攫われた先は妖狐の世界、そして私は『姫』らしい。

蒼真 空澄(ソウマ アスミ)

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第三章:本当に願う事は一つだけを。

それは覚悟。

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『長の座』を降りてから、更に約8年が経った…

私は『光希みつきだけを一緒』に連れて行動した。

もう数年前から、既に子供達からも離した。

移動を済ませた後、『厳重な結界』を。
私の思考も、術も『全て』使って構築した。

これならば、一族からも、外部からも、『全て』から…
光希みつきには』触れる事すら出来ん。

そして、私が絶対に叶えてよう。
あの『願い』も…

銀楊ぎんようは様々にある『全ての高位術』を複雑に応用した。
更にと思考もしながらだった。
そうして構築したからこそ、誰にも場所すら判らない。

全てから『隠し続ける』中でもだった。
銀楊ぎんようは、『光希みつきの側』にと居た…

**************************

銀楊ぎんようは『後見』としてだった。

今は『新たな最高議会』の場に居るが…
その『内容のみ』だけを聞き、目を閉じ、思考だけをする。

今はまだ『私から』は何も言ってはいけないだろう…

新たな議会の半数以上…
既に『選抜』で、光希みつきの子ばかりだ。

女児も問題すらない。

最初から…
『後見』としてだが。

私から、青嵐せいらんにと『指摘』もしている。
更に青嵐せいらんが気付けない部分も教えている。

その上で、青嵐せいらんも、皆もだが。
精進すらも忘れずに…
青嵐せいらんが、業務も含め『新世代を』纏め上げてる。

既に充分でもあるのにも関わらず…

銀楊ぎんようは、そう。
かなりの苛立ちを圧し殺していた。

それは未だに、まだ…
ずっと『内乱の傾向』も出続けて、更になのだ。

銀楊ぎんようは、すぐに気付き。
青嵐せいらんにと『指摘』もしている。

そんな中でも、愚かな妖狐も出るばかりの状態にだった。

常に銀楊ぎんようは、気付き『指摘』もする。
そして規模が大きい時には、銀楊ぎんようも動いていた。

それでも尚、変わらない『妖狐族』に。

既にもう…
銀楊ぎんようは苛立ちを隠すのも『限界』にもなっていた。

どうにか、それを顔には出さず。
『今の議会中』でも、また気付いて苛立ちが湧く。

銀楊ぎんようは内容も聞くが、すぐに『判断』もした。

勿論、青嵐せいらん達も常に思考し、動いていた。
必死にと行動すらしてる様子も銀楊ぎんようは判る。

それが『判る』からこそ、もう…
銀楊ぎんようは『怒り』を隠しながらだった。

青嵐せいらんにと。
『長の青嵐せいらん』に言う。

『鎮圧』する為にと、『常に銀楊ぎんよう』が動いた。

銀楊ぎんようは思う。

こんなにも『愚かな恥』など、私が消してやる!!

そして、この議会の際でもだった。
すぐに銀楊ぎんようが気付き『指摘』した。

その『指摘』で青嵐せいらんも気付く。
そして皆が、動き、議題として纏めていたが…

それは、また『内乱の動き』でもあった。
銀楊ぎんようは『怒り』をどうにか圧し殺す。

皆が、必死にと動く姿を、銀楊ぎんようも見た。
更に今回の内容を聞き、既に『内乱の規模も』判った…

銀楊ぎんようは、そこで『我慢すら限界』もなった。
その場で、すぐに動いた。

私は端的に言った。

青嵐せいらん
私が行こう。」

青嵐せいらんは、また思う。
それは『1つだけ』でもある。

また父上が!?

すぐに察して言った。

「っ!?
ですが、父上!!
また『1人で行く』と!?
今回も、かなり数が…」

顔には一切、出さずに、銀楊ぎんようも淡々と言う。

「判っている。
…すまないが。
行く事を『許可』してくれないか?」

青嵐せいらんは、すぐにまた察する。

「…父上?」

それにも判る銀楊ぎんようだったが。
どうにか顔にも出さず、変わらず、また淡々と言うのみ。

「今の『長』は、青嵐せいらんだ。
私はあくまで、『後見』。
…だが、『指示を出して』欲しい。」

銀楊ぎんようは思うだけでもある。

隠して居ても、もうどうにも出来ん!!

