馬鹿神のおかげで異世界『チート過ぎる』生活になった。

蒼真 空澄(ソウマ アスミ)

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第一章:馬鹿神のミスから始まる生活。

知らないと、判らないばかり。

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抱き締めてた彼は私を降ろしてからだった。
急に聞いてきた。

「俺の名前は『ラーク』だ。
お前の名前は?」

ラーク?
それが彼の名前かぁ。

私がラークを見ると少し笑ってるのは判るけど…
首を傾げて考える。

そう言えば…
私は一応?
前の世界で死亡だろう?
既に名前どころか存在も…
ないよね?
この世界に来てからも…
誰にも言われてないし、考えてなかったなぁ。

ラークを見ながら、正直に言った。

「判らない。
多分、ないかもしれない?」

ラークは急に凄く驚いた顔でだった。

「な、名前が、ないだと!?」

私は頷く。

「正確に言うならだけど。
それは…
前の世界でなら名前はあった。
でも、それなら…
多分なくなったと思うし、この世界に来てからも…
そうだな、誰からも聞かれた事すらなかった。
私も今、気付いた。」

ラークは驚きながらも、また複雑な顔をした。

「その、俺が一番、最も判らない部分だがな?
それだ。
前の世界や、今の世界。
なぜ、世界が違うんだ?
しかも、名前すらだと?」

私はラークの疑問も納得して言う。

「あぁ、簡単に言うとだけど?
前の世界でだと。
私は死んだからだな。
でも、すっごい馬鹿神が間違えたらしい。
だけど、本来なら死ぬ予定外だった私をと。
それで困った馬鹿神が、この世界にと。
この世界に来てから…
誰からも?
呼ばれてないし、聞かれた事もない。
だから、名前はないと思う。」

もうラークが複雑と言うより困惑気味にだった。

「それは…
その神か?
ただ、間違えて…
お前は一度死んだと?
それで?
間違えたからと?
この世界に来たと?」

私は頷く。
その話で、また思い出す。

「すっごい馬鹿神だったなぁ。
私が反応を見ながら演じたらアッサリと。
もうチートどころじゃないぐらい?
多過ぎるのもあるけど…
あの馬鹿神自身、全く気付いてない。
私も呆れた。
顔に出さない様にが精一杯だった。」

「その、チートか?
何の意味だ?」

「えっと、簡単に言えば…
反則、違反だろうか。
私の場合だけど。
本来の死亡者じゃないからと。
その馬鹿神がだな、すっごい焦ってた。
それで、この世界で生きてくれないかと。
頼まれたけど。
でも…
常識や、知識や、更に今なら言葉すらだな。
私が何も知らないからと。
それでも、馬鹿神が何とかすると。
どうにかしようとしたけど無理そう?
それもあったし、だから私が演じたらアッサリと。
あり得ないぐらい…
すっごい馬鹿神だった。」

「反則?
違反?
それをしてると?
だが、見た感じだと。
特に判らないが…」

私はラークを見る。
考えてる様子だけど、判らないし…

「例えば、今、私とラークは話せてるでしょう?
それは何語かも、私は知らないし?
判らないの。
でも…
私が少し演じたらだけど?
だったら、全ての会話が出来るようにと。
これは人間に限らない。
動物達とも常にだけど。
普通に会話すら可能状態にしてあるらしい。」

