魔法の華～転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ？～

一章 出会いと魔女の本領発揮『憤怒』

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「やつはどこだ！！」
暗い王座で怒鳴る男の顔には、ファルーク王の面影がある。しかし、違うのは灼熱の国を象徴する真っ赤に燃えるような髪を持っていることだった。その髪はまさに、ガドル国を代表する王の印だ。しかし、男にはファルークへの劣等感があった。なぜなら、完璧超人一周回ってイカれてるほどの実力をもつ兄が忌まわしい白髪であったからこの地位につけたのだと理解しているからであった。数少ない女どもも、やつを嫌がり僕に近づいた。しかし、それも赤髪をもつ王だからというだけだ。兄が実力を磨き一時とはいえ王になったときは焦りが募った。僕の立場はどうなる？兄と違って王の息子でしかない僕には出きることが他にない。王としての教育も、王にならなければ意味はない。僕の価値を失くそうとでもいうのか！
そんな兄を始末したくてたまらなかった。
そんな兄は幾人かの国民をつれ消え去った。
(なぜ僕じゃなく兄についていくんだ！！)
表面上怒る僕の頭は冷静で、すぐに兄の方が優秀だという劣等感にさいなまれるというサイクルに囚われる。今、僕は国民たちに恐王と呼ばれているらしい。兄の統治していたときとは違い、国には険悪な雰囲気が漂っていた。
「意地でも探せ！！連れてこい！死体でも構わん！」
配下どもにそう告げれば、王よ、と震えた声の配下が入ってきた。
「なんだ！やつの情報か！？」
「そ、その……砂漠付近でファルークさまをみたという旅人に話を聞いたのですが……どうやら隣国へ向かっていたそうです……。」
「隣国？……この辺りだと、グランド王国だな。」
(わざわざ隣国へ助けを求めに？だが……助けてくれる確証もないのになぜ……そこまで親しくなかったはずだが……。)
王座にかけた上着を掴み、配下へ長旅の用意を命ずる。
「……グランド王国へ向かうぞ。」
やつを捕らえることしか、憎しみで盲目となった僕の頭には考えられなかった。