既に青嵐せいらんも私には不審に思ってるだろうが。
それでも私が…

銀楊ぎんようは、また、どうにか『怒り』も隠す。
そして『返答のみ』を待った。

青嵐せいらんも父上の様子には気付いて居るのだ。

でも、判らない!!
なぜ、『全てを隠す』ような…
けれど、父上の言動には『違和感』もだが…

「なぜ…
最近は、少し。」

銀楊ぎんようは、すぐに言った。

「判っている。
だかな。
私が『我慢している』のを、ぶつけたいだけだ。
…指示を。」

青嵐せいらんも、すぐに思考もする。

最善策も、そう…
確かに、父上が鎮圧をするのが早い…
その事実にと、青嵐せいらんも判る。

でも…

目を閉じて、青嵐せいらんは言った。

「…判りました。
鎮圧を。」

そんな様子を見て…
銀楊ぎんようも『判る』からこそだった。

「あぁ、いつも、すまないな。
青嵐せいらん。」

「…いえ。」

そのまま、私はすぐに転移をした。

**************************

転移した先に着いた銀楊ぎんようは簡単に見渡す。

やはり、ここから来たか…
つくづく思うが、『愚か』過ぎる。

銀楊ぎんようは、『それ』を見てだった。
尚更、もう『怒り』が抑えられない。

簡単に、相手の場所や数を『確認』する。

数は約450~500か。

『私から』したら、大した事もないか。
すぐに『判断』も、思考する。

私は、そのまま『敵陣の真ん中』にと転移した。

相手も気付いた様子だが…

もう遅い!!

私は一気に風の高位応用術を、複雑に解き放った。
竜巻のように『全員』を巻き込む。
そして残った者すら容赦なく消す。

銀楊ぎんようは、そんな高位応用術を使いながらもだった。
怒りが湧き上がりながらも思う。

こんなにも弱く、愚かな妖狐など。
この先になど…

光希みつきの子供達が、先へと。
『正しい道』へと必死に進もうとしてるのに…

それすらも邪魔するのであれば、私は許せない!!

ただ、怒りをぶつけるように…
一気に複数の高位術を使う。

そして『全員を消滅』させた。

銀楊ぎんようは大きな溜め息しか出なかった。

その時間は、たったの約10分程度。
敵を『全て』消して、また思う。

こんなにも弱いだけの、愚か者が…
絶対に、許せる筈もない!!

あの『光希みつきが命を』削り…

やっと、新しい世代が落ち着き、その皆すらも。
更に精進しながらも先へと。
進もうとしているにも関わらず…

それを邪魔するならば…

許せる筈などない!!