ラークは明らかに驚いた顔になった。

「そんな事を!?
今の会話、いや言語か!?
本来なら判らないのか!?」

「こんなので驚くと、更にだよ?
もう私すら思ったぐらい。
チートが、とんでもない。」

ラークは少し考えてる様子みたいだった。

「だからか。
俺みたいな存在すらもだが?
初めて見たと言う事か。
それだけ何も知らないで…
この世界に居ると?」

「そう、まさに何も知らない。
でも人間も変わらないよ?
あんな馬鹿馬鹿しい。
どうしようないのが、人間だな。
そんな存在は要らないでしょう?
もう、この世界でなら全て判るようにしてるのにだよ?
少し話せば剣まで向けて来るし?
確かに目を見れば、私は昔から相手の考えは判るけど。
前の世界も同じだった。
何も、誰も、馬鹿ばかりしか居なかった。
もう通じる会話すら、成り立たないのが人間。
一番要らないだけだなぁ。
前の世界でも、確かに私が演じてれば誰も?
全く、気付きもしない。
本当に馬鹿馬鹿しい。
この世界でなら…
そんな演技すら、私は判断出来ないしなぁ。
だから演じないで自由にと、開放感はあったよ。
でも人間はなぁ、普通に話しても…
何にも変わらない。
会話すら成り立たないのが、人間だけ。
もう馬鹿ばかりで救いようがない。
それでも別に?
一人でも全く問題すらない。
生活も困ったりもない。
だから要らないのが普通でしょ?」

今度はラークが、もう首を横に振る。

「なんだそれ…
しかも、この世界ですら?
名前すらない上に、常識も、更にか。
お前なりに会話は、一応、したんだな…
それすら更に通じない上にと。
もう、名前を付けるとこからか…」

考えてる様子のラークに、私は普通に言う。

「別に名前がなくても、苦労すらないけどなぁ…
今でも…
何も困ってないけど?」

「それが、もう既に違うだろ…
名前は、どうにか俺が考える…」

また私は判らない。

「別に名前は…
要らないよ。
今もだけど。
前の世界でも要らないからなぁ。」

ラークは凄く驚いた様子をしたぐらいは判った。

「な、前の、世界でもだと?」

私は頷きながら普通に言う。

「そうだなぁ。
一応の呼ばれ方だけだろう?
親とは金だけのやり取りのみ。
私は一人暮らしだったよ?
それと、さっきも言った。
本当の私なんか、誰も見てないと。
私が演じて、相手を動かすだけなんだよ。
それすら相手は気付く事もない。
そんなのを見てると、心底思ってたなぁ…
私の口癖でもあるけど。
下らない。
つまらない。
馬鹿馬鹿しい。
そんな日常が普通だから。
生きる理由や、死ぬ理由もないだけだよ。」

またラークは同じで…
さっきみたいに困惑気味になった。

「それを…
誰も?
本当に…」

私は疑問だった。

「どうした?
今は演じる必要がないからマシだけど?
でもなぁ。
もし、演じようとしても…
この世界なら、常識も、知識も違う。
更に会話が成り立たないのは人間だけな。
動物達はすぐに判るけど?
判らない馬鹿ばかりは、人間だけだぞ?
おまけに凶器もすぐに向けて来るからなぁ。
聞いても答えない、会話すら成立しないでしょ?
ここの皇帝にも、そう、私はもう呆れた…
それでしたのもあるけど?
あんな馬鹿は、一番要らないだろうし?
だから、その判断は簡単だったなぁ。
流石にそれを聞いたら…
ラークも呆れた理由が判るかも?
一応、半分は動物…
人間じゃない。」

ラークは首を横に振るけど、どうにか言ってきた。

「一応、聞いておくか…
その皇帝は、お前にか?
何と言った?」

すぐ私は思い出す。

「皇帝か?
そんなに話してないよ?
部屋に入って、少ししてからか?
その皇帝が、もう最低どころじゃないな。
周りを使って試したりした上にだ。
自分の物にしたい、だから、俺の女になれ。
そう言われた。
既に城下町でも、金で態度すら変えて呆れてた…
まさに皇帝のトドメだったなぁ…」

