魔法の華~転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ?~

マカロン

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三章 魔神の過去世界『傲慢』

القصة الثانية(ふたつめの物語)

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言われてみれば、カーミルと言う名前の……あの魔人?虎さん?に似ている。


「待てぇい、そもそもなんでこんなことにおるんかよな。あのときはあのかーみる……ややこしいな。」

カーミルといった瞬間、僕の名前なんで知ってるの?と男の子は睨み付けてきた。

「なんでもないんやで~。あの魔人が混乱しとって、それから……気がついたらここにいたよな?」
「そうですね……どうやら時代的にははるか昔のようですが。」
「うわびびった!!?急に話し出すなや!?」

シアンさんはいつ起きたのか、踏まれたまま壁についているカレンダーを指差した。そこには、900年、春の月と書かれている。

「いまは1900年やから……千年前かっ!?」
「えっ……!?あら、この春の月って……。」
「どうやら昔は、春、夏、秋、冬の季節で月を割っていたようです。昔の時代へ飛ばされたのでしょうか……。」
「あ、ご丁寧にどうも……、え……タイムスリップ!?」

さすが、異世界と感心しても、なぜヴィンスさんがいるのかが疑問に残る。どうやら二人もそう思ったようで、首をかしげていた。

「まさか、他人の空似……なわけないよな。ヴィンス・グランドって名乗っ取ったし。……あいつ、名字このこに知られてよかったんか?」
「グランドっていう名字だったんですねぇ……。」

知りませんでした、と言えば、ファントムさんはふっと嘲笑を浮かべた。

「ほらぁ~……だけど、なんでかおれらのことしらんっぽかったよな。」
「ああ……不思議なことに、彼女のことも知らないようでした。」
「……夢でもみてるのかしら。」

遠い目をしてそう呟く。

「それや!!天才やな!」
「!!さすが女神様!もう全てを察したのですね!!」
「え、なにが……えっ?」
「ここは奴の夢の世界で、突然混乱したあいつの魔力が暴走したんかなんかして、俺たちは引き込まれたんや!!俺たちは魔力があるからこの世界に飲み込まれてないけど、ヴィンスは魔力がない、だからこの世界に飲み込まれてもうたんや!!」
「なるほど……さすが女神様ですね!!」

いやすべて初耳である。そんなこと一ミリも考えてなかったわ。そう言おうとしたが近づいてくる足音に気を取られてしまった。

「出なさい。あなたの顔がみたいというかたがいる。」

ヴィンスさんが私に近づき、牢を開ける。そして、手をさしのべた。混乱していれば、どこぞの姫君を間違えて幽閉してしまったのだろうと謝罪される。

「え……ちが「そうや!そのとおりこのこはとある国の姫様や!そんで俺はおひいさんの従者!おひいさんだけでなく、俺も出せや!」……えぇ……。」

機転を利かせたファントムさんの策が功じたのか、私とファントムさんは牢から出れた。しかしシアンさんは牢に残された。従者と訴えても、なぜかシアンさんは信じてもらえなかったようだ。
 時々シアンさんを振り返ってみるが、
女神様ーーー!!!という言葉か、
ファントム様の卑怯ものめーーー!!という言葉しか聞こえなかった。

そのままヴィンスさんについて行く。そこは、とても大きな扉の前だった。

「あなたたちに会いたいとおっしゃっているのは……陛下です。ご忠告をいたします、かなりの激情家のため、ご無礼のないよう。」
「oh...ジーザス。まさかあいつか?
おい大丈夫なんか正体バレんで……!?」

どうやらファントムさんは心当たりがあるらしい。疑問に思っていると、いつのまにか扉は開けられていた。

「待っていましたよ。美しい私の女神。」

その声は、透き通るように美しく、流暢で聞き覚えのある……。

「お医者さま!?」
「なんでやねん!!!」

豪華絢爛な衣装をまとい、使用人たちを後ろに控えさせている。王座から立ち上がり、
彼はその甘い顔をさらに蕩けさせた。

「私はダニエル・アシュリー。
この国の支配者です!」

その言葉が合図なのか、音楽がなり始めた。

「the best in this country
(この国の一番)

the only one in this country
(この国の唯一)

There's no one to replace me
(私の代わりなどいないでしょう)」

マントをはためかせ、踊るその姿に近視感を覚える。つい先ほどみたかのような……。しかしこちらは、曲調が全く違う。ヴィンスさんの曲は威圧的だったが、こちらは優雅さを含んでいた。

「Yes......I am the ruler!
(そう……支配者は私です!)」

と感じていたが、突然派手な音が鳴り響く。
お医者さま……ダニエルさんは、右腕を天へ掲げ、左足を踏み鳴らした。

「clever servant
(利口な使用人)

useful ministers
(便利な大臣たち)

I won't make any unnecessary comments!
(無駄口ひとつ叩かないのです!)」
【King!our king is great!
 (王さま!私たちの国王さまは偉大だ!)】

合いの手をいれるように、使用人たちも歌っている。
「But it's not enough...
(しかし……足りないんですよ…)

the perfect bride for me
(私にとって完璧な花嫁)

...i got you
(……見つけた)」

私に即座に近づき、手を取る彼。

「i am the only!
(私は唯一で!)

 I'm the best!
(一番です!)

but it wasn't perfect
(しかし完璧ではありませんでした)

Because I didn't find you!
(貴女を見つけてなかったから!)

Come on!
(さぁ!)」
【Come on!
(さぁ!)】
【Come on!
(さぁ!)】
【Come on!
(さぁ!)】
「take my hand.
(私の手を取ってください。)」

そう言い終わると、曲が流れなくなった。彼は跪き、私に手を差し出す。

ひたすら意味がわからない。私は英語圏で生活していなかったから。なんとなく差し出された手に手を乗せれば、視界がブラックアウトした。





「……起きぃ!……起きぃや!」
「!ファントムさん……!?ここは……牢や?」
最初にいた牢屋に戻っていた。シアンさんはまたもや気絶しているのか倒れている。
「気づいたらここにいたんや。また牢屋に入れられたかもしれん。意味わからんけどな。花嫁花嫁歌ってたわりに……。」
「え、あの歌そんなこと言ってたんですか?」
「意味わからんで手を取ったんか!?
……いやそう言う女の子よな。きみ。」

かわいそうな子……というか残念な子のようにみられている気がする。その視線に後ろめたさを感じながら、足音を感知する。

「Good evening, everyone.
(こんばんは 諸君ら。 )

 Looks like you've woken up.
 (目覚めたようだな。)


 Everyone trembles in fear here. 
 (ここでは皆が恐れおののく。)


Yes, we are proud here
(そう ここは誇り高き)

La Giustizia Prison! 
(ラ・ジュシュティツィア監獄!)

Now let's start the show!
(さぁ、ショーをはじめようか! )」

ヴィンスさんは、またもや同じ歌を歌い出したのだった。


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