銀楊ぎんようは、1度、また。
どうにか『怒り』を、圧し殺した。

敵は全て消滅させた。
だが、怒りを抑えても、苛立ちは残る。

銀楊ぎんようは首を振った。

それでも今は、まだ…

鎮圧を終え、再び転移して戻った。

それは僅かであり、1時間も経たずに全てが終わる。
転移し戻った時に、青嵐せいらんにと言った。

青嵐せいらん、終わった。」

「!?」

青嵐せいらんは驚くのもあるが、すぐに判った。

な、もう!?
それは高位術で、更に威力までも…
どれだけの力を…

銀楊ぎんようは、すぐに目を閉じて思考した。
そしてそのまま、端的に言った。

「私は1度。
戻るが、構わないな?」

そう、青嵐せいらんは知らないのだ。

今の光希を。
今の場所を。

**************************

銀楊ぎんようは、早くと思いながらも。
すぐに議会をしてた部屋から出た。

いつもと同じようにと動く中でだった。

「父上!!」

青嵐せいらんは、ずっと気になってる事でもある。

それは父上の様子もだが。
どう考えても、理由も判らない事も。
それに父上が普段居る場所すらもだ。

『全て』が詳しく判らない事に。

あれだけの父上の様子。
可能性があるならば『母上』だが…

銀楊ぎんようは端的に言う。

「どうした?
また、問題か?」

青嵐せいらんは、すぐに思考する。

この場では父上は端的にしか言わない。
仕事や、立場もある。
だからこそだが…

どうにか青嵐せいらんも言葉を濁して言う。

「いえ、今のところは、計画通りです。
ただ…
『母上』に。
何か、あったのではないですか?
最近の父上は…
どこか…」

光希みつきは、私が居るから…
問題はない。」

青嵐せいらんは明らかに父上がだ。
そして言動にも気付いてた。

父上がどう考えても変だ。
何をしてもだ。
様子が、おかしい!!
苛立ちがあるのも明らかだ。

それに母上に関しても…
これは『結界』も含めてしてる行動だ!!

居場所すら判らない。
更に父上の、この動き…
『判らせない』ようにしてるのもだ!!

これでは…
『わざと』会わせないようにしてる!!

その様子を見て、銀楊ぎんようは察する。
少し思考し、簡単に言った。

「…青嵐せいらん
ならば、落ち着いた頃に、呼ぶ。」

「!?」

「その際は、連絡をする。」

「はい。」

**************************

私は、すぐに『光希みつきの側』と戻った。

そして優しく触れる。
光希みつきの頬を…

そして確認もする中で…
思う事も『光希みつきだけ』だった。

呼吸はしているな…
最近は、もう…
数ヶ月に『1度』程度しか起きないが。

でも、これは…
光希みつきの『最後の願い』でもある。

ならば、私は叶えよう。

けれど私は、それでも…

僅かに起きた時でも良い。
光希みつきの側に居たいんだ…

きっと『感』だろうが…
光希みつきが、こうなる前に言った事を思い出す。

『子供達には、心配させたくないから…
私と銀だけの、2人だけの場所に行こう?』

私は、また光希みつきにと。
触れながら言った。

「私がきっと、あの時に、気付かせたのだろう?
光希みつき
私は…」

続きを言えず、私はそれでも『光希みつき』にと触れる。

今更だが、あの後から…
光希みつきは少し…

そう思いながらも、光希みつきの側にと。
ずっと居た。

**************************

銀楊ぎんようは『青嵐せいらんのみ』に連絡をした。

もうすぐ、青嵐せいらんが来る頃だろう。
そう思いながらも、結界の側にと。
常に光希みつきからは離れずに待って居た。

「父上っ!?」

その急いで来た様子に気付いて言う。

「あぁ、悪いな。
忙しい中でだろう?」

青嵐せいらんは確かに業務を全て振り分け。
急いで来たのもあるが、驚愕する。

こんな場所に!?
それに、これは…
どれだけの『結界』だ!?

青嵐せいらんは息を整えながらも思考する。

そこは妖狐一族でも使われない。
『孤島』でもあった。

理由は簡単でもあるのだが…
地形も含め、小さい事もある。
更に全てが絶壁だからこそなのだ。

そんな中で『1つだけ』の家と…

この『結界』は、何だ!?
全く判らないぞ!?

どうにか、父上を見て言う。

「いえ…
父上が、そうするならば。
『母上の件』でしょう!?」

銀楊ぎんようは思う。

まだ、この若さで、あれだけを纏めている。
更に精進も、ずっと続け随分と。
青嵐せいらん自身も強くはなったが…
経験だけは仕方がないだろう。
だが、鎮圧ばかりしてる私には気付いたか。

それに…
これも『今後の為』だろうな。

銀楊ぎんようは端的に言う。

青嵐せいらん
着いて来い。」

「はい!!」

私は結界を僅かに開け、2人で家にと入る。

青嵐せいらんは久しぶりに見た。
そこには前と『全く姿すら』も変わってない。
美しい姿の母上が寝ていた。

「は、母上っ。」

「もう2か月だ。」

青嵐せいらんは、すぐに私を見た。

「なっ!?」

私はまた淡々と言う。

「今の光希みつきは数ヶ月に1度。
僅かに起きるだけだ。
身体には、問題ない。」

「っ!?
では、やはり…」

青嵐せいらんしか、まだ誰も知らぬ。
それと、これは『光希みつきから』の言葉だ。」

改めて、言葉を聞こうと青嵐せいらんは父上を見る。

私はそれすら淡々と言った。

光希みつきの言葉、そして願いだ。
『子供達には、心配かけたくない』と。
『私と2人だけの場所に』と。」

!!?