ラークは目を閉じて、小さく言った。

「なんだそれ…」

**************************

私は一応、普段使ってる王城にと。
ラークも連れて戻った。

戻ると仲良く話してる子達の皆が動いて鳴いた。
私は自然と笑って言った。

「ラークは半分だけ人間らしいけど。
皆には危害しないぞ!!
それに、そんな事を私もさせないからな?
大丈夫だよ。」

その皆がまた座って見ながら鳴いた。
私は皆がすぐに信じてくれたのがまた嬉しい。

だから笑って言う。

「うん!!
私も居るし、大丈夫だよ。
あっ、でも皆は私以外を見たら逃げるんだぞ?
人間が仕掛ける罠の説明は前にしたでしょう?
それに気を付けるんだよ?」

「本当に…
理解してるし、安心してるな。
しかも、俺すら判らないが。
言葉も通じてるようだ。」

その声だけを聞いて、ラークを見て笑って言う。

「だから言ったでしょう。
あんな馬鹿ばかりのせいで、皆の方が大変なんだ!!
だから尚更、要らないって。」

そう言ってから私は簡単に荷物を手にした。
普段から持ち歩くものは殆どない。

「特に私が持ち歩くのは、これぐらいだなぁ。」

少し不思議な顔をしてラークが言う。

「ん?
だが…
この場にすら生活用品すらないだろう。」

「私の場合、チートだから。
別にいつでも必要な物は出せる。
食材とか、お金とか、それも全部同じ。
この世界に限らない。
前の世界のでも出せる。
働く必要さえないようにされた結果だなぁ。
でも…
この世界の金なら、私には価値が判らない。
食材の名前も知らない。
だから、まぁ…
前の世界での名前を言えば、食事にも困らない。
これも私以外は使えないチートだし?
知識がないならと。
した結果だな。」

ラークはまた不思議そうな顔をした。

「働かなくても金が?
それをされてると?
常識も知識もないなら、働けないと?
まぁ、それすら判らないなら、当たり前か…」

私は頷く。

「そう、どうせ無理だろうと。
私専用だから、私以外には誰も使えないのも同じ…」

「だったら、今ですら言えば出るのか?」

「可能だなぁ。
最初は物の価値も判らないから。
お金なら相手の言い値を出したよ?
それすら騙してたみたいだったけど。
私も判ってても、一応は出した。
金を出すと驚きながら、人間は態度も変えてきたなぁ。
でも本当の価値は…
私には教えてはくれないけど。
だから知らないままかなぁ。
私には何も問題すらない。」

ラークは小さく溜息をした。

「なるほど。
それは俺も想像出来るな。
商売人なら、皆が値段交渉をするからだ。
だから、相手は最初、高値を言う。
そこから値引き交渉して払うのが普通なんだ。
最初の高値で、そのまま出せば…
そうなるだろうな。
それすら知らないのも、仕方がないが。」

私は少し考える。

値引き交渉?
それが当たり前か?
だから皆が驚いたのか?
でもなぁ…

「別に買えれば良いだけだったんだけど。
私には全部。
価値なんか判らないし、値引き交渉なんて無理だよ。
それに金は出せる。
本当に嘘を言わなかったのは…
最初にこの王城内部へと。
来る前に寄った女性一人ぐらいだな。
嘘も付いてなかったし?
その場で教えてもくれたよ。
普通はもっと安いですよって笑ってた。
でも私は、その女性にはだけど?
そのまま、お金は多く出して渡した。
極稀に居るのもそう、この世界でも同じか。
嘘も付かなかったし、王城内部にも居ない。
だから今でも生きてる筈だけど?
子育て中だし、邪魔するのも悪いだろ?」

ラークは驚いた顔をした。

「それは…
人間をあんな嫌いにしてるのに…
助けたのか!?」

私は少し考える。

でも、あれは…

「助けたのか?
でもなぁ…
その女性は夫を亡くしてたし、あの目は…
最近だったんだろう。
それに最後のあの真剣な目だな。
お金を本当に子供達にと、使うのも判った。
さっきも言ったけど、目を見れば私には簡単に判る。
怪しい姿の私でも、単純にあれは…
お金だろう?
私が金を出さなければ、門前払いだっただろうしなぁ。
その女性は安い服と、更にただの情報のみ。
私は大金、だから会話が成立したに等しいけど。
嘘を付かなかったのも、切実だった理由も聞いたし?
一応、会話が成立したら、私からも危害をする必要はない。
まぁ…
その女性も、似たようなもんだな。
私に金がなければ…
私には何もしなかっただろうし?
その人間の場合は…
都合だな。
私を見てた訳でもない。
金を見てるだけだろう?」

