない』から。
私はただ、銀が帰ってきてくれるのは『嬉しく思う』よ?
だから、おかえりって言っただけだよ!」
そう言って、光希は普通に笑いながら。
私の腕の中に飛び込んでくる。
銀楊の方が言葉が浮かばない。
「お仕事とか、判らないから、何も手伝えないけど…
私はここに居れて、銀が居なくても心配ないように。
ただ、銀を待ってるだけだよ!」
「そうか…
私が帰ってくると…
光希には、『嬉しい存在』には、なれたんだな?」
光希は少し驚くような顔をして、すぐに言った。
「何度も言ったよ!?
『銀が好き』だって!
『銀だけが良い』って!
『銀以外は嫌だ』って、言ったよ?
好きな人が側にいるのは、普通に嬉しいでしょう?」
銀楊は思わず破顔した。
「そうか。
なるほど。
はは、光希は本当に。
凄いなぁ。」
それは銀楊には『ないものだから』こそ。
正直に出た言葉でもあった。
銀楊は、また思うのだ。
『無自覚』にも程がある。
『純粋過ぎて』…
本当に私は、光希の凄さを感じてしまうな。
私が裏で何をしてるかも、『全く疑わない』。
私が何をしてきたのかも、『全く疑わない』。
私が仕事の事すら、詳しく言わずにいるのに…
それでも『全部』だ。
私の言葉を信じ、そして『好意のみ』を与えてくる。
そんな風に、誰かを『好きだ』と。
誰もが普通ならば、言わないだろう?
**************************
私は驚いた。
銀が…
いつもとは違う、本当に笑ってる。
寧ろ笑うしかないぐらいに?
私、何かしたのかな?
銀楊は、光希を見れば…
すぐに『何を考えてるか』も判る。
私が笑っているのに驚き、普通に疑問はあれど…
私への『疑う事』の一切ない目。
「いや、凄いんだよ。
光希。
本当に、私は光希が可愛くてならない。」
こんな『危ない場所に連れてきた』のは、私なのに。
そこから確かに『守って』はいたが…
この『妖狐の世界にいきなり連れてきた』のは、私なのに。
それすらも『全部を許してしまう』のか?
初めて本当の恐怖を知り、怯え恐かった事も。
『全部が自分の為』だったのだと。
私を信じ、それでも『私だけが好き』だと。
そこには『悪意』もなければ、『裏を読む必要すら』なく…
ただ『私だけが良い』と、そのままの『好意だけ』を。
素直に『断言する』かのように言い切るのか?
そんな『好意だけ』しかない気持ちを受けたのは…
今まで何百年も生きてきたが、私は『光希以外』に知らない。
銀楊は光希を抱き上げる。
「うわっ。
どうしたの?」
「いや、光希は、それで良い。
私も『光希を愛している』よ。
『誰よりも』な。」
あぁ、だからこそ、眩しいんだろう。
けれど、透明な水のように綺麗で…
そこから受ける『愛情』は…
そんなにも純粋すぎる程の『好意を』向けられた事がだ。
私は本当に『初めて』だ。
「さて、光希?」
「うん?」
「今日はたっぷりと、愛してあげようか?」
そのまま軽くキスをする。
「えっ?
えっ?」
「光希?
私を愛してくれるなら、その可愛い『身体も』頂こうか。
今夜は少し。
激しくなるかもしれないな。」
光希は、顔が赤くなる。
「好きだからこそ、愛したくなるんだ。
知ってるだろう?」
「う、うん。
でも、あの。」
「どうした、光希?」
真っ赤になり光希が言う。
「その、えっと。
お手柔らかに…」
銀楊は、また笑いを抑える。
「それは…
無理かもな。
でも、光希のせいだろう。」
「えっ?」
こんなに『心から笑った』のが、もう思い出せないな。
嬉しくて、そして本当に…
私は光希を愛してる。
既に、もう溺れてしまったのだと。
実感する銀楊だった。
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