は、母上が…

そんな…
ならば、あれは、父上が嘘を言ったのか!?

青嵐せいらんは、すぐに思い出す。

そう、あの日、急に父上が言った事を。
皆が暮らしていた場所からだ。

そこから移動する際に、父上が言った事を…

光希みつきの行きたい場所があるから。
しばらく、ここから離れる事になる。
だから、この家は皆が好きに使え。
…それと、1つ。
光希みつきからの言葉だ。
『また少ししたら、一緒に。』と。
だから、呼ぶまでは誰も来るな。」

その後、確かに行き先も皆が判らなかったが…

でも皆は『父上が居る』なら大丈夫だと。
そして皆も気を使い、敢えて聞かなかったのだ。

青嵐せいらんは瞬時に思った。

話が違う!?

そんな青嵐せいらんを察して言った。

「知ってるだろう?
青嵐せいらん
光希みつきは嘘を言わん。
あれは、『私の』だ…」

青嵐せいらんは改めて、また母上を見る。

そして涙が…
涙が勝手に溢れた。

だが、青嵐せいらんは止められなかった。

銀楊ぎんようは、その青嵐せいらんにも向かず。
家の入り口の方を見ながら、感情を抑え、話し出す。

「皆は、消耗を知らない。
知っているのは、私と青嵐せいらんのみ。
ならば…
離すしか、ない。」

青嵐せいらんは、それで…

「だから…
最近、あんなにも…」

そんな青嵐せいらんを見ないでだった。
銀楊ぎんようは話を続けた。

その声は、何もないように、淡々と…

「私はな。
許せないだけだ。」

「っ!?」

「私が、ここに連れてきた事も。
青嵐せいらん達が正しい道を行く邪魔をする輩も。
光希みつきが。
命を削ってまで、産んだ子の邪魔など、させたくもない。」

青嵐せいらんは気付く。
そしてまた、父上を見た。

今っ!?
その言葉は…

銀楊ぎんようも察した。
全部をと、話すつもりでもあるからこそ、続けた。

青嵐せいらんは知らない事だろう。
私がなぜ、光希みつきを知っているか。
そして、なぜ、『連れてきた』か。
だろう?」

そう、まさに、そこだった。

けれど青嵐せいらんは何も言わなかった。
父上がまだ、何かを話そうとする事が判ったからだ。

そのままの姿勢だが、銀楊ぎんようは言った。

「私はな…
光希みつきが、『産まれた時』から…
知ってるだけだ。」

!?

青嵐せいらんは動揺する。

何だと!?

それでも銀楊ぎんよう青嵐せいらんを見なかった。

光希みつきが産まれた時。
やはり一族は、すぐに攫おうとした。
『私がそれ』を、力で、ねじ伏せただけだ。
そして18年間。
せめて、人の世に産まれたならばと。
その人の世でも、『常に私が』守って居た。
そして産まれてから、18年が経ち。
『私がここ』に、妖狐の世界に、連れてきた。」

青嵐せいらんには言葉も出ない。
それでも思考だけは止めずに聞く。

「だから、光希みつきは人を疑わない。
悪意も知らない。
危険を知らない。
それらは『私が全て』排除した結果でもあった。
だが、ここに連れてきてからだ。
光希みつきは、『初めて』狙われる恐怖を知った。
最初はそう、私が自覚もさせた。
それからも、ずっと守ってきた。
だから子供達は誰も知らない。
光希みつき』を、私が知ってるのは…
常に判るのは、当たり前なだけだ。」