ラークは複雑な顔をまたした。

「だが、それを言うなら…
会話が成立するなら、皆を殺してない事になるが。
もし、金でもだ。
お前は一応、人間でも危害をしなかったと?」

私は首を傾げる。

「それは普通だろう?
私が理由もなく、更に弱いだけの人間に攻撃とか?
そんなのは単純な虐待だぞ?
それは駄目だろう?
弱い者虐めになるだけ。
私も人間だけどなぁ。
馬鹿な人間は腐る程、見てきた。
あそこまで、もう馬鹿で救いもない人間のする事はしないよ。
前の世界なら、私は演じてれば良い。
誰も気付かない馬鹿しか居ない。
それをしてれば、身の安全は確保も出来る。
でも…」

私は少しまた思い出したのもある。
それからラークを見てハッキリ言う。

「こっちの世界に居る人間は、更にクズしか居ないな!?
私も驚くぐらいだった。
あれだけ馬鹿過ぎる人間しか居ないのもか?
初めてだったかも!?
話は聞かないし?
金しか見ないし?
更に当たり前みたいに一方的にか?
武器やらで攻撃しようとするし?
会話以前に、もう論外だろ!?
おまけに、あの皇帝か?
何様だと言いたくなるだけだったし?
人間のくせに、更に人間を所有物扱いか?
どこまでクズに人間は成り下がるんだか、もう呆れた!!」

ラークは溜息をしながらだった。

「確かに、皇帝の事はもう、俺でも。
何にも否定は出来ないが…
一つだけ、お前に言いたいが。
そんな皇帝と、他の人間を同じにするな。
少なくても…
まぁ、お前からしたら金か?
一応、会話が成立した人間も居たんだろ?
その人間は、皇帝よりマシだと言っただろ?」

私は少し考える。
確かに納得もして、それにも頷いて答える。

「あぁ、それもそうだな!!
基本的にだけど?
人間も女性の方がマシか?
でも男に関しては…
今まで皇帝と大して変わらん!!
見た目だけ、内面すら全く見てないし、気付きもしない。
馬鹿で、クズで、更にもうどうしようない。
人間って名前のゴミにしか思えんな!!」

ラークは少し考えながらだった。

「それなら…
俺も半分は、ゴミなのか?」

私はまた良くラークを見た。

何を考えてるか…
やっぱり判らない目…

だからそのまま言う。

「違うと、いや?
やっぱり判らない…
どうなんだろうなぁ。
人間でもないし?
でも半分だけの人間は…
見た事もないし、会話も出来る。
やっぱり違うのか?
人間の男限定でゴミなら、『ラークだけ』は違うしなぁ。
人間でもない、更に動物でもない。
だから、ある意味…
『新種』に似てる感覚か?
他種族も、初めて見たし?
対策はされてあるから。
まぁ、私には安全だけど。」

また複雑な顔もしたラークは言う。

「対策されてる?
何にだ?
しかも安全?」

私はラークにと、判らないのもあるから聞いた。

「対策は、異能のだけど。
馬鹿神に聞いたから、本当か判らない。
でもこの世界には他種族が居ると。
その他種族には異能を持った者が居るから?
近付かない方が良いと。
そこで私は気付いて演じて誘導したらなぁ。
なら、私に特別として、安全にする為にと。
私専用の異能をあげると。
だから、異能は判らないけど…
その異能すら、もうチート過ぎる。
だから、ラークに聞きたいけど?
あの馬鹿神は間違ってないのか?」

「あぁ、異能か?
全員ではないが、持ってるな。
それの対策にか?
安全にする異能だと?」

「そうだけど…
あの、すっごい馬鹿神は気付いてないと思う。
とんでもない、私用の異能をくれた。
名前は『威光』だと、言ってたか。」

ラークは不思議な様子をする。

「威光?
そんな異能、俺でも聞いた事もないが。
それが安全な異能なのか。」

私は思い出す。

「そうなぁ、もう聞いててなぁ。
私はもう呆れた…
顔に出さないようにするのがだ…
もう大変だったのを良く覚えてるから。
威光はなぁ。
まぁ、簡単に言えばだけど?
私に対して、異能での危害、攻撃になるの?
それをすると発動されるらしいけど。
相手のどんな異能も全てを防げると。
更に相手の異能すらも全て吸収。
そして逆にと弾き返すらしい。
馬鹿神が言ったけど、自業自得だと。
この異能は、私にだけらしいけど?
私から攻撃する異能ではないと。
それなのに、相手が異能を使った場合だけだからと。
私からは危害とかもしてないのに、してくるなら。
防ぐのもあるけど、そのまま弾いて相手に返してやりなよ。
相手がやられるだけでしょ。
って、言ったからなぁ…」

