魔法の華~転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ?~

マカロン

文字の大きさ
21 / 128
一章 出会いと魔女の本領発揮『憤怒』

14page

しおりを挟む
「アーサー殿。便り、感謝します。」
(うっそぉ……隣国の王さま来ちゃった……感謝するっていわれても便りだした記憶ないんだけど……。)
豪華な王座に座り、俺は内心すげぇ焦りながら表面上冷静に見据える。
たしか隣の国……といっても砂漠を通るため過酷な歩みとなる隣国までの道はほとんど通れないといっても過言ではなく、そこまで仲良しこよしの友好国ではない。
「我々は、どうか貴方に助力頂きたい。愚かな弟が、反乱を起こしたのです。」
(え、なんで??なんでそんな厄介なことになってんの??)
もう一度言うが、隣のお国まで行くのは困難なため、情報はあんまりこっちに渡ってない。穏やかな国だったため、特に情報不足でも戦争などの危険性はなかったためだ。
「この手紙をもらい、我々はとても安堵しました。」
彼がそういい掲げるのは、なんだか見覚えのあるあの彼女の旦那宛の挑戦状というか果たし状……。
「……お前が彼女の待ち人か。」
「!……さすが、賢明と噂される王子だ。その通り、我々は砂漠で倒れ掛けたとき、彼女の家に助けられた。」
(家に助けられたってなんだよ??)
しかも彼女は砂漠に住んでいたのか。いや森によくいるしなぁ……砂漠とは逆方向だぞ、あの森。どんだけ離れてると思ってんだよ。
(だけどどうも、夫じゃなさそうだしな……あんな手紙渡さなきゃよかった……。)
そう悔いても後の祭り。誤解といっても、それは正式な王子からの手紙だ。前言撤回することはできない。来いって書いたの俺だし。
「詳しく聞かせて貰いましょうか。」
「ああ。まずは私の容姿への差別から始まったのだが……。」
(待って出だし重くない?)



アーサーに、ガドル国の王が少数の国民を引き連れ訪ねてきた。騎士団長である俺、ヴィンスは、政に関わりたくない……ではなく騎士団長といえども一介の騎士が政治に関わるのはよくないと説得し外に出ている。このような晴れた日の散歩は格別だな。
とほのぼのと町を歩いていれば、彼女にあう。
「あら!騎士さん。」
「魔女殿……今日も買い出しか?」
「ええ、そうなんです。……といっても、ついでにアクセサリーでもみようかな、なんて思ってふらふらしてたところなんですけどね。」
これはいいアピールチャンスである。俺は即座にいい店があると野菜の店から彼女を連れ出した。よかった、アーサーとダニエルとの悪ふざけで女性ものの店を訪れた甲斐があったな。
そのまま店につきエスコートすれば、彼女は目を輝かせ綺麗、と呟いた。
「この金色の髪飾り……アーシラさんに似合いそうだわ。」
「アーシラ?」
「大工さんのご親戚の、美人さんです。ご存じですか?」
幼なじみだからか、というか父違いの兄弟だからか。やつの考えを察してしまった。
(女装したままこの人に会いにいったのか!)
しかもアーシラというふざけた偽名まで使っている。
「そ、そいつについては……知っているというかなんというか……。」
「あっ……もしかして、ご婚約者でしたか……?」
「そんなことは絶対にない!!」
「あら……?でもあれくらいの年齢の女性ってここじゃみんな婚約者いるらしいって耳に挟んだんですが……。」
変なところで耳敏いらしい。誰だ吹き込んだやつは。苦渋の策で仲間を売る。
「あいつ……はダニエルの婚約者だ……。」
心では悪いと思うが、俺は自分の身がかわいい。騎士団長だからと仲間を売っちゃいけないなんて誰が決めた!
「その、次にあいつをみたときは……ダニエルを呼ぶといい。婚約者同士水入らずの方がいいだろう。」
女装してるとはいえ男と二人きりにさせられるか!
「そうですか……?せっかくお友だちになれたのに……。」
「最近あの二人は喧嘩したらしく、仲直りさせるのを手伝ってはくれないか……?」
なるほど、と彼女は頷いてくれる。
彼女の夫に先になるのは俺だ。譲らん。

彼女に綺麗な百合の髪飾りを買い、贈ればとても愛らしい笑顔を向けてくれた。
彼女を森まで送り、城へ戻れば、
ダニエルとアーサーがいつもとは様子が違った。
「帰ってきたか!ヴィンス!作戦会議だ!」
「ファルーク王に国を取り戻させまスヨ……!!」
なにがあったこいつらは。





※褐色イケメンの本名は、
ファルーク・ガドルといいます。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。 魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。 人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。 そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。 物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

処理中です...