青嵐せいらんは何とか理解は出来ても…
どうにか出した言葉も上手く続かなかった。

「では…
ずっと。
産まれた時から…」

銀楊ぎんようは目を閉じた。
そのまま続けた。

「あぁ…
だがな。
だからこそ、私は『後悔』もしている。」

「っ!?」

「最初、ここに連れて来たのは、『私だから』だ。
私が先に気付いていれば…
身体だけの消耗ではないと、見抜いていれば。
これだけの、負担も、させなかっただろう。
私はずっと、見てきたのに…
歴代の違いに気付いたのも、そうだ。
ここに連れてきたばかりの頃は、気付いてなかった。
ただ、『愛する事』をした。
歴代のようには、したくなかったからだ。
だからこそ、私は『光希みつきの心』を求めた。
そして受け入れて貰えた時に、歴代の違いに気付いた。
それもだ。
これは『言えない真実』だと、すぐに気付いた。
だからせめて、負担も減らそうとしたが…
光希みつきは私の子を産む為に、こんな『代償』を。
受ける事に、私は見抜けなかった…
もう『私が、私を許せない』だけだ。」

青嵐せいらんは思う。

違う!!
父上のせいではない!!

今までが逆なのだ。
気付ける筈もない!!

こんな、『真実』など…

青嵐せいらんは動けずに…
それでも父上の話を聞く。

銀楊ぎんようも動かずに続ける。

「私が判っていたら…
連れてこなければ…
そうなれば、妖狐は絶滅。
けれど産まれた『子』は皆が天才児。
ならばと、基盤をと、邪魔者すら、常に消した。
女児を産む前を…
お前も、知っているだろう?」

また青嵐せいらんは、すぐに記憶が蘇る。

母上と初めて会った、あの夜!!

だが声が、どうしても上手く出なかった。

「っ!」

銀楊ぎんようは動かなかったが察した。

「そうだ。
あの時に、私は青嵐せいらんに警告したな。
だが、あの怒りは、お前だけにではない。
あれは、私自身への、怒りだ。
あんな愚策でしか、避けられなかっただけの事。
光希みつきがなぜ、強い子を産むかを、皆が知らん。
既に身体の負担があるのに、それも私しか、知らん…
私が出した、愚か過ぎる策にも、周りは気付かん。
ずっと、守って居たにも関わらず…
たった3年だ。
それも傷を付ける結果。」

銀楊ぎんようは目を閉じたまま続けた。

「これは予測だが…
あの後、暗示に気付いたからだろう。
だから、『光希みつき』がだ。
『女児を望んで』産んだのだろう。
意図して女児を産んだ時すらも…
死ぬかもしれないにも関わらず…
それすらも、私は見抜けなかった…」

青嵐せいらんに、また衝撃が走る。
そんな事すらも構わずに銀楊ぎんようは続けた。

「そして女児を産むからと、また『光希みつき』にと群がる。
そんな愚か者すら、まだ居た。
けれど、青嵐せいらんが纏めた事で…
そんな中でどうにか、暮らせていたにも関わらず。
私がそれでも、気付けてなかった。
そして些細な事から、私は『仮説』を出した。
その事にどうにかしようとして…
青嵐せいらんに調べさせた。
だが、私は仮説が明らかになった時。
なぜ、妖狐が『長命』であるかすら判った。
それは女児への代償を。
『本来の形』ならば、成り立たせるからだ。
そして私は、光希みつきに産ませない為にも。
長を譲り、光希みつきを遠ざけた…
それすらもだ。
既に遅過ぎただけの事。
こんな結果になるならば…
私が先に気付き、見抜けていれば…
変わっていたかもしれない案は、今なら浮かぶ。」

動かないが感情的になり、銀楊ぎんようは声だけを荒げた。

「だからこそだ!!
私は、私が許せん!!
そして産まれた子の邪魔など、更に許せん!!」

銀楊ぎんようは、またどうにか圧し殺す。
感情を、けれど続けた。

「これだけは言える。
妖狐族は、滅びるのが当たり前だ。
こんな記録すらもなく、更にずっと愚かな道を続けた。
だが、少なくとも…
光希みつきが産んだ命ぐらいは、守るしかない。
犠牲になった歴代も同じだ。
正しい方へと、流すしか、私には出来ん。
今の妖狐など、『恥』ばかりでしかない!!」