ラークは凄く驚いた顔になって首を横に振る。
目を閉じて、また小さく言った。

「なんだそれ…」

**************************

「まぁ、もう事情は大体判った。
それとお前も一緒にだが。
この場所から移動しよう。」

私はラークが急に言った事に驚く。

「えっ!?
何で、皆も居るのに!?」

「まずは先に言うが、人里じゃない。
森の中にある、俺の家にだ。
俺の場合は…
知らないだろうが、獣人だからな。
人間との交流は勿論してるが。
人間とも一緒に暮らしてない。
それにだ、この帝国内部が無人だと判れば…
今は良いが、何もないならと、人間が入って来る。
今のお前だけ居たら、必ずまた会話も成り立たん。
そればかりは、常識も違うし、世界が違うから仕方ない。
でも俺と一緒に居れば、徐々に常識や仕組み。
交流でもだが、やり方すら判るだろ?
そうやって先に覚えるまでは、お前からは話す必要もない。
俺と相手の会話、それを聞いてれば判る事も増える。
ここに居たら、何も変わらんからな?」

私は意味は理解するけど。
でも…

動物達を見る。

私には人間なんか要らないのに?
皆と仲良くなれたのに?

「なぁ。
動物達にだが。
お前もだがな。
俺が今から言う事を伝えてくれないか?」

私はすぐラークを見ると、少しまた顔が…
目が違う。

「うん、何を伝えるの?」

「皆にも、お前にも言うが。
それは『今の生活をずっとするのは、お前の為になると思うか?』
そう聞いてくれるか?」

判らない…
でも…

私は動物達の方に言う。

「ねぇ、皆に聞きたい事があるらしいから。
聞いてくれる?」

皆がすぐに私を見て鳴く。

「ラークがね?
皆に伝えて欲しいらしいの。
それは…」

私は皆と離れるのが少し寂しくもなる。
だから皆にと少しだけ、小さく言う。

「皆に『今の生活をずっとするのは、私の為になると思うか?』と。」

私は皆を見ると、皆はそれぞれ目を合わせた。
少しすると、またそれぞれが鳴いた。

私は凄く驚いた。

「えっ!?
皆も、そうなの!?
どうして?
私は皆と離れる方が…」

でも皆がすぐに鳴く。

それにもだった。
驚くのもある。

でも…
皆には嘘もない。

私の為にと…?

少し皆を向いて首を振る。
でもすぐに皆が鳴く。

それは…
そうかもしれないけど…

「なぁ。
俺には判らないから。
動物達は、何て言ったんだ?」

その声で私はラークを見た。

でも…

私は下を向いて言う。

「自分達は大丈夫だから…
『私の為になるから、ラークと一緒に行って』と。
でも…
他にもある…」

私は考える。

仲良くなったし、楽しいのになぁ。
皆はでも、私の為にと?
もし、あんな人間なんかが皆を…

「他にもある事だが。
全部、お前にだろう?
それは…
言えるか?」

「うん…
『私の為になる』と。
『どこに行っても忘れない』と…
『また会える』と…
『信じてる』と…
『大丈夫だから』と…」

「なるほど。
動物達の方が判ってるらしいな。
お前よりもずっと、お前の事をなんだぞ?」

私は驚いてラークを見ると、少し笑ってた。

「でも…
あんな人間が…
また皆にとするかもしれないのに!?
私なら、皆も守れるのに!?
その方が皆だって、絶対に安全なのに!!
皆が傷付くのは…」

その時、また皆が鳴いた。
すぐに皆を見る。

「でも…
皆だって、危ないよ。
あんな人間なんか、居ない方が…」

皆がすぐに鳴く。
私は迷う。

それを…
でも…

私はラークを見た。

「皆がラークに伝えて欲しいと…
『絶対に守って欲しい』と。
『絶対に安心させて欲しい』と。
でも…
私は守られなくても。
生きて、いけるのに…
皆は『ラークと行く方が良い』と。
判らない…
私は人間なんかより、皆が大事だし。
それなのに…」