銀楊ぎんようは、ようやく少し身体を動かした。
そして、光希みつきの方を見て言う。

「私は、『光希みつきの最後まで』は、ここに居る。
だが、青嵐せいらん達が正しい方へ行くならば…
手を貸している。
その後は、好きにすれば良い…」

銀楊ぎんようは下を向いた。
そしてもう、思うままを完全に言い切る。

「私はもう…
限界だっ!!」

青嵐せいらんは初めて聞く。
こんな父上の声を…

下を向き、顔すらも隠す姿を。

そして、この話を『全て』聞き…
青嵐せいらんすら、判った。

どれだけの『痛み』かを。

「ち、父上…」

そんな、ずっと…
痛みすらも、ずっと隠し続けて…

青嵐せいらんは、もう、その痛みを、苦しみを。
どうにかしたいが、判らない…

銀楊ぎんようは、そんな青嵐せいらんを見る。
そして、ふと、また光希みつきを思い出す。

「不思議な話だな。
青嵐せいらん
私はな、光希みつきには何も言わなかった。
仕事の事すら、光希みつきは聞こうともしない。
けれど、ここに来たばかりの頃だ。
光希みつきは、見抜いたんだ…
私が痛いのは嫌だと、泣いた…
あの結界をした家でも同じだった。
何も言ってないのに、光希みつきは気付く…
青嵐せいらんの暗示にも、すぐ、気付いた。
そして私にまで、光希みつきは気遣った。
私のせいではないと気付き、許して、どうにか私にと。
そんな光希みつきを、死なせたくなくて。
あの時すらも、かなりの無茶な事をしたが…
結局、全部が!!
私の子の為にと、光希みつきを削り続けてた!!」

青嵐せいらんは鮮明に思い出す。

「っ!」

あの母上の泣き顔を。
あの痛みを隠す父上を。

青嵐せいらんは震えながらも、下を向いた。
そして思わずにはいられなかった。

どれだけ、俺は!!
何も、気付けてなかったんだ!!

18年も守り、その後もずっと守り…
最初にまた…
傷付けたのは、俺じゃないかっ!!

っく。

どうにも出来ない後悔しか浮かない。

今ならば、なぜ…

あの父上が、母上だけ特別かなんて、明確だ。
産まれた時から、守り続けてたのだから。

銀楊ぎんようは、そんな様子も察した。
だから、もう『本心』を言った。

青嵐せいらん、最後に言っておくぞ?」

青嵐せいらんは、その声で僅かに顔を上げた。

銀楊ぎんようは全て言うつもりだった事もある。
だからこその『本心』をだった。

「お前が悪い訳ではない。
私が最初に、光希みつきを。
姫を望んだのは、もう『500年以上』も前だ。」

なっ!?

青嵐せいらんは更に衝撃を受ける。
そんな青嵐せいらんを見て、銀楊ぎんようは、また目を閉じて言う。

「私はな…
自分の母を、見た。
『壊れた母』をな。」

青嵐せいらんは愕然となる。

それはっ!!?
ま、さか…

銀楊ぎんようは、目を閉じて、僅かに思い出すが…
どうにか、そのまま言う。

「あぁ…
そうだ。
繁殖にと、使われた母だった。
それを見た時からだ。
私は、あの母を見てな。
許せなくもなった…
そして、その壊れた母にと誓った。
私は『こんな選択』はしないと。
それから長を目指し、更に力を高め続けた。
そんな中で、ずっと姫を待った。
そして産まれた姫が、『光希みつき』なんだ。」

っ!?
誓ったと…
それで、母上を…

銀楊ぎんようは僅かに目を開けた。
けれど、その目は余りにも…

何も見てない、そんな中でもだった。

「だからこそ、私は繁殖に使いたくないと。
光希みつきの心を、どうにかする為にと、した結果だ。
青嵐せいらんのせいでもないのだ。
私の方が、18年間。
光希みつきを知ってるのだ。
最初、私は光希みつきの心を求めたのもあるが。
どうにか思考しながら、どう動けば良いかを。
そして守る為にもだ。
その結果、光希みつきも、私へと向いてくれた。
確かに、喜びは強かった。
だが、どうだ?
結果として私は、光希みつきの命を削り続けていた…
余りにも、愚かな結果だ…
最初に気付いていれば、見抜いていれば…
いくらでも変わってた『光希みつき』を。
ここまで削り続けたのが、『私自身』だ。」

銀楊ぎんようは、また下を向いて、感情を圧し殺す。

青嵐せいらんは…
私のようには、なるな…
少なくとも、姫の同意、そして時間もある。
妖狐は長寿、ならば歴代も、光希みつきの犠牲もなく。
進める筈だ。
だから、全てを話しただけだ。」

青嵐せいらんにとって、この話は衝撃的過ぎた。

そんなっ!!
500年以上も!!
ずっと…

ずっと、痛みにすら耐えていたのか!!

そんな事を…
青嵐せいらんは父上すら見れずに目を閉じた時だった。

ふと、頭の中に母上の笑顔が浮かんだ。

それで青嵐せいらんは気付く。

これは…

違う!!

そこで青嵐せいらんは、やっと思考も巡った。

そして目を閉じたままだが、父上にと言葉だけだが言った。

「違います…
父上…」

違う、だと?

その言葉で、銀楊ぎんよう青嵐せいらんを見た。
青嵐せいらんは目を閉じたままだった。

「母上は、確かに命を削ってたかもしれません。
自覚もなく、していたかも、しれません。
でも…
それは、違う!!」

その時に青嵐せいらんが目を開けて父上を見た。

銀楊ぎんようの方がだった。
その言葉が、意味が…
判らない…!?

青嵐せいらんは思い出す事もあったからだった。
だから、判った!!

「母上は、父上を本気で愛していた。
父上だって、それは判る筈だ。
そんな母上が、今の…
今の父上を見たら!!
何て言うか、判るでしょう!!」

銀楊ぎんようの方が思考が巡らない。
けれど動揺する。

青嵐せいらんは思考を続けならが、それでも言った。

「あの母上を、俺は確かに父上より…
知らないかもしれない。
だけど、母上は、父上だからこそ!!
父上の為ならと…
父上しか、求めていなかった!!
俺じゃない。
父上にと、手を伸ばした…
忘れてなど、いない筈です!!」

銀楊ぎんようは、それであの日の夜を思い出す。
それでも…
思考が巡らない。

青嵐せいらんは思い出す。
だから、強く言った。

「あの時、俺は知った。
母上は、父上だけを愛していた。
父上だけに『心を』許した。
あの母上が、父上がどんな策をしようと…
父上よりも…
母上が、父上を愛した結果だっ!!
そんな母上が、今の父上の姿や、言葉を聞いたら…
どうなるか、判らないのですか!?」

「っ!?」

青嵐せいらんは、父上の目を見た。

「絶対に、あの母上なら…
今の父上を見たら泣く。
今の父上の言葉を聞いたら…
その方が、あの母上は傷付く!!」

銀楊ぎんようは動揺した。
ずっと自分を責めていた。
にも関わらず…

青嵐せいらんの言葉に、何も言えなかった。

「確かに、母上は身を、命を削っていた。
けれど、それは『父上を愛していた』からだ!!
父上だけを思って、父上の為にとしていたのに…
それなのに、今、そんな言葉を。
母上が起きた時に、言えるのですか!?」

「っ!?」

青嵐せいらんは涙を拭い、父上を見た。
明らかに動揺しているのが判った。

「今の言葉を、後悔を。
母上が目を覚ました時に、言えますか?
言えないでしょう!!
言ったらどうなるか、父上なら判る筈です!!」

銀楊ぎんようは驚愕する。
青嵐せいらんの言葉は、その通りなのだ。

僅かに起きた時に、あれを、言ったら?
光希みつきは…

「俺はこれからも、絶対に変えるとも。
父上の前でも『誓った』事も。
それも、忘れましたか!
母上ですら、俺を選んだ。
父上ですら、俺を選んだ。
だから俺は絶対に、正さなきゃいけないんだ!!
あの母上が愛して、更に父上が愛してなければ…
俺は産まれて居ない!!
その2人が…
まして、父上が、母上にそんな事を言える訳がない!!
そして母上すらも、そんな父上を、見たら…
絶対に泣くに決まっているっ!!」

銀楊ぎんようは何も言えなかった。
青嵐せいらんの言葉は、正しいからだ。

「っ!?」

青嵐せいらんは涙を堪えて父上を見た。

500年以上もずっと耐えて…
それでも、母上と!!