「なるほど。
良く判った。
動物達の皆がだ。
同じ様に、お前が大切なんだ。
お前自身も言っただろ。
それだろ?」

私は少し驚いてラークを見る。
笑ってまたラークは言う。

「動物達はな。
この世界を知ってるんだぞ?
だが、お前が知らない事もだ。
それすら、動物達は理解もしてるから。
だから、俺と一緒に行くのを勧めてるだけだろう。
お前が寂しくなる気持ちぐらいは判るがな。
動物達も同じだが。
寂しくても、お前の為ならと。
お前を考えて、皆が出した答えだぞ?」

私は驚く。

「それは…」

私はまた皆を見るけど、今度は鳴かなかった。
首を横に振る。

「私なんか…
人間じゃなければ…
あんな、人間なんか私は要らないのに…
私自身が人間なのも、嫌だよ。」

皆が鳴く。
私はまた驚く。

「それは…
私が?」

「俺の予測だがな。
お前が人間でも、違くても。
お前が好きだと言ってるんじゃないのか?」

私はまた驚いて、ラークを見ると笑ってた。

「どうして…
伝えて、ないのに…」

ラークは笑って言う。

「そんなの、言葉が判らなくても。
見てるだけで判るぞ?
でなければ、皆がお前の為になど。
言う訳がないだろ?」

私は皆の方にと言う。

「判ったよ…
でも、皆も気を付けてね?
私は皆が、大事なの。
人間の罠には…
注意してね?」

皆が鳴く。

「うん…」

私はラークの側に行くけど…
何も言わなかった。

人間なんか…

でもラークは…
人間じゃない。

「そんな顔をするなよ。
それにな、俺の住んでる森にもだが。
動物達は多い。
お前なら皆とも仲良くなれそうだ。」

私は少し気付いてラークに言う。

「そうか、森なら!?
他の動物達とも、また仲良くなれると。
ここに居る皆も忘れないけど。
もっと仲良くなれるかも!?」

少しまた驚く様子でラークが言った。

「えっ、あぁ…
確かに仲良くなれると思うが。
そこが…
先に?」

私は少し笑って言う。

「そうかぁ。
他の動物達とも、仲良くなりたいしなぁ。」

「あははははっ。
もう、俺は…
お前の方がだ…
動物達より、判ってない様子に見えるから。
面白いな!?」

私は少し驚いてラークを見ると、もう完全に笑ってた。

「そうだ!!
お前の名前、俺は決めたぞ!?
俺はこれからだ、お前を『ネオ』と呼ぶ。
嫌じゃないなら、それを名前にだ。」

私は首を傾げた。

ネオ?
不思議な名前だけど…

「それは…
どう言う意味?」

「森の木々に芽吹く『新芽』の事だ。
お前は産まれたばかりみたいなものだし、更に何も知らん。
その上でだ、様々知るだろうから、成長してく感じか?
丁度良い。」

新芽…
知る事での成長かぁ…
確かに、そうかも?

私は少し笑って言う。

「ネオか!!
私の名前か!?
初めてだな!!」

ラークも笑って言った。

「あぁ、初めての新芽。
だから『ネオ』だ!!
これからは、もう名前なんて要らないとかも。
言わせたりしないぞ!!」 

**************************

そうして、私は皆と離れてラークと一緒にと。
森に行ったけど…

その森はまた不思議だった。

初めて見る木や草もだけど。
花も含めて、全く知らない。

そんな中に一つだけ家があるけど。

私は何となく、写真をと思った。
でも、流石に現像までは無理か…
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上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

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16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

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