「母上だって、同じだとっ!!
『犠牲扱い』だと!!
父上が言って良い筈がない!!」

青嵐せいらんは感情が溢れ、一気に妖気も出し、威圧をした。

「っ!?」

銀楊ぎんようは僅かだが、耐えられなくないが一瞬、圧された。
それにも自分自身、驚くが…
どうしても思考の方が、巡らない。

そんな青嵐せいらんは父上を完全に睨んで大きく言った。

「例え、父上でも、『母上の侮辱』など許さない!!」

銀楊ぎんようは咄嗟に防御術を出した。

「っ!」

防御は簡単だが、内心、動揺したままだった。
青嵐せいらんの言葉に、反論できない。

けれど…
僅かに言う。

「…光希みつきが。
泣く…?
だが、…っ!!」

銀楊ぎんようは感情が抑えられなかった。
反射的に、すぐに高位術を使い、青嵐せいらんに出してから言った。

「っならば!!
光希みつきに、どう謝れば良い!!」

だが青嵐せいらんは、その高位術を弾いた。

「っ!?」

銀楊ぎんようは、やはり動揺する。

そんな青嵐せいらんは言い切った。

「謝れば良いのではない、『逆』だ!!」

青嵐せいらんも一気に、高位術を銀楊ぎんようへと出した。

動揺はしていたが、銀楊ぎんようも咄嗟に弾いた。
術は大した事もないが、動揺はしたままだった。

逆…だと?

「母上に、言う言葉は謝罪じゃない!
母上が求めているのは、父上の…
『父上の感謝』だっ!!」

青嵐せいらんは感情的になり、特殊すらも纏った。
更に高位術を使って父上にと出した。

それに銀楊ぎんようはすぐに気付き、咄嗟に防ぐ。

「っ!?」

銀楊ぎんようは弾くが、でもこれは反射的な事だけだった。

思考が巡らない、追い付かない。
単純な反射行動なだけでもある。

でも僅かに言う。

「…感謝、だと?」

銀楊ぎんようは、まだ上手く思考が巡らない。

そんな父上を見ながらも、青嵐せいらんは言い切る。

「愛していて、愛されたにも関わらず…
母上が求めているのは、謝罪じゃない!!
違う!!
母上ならば、絶対に父上を責める訳がない!!
あれだけ信じて、あれだけ愛していた。
そんな父上の姿を、見たら、母上が悲しむだけだ!!」

そこで銀楊ぎんようは、目を閉じた。
言葉なども浮かばないが…

「………」

銀楊ぎんようは、光希みつきの事を。
何度も記憶を浮かべ、何度も思い出す。

そして、思考の結果を…

「…すまなかった、青嵐せいらん
確かに、光希みつきは、泣く、な…
私は…」

青嵐せいらんも妖気を下げた。
深呼吸をして、父上を見たままだった。

銀楊ぎんようは、そして少し目を開ける。
答えを出した…

「そうだな…
光希みつきが、泣く、な。
あぁ…
青嵐せいらんの方が、正しい、な。」

私も『覚悟』をしなければ、ならないのか。

そこで、ようやく、思考が巡る。

そんな父上を、青嵐せいらんは涙を耐えて言う。

「父上…
ずっと、母上が起きないから…
悲しむのは、判ります。
でも、今の父上を見たら…
母上はもっと、悲しむ…」

その姿を見て、銀楊ぎんようは、また目を閉じる。
様々な思考を巡らせる。

光希みつきなら…
光希みつきだったら…

そしてゆっくりと目を開けてから、呟く。

「そうだな…
光希みつきが…
悲しむのは、見たくは、ないな。」

銀楊ぎんようは思考して出した結果でもあった。
そして出された、答えでもあった。

「判った。
私も…
『覚悟』を決めよう。」

そう、光希みつきが望むものを…

「私は…
光希みつきが』だ。
望む道を、繋げたものを。
私が、守ろう…」

銀楊ぎんようは、それでも、やはり『光希みつきの事』を。
考え出した行動と、思考の答えだった…
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